偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語 作:名無しのモンスター
僕はゴキブリ嫌いなので、見つけ次第新聞紙ですぐさま叩き潰しますね。
おう、みんなおはよう。白哉だぜ。この前は桜さん秘密の泉の霊水を取りに奥々多魔駅の山中に行きましたー。桜さんが設置した罠が魔法じゃなくて古典的なヤツだったり、空耳が面白い傭兵みたいな使い魔と戦ったりと、もう色々と大変だったぜ。
とりあえず無事に帰ってこれてから時はちょいと過ぎ、今日はいつも通りの日常を送ることにします。いつも通り優子とのセッッッ後の寝落ちから起床して……いや、すいません。今のは毎日やってるわけじゃないので○リ○ンだとか思わないでくださいお願いします。
で、朝飯食って玄関前のところを優子と一緒に箒で掃除することに。今日は週一のそういう日だからね、日課だからね。で、今掃除中なんだけど……
【おいピッピ‼︎ そこら辺のゴミは俺が取るんだ、そこをどけ‼︎】
【何故そんなキレ気味なのだ? 別に掃除をする場所はどこでもいいのではないか?】
ウチの召喚獣であるハムイン・ボルタとピッピが、優子の部屋の隣のドアの前にて喧嘩しております。
元々この二人は仲が悪いみたいだし、まぁ口喧嘩になるのは珍しくもないんだけどな。特にハムイン・ボルタの方がピッピに対する敵対心が強いみたいだけど、ぶっちゃけ仲が良くなってほしいんだけどな……ピッピは仲が悪いままになりたくないみたいだし。
【お前はいつもいっつも俺より行動が早すぎるんだよ‼︎ 足の速さなら俺が上なのに、お前みたいな奴にしれっとした感じに早い判断と早い行動をする奴が嫌いなんだよ‼︎ そういう奴は偉そうなのばっかりなんだから‼︎】
【ウザい系の○滝左○次か何かなのか?】
「あぁ……あの子達、いつになったら仲良くなってくれるのでしょうか……?」
「………………さぁな?」
「何故不穏な間が……」
うーん……よく考えたら少しは進展してほしいとは思えるんだよなぁ……俺が召喚術を覚えるようになってから約二・三ヶ月経ったわけだし、時々直接召喚獣との縁を深める為にと召喚獣同士を仲良くさせる為に召喚させていたんだし……
ん? そういえばこの二匹が前に立っているドアって……
【とにかくどけ‼︎ お前は別のところを掃除すりゃいいだろ‼︎】
【だから何故そう譲れないのだ貴様は───】
バンッ
【【グヘッ⁉︎】】
「シャミ子ォォォ‼︎ 白哉ァァァ‼︎」
あっ(モノマネボーちゃん風)。ミカンがドアを勢いよく開けた途端に二匹ともドアに潰された。ハムイン・ボルタはともかくピッピはあまりにも理不尽な目に……
「おはようございます、ミカンさん」
「ごきげんよー‼︎ ついに出ました‼︎ 出ちゃったのー‼︎ あのっ、例のっ、黒くて速くてスベスベしている───」
「あぁ〜、ゴキブリ?」
「なんじゃそのスベッスベの反応は‼︎」
「無意識にスベスベとスベッスベでダジャレっぽいの作んな」
くだらない事を言った後に気づいたけど、オブラートな感じに何が出たのかを言おうとしていたミカンの顔が面白かったな。マジでガチモンのギャグ漫画みたいな顔だったわ。ジャンプ漫画のってわけではない気がするけど、いやホント……
「アレのことはも〜少しかわいくGちゃんとお呼び……って、シャミ子……貴方、虫平気なの?」
「この家、隙間多いので小さな生き物は慣れちゃうんです。ゴキブリは攻撃力がないので怖くない‼︎ 何なら桃の方が怖い‼︎」
「貴方のセーフ判定、時々歪よね……」
「それほど桃が強すぎたってわけだ。察してやれ」
でもまぁ、お前がそんな反応をするのもわかるぞミカン。俺だってここに引っ越して来たばかりの頃にゴキブリが出てきた時、優子の薄かった反応に思わず『えっ?』って思ってしまったのだからな。
ミカン、お前のゴキブリに対する反応は本来正しいものだ。普通なんだ。だから間違えても『自分の反応はおかしかった』とは思わんでくれ。
