偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語   作:名無しのモンスター

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実は自己紹介のページで白哉君の誕生日を勝手に変えてましたってことで初投稿です。

そういえば今日はクリスマスイブ前か……しくじったな、クリスマス回ができなかった。


えっ? 今日は俺の誕生日だった? 今年は色々あったので全然気にしてなかった。

 

 昨夜に優子との夜のお楽しみがなかった翌日の、いつも通りの休日用の服に着替えてメェール君が作った朝飯を食って、皿洗い含めた部屋の掃除を済ませて、漫画読んで、昼飯を食ってっと……さてと、この後は何しようか。

 

 実は今日、優子だけじゃなくて桃やミカン、拓海や柘榴さんなどといったウチの知り合い達が全員用事があるという。つまりはどういうことなのか、召喚獣達と遊ぶこと以外は特にやることがないってわけだ。こんな事ってある?

 

 

【あっ、そうだマスター。実は言い忘れていたことがあったメェ〜】

 

「ん? どうしたメェール君?」

 

 

 今さっき知り合い全員に用事が出来ていたってことを考えていたんだけど、このタイミングでメェール君が何か言いたげな感じ……ま、まさか……⁉︎

 

 

【実は今日、これから僕達召喚獣はマスターを転生させた神様に呼び出されることになったんだメェ〜。何やら定期的によるマスターの現状報告をしてほしいとのことだメェ〜】

 

「………………あぁ、そう……」

 

 

 でしょうね。だと思ったわ。なんか言いたげな感じだったから、メェール君も用事があるのかと思ってたわ。けど召喚獣全員にも用事があるとは思わなかったわ。

 

 というか定期的によるマスターの現状報告って何だよ⁉︎ 俺が召喚術を覚えるようになってから、そんなことをメェール君達がしなくちゃいけないだなんて聞いてなかったんだけど⁉︎ 裏でそんな事やってたの⁉︎

 

 っていうかちょっと待って?召喚獣が必須となる状況の日にそんな事あったらどうしてくれんの? もしかして報告中に呼ばれても出ないといけない感じだった? 原作イベントみたいなとんでもない状況じゃない場合の日に報告があった時に呼んでしまったら申し訳ないんだけど……

 

 

【まぁマスターが内心焦るのも無理はないメェ〜。何せこの現状報告は先月からできたものだからメェ〜】

 

「あ、先月からのヤツなのね……」

 

 

 先月から定期として取り入れることになったってか? 今後の原作イベントまで日云々から計算してか? 俺は原作五巻までしかイベントの事は知らんけど、俺が転生したことによるオリジナルイベントの事は考慮してないのか?

 

 というか現状報告って何を報告するというの?(今更)

 

 

【ヤバッ、後ちょっとで現状報告の時間になりそうだメェ〜。マスター、暇を潰したいのなら今から渡すメモに書いてあるところに行ってほしいメェ〜】

 

「あ、俺に予定がないことを考慮しての案なのか? ぶっちゃけ助かるよ。今日に限っては優子達とも遊べないみたいだし、どうしたらいいのかわからなかったからマジで助かる」

 

 

 そう言いながら心の中で安堵し受け取ったメモ。そこに書かれていたのは……何やら地図みたいな構図のヤツだった。というか地図だ。よく見たら多摩町の建物がいっぱい書かれていて、行ったことのあるところに赤色の×マークが付いている。何これ? 宝探しかよ。

 

 

【それらを辿っていけば、最後には今年最高の思い出になるイベントが起きるかもしれないメェ〜】

 

「今年最高の思い出になるイベント? それは一体───」

 

【行ってみればわかるメェ〜。それじゃ、僕は精神世界に帰るメェ〜】

 

「あっおいっ‼︎」

 

 

 俺の呼び止めも無視し、メェール君はそのまま精神世界へのゲートを開いてインした。この野郎、人の質問に答えやがれよ……‼︎ 今すぐ召喚して……いや、よそう。もしも今年最高の思い出になるイベントとやらが起きなかったら、その時に文句を言ってやるべきではないのか? その時からでも別に問題ないと思う。

 

 

「とりあえずちゃっちゃと行くか。どうせ暇だし」

 

 

 えぇっと、×マークが書かれているところは……あっ、一番近いのがここばんだ荘じゃん。しかも丁寧に『入り口辺りに来て』って書いてある。まずはそこまで行ってみるか。

 

 

 

 

 

 

 チェス盤のような白黒の市松模様の場所──白哉が眠りについた時に訪れることが可能な、とある召喚獣トップの住む精神世界。白哉は知らないというか知らされていないのだが、ここでは白哉によって召喚される召喚獣達が精神を通じて集う場ともなっていた。

 

 そんな場所にて白哉のいない今、一匹の召喚獣がまた現界する。白哉の家政婦的ポジションでもありマスコット枠でもあるメェールである。彼がこの世界に入ったところに、ふと視界に入ったもう一匹の召喚獣に声を掛ける。

 

 

【白龍様、ただいま帰りましたメェ〜】

 

【おう、おかえりぃ〜】

 

 

 銀色の鱗が輝く全長六メートルの龍、自称・白哉の相棒である召喚獣の白龍である。白哉を転生させた神に頼まれて白哉の元に来たものの、最近白哉からの多大な信頼感が薄れてしまっているようだが、それはまた別の話である。

 

 

