偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語 作:名無しのモンスター
今回はあのキャラが力を振いますよ〜。
ミカンの部屋に侵入してきたゴキ松ブリ之助……あっ、今近くにミカンがいないからもうゴキブリの呼び名を変えなくてもいっか。あの家庭の昆虫除けの為の結界を作った翌日のことだ。
俺は昨日は優子との夜のお楽しみをしていないから一人で寝ていて、目覚まし時計の鳴る音……ではなく、メェール君が作った朝飯のいい匂い……でもなく、外から漂うポカポカお日様の匂いで目を覚ました。
ポカポカと心までも温かくしてくれているこの匂いの正体は一体何なのだろうかと、着替えもせずそのまま俺は玄関のドアを開いた。と同時に桃も玄関のドアを開けて出て来た。どうやら外で誰が何をしているのかが気になっていたようだ。
で、ふと左方面をチラリと見ると、そこには三枚の布団が竹の竿によって並んで干されていた。誰か竹の竿なんて持っていたっけ? って一瞬思ってたけど、よく見たら並んで干されている布団を見て幸せを噛み締めているかのような微笑みを浮かべている吉田一家の姿が。
どうやらあの竹の竿の正体、あれ優子のなんとかの杖を変形させたもののようだ。あれのおかげで、これまで一気に家族全員分干すのが難しかった布団を簡単に干せるようになったってわけらしい。
生活が楽になることは喜ばしいことだ。喜ばしいこと……なんだがなぁ……
「あっ、白哉さん‼︎ 桃‼︎ おはようございます‼︎ 白哉さん、今日は起きるのが遅かったみたいですね」
「あぁ、まぁな。それよりもお前、なんとかの杖を日常でも使っていくのか……」
「これまで出来なかったことができる上に、なんとかの杖を色々と活用させていくことができますからね‼︎ 一石二鳥ですよ‼︎ えっへん‼︎ あっ、二人のタオルケットも干すのでよろしければ」
「もっとまともな杖の使い道を考えて」
奇遇だな(んなわけないけど)、俺も同じ事を考えてたぜ。なんとかの杖は本来魔族に代々受け継がれし武器なんだから、もっと変形させるべきものとかあるじゃんかよ。なんでよりによって竹の竿なんだよ……便利だけどね。
まぁなんだかんだ結局タオルケットを出すことにした俺達。なんとかの杖だから長さを変えられるの便利だよな……使い方が使い方だが。
「桃っていい香りがしますよね、フルーツの桃の香りが」
「本人の前で嗅ぐなお前」
「それは私のエーテル体の波動をシャミ子がそう認識───じゃない‼︎ 今そこはいいから‼︎」
「あっ、白哉さんのも結構いい香りが………………スゥーハァースゥーハァースゥーハァースゥーハァー……」
「嗅ぎすぎ嗅ぎすぎッ‼︎ 興奮のしすぎで荒い呼吸を白哉くんのタオルケットに当て過ぎてるよッ⁉︎」
こ、こいつ……すぐ近くに人というかそのシーツの持ち主がいるというのに、遠慮とか見境とか、そんな細かいことを考えずにそんな高度なプレイを……‼︎
で、桃に焦りのある指摘(というかツッコミ)で自分が今していたことに気づいた優子は顔を真っ赤にし、シーツの中に顔を埋めた。何どさくさに紛れてまた高度なプレイしてんねん。
「す、すみません……これの下で抱き合ったことを思い出していたら、つい……」
「それを本人どころか人前で堂々と言えるのもある意味スゲェことなんだけど……」
ってか、まだ荒い興奮の呼吸をしてるんだけどこの子。どんだけ俺とセッッッした時の記憶を鮮烈に刻み込ませていたんだよ。めっちゃ恥ずかしいんだけどこっちも。
「ハァ……話は変わるけど、その杖はシャミ子を守る大事なものなんだよ。もう少し運用方法を考えて」
「運用……」
桃のアドバイスを聞いて何を思ったのか、優子は竹の竿になっていたなんとかの杖を別のものに変形させた。そして変形先は……『桃ちゃん やみおちして』と書かれてある黒いうちわだった。
「何それ」
「アイドルうちわ……」
「直ちに元に戻して……っていうかうちわは棒じゃない‼︎」
「なんとなく棒じゃないですか⁉︎」
「まぁ、前に泉にて変形させたというボウガンよりかは棒に近いんじゃないのか?」
だってほら、ボウガンなんて棒の部分が中にある棒状の槍か何かなだけであって、実際にそのまま見えるものじゃないから……
ん? よく見たそのうちわ、裏側にも何か書いてあるように見えるんだが……。ま、どうせそっちにも『桃ちゃんやみおちして』って書いてあるだろうけど───
『白哉さん♡♡ 私と○○○して♡♡♡』
ゑ?