「あっ。ゴキブリというか小さな生き物が怖いといえば、白哉さんも意外にもゴキブリとハチが苦手なんですよ」
オイこら優子待てオイ。
「えっ……? そうなの……?」
ミカン、お前も意外だったって言ってるような反応するな。そして目を見開きながらこっち見んな。その反応は結構傷つくから。
「はい、今でもゴキブリがカサカサと動いて出てきたのを見てビクッで怯えるところが可愛かったんですよ。ハチの時はスズメバチかどうかの判断が上手くできない程にビクビクしてなんとか避けようとしているところが───」
「それ以上言うとしばらく夜のお楽しみをお預けにするぞ」
「ウグッ……⁉︎ ご、ごめんなさいでした……」
「シャミ子……新しく弱みを握られているわね……」
はい、大半手遅れだけど俺の黒歴史がさらにバレることは無くなった。やっぱり今の優子にとって俺との夜迦が出来なくなるのは辛たんなんだな、マジで弱み握れたわw
「はいどうぞ、ゴキブリをつまんで外に逃がすためのティッシュ」
「つまむ⁉︎ ザ・異文化‼︎」
「言うほど異文化か?」
「でもゴキブリは噛みませんよ?アブとハチとカミキリムシはつまんじゃダメで、特にカミキリムシはサイズ感に比べて噛む力がものすごく強くて想像の五十倍くらい痛いんです。だからカミキリムシよりゴキブリは優しい────」
「そういう問題じゃないのよ‼︎」
「ですね〜」
「そりゃあそうだ」
デカくて家庭に被害を与える虫なんて、衛生面で考えるも大抵気持ち悪いと思えるし、そもそも見た目もマジで可愛いとは絶対思えないし。実際に触ったとしても……ね?
とりあえず怖いから部屋の整頓を手伝ってほしいというミカンのお願いを聞いたものの、俺と同じく聞き入れた優子はどうしてもゴキブリをつまむことしか考えていない模様。つーかそもそも足の速いゴキブリを手で捕まえること自体難しいだろ普通。
「Gちゃんは結構ばっちいのよ。触らない方がいいわよ。次出てきたらほら、これ」
そう言ってミカンは魔法の力で柑橘色の矢を生成した。魔法少女にならなくても魔力を使うことができるんだな魔法少女って。だがこれは言わせてほしい、矢で射る方がグロいことになるぞ。寧ろ下手したらトラウマレベルだわ。
「やっつけちゃうんですか……? 生まれただけで、出てきただけで、叩かれるなんて……まぞくみたいでかわいそう……」
「あーミカン泣かしたー‼︎ 優子を泣かしたー‼︎ まぞく泣かしたー‼︎ 地雷踏んだー‼︎ いーけないんだ生花だー‼︎」
「えっ⁉︎ これ私が悪かったの⁉︎ しかも悪口が独特なんですけどっ⁉︎ もぉぉぉ分かったわよ‼︎ つままず逃がす方法を考えるっ‼︎」
すまん、さすがに調子乗ったわ。頭にフッとそういう流れのネタが浮かんできたものだから、つい……
………………というか、俺も地雷踏んでるよな? ゴキブリホイホイならぬ害虫ホイホイを自分の部屋に設置していたわけだし。その事を優子が知ったらどう思うのだろうな……『ホイホイに誘われて動けなくなってそのまま生涯を終えるとかすごく可哀想』みたいな……生活する為の必要経費とはいえ、バレたら素直に謝っておくか。
まぁとにかく、今はGちゃんを見つけるところから始めておかないと先が進まん。とっととミカンの部屋に入っておくか……あっ。
「ん? 何かがドアの裏にいたような………………ギャーッ⁉︎」
忘れてたと気づいた時にはもう時既に遅しお寿司。口論中にミカンの開いたドアによって潰されたハムイン・ボルタとピッピが、その開いたままのドアの裏の壁にめり込んでいるのをミカンが発見してしまった。
それによるビックリ仰天での動転に反応してか、些細な呪いとして何処からか飛んできた網が俺の頭や右腕に引っかかってしまった。解せぬ。
「う、嘘ッ⁉︎ この子達いつの間にそこにめり込んでたの⁉︎ こ、これ私のせい⁉︎ 気づかずに勢いよくドアを開けた私のせいなの⁉︎ と、とにかくごめんなさいッ‼︎」
「あぁ……大半ミカンのせいじゃないぞ。元はと言えばそいつらがドアの前で立ち止まって口論していたせいだからな」
