偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語 作:名無しのモンスター
ウガルルちゃん復活なるか⁉︎
「ねむ〜〜〜い‼︎ この作業……いつまで続ければいいの? 夢の中のシャミ子達は無事なのかな〜」
「これ以上何もできない俺達は信じて待つしかねぇだろ。……というか、俺が今やっている事って意味あんのか?」
ばんだ荘・ミカンの部屋にて。白哉達六人がミカンの夢の世界へと赴き使い魔・ウガルルとの邂逅をしている中、彼らのクラスメイトであるミカンと勝弥は微動だにすることも──という程ではないものの動けない状態でいた。
何故動けない状態なのか、それはミカンが半起きの状態になって夢の世界でも意識が持てるようにするために、二人の助力が必要であったからだ。
そのため二人はリリスの頼みにより、杏里は膝にミカンの後頭部を置き、勝弥は太腿にミカンの左手を置くことに。……勝弥の言う通り、彼がこのような行為をしても効果があるのかは不明だが。
夢の世界でどのような出来事が起きているのかは、現実世界でそれを知れるのは夢魔の力を持つリリスのみ。そのため彼女が夢の世界で白哉達が何を行っているのかを把握しない限り、杏里と勝弥にもその時の白哉達の状況を提供することができないのだ。
しかし、今や電波不通ならぬ夢界不通な状態となっているため(夢界不通って何だよそもそも夢界って何さ)、状況の更新の更新がない限り二人の措置が終わることはない。
時刻が時刻でもあるため、二人にも睡魔が襲ってきた……その時だった。
「う………………っは‼︎」
「うわっ起きた‼︎ おはよーシャミ子‼︎」
「今は夜だけどな‼︎ 大丈夫だったか⁉︎」
ここぞというタイミングであったのか、唐突にもシャミ子が飛び出す勢いでの起床をしたのだ。
「杏里ちゃん‼︎ 勝弥くん‼︎ 二人ともよく来てくれました‼︎ 大変ありがたい‼︎ ついでに今から新たなる命の召喚を手伝ってください‼︎」
「よっしゃ任せろ‼︎」
「頼まれたからにはやってやるぜ‼︎」
「「……じゃねぇよ‼︎」」
「意味わかんねぇし‼︎やべー事手伝わせようとしてるじゃん‼︎」
「そもそも新しい命の召喚って何だよ⁉︎ 頭の整理が追いつかねーから‼︎」
「「さすがに説明してくれよ‼︎」」
「あっはい、すみませんでした‼︎」
シャミ子が起きてきた途端、彼女からのさらなる頼み事として発せられた、新しい命の召喚。それがどれほど非常識で理解不能な言葉だったのか、さすがの二人も叫ばずにはいられなかった。
とはいっても、夢魔や魔法少女、召喚師といった者が存在すること自体も非常識ではあるが。
♢
みんなが起きたということで、俺達が寝ている時に来たゲストである杏里と勝弥を入れ、改めてウガルルの依代を作るためのプロジェクト会議をすることに。みんなで知恵を絞れー。俺は絞れそうにないが……
あっ、ちなみに念のためメェール君には回復魔法をミカンにだけ掛ける形で続けてもらうことにしている。万が一の事が起きてウガルルの魔力が消滅してしまったらたまったものじゃない。もう一度夢の世界に行って再構成させるなんて手段はもうできないのかもしれないし……
振り返ると、ウガルルは十年前の召喚が不十分だったため、不完全な状態で生まれて現実世界で安定して現界できなかったとのこと。魔法陣が小さく、模様も正しくなかったがためウガルルは上手く命令を聞き取れずにいた。その上に依代も使い魔に釣り合う耐性がなく溶けてしまったとのこと。
そしてウガルル最大の不満要素だったというのが、お供えの唐揚げ。魔力が全く無い……のは想定内だが、味も全く良くなかったとのこと。お供えは契約の挨拶で魔力の補強にも重要なものだとウガルルは言っていたようだが、唐揚げにレモンは合わない派なため腹に力が入らなかったようだ。
『使い魔っていうのはざっくり言うと、簡単なプログラムを組んだ魔力の塊に依代を与えたものなのだ。作るにもそれなりの素養と技術が必要なのだが……ヒアリングの結果、陽夏木の家はその辺が足りなかったのだな。そして、宿主ミカンの質のいい魔力で使い魔と呼べないぐらい強力で複雑な存在になってしまった』
「ミカンがウガルルちゃんを育んだのか〜。それってほぼママじゃん‼︎ 面倒みてあげないと」
「ママ」
「よっ、ミカンママー」
「コラコラ‼︎ 未成年でママになるのはお兄ちゃん許しませんよ‼︎」
「ちょっとやめて。ママはやめて。後なんで勝弥は過保護な血縁ありのお兄さん気取り?」
正直杏里の言う『ミカンがウガルルを育んだ』、これなんだか意味深な感じに聞こえたんだよなぁ……そう思いながら俺も優子達と一緒に悪ノリしたから、人の事を言えないけどね。というか勝弥の悪ノリはどっちかというと親御さんじゃね?