「なんつーことをそれの裏に書いてんだよ⁉︎ 今すぐ元のなんとかの杖に戻せ‼︎」
「ぴゅありぃえぇっ⁉︎」
なんか今、なんかのカードゲームのカテゴリーテーマの一つみたいな悲鳴が聞こえたような気が……
「………………み、見せようとしなければ見られないかもと思って……つい、出来心で……」
「どんな出来心だよ⁉︎ 見られて恥ずかしいものは見られないだろうなとは思っても作るもんじゃねェぞ⁉︎」
「ご、ごめんなさい……どうしても自慢したくって、つい……あっ、でも元々私は白哉さんのもので白哉さんも私のものなので、こんなの作って見られても問題ないかと……」
「お前が大丈夫でも俺が困るわァッ‼︎」
躊躇いがありそうで無さそうな一面もあるから、これも実質ヤンデレ成分を出してんのか⁉︎ とりあえずその文を何かに刻ませるの禁止‼︎ 恋人であるこの俺が許さん‼︎ 限度ってもんを考えなさい‼︎
♢
優子のなんとかの杖の使い方がアレだったってことで、俺の部屋にてそれに関する会議をすることに。
ちなみに良子ちゃんもこの場にいます。何故かって? アイデア力で優子の力になりたいからなのと、ウチのメェール君とまた話せる機会を作りたかったからだそうだ。アイツとまともにおしゃべりし合ったの、引っ越しすき焼き以来だったしな。分からなくもない。
で、本題がこれ。
「まず『棒状のものに変形』っていう機能がフワッとしすぎだよ。作れるものの範囲広くない?」
「範囲が広いことはいいことなんだけどなぁ。状況に応じて様々なものに変形できるし。ま、とはいっても所有者の発想力と応用力次第っていう課題があるけど」
「ウッ……た、たしかに上手く強い武器を作れたのはミカンさんの武器コピーモードぐらいですし、デカい武器を作っても持てなかったですし……」
「いや、別に優子の事を貶してるわけじゃないぞ? あくまで一例みたいなのを挙げてたってだけでな……」
というか、なんか自虐しだしたんだけど俺の恋人。魔族になってからまだ三ヶ月だからってのもあるんだから、そう自分を卑下するのはやめてくれないもんかねぇ……
ちなみにこの後良子ちゃんが辞典で調べながら棒の意味を説明したら、うちわは厳密には棒ではないことがわかった途端に元の杖に戻ってしまった。本人が疑問に思ったものには変形できないようになっているらしいため、『持つ部分が棒であるから実際棒でもあるんじゃね?』って説いたら戻ったようだ。
もう棒の部分があるもの全部変形できるようにすれば最強じゃね? あとでそういったゲームとかであるものを優子に教えようかな。
【お茶とお菓子持ってきたメェ〜。……あっ、せっかくだから一つ聞いていいメェ〜か? シャミ子ちゃんは自分の夢の中で記憶を掘り起こそうとしていた時、何でも倒せる『ズルい武器』を作れていたって聞いたメェ〜。それってもしかして、現実には実在しなかったものを作れるメェ〜か? 例えばホラ、はるか昔から偽られていた架空のものとか】
あっ、メェール君……それ、俺も似たようなことを考えてたんだけど。ってかそれって、リリスさんの台詞をパクってることになってね?
「み、見たい‼︎ 倚天剣‼︎ グングニル‼︎ 天沼矛‼︎」
「えっ、えっ? 何ですかそれ」
「すんごい食いつきしてんな。まぁ小学生ならそういったゲームに出てきそうなのに興味を持ったり憧れたりするものだから、分からなくもないけどな」
その後すぐに良子ちゃんが自分が述べた武器がどんなものなのかを早口かつ流暢に説明してきたため、優子が思わず引き気味になってしまった。まぁ……良子ちゃんには悪いけど、俺も思わず引いてしまったよ。俺と桃の事を打ち明かした時の反応よりはマシではあると思うけど……
ってか、今気づいたけど良子ちゃんってもしかしてファンタジーオタクなの? もしかしてFG○か? FG○の記事が書いてある雑誌とかでも見てたのか?