「びゃ、白哉……貴方それはさすがにこの子達にとっては辛辣じゃないかしら……?」
「場所が場所であることに気づかなかった奴らが悪い。特に自分から喧嘩しにいったボルタがな」
はい論破。ドア前に立ち止まり続けるのは良くない。喧嘩はもっと良くないからな。マジで反省しておけよ二匹とも。特にボルタ……あっ、別にピッピは悪いことしてなかったな……すまん。二匹とも壁から出してあげて寝かしておくか。そうした方が二人とも楽になるし。
あっ、各々の世界に帰してあげればいいだけか。よく召喚獣各々が自力で帰っていってるから、俺が帰すって発想はなかったわ。てへっ。
「とっ……とりあえず今はこの部屋を片付けておきましょう。少しずつ片づけてけば逃げたGちゃんも見つかりそうです」
「そ、それもそうね。ごめんなさいね、散らかっていて……」
「別に大したことねェよ。それに一人暮らしを始めてそんなに長くはないだろ? まだ慣れてないってところもあるのだろうし、気にすんな。俺も始めたてはこんなんだったしな」
そういえばこの前、ゴミは何曜日にどの種類のゴミを出すのかとかが分からなくて、部屋がゴミ袋まみれで色々と大変だったなー。優子がゴミの分別について教えてくれなかったら今頃俺の部屋もゴミ屋敷だったのかもな。ま、メェール君達を召喚できるようになってからはそんなこともなくなっていただろうけど。
「この辺のゴミからまとめていきましょう。えっと……これはみかん類ので、これもみかん類の……これもみかん、これもみかん。みかんかんみかんかんみかんかんみかん。みかんかんみかんみかんかんみかんかん……」
「リズムゲームか何かか? つーかみかん関連の食品しか食ってねェのかこいつは」
「あんまり人のゴミを確認しないで‼︎ まだゴミの出し方が分からなくて……てへぷり」
いやなんだよてへぷりって。どんな擬音だよ。ってか擬音を口にするなよ。……優子もやってみたら可愛いかも。
この後優子はミカンが自分のために桃に頼まれて一人でこの町に来た事や無茶振りをされている事を心配するようなことを言ったものの、当の本人は一人暮らしも一度やってみたかったから心配いらないとか、桃とは知り合ってお互い無茶し合って十年は伊達じゃないとか言ってくれたため、悪い気はしていないことは理解できた……
が、優子が桃とミカンが長い付き合いであることを嫉妬するのはなんだか気に入らないな。お前も俺と知り合って十一年くらいは経つだろ(仲良くなったのは十年くらいだけど)。だから長い付き合いに関する嫉妬はやめろ、俺まで嫉妬してしまうから。
……まぁ、桃とミカンの方は非常識な体験もしてるから、そこも比較すると嫉妬してしまうのも無理はないけど。
にしても、桃とミカンが知り合って十年も経って、俺と優子が桃と知り合って三ヶ月ぐらいか……俺がこの世界に転生した影響なのか、俺達の知らない桃の物語の中には、柘榴さんとの出会いと恋の馴れ初めがあるんだったよな。そういう点も考えると、桃の奴がここまで一体どんな人生を送っているのか、正直気になってきたな……
………………あっ、そういうのは柘榴さんに聞いてみるべきじゃないのか? そうすれば大抵の事なら知れるんじゃ……
「ダメダメダメダメ‼︎ おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃ~‼︎」
「ゴミ捨てにえらい気合いを入れるのね⁉︎」
「心のゴミを捨ててます‼︎ おりゃおりゃおりゃおりゃ~‼︎」
ハッ⁉︎ ゆ、優子の叫びで我に戻れた……彼女も夢魔の力で桃の昔の記憶を探ろうかと考えて、我に返ってクソデカ感情を捨てようとしているんだな。
なら、俺も……
「そぉい‼︎」
「いや白哉も⁉︎」
「人のプライバシーに関わることを考えていけないからな、それを忘れるためだよ‼︎ そぉい‼︎ そぉい‼︎ そぉい‼︎」
「私にもそれを忘れさせてください‼︎ おりゃそぉいおりゃそぉいおりゃそぉいおりゃそぉいおりゃそぉぉぉい‼︎」