「───異議あり‼︎」
《えっ?》
と、このタイミングで何故か拓海が挙手しながらそう発し、険しい表情を俺達に見せてきた。これには俺達も思わず息のあった呆けた声を発する。いや、ホントなんで? なんで突然異議を申し立ててくんの? 突然どうしたんだ?
「確かにウガルルちゃんは陽夏木さんの魔力によって生まれた。けど実際に関われたのは召喚された当初で、それも少し話すだけでしかなかった。だから陽夏木さんがママ代わりになるという結論に至るには決定的となるものが少ないはずだよ」
「だからママ言うのやめて⁉︎ なんで貴方までママ扱いなのよ⁉︎」
「ママ扱いするとは言っていない」
ママ扱いしないんかい。でもまぁ、拓海の意見も分からなくもないかな。積極的に会話もしたかどうかで、どちらがウガルルとの深い関わりを持てたのかが決まってもおかしくはないと思うし、実際に会って本人に対して『この後どうしていくのかを一緒に考えてあげたい』とか言っていたしな……
で、だからどうするってんだこいつは? もしかしてミカンの事をママと呼ぶのはやめてほしいってか? もしそうだとしたら随分と遠回しなお願いだな……
「それに比べて、俺は夢の世界でとはいえ、ウガルルちゃんと直接関われた時間が長いはず。その上にウガルルちゃんを助けると……彼女が今を生きることができるように保証すると約束した身でもある。俺はその言葉に責任を持つ必要がある」
「えっと……つまり?」
「真にウガルルちゃんの親権を持つ必要があるのは、俺だということ‼︎ そして俺がウガルルちゃんのお父さん……いや、パパになって彼女が成人になるまで親代わりになる必要があるということだ‼︎ だから、親権を陽夏木さんに独り占めさせるわけにはいかない‼︎」
《………………はい?》
あっ(察し)。つまりはこういうことか。
こいつ、過保護を通り越して親バカになったわ。
可哀想だった、昔の自分にそっくりだった、どうにかして生きる活力を持たせてやりたい、その三つの想いが拓海を暴走させとるわ。どうしてもウガルルのために出来る限りの事をしてやりたいという欲求が出ているわ。
………………ダメだこいつ、早くなんとかしないと……
「……っは⁉︎ ちょっ、ちょっと待ってください‼︎ それはさすがにどうかと思います‼︎」
おっ? 優子、お前がこのウガルルのパパ(超健全的意味)になる宣言に物申してくれるのか───
「パパになるならママも必要ですし、ウガルルさんの親になるならミカンさんと一緒になった方が逆に効率が良いと思います‼︎ 親同士で子育てについて意見を出し合えますし、いざという時にどちらかが上手くウガルルさんのためのことができない場合でももう片方に任せられますよ‼︎」
いやそういくんかいっ⁉︎ 子育てに関するマジレスかいっ⁉︎ というかもう既に優子の脳内ではミカンと拓海がウガルルの親代わりだという認識になっているんかい⁉︎
「あー……つまりは夫婦ってことか‼︎ それならウガルルちゃんが安心して成長しそうだね〜」
「ふ、夫婦って……」
おい杏里。ダイレクトに翻訳するんじゃねェ。ミカンが顔真っ赤だぞ。メェール君の回復魔法とウガルルの踏ん張りがなかったら呪いが発動してしまうでしょうが。
「なるほど、その方が効率良いか」
「待って⁉︎ 納得しないで⁉︎ というか効率良いって何ッ⁉︎」
効率良いって……夫婦認定されてしまっている件については触れないんですかい? ウガルルの父親代わりになれるなら別に何の問題はないと? これだから鈍感は……いや、これはもう朴念仁だわ。優子に頼んで自覚できるようにさせたろか。
「でも……そうね。私はあの子を助けたいわ。私、今まであの子のことを酷い子だって思ってた。パパは間違ったものを呼んじゃったって……でも、そうじゃなかった。うちの都合で変な生まれ方をしたのに、必死で頑張ってた。私、あの子に外の世界でもう一度新しい生き甲斐をあげたいの」
「陽夏木さん……」
何であれ、認識のされ方がどうであれ、ミカンもウガルルを救いたいという想いは拓海に負けてはいないようだ(競い合っているとは言っていない)。勘違いしてしまった分のお詫びというわけでもなく、ただ純粋に、ウガルルに希望を与えたいという想いの表れだな。
「……あぁ、みんなで絶対成し遂げよう。ウガルルちゃんが新しい人生を歩めるように」
「……えぇ、絶対成し遂げてみせる」
いや、あの……ミカンさん? また無自覚モードな拓海に両手を握られてますけど? なんで今は大丈夫な感じなの? なんでアワアワな感じじゃないの? あの短時間で一時的な耐性でもついた?