まぁそんなことを原作キャラ達が触れてくれなかったわけで。
んで、何を思ったのか桃が『成層圏を突破できるか確かめたいから全長三十キロメートルもの棒を作ってみて』と優子にお願いしてきた。如意棒かな? というか三十キロメートルのものを持って支えられるか? 桃でもそれは難しいとは思うぞ? 戦闘民族である悟○やベ○ータでも難しそうだし……
とりあえず試しにやってみた優子であったが……変形させることすら出来なかったようだ。そもそもそんなの誰も想像しにくいと思うんだが……
今度は『片割れを売ってから変身を解くとどうなるか試したいから純金の割り箸を作ってみて』というお願いが。錬金術かよ。発想がエグい。お前最早闇堕ちしてね? しかも片割れを売ってから変身を解くとどうなるか試したいって……なんとかの杖が半分になってしまうかもしれなくねそれ?
とは思ったものの、そもそも優子は純金がどんなものなのかも見てすらいなかったため、普通の割り箸しか作れなかったようだ。ってかそもそも純金の割り箸ってなんだよ。純金の箸ならともかく割り箸の方は誰も見てないどころか作れなくね?
『恐らくシャミ子自身が無意識にストッパーをかけているな。無茶を現実にするための魔力も足りてない』
「そもそも優子にはそういった思考に至れない程の優しさがありますからね」
『優しさは関係あるのだろうか……? というかそれ、褒めているのか?』
関係あるかはぶっちゃけ知りません。勘で言ってるだけですんで。それと褒めては……いないかもしれませんね文面的に。いざという時に役に立たないかも。
『まぁ良い……シャミ子よ、お主のフィールドは夢の中! 余の封印空間で練習してみてはどうだ。夢の中でイメトレして、徐々に現実世界に持ち込めば、作りづらいものもうまくできるかもしれぬ』
「な、なるほど!」
おぉ、それは賢いですよマジで。なんだかんだリリスさんのアドバイスって毎回的確だよなぁ。
『黄金の割り箸は余もいい案だと思う』
「私それはやりませんッ‼︎」
「そもそもそういった路線では桃と気が合ってほしくなかったですね」
今気づいたことなんだが、なんだかんだリリスさんと桃は似てるところがある気がするんだよな……意外と欲深いって一面とかさ、そういうとこが。
「……みんなおはよう。そこで何をしているの?」
と、そこへあの桃を恋する乙女に変えた、外面クール内面感情豊富な大人である柘榴さんが何やらタッパーらしきもの……というよりはデカいタッパーそのものを持ってこちらにやって来た。
「あ、おはようございま……あの、柘榴さん? その大きなタッパー、一体何ですか?」
「……これ? 昨日の夕ご飯の残り。桃なら食べてくれるかなって先程思って、渡しに来た。ちなみにイタリア風肉巻き」
「あ、わざわざありがとう柘榴……」
「イ、イタリア風肉巻き……?」
な、中にチーズとかトマトとか入っている感じの肉巻き……ってことなのだろうか? というか作ったものがちょいとオシャレじゃね?イタリア風って……
「……ん? その子は?」
「あっ、俺が紹介しますね。優子の妹の良子ちゃんです。優子はこの子の事を良って呼んでます」
「あっ。良、彼は礎柘榴さん。桃の五歳上の幼馴染ですよ」
「桃さんの歳上幼馴染……‼︎ はじめまして、良子です‼︎ お姉達がお世話になってます‼︎」
「……良く出来た妹さんだ。僕は礎柘榴、説明された通り桃の……君のお姉ちゃんの眷属の幼馴染だよ。よろしく」
「待って柘榴、なんでそんな自己紹介するの?」
「……僕がどれだけ桃達の事を理解しているのかアピール」
なんすかそれ。どんなアピールなんですか。というかそのアピール、別にいらない気が……
「……で。話は変わるけど、みんな何してるの?」
ちょっと、無理矢理話題変えないでくれません? っていう刹那の怒りを覚えたものの、聞かせておいて損はないなと思い、柘榴さんにも優子のなんとかの杖の事を説明してあげることにした。そしたら柘榴さんは顎に手を当てながら何やら考え事をしているかのような様子を見せ、わずか五秒で口を開いた。
「……事情は概ね理解した。それじゃあ、見学することってできない?」
『あぁ……残念だが無理だな。このメンバーの中でシャミ子の夢の中に呼び寄せられるのは良と白哉、そして白哉の召喚獣だけだからな』
「「……えっ?」」
リリスさんからの衝撃の(だったらしい)一言がある意味で突き刺さったのか、桃と柘榴さんは思わず目を丸くしてしまった。まぁ、そりゃそんな反応をするでしょうな。
「えっ……? 良もお姉の夢の中に行けるの?」
『うむ、シャミ子の血縁なら呼び出せるはずだ。良も行ってみるか?』
「行く‼︎ お姉が数万の軍勢相手に伝説の武器を振り回す姿、見学する‼︎」
「あんまりハードル上げないで⁉︎」
アーララ。良子ちゃん、優子の夢の中に行けると知って興奮度が上昇してんなー。そしてまた勝手に姉の株を上げようとして……ま、それが姉に対する愛なのだろうけど。
「あの……リリスさん? 柘榴がいけないのはわかるけど、私も行けないんですか? 一時的とはいえ眷属になったのに……?」
『血縁者ではないし、眷属といっても悠久の方でもないからな。なにしろ悠久の眷属になれるのは一人のみだ』
「……じゃあ桃も行けないか。残念だったね」
「………………よりチケ」
『像から手が生えるほど欲しいが物理的に無理なのだ‼︎ 闇堕ちして出直してこい‼︎』
あぁ……行きたかったんだな。優子の夢の中に行ってみたかったんだな。優子が特訓してるとこ見たかったんだな。けど行けなくて悔しかったんだな。まぁその……ドンマイ。闇堕ちしても大丈夫な状態になれることを待とうぜ。
………………ん? アレェ? ちょっと待って?