「………………勢いあまりすぎて、ゴミ袋の一つが俺の顔に被ってしまったんだが」
「うわぁ……」
「ホワァッ⁉︎ ご、ごごごごごごごごご、ごめんなさいィィィィィィッ⁉︎」
♢
はい、さすがにお互い気合い入れすぎました。ゴミ捨てでそんなに叫ぶとかおかしい人と思われるよな。少しは抑えるか時と場所を考えないとな、うん。
さてと……ミカンの部屋も少しのゴミ捨てだけで広くなったな。とはいってもまだまだあるみたいだし、けど捨てるだけはなんか地味な気がする。だから有効活用しておかないと。
「あっ。チラシ頂いてもいいですか?」
「? よくってよ。何に使うの?」
「……あぁ、シンク用の三角コーナー代わりのゴミ箱作りか」
先越されて原作通りのルートやられたわチクショー……‼︎
「お母さんから教わったんです。料理中に出たゴミをそのまま捨てられるのですごく便利です‼︎」
「なるほど! みかんやデコポンやいよかんを連続で食べてもその都度ゴミを捨てに行かなくていいのね‼︎ 天才ね‼︎」
「でしょう‼︎ そうでしょう‼︎」
「オイ想定用途がおかしいだろ。柑橘系に偏りすぎているから離れろや」
まぁそれはともかく……チラシの有効活用か。そういえば、清子さんはチラシを使ってアートレベルのヤツを作って俺達に見せてくれたんだっけ。アレを『俺の彼女の義母さん、チラシでこんなもの作った』ってつぶやいたーに挙げたらスゲー評判が良かったんだよな。懐かしー。
「あとは手裏剣とか、紙鉄砲なんかがオススメです‼︎」
「ごめんなさい、それはちょっと使い道が分からないわ……」
「紙鉄砲はストレス発散をするのにいいぞ。パァンッてやってる時の快感がやみつきだぜ……ホワァッ⁉︎」
ヤベッ、ビックリしたァッ‼︎ 突然物陰から出て来るなよゴキブリ……じゃなかった、ゴキブリって呼び名はミカンにとってはNGだった。
「お二人方、隅っこからコード:Gが‼︎」
「コ、コード:G? ………………あっ、なぁん⁉︎ もしかしてGちゃんのこと⁉︎」
「大変です‼︎ 急いでつまみ出しましょう」
「だぁらつまむのは止めぇ言うとろーが‼︎」
「お前は口調を一定させろや」
というか、ツッコミ入れようとした途端に紙鉄砲を早速活用しとるやんけ。正しい使い方、見つけちゃったね。
「お二人方、コード:Gがまた物陰に‼︎」
「さっきからその呼び方気に入ってるの⁉︎ ……まあいいか、カッコいいから」
いいのかよ。
「そ、それよりもシャミ子、Gちゃんの夢に潜って暗示をかけて動かせないの⁉︎」
「一旦熟睡しないと無理です」
「今すぐそこで横になれぃ‼︎」
「そもそもゴキ助の方も寝ないといけないから、少なくとも今この状況で寝ても意味ないと思うぞ」
「さらっと呼び方変えてないかしら?」
ってか、はよ寝ろとかどんなハラスメントだよ。社員の睡眠時間を考えないブラック企業と比べたら数段マシかもだけど。
あっ、ちなみに俺は前世ではブラック企業には働いてないぞ。ブラック企業なんて警察とかにバレて潰れてしまえばいいんだよ……いや、今はブラック企業は全くの無関係だったな、すまん。
「……ねぇ」
ん? ………………あっ。
「さっきからず~〜〜っっっとミカンの呪いが発動してるんだけど……」
「桃⁉︎」
いっけね、ぶっちゃけ忘れていたわ。俺達がこんな事してる間に呪いが発動してたんだったわ。しかも一回を除いて俺と優子にはかかってなかったから、ちぃーっともその事での違和感を感じてなかったわ。
桃……マジで気づかなくてごめん。
「水道管は破裂するし、ドブ板に穴開くし、柘榴が炊いた私の米が炊飯器開いたのと同時に飛び出してくるし、おかしいと思ったんだ」
「貴方、柘榴さんに米を炊かせてるの?」
「ぶっちゃけ優子にやってもらってるものだと思ったぞ」
ん? もしかして柘榴さん、連日で桃の部屋に泊まりに行ったのか? それとも米を炊くためだけのために桃のところに毎日行ってるのか? 聖人か? 聖人なのかあの人?