「……確かに、ウガルルの言う通り温かく感じるわね……フフッ」
あっ、そういうことね。ウガルルの気持ちが分かったから自分も感化されたってわけか。我が子に秘めた想いを気付かされ──すみません、なんでもないです(察せられたわけではないけど)。
って、そんなことしてる場合じゃねェ。今のウガルルを正しい召喚方法で呼び出し直せば、この世に安定して存在できるようになるはずだけど、ウガルルはミカンの心の中で己の根性と外部からのメェール君の回復魔法で存在を保ってるから、もたもたしていたらウガルルが溶けちまう。早く依代作らないと。
とはいっても、まずは必要なものと手順をリストアップしておかないとだけどな。だから依代作りに適してそうなアイツを呼ばないと。
というわけで、みんなも○○を呼んでみよ〜う♪ せーのっ‼︎
「小倉ァッ‼︎ ……じゃなくて小倉さん、カモン」
「へいまいどー‼︎ 意気の良い呼出ありがとー‼︎」
思わずネットで見たあだ名みたいな感じに呼んじまって、それがどうやら聞こえてしまったみたいだけど、どうやらそういう呼ばれ方されても問題なかったようだ。悪い気はしていないみたい……というか寧ろ良い気分でいるようだ。
「極めてクオリティーの高い等身大依代を作りたい。最高の材料を考えて」
「出来れば溶けること無く永続で長持ちできるヤツのな」
「予算青天井なの⁉︎ 億いっていい⁉︎」
「「ばかやろう。色々となんでだよ」」
「あ……すみません。なんか……慣れちゃって」
そうだった。そういえば杏里と勝弥は突然の小倉さんの登場を見るの初めてだったな。しかも何故天井からのという〇ムとジェ〇ーなんだという疑問を持ちながらの。そういう反応をしない方がおかしいよな……
「……で、なんで全蔵まで天井の中にいるんだよ」
「そんなの俺が聞きたいッスよ……道端でくねくね曲がったダイヤモンドを拾っただけなのに、それを使った実験に付き合ってって言われて……」
無理矢理連れ込まれたって感じか。しかも偶然と偶然が重なる感じに。まぁその……ドンマイ。
数秒後、小倉さんがどんな感じに俺達がウガルルの依代を作りたいのかというのをまとめてくれた。それも壁紙に直接書いて。ここ、ミカンのというか、人の部屋だぞ……
ちなみになんで小倉さんが計画を数秒でまとめられたのかというと、桜さんが遺したメモに大分仕上げてあったから、だそうだ。あのメモ非常に読みにくかったろ? それを翻訳できたのはすごいわ……
メモに遺されていたと聞く辺り、どうやら桜さんも途中まで同じ計画を立て、ウガルルを現界させようとしたのだろう。だが溶けたウガルルを固められなくて、煮詰まって留保する形になったようだ。
何故桜さんがあの時計画を途中で留保することになったのか、それは依代を作るための素材集めが非常に困難であるからだ。
依代を作るために必須な素材一つ目、上質な魔力料理。契約用のお供えとして質の良い肉から作ってもてなすことで使い魔との契約の作法が完了するのだが、腕の良い調理人で魔力料理が作れる人は限られているのだ。魔力を持てる凄腕調理人なんてそう簡単に出るわけないもんな、仕方ない。
二つ目、大量の幻獣の尻尾の毛。毛に魔力を含んでいるため錬金術の材料になるそうだ。通販サイトにもあるらしいが、それでも注文しても何日かかるかは不明。どれを通販で買ってもそうだが。しかも厄介なことに、幻獣と言っても人語を解する動物系まぞくの方であるため、まぞくではないウチの召喚獣に頼っても良いのか迷いどころだ。
三つ目、上質な霊脈の土。依代の材料の主要と言っても差し支えないだろう。ちなみにこの前登ってた奥々多魔駅の山中の土に霊脈があるらしい。これはまぁ、桜さんでも集められたのだろうな。すぐに見つけられたヤツだから。
これらを今夜中に揃えられるのは無理だと小倉さんは言った。しかし、俺らには運が味方してくれた。何故ならば───
「腕の良い魔力入り料理ならバイト先の先輩が作ってました‼︎」
「えっ、この町にいるの? でもこの時間に開いてる精肉店が……」
「杏里ちゃんの家が精肉店です」
「あっ、そうだね。……でもでも幻獣の尻尾の毛もたくさん……」
「バイト先の店長、動物系まぞくです」
「えっ、いるの? ……さすがに霊脈の土は……」
「……山の土、持ち帰ってきてます」
「えっ、なんで?」
「勝利の思い出です」
完璧な段取りだった(アム○風)。色々な経験をしてきた優子だからこそ、ウガルル現界のための依代作りの材料を集められるピースは揃った。ぶっちゃけここまで伏線になるとは思わなかったけどな。というか、冷静に考えてみたらどんな人生送ったらこんなに特殊な材料が揃うんだよ……