「リリスさん、ちょっといいですか?」
『どうした白哉よ?』
「なんで優子の夢の中に俺も、そして俺の呼び出せる召喚獣達も行けるようになるんですか? 俺は優子との血縁はないですよ?」
『お主は白龍と夢の中で話せるだろう? どうやらその能力が余の一族の夢魔の力とリンクできるようになってな……。ま、どっちみちお主はシャミ子と悠久を共にするパートナーになるための契りを交わしたのだ、実質お主も血縁者となり、夢魔の力を手にし、良子みたいにシャミ子の夢の中へと呼んでもらえるぞ』
「えぇ……なんですかそのガバガバ判定は。じゃあ召喚獣達は?」
『なんか……夢の中でも召喚されそうな感じがしてな』
「フワッとしてる‼︎ 確定要素がないし根本がフワッとしてる‼︎」
俺が婿みたいなサイドの眷属になったから、それで優子達吉田家の血縁者みたいな感じになれたってわけなのはちょっとわかったけど……召喚獣が夢の中でも呼び出せる理由がやっぱり曖昧すぎる……
【それだけじゃねーでぃ】
「うわあっ⁉︎ 白龍様突然出てこないでくれませんか⁉︎ ってかまた許可無しに……」
【いや昨日から小倉の実験に付き合わされたんだぞいっ】
あ、そうだった。昨日突然小倉さんが白龍様の鱗がほしいとかなんとか言ってきて、白龍様に来てほしいと頼んできたんだっけ。そして白龍様はノリノリでついて行ったんだった。やべぇ、忘れていたわ……
というか、なんでこの人(?)突然出て来たんだ? 最近出て来ることがあまりなかったとはいえ、いきなり出て来るとか、どういう風の吹き回しだ……?
【はい、ここで内緒にしてたことを明かしまーす】
は?
【実は俺と白哉、精神を通して二回ぐらい白哉の夢の世界で直接話し合いをしてましたー。しかも召喚獣達も白哉の夢の中に入ることができるんだ。つ〜ま〜り〜……夢の中で意識を持てるようになった白哉なら、たとえ眷属になる前でもぉ? シャミ子の夢の世界に飽き足らず、誰かの夢の世界で俺達を呼び出すことができるってわけ】
「「「「『は、はぇ〜……」」」」』
「……ふーん」
そ、そうだったのか……。まさか精神世界で白龍様と会話できた事が、召喚獣を夢の世界でも呼び寄せることのできる発端に繋げられるとは……恐れ入ったわ。俺、知らぬ内にそんな能力もゲットできたのか……
【あっ。けど他人を精神を通して一度白哉の夢の世界に赴かせ、そこから他人の夢の中に送ることは無理だけど。ちなみに白哉がシャミ子の眷属になるまでは誰かを白哉の夢の世界に送れること自体も無理だで】
あっ、やっぱり限度もあるんだな。そうじゃなきゃ『白哉と白龍に頼めば毎回誰かの夢の中に侵入できる』って考えてしまう身内が出てしまうもんな。優子の夢魔の力を擬似的に使えるとみんな勘違いしそうだしな、うん。
【ま、先程供述したけど白哉の夢の世界に行くだけならOKだぞ。ま、もちろん本人と俺の許可がいるけどな】
いや当たり前でしょ。本人の許可無しに夢の中に潜られるのは、こちらのプライバシー云々に関わることですから。
「……あっ、それなら」
ん?