「その件について深く追求すると闇堕ちするからやめて」
「あっズルい‼︎ この子ズルいわ‼︎」
うわ、自分の心境の変化に似たことを盾・人質にした奴は初めてだな……まぁ実際に人を盾にされるよりはマシなんだけどね。
ちなみに桃も虫は苦手だとか言ってきた。足がある系がちょっと苦手らしく、その虫を見ると胸がザワついてフレッシュピーチハートシャワーしそうになるとか……
あぁそっか。優子が桃の夢の中でムキムキのメタ子から逃れるために、ゴキブリみたいな体勢になる腕・脚のごせん像のリリスさんを創造したんだっけか。その時の記憶がまだ残っていたのか……
「この廃虚風の小粋なアパートに住んでる以上、虫は避けられない」
「あぁ?」
「廃墟?」
今、聞き捨てならないこと言ったな? 言ったなテメェ? 廃墟? 廃墟だと? ここを舐めとんのか?
「このアパートの事を廃墟と言いやがって……そんなに気に入らないのならここから出て行けやこの野郎‼︎」
「えっ。あっ……ご、ごめん。別にここを貶そうとするために言ったわけじゃないから……言葉を間違えただけだから……本当にごめん……」
「白哉さん……怒る気持ちは分からなくもないですけど、その反応はさすがに怖いですよ……?」
「な、なんか白哉が怖い大家みたいになった気がするのだけど……」
あっ、ヤベッ。本心混じりになったせいでさすがに怒り過ぎたな……ちょっと申し訳ないなこの反応するのは。
「いや、その……正直すまんかった」
「う、うん。私も次から言い方には気をつけるよ」
ホッ。なんとか許してくれたみたいだ。よかった……堪忍袋の緒が切れるのはよくないことだからな、また大袈裟にキレないようにしておこう。
「は、話を戻すけど……このままだとよろしくないから『虫除けの結界』を作ろう。シャミ子の家に貼ってある『魔法少女除けの結界』。あれの簡易版」
「なんか、魔法少女を虫扱いしているようでヤダな……」
「……姉がそう名付けただけだから。これは私は悪くない」
いや、別にお前の事を悪く言ってるわけじゃないんだけどな……
「複雑で頑丈な結界は、センスと努力がないと作れないけど……簡単なのなら姉から教わってるから」
「まぁ、あの時まで優子の部屋のドアに貼られていた結界が簡単に出来ていたら、魔族が魔法少女に襲われるというリスクがなかったのかもしれないけどな」
それをこの町の魔族の為に、たくさん努力してたくさん作ってくれた桜さんには感謝しかねェよ。ホント、マジでありがとう桜さん。
「ミカン、いらないチラシとかある?」
「あったけど、全部ちっさい箱になってるわ」
「え、なんで?」
「みかんやデコポンやいよかんやポンダリンやバンペイユを連続で食べても、その都度ゴミを捨てに行かなくていいのよ」
「………………ミカン。お前、柑橘類込みのしか食べられない呪いも受けてんのか? お前の中にいる悪魔ってえらい偏食さんだな」
「えっ⁉︎ そんなんじゃないわよ‼︎ ただ私が柑橘類好きなだけ‼︎」
好きというには、毎日柑橘類を食すのはさすがに異常だぞ。ニコチン中毒ならぬ柑橘中毒か? ってか、よく考えたらポンダリンとバンペイユって何? 知らない柑橘類ですね。
まあそれは置いといて。
ゴキ右衛門をミカンの部屋から追い払うための結界作り、ようやく開始だ。とはいっても、製図みたいにルールに則って正しい作図をする……つまり結界は漫画を描くみたいに構図しろってことらしい、ってなわけ。ゴム掛けとかベタ塗りとか、漫画家による専門用語を俺や優子に言ってきたしな。
で、なんやかんや準備とかして三時間後。思ったよりも結構時間がかかるんだな結界作りって。しかも簡易版で三時間経過やぞ? やばたにえん。
………………んー……真ん中に『G』って文字が書かれている魔法陣みたいな模様、か……なんか、魔法陣にしては地味な気がする。簡易版のってこんなに地味なもんなのか?