「………………やっぱりシャミ子ちゃん面白いよぉぉぉ‼︎ 付きまとってよかったーーー‼︎」
「あっえっはい‼︎」
付きまとっていた自覚があったのか。依代できたらもしもしポリスメンしておくべきか……いや、今後の展開のためと、依代作りのためのとっておきの情報を出してくれた恩を仇で返したくないからってことで、今回は通報しないでおこう。というかこれからも通報しないかな。悔しい……
♢
優子が上質な魔力料理 ──リコさんの料理と幻獣である動物系まぞくの尻尾の毛 ──白澤さんの尻尾の毛を分けてもらいに『あすら』に向かっている中、俺達はウガルルを現界させるための依代と彼女の魂を依代に移すのに必要な巨大魔法陣の製作に取り掛かることに。
巨大魔法陣を作ることも考えれば、やっぱり人員は必要だな。主要体育祭実行委員会のSNSグループに入っておいてよかったぜ、早速呼び込みをするとしましょうかね〜。えぇっと、内容はこんな感じなのがいいかな。
『突然だけど、俺達は今ミカンの心の中にいる使い魔を召喚するための準備に取り掛かっているんだ。時間のある奴はばんだ荘に集合して手伝ってくれるか? 人員は多い方が心強い』
よし、内容はこんなもんだな。送信送信っと。このグループには俺・優子・桃・ミカン・拓海・勝弥に加えて十二人もいるけど、何人か来てくれるといいが……
【ん? ……あっ。マスターマスター】
「どしたメェール君?」
【送り先、間違えているメェ〜。マスターの親御さんに送っちゃっているメェ〜】
……ゑ?
あっホントだ。『平地家』の方に送ってた。
……じゃねェよ⁉︎ なんでだよ⁉︎ なんで送信先のグループを間違えちゃうんだよ俺ェ⁉︎ こんな初歩的なことを間違えちゃうとかどうかしてるでしょ⁉︎ 寝起きだったから頭が一瞬働かなかったってか⁉︎
「お、教えてくれてありがとなメェール君‼︎ 早速勘違いした事を伝えるから‼︎」
【おっけーメェ〜】
と、とりあえず、気にしないでほしいっていうメッセージを送って誤魔化さないと……‼︎
『ごめん。これウチの学校の文化祭でやる予定の演技の台詞の一つなんだ。ばんだ荘って書いてあるけど、これはただの打ち間違いだから。無視してもらっていいから』
で、送信っと‼︎ ……大丈夫か? 大丈夫だよな? 大丈夫だと言ってくれ。二人ともこれで文化祭のヤツだと察してというか勘違いしてくれ。お中元あげるから。
そんな事を考えながら、正しい送信先に集合を知らせるメッセージを送り、後は待機しながらできる限りの準備を進めることに。小倉さんが増幅させた依代の材料の主要となる土をまとめて……いや増幅させたって何? 増幅させたら霊脈も増えるのか?
「おまたせぇ〜。お、やってるやってるぅ〜」
メッセージを送ってからわずか三分。たったの三分で秀・友香里・誠司のオリ男三人衆(俺が勝手に命名)と南野・落合・永山のモブかと思ったら原作ネームドキャラだった女の子達……つまりグループメンバー全員が来てくれたのだ‼︎ やっぱりみんな優しいな……‼︎ こんなに嬉しいことはない……‼︎
「……なるほどなるほどぉ〜、そんな感じに準備しているのかぁ〜。それじゃあ南野さん・落合さん・永山さんは魔法陣制作の、南雲君・楠木君は俺と一緒に依代作りを手伝いに行ってあげてねぇ〜」
『はーい‼︎』「あぁ」
状況と手順を説明してあげたら、早速秀がみんなに指示を出して各々手伝いに行くようにと促した。采配が早いな……
「悪いなみんな、こんな夜遅くに手伝ってもらって。体育祭の準備で疲れただろうに……」
「その後にも頑張ってたらしい平地君達に比べたら、僕達のは大したことないよ。それに困った時はお互い様、助けないわけにはいかないからね」
出た、正論の誠司。夢の中でウガルルと邂逅していた俺達と比較しての真っ当な意見。これはちょっと反論できねェなぁ……
「おっしゃあお前らァ‼︎ 日付が変わる前に召喚完了をやり遂げるぞォッ‼︎ ワンフォーオール、オールフォーワンだァッ‼︎」
あっ。いつもの気合い入れの状態だけど、時間を考えて声量を控えめにしてくれた。それだけでも充分うるさいけど。
さてと、俺も秀達に説明をし終えたからそろそろ依代作りに戻るか。なんか小倉さんが何故か良子ちゃんにも手伝ってもらってってるみたいだし、早めに作って負担を減らさせないと。なんかさらっと父さんと母さんも参加しているし。
………………ん?