「……白哉君。もしよかったら、君の夢の世界で僕と模擬戦しない?」
「へっ? 模擬……戦?」
「……うん。泉で君が使い魔と戦ってるのを見てから気になってた。君がどれだけ強いのか、持ってる魔法はどれくらいあって、どれほど強いのかって」
えっと……これって……もしかしてアレか? 俺の事をチートな槍使いとか何かかと思ってらっしゃる? いや……槍の使い方とかは記憶に刻まれてますけど、変な期待するはのやめてくれません?
「あぁ、確かに私も気になるかも。白龍様、私も見学できますか?」
【もちろんもちろんモチの論】
「くだらなっ」
おい桃、お前まで何余計な期待を持ち始めてんだ。それとも何か? 久々の柘榴さんの戦闘シーンが見たいだけだってか? 俺は実験台か何かか?
【で、白哉はどうすん?】
いやどうするって言われましてもね……。柘榴さんが言ったどんな能力を持ってるか気になりはしますけど、なんだか乗り気じゃないというか……ん?
「「ジィー〜……」」
「「『ジィー〜……」」』
【ジィーラァーチィー〜……】
ちょっ、待っ、えぇっ……? なんでみんなして俺の事をジッと見つめてくるんだ……? しかもよく聞いたり見たりしたら優子に良子ちゃん、リリスさんまで……あと白龍様、ポケ○ンの名前を使ってのダジャレはやめてくれませんかね? 腹立つんですが。
むぬぅぅぅ……まさか全員に賛成意見を期待されるとは……これは断るにも断れないじゃねェかチクショウ……
「ハァ……わかりました。柘榴さん、お手柔らかによろしくお願いしますね」
「……ん、よろしく。……よっしゃ」
小さくガッツポーズしてんなこの人。お茶目な一面もあるんだなこの人。……おもしれー人。
「あっ。でもその代わり……優子、お前もきちんと良い戦績を入れておけよ」
「えっ。あっ、は、はい……す、すごいプレッシャーが……」
そりゃあこちらも圧をかけられたのだからな、それ相応の事をこちらもしないとこちらも無粋ってもんだぜ……多分そう。きっとそうだ。
♢
なんやかんやあって、誤って俺が優子の夢の世界に入ってしまうミスを避けるべく、自分の部屋にて桃と柘榴さんと一緒にめっちゃ早い就寝に入った俺は、目が覚めた時にはチェス盤のような白黒の市松模様の場所に立っていた。こういった場所は俺の夢の中の世界となっており、ここで白龍様と直接話し合いをしている。
だが、今回はいつもとは状況が違う。何故なら……
「ここが白哉くんの夢の世界? なんだか『このす○』感があるね」
「ぶっちゃけ俺もそう思っている」
「……異世界アニメの振り返り、したくなった」
先程の白龍様の供述通りなのか、マジで桃と柘榴さんが俺の夢の世界に来れたからだ。
本当に呼び出せるんだな、寝てる人の意思をここに。しかもリリスさんみたいに血縁者しか呼べないってわけでもない、と……アレ? ひょっとしてこの能力、リリスさんのよりも優秀なのでは? それに気づいたリリスさん、きっと涙目だろうな……(汗)
【おーう、全員集まったな】
「うおうっ⁉︎ いきなりテレポートしたみたいな感じに出て来ないでくれません⁉︎」
「うわっ白龍さんでかっ」
「……ちゃんとスケッチブック無しで喋れてる」
お久しぶりぶりぶり大根ですね、本来のサイズの方でお会いするのは。
【お久しブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブリ大根ですわ!!!!!!】
「「ブフォウゥッ⁉︎」」
「……ウッ、ウプッ……」
おま、心の中を読まれて実際に言ってくるかもしれないことを考えて、敢えて元ネタの方でふざけた挨拶をしたってのに、ネタを勝手に引っ張り出してきて俺達を笑わせに来やがって……‼︎ あ、いや、こんな事を考えてしまったこちらにも分はあったけどさ……
【早速だが白哉と柘榴、お前らは模擬戦をやるんだったよな? 今からそれをもう始めてもらうからな】
「えっ、いきなり始めさせるんですか?」
【おう。だっていつお前らの肉体が起きるか分からないだろ? だったら早めに始めておくに越したことないぜ?】
まぁ、一理ありますね。肉体ってのは中々自発的に起きることができないことが多いですしね。目覚まし時計とかが必要な時が多いし……とはいっても、個人的解釈ですけどね。
「……まぁ、時間がないのかもしれないのなら仕方ない。早速準備するね」
そう言った途端、一瞬にして柘榴さんの周りが緑色の光に包まれた。その光が収まった時には……予想していた通り、柘榴さんの姿はガラリと変わっていた。
顔には白黒のドミノマスクを着けており、服装はマグル的な青色のネクタイ、灰色のロングシャツ、藍色のスラックス、シャツの上に足の甲に付きそうなほど長い黒ローブを羽織っていた。
……何これ? 素顔を隠しているハ○ー・ポッ○ーのホグ○ーツ魔法魔術学園の学生か何かなのかな? というか女装でも女体化するわけでもなく、きちんと男の魔法使いであることを主張しているかのような衣装なのか……
なんだか変な印象をされないという意思が感じられて、なんだか優しく思えるな。仮面を着けているという違和感は感じるけど。いやホント、何これ?