「シャミ子、完成した図面に魔力を吹き込んで」
「えっ、私が⁉︎」
「武器で触れながら何となく念じてくれればいいから」
指示が曖昧だなオイ。そんなんじゃちょっとした意外なミスで、失敗どころか取り返しのつかないことが起きるかもしれないんだぞ? もうちょっと説明を取り入れてくれないと困るんだよ俺達も。
まぁそんな曖昧な説明を気にする者は俺以外に誰もおらず、優子が渋々となんとかの杖に魔力を込め、結界を一突き‼︎
するとまぁ、なんということでしょう。描かれた魔法陣が淡い色の光を放っているではありませんか。こんだけで虫除け結界が完成して起動するとか……いや起動の仕方があっさりすぎじゃね? 簡易版だからかもしれないとはいえ、漫画みたいに描いた苦労はなんだったんだよ。
何はともあれ、その完成したのを玄関に貼ればしばらくの間虫が来なくなるとの事なので、早速ミカンの玄関のドアに貼って終了・解散って感じになった。結界を作ってる間、ゴッキブーリの事をナチュラルに忘れてしまったから、こんなあっさりした流れで良かったのか……? わからん。
「そういえば……『しばらくの間』ってことは、あの結界はいつか効き目が消えちゃうんですか?」
「効果時間は吹き込んだ魔力の質に比例する」
「魔力の、質」
よくなかったわ。念じる魔力にも問題があったわ。いや、別に優子の事を批判してるわけじゃないからな? 桃がどうして優子に魔力を注がせたんだって思っていただけだからな? なっ?
「いにゃあああああああああまた出たーーーーーー‼︎」
あっ(察し)。
「半日も持たないか……」
「魔力の質……」
「あー……これさ、たくさんの魔力を入れればもっと長持ち出来たんじゃね? それか二人以上の魔力を念じるとか」
「結界にも魔力を蓄える量が限られているから、一定の量しか入らない」
「量じゃなくて質の方が重要な理由がわかった気がするわ」
「量じゃなくて質……」
♢
ってなわけで、新しく作った(というかコピー印刷した)結界に俺が魔力を注入し、それをミカンの部屋に貼り付けたわけなのだが……
「だりゃー‼︎」
「はい次の紙」
「とりゃー‼︎」
「はい次の紙」
「おりゃー‼︎」
「はい次」
「へにゃー‼︎」
「はい次」
優子が額に湿布を貼りながら、桃に渡された結界の紙に連続で魔力を吹き込んでいた。何これ?(ゴロ○風)
「新しい結界あと十枚」
「わんこそばか‼︎ 謎の疲労がすごいです‼︎」
「わんこそばというか、締め切りに追われる漫画家かコミケ前の人か何かかよ」
コミケレポートの漫画でもそういった場面あったな。実際こんな感じになってたんかみんな?