え? は? ……えっ?
「父さん母さんンンンンンンッ⁉︎ マジで二人とも来ちゃったのォッ⁉︎」
「あっ、白ちゃん久しぶりね〜♪」
「我が子よ、久しぶりだな。この大仕事、結構楽しいぞ」
久しぶり、じゃねェよ‼︎ なんで来ちゃったんだよ⁉︎ もしかしてさっきの言い訳のメッセージ、無意味だったってか⁉︎
「いやねぇ、台本次第でどのような台詞を使えばいいのかとかのアドバイスでもしてあげようかと来てみたら、まさかやるかどうかもわからない演劇のために人形に魂を宿すようなことをするなんて。いくら魔族とか魔法少女とかがいるからってはりきりすぎよ?」
………………はい? 今なんと?
「何故こんなことまでして演劇のために召喚とかするのかは知らんが、大人が手伝わないのは無作法というものだ。絶対に完成させるぞ、我が子よ」
………………ええっと……もしかしてこの二人、本当に俺達が演劇の準備をしていると思い込んでいて、ウガルルの召喚の準備もその一つだと勘違いしている……のか? そうは思わんやろ……思っとるみたいだけど。「そうはならんやろ」「なっとるやろがい‼︎」
「なんだかよくわからないけど、変な誤解のおかげで平地くんの両親にも手伝ってもらえてよかったね〜。これならさらに早く完成しそうだよ」
「……ウン、ソウダネ」
なんか納得いかないけどね。
「ここはこういう感じに描いて、ここはこうやって……」
「朱音さん、だっけ? 魔法陣描くの上手ですね」
「趣味でpixi○用の漫画描いてるからね‼︎ 桃ちゃんみたいな魔法少女の子に賞賛されるのは嬉しいわ〜」
「ほう、霊脈とやらがある土は普通のとは触感が全く違うのか。これは勉強になるな」
「他にも面白いものを作ったんですけど、今度見せてあげましょうかぁ?」
「おぉ、小倉君がどんなものを作ったのか気になるな。期待していよう」
なんか……段々みんなと仲良くなり始めてるんですけど。俺と良子ちゃん以外全員初対面だよね? 仲良くなるの早すぎね? 大人の余裕による社交的対応をしてるんですか?
「バイト先から料理と幻獣の毛、頂きました! 眩しいです」
おっと、ここで優子が戻ってきたようだ──うおっまぶしっ⁉︎ 何これ⁉︎ リコさん、どの材料でどんな手順を使って魔力料理を作り上げたんだ⁉︎ なんか合体戦士が邪念の塊から誕生した怪物を浄化させるために放つ技と似た感じの輝きだぞ⁉︎
「あれ? 体育祭メンバーの人達と……朱音さんに黒瀬さん? 何故あのお二人まで?」
「……ちょっとした気まぐれによって手伝ってくれることになったんだよ」
「わざわざ来てくれたってことですか⁉︎ さすがは白哉さんのおとーさんとおかーさん、相変わらず良い人……‼︎」
来た目的が違ったみたいですけどね。それに今でも変な勘違いをしていますけどね、うん。
「あ、シャミ子ちゃん久しぶり〜‼︎ 先月から白ちゃんと結婚することになったんだって聞いたわよー‼︎ おめでとー‼︎ 今度改めて祝わせてもらうからー‼︎」
「けっ、けっこっ⁉︎」
「いや結婚したんじゃなくて付き合うことになっただけだから。みんながいる時に別の勘違いやめてくれ母さん」
つーかやめてくれない? 大声かつ同校同学年のみんなの前でそんなこと言うのやめてくれない? 公開処刑されてるみたいなんだけど。恥ずかしい感情と怒りの感情が同時に噴き上がってきて複雑なんだけど。
数分後。魔法陣と依代の完成が完了した。しかも魔法陣の仕上げと依代の型作りから完成するまでのところは、全部ぜーんぶ桃がやってくれたとのこと。しかも依代はさっき出会ったウガルルそっくり……というかウガルルそのものなクオリティだった。すごっ。
というか、ここまで一晩でやり遂げられるとはな……これまでの優子に起きた伏線とみんなの協力が、短時間でウガルル召喚の準備を整えられるとは……これはラッキーすぎる。
「魔方陣の起動はシャミ子お願い」
「えっ⁉︎ 私っ⁉︎」
「新ウガルルはまぞくだから闇属性の武器がいい。魔力は白哉くんが補って」
「えっ、俺? 俺よりも魔力の使い方が上手い桃の方がいいんじゃ……?」