「久しぶりだね、柘榴の変身した時の姿。シンプルに男性の魔法使いらしさが出て………………その……か、カッコいい……」
はいはいノロケノロケ。顔を真っ赤にして外面は照れ顔演技中の金欠ベーシスト、内面は大抵のマジ照れ中の少女漫画の女性キャラモードって感じになっているじゃないですかヤダー。付き合う前の俺と優子に対して『はよ付き合え』とかお節介に煽ってた癖に、自身の恋に弱いとかどんなキャラだよホント。
「おっと、さっさと変身しないとな。我が名は召喚師・白哉───‼︎ からの解放せよ、セイクリッド・ランス‼︎」
このまま柘榴さんを待たせても、夢の中とはいえ彼の魔力とコア的にアレだと思うので、こちらも戦闘態勢に入ることに。もちろん即座にセイクリッド・ランスを解放させて構えてます。柘榴さんがどれほど強いかわからないし、警戒とかするでしょうが。
「準備できたね。それじゃあ……」
すると柘榴さんが右手を真っ黒な天井(?)に掲げる。そしたらその手どころか半身を完全に覆い尽くすようにまたもや光が発生する。そして、その光が収まった時には……
黄緑色のちょい太めで頑丈そうな鎖が付いた、深緑色のトゲトゲ付きのドデカい鉄球──チェーンアレイの鎖が、柘榴さんの両手に握られていた。
………………いや、あのさぁ……
「始めようか」
「衣装に似合わない武器を出すのやめてくれません⁉︎」
なんでだよ⁉︎ なんでハ○ー・ポッ○ー衣装になった癖に武器が魔法の杖じゃなくて、脳筋系どころか魔法関係ない方の武器なんだよ⁉︎ 貴方魔法使いの概念とかをどう捉えているんですか⁉︎
……いや、ちょっと待てよ。逆によく考えてみろ平地白哉。桃は魔法少女の癖にならなくても、異常な筋力で色々と解決してる感じがする。ハートフルモーフィングステッキを持ってるからちゃんとした魔法も使えそうな彼女みたいに二刀流な感じに戦えるかもしれない。
つまりはどういうことか? 柘榴さんの武器はあのチェーンアレイだけではない可能性があるってことだ。いや寧ろそうであってほしい。そうであってくれ。そうであってくれないと、なんで柘榴さんはあの衣装になったんだって思ってしまうから……
ここは敢えて本人に聞かず、桃に聞いてみるとするか。
「なぁ、桃……?」
「ん? 何?」
「柘榴さんの武器ってさ……あのチェーンアレイの他に何かあるのか? 例えば、ホラ……ファンタジーRPGや物語みたいに杖を持ったりして……みたいな?」
さぁどうなる……どうなる……どうなる⁉︎(ここはどうなんだって言うところだったわ)
「えっ? あぁ……
普通にあのチェーンアレイだけなんだ、柘榴の使う武器。ちなみに名前はギャップマジカルチェーンアレイ」
「俺の期待は無駄でしたッ‼︎」
「……危なかった」
と、叫びながらセイクリッド・ランスを柘榴さんに突きつけ始める俺。色々と最低なの、俺だったわ……。ま、これは柘榴さんが冷静に鉄球を前方に出して、セイクリッド・ランスを弾いて防いだんですけどね。
というか、ギャップマジカルチェーンアレイって何ッ⁉︎ 狙って名付けたのか⁉︎ 柘榴さんが自分の衣装に似合わない武器を敢えて選んだことをきっかけに、『これを持つとギャップを感じるよね?』と質問しているような感じか⁉︎ アァッ⁉︎ どうなんですかァッ⁉︎
ん? なんか亀の甲羅の模様みたいなのが透明に浮かび上がって……
「……離れなよ、飛ぶよ」
って聞こえたのと同時に、その模様は俺を押し返した。なんとかくるりと回って着地したのはいいが……驚いた。アレはバネみたいに敵を押し出す光の障壁だったのか。
しかもチェーンアレイから出てきた感じだったということは、あの武器を中心に魔法も出せると……チクショウ、柘榴さんも桃みたいに脳筋で戦うのかと思ったぞ……
「私も力のゴリ押しで戦うわけじゃないからね」
あっすいません、聞いていらしたのですね。お前の事も柘榴さんの事も脳筋だと思ってマジですいませんでした。
「……ほら、次いくよ」
「えっ?」
あの……その場でチェーンアレイを天井に向けながらブンブンと振り回すとか何を考えているんですか? というかよく見たら周りにないはずの木の葉がたくさん集まって来ているんですが……