「……っていうかなんで私だけ⁉︎ 先程一枚だけ自主的にやってくれた白哉さんならまだしも、桃もミカンさんも手伝えばよろしかろう‼︎」
「私も手伝いたいんだけど……」
「魔力出せば出すほど慣れてくるから、シャミ子にはいい修行なんだよ」
まぁ、確かにいざという時に魔力を使うことに慣れれば困り事は少なくなるけども。だけどさぁ……
「それ、俺にも当て嵌まるくね? 俺も魔力を使えるようになってから浅いから、修行を受けないわけにもいかないし……」
「白哉くんの場合は様々な種類の魔力がお互いを複雑ながらも共有し合っていて、質の高い魔力を作るのも容易い体質みたいだからなんの問題もないよ。その証拠として、泉の時にセイクリッド・ランスとやらを難なく使いこなせていたじゃん」
「いや、アレはほとんど脳死で槍振るって技名叫んでいただけのようなものだから……」
「私よりも魔力の扱いに慣れている白哉さん……カッコいいけど嫉妬しちゃいます……」
「人の話聞けよ」
ぶっちゃけ魔力なんて神様から受け取ったもので、それを俺の体内にいる誰かに操作してもらっているのを俺が感覚で補助してるようなものだから、いざという時のために自力で使いたいんだよなぁ。だからこういうのもしたいんだけど……
「……やらせてあげたら? 白哉もそんな目をしているみたいだし、彼自身もやっておいて損はないと思うわ。それにもしも白哉の魔力がこれまで通りに扱えなくなった時のこともあるし……」
ふぉぉぉっ⁉︎ さ、察してくれた‼︎ ミカンの奴が俺の気持ちを察してくれた‼︎ そして代わりに代弁してくれた‼︎ 言うべきかどうかを何故か迷っちまったから助かったー‼︎
「そ、そっか……わかった。じゃあ白哉くんには、試しにシャミ子の二倍もある枚数の結界に魔力を吹き込んでもらおうかな。で、余裕がありそうなら倍率を増やしていくから」
「おっしゃあ‼︎ これで魔力の扱いを上達させてやるァッ‼︎ どんとこいやぁ‼︎」
「うわっ、すごい気合い入ってる」
オイ、なんでちょっと引き気味な顔になってんだよ。しばくぞコラ。
「………………よし決めたッ‼︎ こうなったら私もやってやりますよー‼︎ 闇の女帝として、白哉さんの恋人として恥ずかしくないまぞくになるためにも、こんなところで根を上げるわけにはいきません‼︎ やれるところまでやってやりゃー‼︎」
「あっ、なんかすまん。空元気で取り組むのはやめてくれんか? 無茶すんなよ? 倒れたら困るから。いやマジで」
なんか俺に感化したからなのか、無理に優子のやる気をアップさせてしまったけど……いいのか? これ。
この後、八百五十八枚以上(ここから数えるのをやめてた)もの結界に魔力を吹き込み終えた時には、優子が二百何枚以上の結界に魔力を吹き込み終えて寝落ちしていました。ほら、言わんこっちゃない……
おまけ:台本形式のほそく話その22
白哉「───ってなことがあったわけ」
全蔵「平地くん……何故それを俺に話したッスか? さすがの俺でも売られた喧嘩は買うッスよ?」
白哉「いや、すまん。お前がゴキブリ嫌いなのは分かってるから……」
全蔵「分かった上でッスか……?」
白哉「嫌味とかじゃねェからッ‼︎ 話を最後まで聞いてくれッ‼︎」
「まぁ、俺達はさっき言った通りの対策でゴキブリを追い出すことにしたわけだが……全蔵はゴキブリ対策とかしてるかな? なんて……」
全蔵「あぁ、そういう……俺はゴキブリホイホイを色んな場所に設置してるッスよ。それも計十個以上」
白哉「十個以上⁉︎ ゴキブリ絶対逃がさない主婦かよ……」
全蔵「それとゴキブリ用の罠ッスね。ギロチンとか仕掛けのクナイとか、色々なのを家の中のあちこちに……」
白哉「えぇ………………重度のゴキブリ嫌いってことか……」
「というかクナイって本物のヤツ? そもそも買えたのか……?」
全蔵「ぶっちゃけゴキブリに対して本気になりすぎたかなって思ったッスけど、おかげで大量のゴキブリの駆除に成功したので結果オーライだったッス」
「あとその罠のおかげなのか、スズメバチの大群までも大量に駆除できたッス」
白哉「一体どんな罠を仕掛けたんだよお前⁉︎」
僕の一番嫌いな虫は蜂ですね。スズメバチのせいでそうじゃない蜂も怖くなっちゃって……