「ギリギリ闇堕ち薬の効果が残ってまだ眷属である私よりも、同じ眷属でも上の立場かつ永続的になっている白哉くんの方がより安定して強い魔力でシャミ子をサポートできるからね」
「な、なるほど……」
た、確かにそこまで説明されたら一理あると思えるな。もしも魔力を補っている途中で桃の闇堕ち薬の効果が切れたらたまったもんじゃないしな……
だが、一応魔力増強のために召喚師覚醒フォームになったけど、それでもさすがの俺でもそこまで乗り気じゃない理由がある。何故かって? 素の優子は魔力に乏しさがある。だから……
「それだと優子はクラスメイトの前で危機管理フォームにならないといけなくないか? 男子もいるんだし」
「「あっ」」
考えてなかった? その観点は全く考えてなかったのか? 変身しなきゃいけない状況のせいで、なんの躊躇いもなく変身するということに慣れてしまったのか? ふーん、(隠れ)痴女じゃん。
「ん? あぁそれなら心配いらないよぉ〜。俺達目隠しして後ろに向くから──ハグアァッ⁉︎」
「アベシッ⁉︎」
「ヒデフッ⁉︎」
《えっ?》
秀が男子全員見ないようにする発言をしようとした途端、何故か彼含めたオリ男三人衆が次々と気絶してしまった。えっなんで? 男子達の記憶に危機管理フォームの姿が刻まれることがなかったのはいいことだけど、一体何故? というかなんで急にこいつら気絶したんだ……?
「い、嫌な予感を察知したからか、すぐさま前に出て助かったぞ……」
「危なかった……黒瀬さんの隣に立っておいてよかったわね……これぞ夫婦のコンビネーション、かしら?」
何やら父さんと母さんが喋り出していたので、そっちの方へと振り向いてみた。そしたらそこには、父さんの前に立っている母さんが、いつの間にか召喚されていた元のサイズの方の白龍様の右手を必死に掴んでいた。
……いや、何が起きてた? まるで意味が分からんぞ⁉︎ なんでまた白龍様は勝手に出てきたの⁉︎ そして今どういう状況⁉︎ なんで母ってさんは白龍様の手を掴んでんの⁉︎
「白龍様? 黒瀬さん……私の愛する旦那様の意識を刈り取ろうとするのやめていただけませんか?」
『いやだって、それだとシャミ子が白哉以外の男に恥ずかしい戦闘フォームを見せる羽目になるんですよ?』
えっ? ……まさか白龍様、優子の危機管理フォームを男子達の脳裏に焼き付かせたくないがために、勝手に出てきて背後から手刀を男子達の首に当てたと……?
いや、優子の事を考えてくれるのは嬉しいですけど、突然そんな事をされても俺達が戸惑うだけなんですがそれは。
「尚更見せたいじゃないですか‼︎ 滅多に見られないだろう義娘の戦闘フォームがどれだけセクシーなのか、気になりすぎて仕方がない‼︎」
『じゃあアンタだけ見ればいいじゃん。義娘の恥ずかしい格好を見せられる旦那の気持ち考えてくれません?』
「うむ、俺も嫌ですね」
あぁ……うん。息子の恋人に飽き足らず、他の女の子の恥ずかしい姿を見せられることになる旦那さんの事を考えなさいよ奥さん。あっ、俺の両親か。
「ま、まあとにかくだ。シャミ子君、俺は白龍様の方を見るとかして君の方を見ないようにするから、気にせず終わらせてくれ」
「あっ……は、はい。お気遣いありがとうございます……‼︎ 危機管理ー‼︎」
初見の男性が父さんだけなら大丈夫だから安心だろうと思ったのか、心置きなく危機管理フォームへと変身した優子。まぁ父さんも優子の恥ずかしい格好を見る気がないから大丈夫だと思うのはいいだろうけど、本当に安心していいものなのだろうか?
ま、まぁいいか。さっさとウガルル召喚を終わらせておけば、父さんの目にこれ以上危機管理フォームが焼き付かせないようにすればいい話だよな、うん。
さてと……優子がなんとかの杖を巨大化させているわけだし、こっちもさっさと手伝うとするか。
「うわっ、重っ……」
「おっと……」
やっぱり優子にとっては重たかったみたいなんで、俺が持つ手伝いをしてあげることに。でも本当に重すぎた。セイクリッド・ランスよりも重たいんだけど。優子、お前変形させる時に重さの事を考えたことある?