って、うおっ⁉︎ た、竜巻が……チェーンアレイを中心に竜巻が発生しているんですがッ⁉︎ 何これ、ポケ○ンのリー○ストー○か何かなんですかッ⁉︎
「……フォレストハリケーン」
何そのリー○ストー○の強化版みたいなネーミングは。ってそんな事考えている場合じゃないだろ俺⁉︎ なんかあの竜巻投げてきそうな感じがするし、こうなったら……‼︎
「尋常無き寒波に凍りつけ、ブリザードタイフーン‼︎」
セイクリッド・ランスを上に掲げながらそう叫んだ途端、その槍の槍身を中心に、フォレストハリケーンと同等ぐらいのデカさを誇る竜巻が発生した。それもその周りに氷の礫が回っているため、名前通りのブリザードである。
「……3・2・1・ゴー……」
「シュート!!」
ついノリに乗ってしまったけど、なんでベイブ〇ードの掛け合いと同時に竜巻投げ飛ばしているんですか? 好きなんですか? ベイ〇レード好きなんですか?
そんな事を考えている間に竜巻と竜巻はぶつかり合っていくうちに互いにどんどん小さくなっていき、やがて完全に相殺されてしまった。
「……ガイアクエイク」
柘榴さんがチェーンアレイを地面に叩きつけた途端、そこを中心に地を砕く。その砕けた地面が急に盛り上がり、だんだんと俺に向かってくるかのように迫っていく。
そっちが攻撃してくるというのなら、こちらは……‼︎
「あわよくば弾き跳ね返せ、ラプターミラー・プレート‼︎」
破裂による反射を意味しているらしいその技。セイクリッド・ランスを地面に突きつけた瞬間に盛り上がり出てきた巨大な岩石の壁が、迫ってきて衝突した地面を破裂させ、それによって出来た塊等が一斉に柘榴さんに迫っていく。
「……大地の力には大地の力、か……面白いね」
その塊達は柘榴さんがチェーンアレイを前方に振り回したことにより、鉄球に当たった塊は全て木っ端微塵に破壊されていった。まぁ、あの程度で善戦できる相手だとは思ってないけどな。
「……今度は大技、いく」
えっ、大技? それってアレですか? 代名詞とも言える自慢の必殺技だったりしますか? というかそれ使うの早くね? もうちょっと様子を伺ってからでもよくないですか?
まぁ心の声なので当然考えを改めてくれることはなく、柘榴さんは鉄球を天に掲げ始めた。そしたらその天に、現れるはずのない黒い雲が漂ってきた。その雲が出てきたことに合わせ、柘榴さんが鉄球を振り下ろした途端……
「……トールボルテックス‼︎」
複数もの雷撃が、雲から次々と降りかかってきた。いや、何それ⁉︎ ア○ンジャー○のトー○か何かですか⁉︎ ちょっ、危なっ⁉︎ よっと‼︎ ほっと‼︎ あらよっ‼︎ そいっ‼︎ せいっ‼︎ はいっ‼︎ ……よく綺麗に躱わせているな俺⁉︎ 普通雷の落ちる場所って素だと予測できないことだぞ⁉︎
とりあえず何回も躱してみたけど、一向に雷撃が収まる気配がないな。アレが柘榴さん渾身の必殺技か。だったら……俺も渾身の必殺技で対抗してやる‼︎ 攻撃範囲が広いし、相殺するに越したことはない‼︎
そう誓った俺はセイクリッド・ランスを両手で持ち、天に掲げた。そして気を集中させる為に目を閉じ、精神を研ぎ澄ませる。
刹那。セイクリッド・ランスどころかその上空の部分全てを覆い尽くすかのような光の柱が、槍の形を作るように生成された。それが出来たことに気づいた俺は左手を離し、持ったままの右腕を後方へと下げ───
「穿て、ロンゴミアドッ‼︎」
柘榴さんに──というか降り注いでくる複数の雷撃に向けて槍を突き出した途端、光の柱は奔流となってそこへ目掛けて迫り始めた。
全てを覆い尽くさんとするその奔流が、一度に複数降り注いできた雷撃とぶつかり合った途端、突如発生した光が一瞬にして俺達を包み込み───
♢
「「「ハッ⁉︎」」」
気がついた時には俺と柘榴さん、桃の三人とも起き上がった。
「………………って、は? もう起きちまったのか俺達?」
「ど、どうなったの……? まだ起きてしまいそうな感覚はなかったはずなんだけど……」
「……いいところだったのに」
もちろんいつの間にか三人揃って起きてしまった俺達は困惑したり不満そうになったりしており、『まるで意味が分からんぞ』状態になっているわけだ。ロンゴミアドとトールボルテックスの衝突、結局どっちが制したというんだ……?