「それじゃあいくか、優子」
「は、はいっ……‼︎」
「よし、じゃあいくか。素に銀と鉄。礎に石と契約の───」
「ウガルルさん……かもぉ〜〜〜ん‼︎」
あっ……
「って、へっ? 白哉さん、今なんて言おうとしてました……? すにぎ……何ですか?」
「……いや、なんでもない……」
しっ……しまったぁ……ッ‼︎ なんかFa〇eの召喚方法っぽいなって思っていたから、ついふざけてしまったぁ……‼︎ 集中力を一時的にとはいえ断たせてしまったぁ……‼︎ これが今のウガルル召喚に影響しなきゃいいのだけれど……‼︎
「んが……オレ……外……体アル……」
「あっ、終わったよ二人とも。どうやら上手くいったみたいだよ」
「えっ? あ、ホントだ……成功です……‼︎」
「ほっ……」
よかった、よかったよ……おふざけしてしまったせいで原作崩壊してしまう、なんてことが起きなくてよかったよ……‼︎ ヤベッ、嬉し泣きしそう……
「新しイ体、すごく馴染ム‼︎ オレ、新しイ仕事、何すれば良イ?」
「皆で話し合ったんだけど……貴方はもう使い魔と呼べないくらい複雑な存在になっているの。だから、この町でウガルル自身のやりたい仕事を見つけて。それが貴方の新しい仕事‼︎」
「少しだけ分かりやすく言えば、自分は何がしたいのかを見つけることから始めて、それを仕事をしてやっていくってことだよ。自分なりに考えて自分で探す、それが生きとし生ける全ての命が果たす役目だ」
ミカンと拓海がウガルルに対して、まぞくになった彼女に今の自分に何をすべきなのかを教えてあげた。自分自身で色々と考えながら仕事を見つける仕事をするとか、俺が聞いてもややこしいと思うな……それでも頑張るのは人生だけどな。
「む、難しイ……でモ命令だかラ頑張ル。じゃあオレ、行ク……」
「えっ⁉︎ どこ行くの? 住むとこ無いでしょう」
「戸籍もないのに、どうやって住む場所を探すというんだい?」
まぁ、使い魔だし。何もない感じから召喚された存在だしな。
「分からナイ。けどミカン怒ってルかラ、なるべく遠くに住むところ探ス」
「まぁぁだそんなこと言ってるの⁉︎」
「怒っているとはいっても、本気でだったら君の依代を作る気にもならなかったと思うし、激励すらもしていなかったと思うよ」
「なんか普段はそんな感じなんだと思われているような気がするのだけど……」
「えっ。な、なんかごめん……」
確かに、なんか拓海から変わったウザさが出ているような気がするな、さっきの台詞は。無自覚で思ったよりも人を傷つけてしまう言葉を言ってしまうのは、人を惚れさせる言葉よりも酷いものだからな……
「とにかく……一旦やりたいこと見つけるまでうちにいなさい‼︎ 十年も心の中に居たんだから、あと十年・二十年居座っても誤差よ誤差‼︎ あんたは今日から私のファミリー‼︎ いい⁉︎ わかった⁉︎」
「お……おウ、分かっタ……」
「ウガルルちゃん……よかった」
誤差の方がでかくなるスタイルなんかよ。というかその言い方だとウガルルのやりたいことが見つかっても、住ませてやると言っているようなものじゃん。やっぱりミカンママかよ。
……まぁいいや、とりあえずこれで原作通りのウガルル仲間入りルートが確定したぜ。新しい仲間ができて、さらに賑やかになること間違いなしだ。
「………………ハッ⁉︎ し、しまった⁉︎ ウガルルちゃんの住む場所くらいなら『ウチの神社になら住ませてあげるよ』とか言って用意すべきだったか⁉︎」
「お前はそういうところだぞ」
まだウガルルの親権の独占を狙ってたってかお前は。いい加減にしろこの時々ウザキャラになる過保護陰陽師が。親権ぐらいミカンと一緒に担げばいいやろがい。
……とりあえず、白龍様によって気絶させられたオリ男どもを起こさないとな。お前ら、マジですまんかった……
♢
そして翌日。昨日柘榴さんにも手伝ってもらおうかと連絡することを忘れていたとのことで、優子と桃と一緒に遊びに行くがてらウガルルの事を報告することにした。
そのために玄関を出たのと同時に、ウガルルが手摺に座っているところを目撃していた。どうやらばんだ荘の門番として外を見張ることにしたのだろう。伸びていた髪もボーイッシュに整えられ、さっぱりとした感じになっていた。
「ボス! 何かやる事くレ‼︎」
「ボスはやめてください。あの時は勢いで……!」
「ミカンから聞いタ‼︎ お前、ミカンのボス。お前、人集めて俺を助けタ。お前いないとできないこと沢山あっタ。だからお前ボス‼︎ 俺、認めタ‼︎」
ウガルルの言っていることも一理ある。最初に陽夏木家に呼び出された時は正式な召喚をされなかったし、桜さんの力でも抑制する程度でしかなかった。それを優子は、周囲を束ねるボスとしてみんなの知識や技術を応用し、今のウガルルを作った。彼女に賞賛されてもいいと言っても過言ではないのだ。
「そして隣の男……ボスの眷属! お前にモお礼が言いたイ‼︎」
………………ん? 隣の男? ボスの眷属? もしかして俺の事?
「俺にもお礼って……俺、お前を召喚するために仕上げを手伝ったってことぐらいしか目立ったことしていなかったぞ? お礼を言われるほどの事なんか……」
「お前、出会っタばかりの時かラ何かト俺の事を気にしてくれタ。俺が消えようとしていタ時モ、みんなの意見をまとめテ俺を留めよウとしてくれタ。俺の事をどうにかしよウとお前かラ案を出しテくれタ。そして集まってもらうよう沢山の人に頼んでいタ。お前、俺やボスのために色々とやってくれタ‼︎ お前もすごイ‼︎ ボスの眷属‼︎ 俺、お前の事も認めタ‼︎」
「ッ……‼︎ そ、その、なんだ……褒めてくれて、ありがとな……」
「んがっ‼︎ こちらこソ‼︎」
そ、そんな些細なことの積み重ねなところも見て俺の事を認めたのか……俺はただ、自分に何ができるのかを俺なりにやっただけなんだけどな……それだけでもここまで素直に感謝されるなんて、なんか恥ずかしいというか、こそばゆいな……
ウガルルと別れた後、俺と優子がウガルルに認められたことに照れを感じている中、桃が徐に話しかけてきた。
「二人のおかげで居場所を見つけられた子がいる。やり方は間違ってない……と思う」
「後から考えると行き当たりばったりすぎて、尻尾の毛がよだちます……」
「俺も即座の思いつきでやっているようなもんだしな……なーんか事前に予測していたことを勝手に空回りにしてしまった気も……」
「……いいんじゃない? 二人とも、姉のやり方とちょっと似てきたよ」
「それって褒めてんか? ……まぁ、それはそれでいいならいいんだけどさ」
俺のしてきたことも桜さんと同じ、か……それは何やら後先の事を考えてない人のように感じるけど、その分誰かのために頑張れているって捉えていいってことか? なんか、そう思うと自分のしてきたことをちょっと誇れるかも。
……優子の正式な眷属になってまだ一ヶ月弱だけど、俺も俺なりに頑張れているというのなら、後悔はないな。これからもみんなの、そして優子のために、全力を尽くしていかないとな。
「いつかはこの町も、『最強の夫婦が作ったみんなが日本一住みやすい町』になったりしてね」
「な、ななななな、なんでそういう結論に至るんですか⁉︎ あ、いえ、私と白哉さんが夫婦だと思われるのはすごく嬉しいんですけどね……」
「……それはさすがに買い被りすぎだろ」
やっぱりちょっと不安になってきたな……色んな意味で。
おまけ:台本形式のほそく話その25
シャミ子「拓海くんって、ウガルルさんの母親として認められる相手がいたとしたらどんな人が良いんですか?」
拓海「……何故突然そんな事を?」
シャミ子「あ、いえ。特に深い考えはないんですけど、拓海くん一人でウガルルさんを育てるのは大変だろうなと思って……」
「もしかするとウガルルのおかーさんになってもらうべきタイプの人とかいるのかなって……」
拓海「あぁ、なるほど」
シャミ子「(本当はミカンさんの事をどう思っているのかを聞きたかったけど、この話題もどうにも気になってしまって……)」
拓海「別に俺一人でもウガルルちゃんを育ててみせるけど……母親が必要だと言ったらやっぱり陽夏木さんかな」
シャミ子「えっ? で、でも頑に否定しようとして……」
拓海「俺以外にウガルルちゃんの親は別に必要ないってだけ」
シャミ子「何そのウガルルさんの親権に対するこだわり⁉︎」
拓海「けど、陽夏木さんならウガルルちゃんの母親になれる可能性はあるとは思っている」
「ウガルルちゃんの失敗を責めるようなことをせず、寧ろその失敗を含めて彼女を包もうとしていた。そして何よりみんなに優しく接する聖母な心を持っている」
「彼女だったら、いつかは俺も一緒にウガルルちゃんの成長を見届けてもいいな……ってね」
シャミ子「は、はぁ……なるほど(アレ? これってもしかしなくても……?)」
ミカン「(ぬ、盗み聞きしてしまった……この後拓海とどんな顔で会えばいいのよ……ッ)」
END
終わったッ‼︎ 原作四巻編、完ッ‼︎
……と言いたいところですが、まだオリジナル回があるのでそれが終わってから次章へと進めようと思います。ハイ。