【あー、やっぱりお前らも起きてしまったか】
「は、白龍様……俺達、あの瞬間どうなってましたか?」
というかお前ら『も』ってことは、白龍様もあの激突の瞬間に起きてしまったのか。しかし何故……?
【これは……アレだな。夢の世界での限度超え、かもな】
「限度超え?」
【恐らくあのロンゴミアドとトールボルテックスとかいう技のぶつかり合い、互いのとてつもない威力の技がぶつかり合ったことによる衝撃が夢の世界で俺達を維持させる力を大きく削いでしまった……というか押し出してしまったみたいだ。別に削がれたからってもう夢の世界に赴くことが出来ないってわけじゃないが、バカデカい火力とバカデカい火力のぶつかり合いをしてしまえば強制的に現実世界へと引き戻されるという原理が働いてしまったってわけだ】
不確定要素もあると言っているみたいだが、要するに大技と大技の衝突が、ゲームのバグみたいに予想のつかない結果を生み出してしまったってわけか……取り返しのつかない結果にならなかっただけマシ……なのか? とにかくゾッとした結果だったわ……
「……つまるところ、引き分けの可能性が高かったってことだね」
まぁ……そうですね。突然現実世界に引きずり戻されてしまったので、勝敗がどうなったのか曖昧になってしまいましたしね。これは仕方ないのかも……
ん? なんか突然手を差し伸べられたんだけど……?
「……結果がどうであれ、いい技っぷりだった。誰かと戦って心から『楽しい』と思えたのは初めてだよ。またやろうね」
「えっ……あっ、はい……」
これは、一応柘榴さんに認められたって思えばいいのか? ってかまたやろうねって、いつかまた勝負を吹っ掛けるつもりですか貴方は。ま、まぁいいや。俺もセイクリッド・ランスに慣れるための経験をしてもらったし、柘榴さんが満足してくれたのならそれで良しとしとこう。
「………………ちょっと、妬けるかな」
なんか髪の毛ピンクの呟きが聞こえた気がするけど、無視だ無視。
この後なんとかの杖の使い方に慣れて起きて戻ってきた優子達と共に、リリスさんが密かに練習して封印空間内部の視覚イメージを念写したのを見ることになったものの……映った写真が心霊写真みたいな感じになってしまったため一同仰天する羽目になりました。夢に出てきそうな程の怖さだった……ホラゲーよりはマシだけど。
おまけ:台本形式のほそく話その23
『呪いの朱槍を所望するか? その心臓、貰い受ける‼︎
『邪悪なる竜は失墜し、世界は今、洛陽に至る! 撃ち落とす――
『原初を語る。天地は分かれ、無は開闢を
『束ねるは星の息吹、輝ける命の奔流。この灯りは星の希望、地を照らす生命の証。受けるが良い――
シャミ子「───ってな感じに夢の中で発動させたかったんですが、それだと丸パクリになるんじゃないかって思い、断念しました……」
白哉「出来たら出来たでスゴいしカッコいいし見たいけど、もしものためのプライバシー保護か……」
「いや、元ネタでも他の使い手が許可無くアレンジ使用しているし、ぶっちゃけギリギリセーフになるんじゃないのか?」
シャミ子「ど、どうでしょうかね……? で、でも正直
白哉「わ か る」
夢の世界ってさぁ……起きたら何を体験したか忘れちゃうよね?
それはそうと、どうやらシャミ子の中の人はFateのキャラを演じてないそうです。早く誰かを演じてくれー。