【ちゃんと白哉に例の地図を渡したのか?】

 

【もちろんですメェ〜。マスターも暇だと言っていましたし、僕の言う通り行動してくれれば最後にマスターはハッピーになること間違い無しですメェ〜】

 

【ほほぅ、そうかそうか】

 

 

 メェールが先程白哉に伝えた神への白哉の現状報告、あれは真っ赤な嘘であった。全ては白龍達が白哉に自分達からの指示を受けてもらうための前振りであり、計画を順調に進ませるための偽造であったのだ。

 

 メェールが白哉に地図を渡したことを聞いた白龍は、口元に弧を描きながら不気味な笑みを浮かべる。

 

 

【クックック……白哉、お前が最後の最後にどんな反応をするのか、期待させてもらうからな】

 

【白龍様、今の笑顔はさすがに悪役感が強すぎるメェ〜】

 

【白哉のいないところでこういう顔をするのは好きなんだよなぁ……ニチャア】

 

【うわ、タチが悪いメェ〜……ハァ】

 

 

 白哉の知らぬところでタチの悪いマイペースさを見せる白龍に、メェールは引き気味になりながら溜息をつく。そして祈った。自分の知らないところで、白哉が悲惨な目に遭わないように、と。

 

 

 

 

 

 

「ウッ、寒気が……」

 

 

 な、なんだ? 誰かが俺の事をウワサしてんのか? しかも不思議と悪口ではないことが確かだと思えてくるんだが……まぁいいかな。

 

 

「にしてもこのアルミホイルに包まれたこれ、一体何なんだ……?」

 

 

 ばんだ荘の前に建てられているレンガの上に、何やら今俺が手に持っているアルミホイルに包まれたパズルみたいな四角いヤツ、これは本当に一体何なんだ?

 

 ん? なんでアルミホイルを取らないのかって? 一緒に置かれてあった手紙というかメモにてこんなのが書いてあったからなんだよ。

 

 

『×マーク全てに配置されてあるアルミホイルに包んだヤツを拾い、最後の建物の中に入ってから、そこでのとある者の指示に従いながらじゃないと、アルミホイルを取っちゃダメだゾ☆』

 

 

 なんか後半、おふざけ感があるんだけど? 誰だよこんなものとこんなメモを置いた奴は。何が目的なんだよ。というかよく置かせてもらったな。誰かに取られたり剥がされたりされる可能性だってあっただろうに。各所のお偉いさんに許可もらうの大変だろうに。

 

 ……まぁ、こんなものを置いた奴の正体が気になっているのだし、正体を知るためにも全ての×マークのあるところを周っていく必要があるのは確かなんだけどさ……

 

 というか、なんだろう……このメモと地図を見ていると、何か大事なことを見落としているような気がするんだけど……

 

 

「まぁいいや、とにかく今は全ての×マークのある場所に向かわないとな。四の五の考えるのはそれからだ」

 

 

 どっちみちメェール君から渡されたメモから始まったことなんだ、世界どころかこの町への危険が冒されるわけではないことは確か。だからさっさと全部周って、このアルミホイル包みと一緒に置かれた手紙を書いた奴の正体を暴かねーと。

 

 というかなんでこんな用意周到なことしてんだ犯人は? 一体何がしたいんだ? 俺に行った覚えのある場所に次々と向かわせて、一体何が目的なんだ? 理由が分からないから、わけがわからん……

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……これで×マークは後一つだな」

 

 

 とりあえず矢印の書かれたルートの通りに×マークのところに来てみたのだけど、案の定というべきなのか思いの外というべきなのか、どこもかしこも俺が行ったことのある場所だった。

 

 多摩川高校の門の前・河川敷の『多摩川』の看板前・ショッピングセンターマルマの入り口前・杏里の精肉店・たま健康ランド・仙寿神社・ミカンの旧実家の廃工場・桜ヶ丘公園の入り口前・白澤さんとリコさんのあすら・ブラムさんのスカーレット・せいいき記念病院・ネコにたくさん会える公園前・多摩動物公園前……

 

 見事にほぼ全部俺が原作やオリジナルのイベントで来たことのある場所だった。こんなにも行った覚えのある場所がピンポイントで×マークになることってある? メェール君もこの謎の計画に協力したのが原因か? 知らんけど。

 

 とりあえず、ここまで全部周って合計十四個のパズルピースみたいなものを集め、残るは最後の×マークになったわけだが……

 

 

「よりにもよって、なんで最後がここなんだよ……まさか柘榴さんがこの計画を立てた犯人、とかじゃないだろうな?」

 

 

 その場所となるのが、桃がばんだ荘に引っ越す前に住んでいて、現在では柘榴さんが海外から引っ越して使っている、公民館みたいな見た目の家だった。しかも律儀に門の前にパズルピースみたいなもの……はなくて代わりに手紙だけが置かれてあった。

 

 ここは確か、熱を出した桃を優子と一緒に運び、何やかんやあって優子が一族の封印の一部を偶然にも解いた原作イベントの発生地だったな。懐かしいなー。ここでメタ子も初めて会ったのも印象深かった。

 

 

「おっといけねぇ、思い返すのはまた今度にしよう。それよりも大事なのは手紙の内容だ内容。最後の最後で一体誰が一体どんな内容を書いたというんだ……?」

 

 

 恐る恐る手紙を取り、それをペラリと捲った俺氏。その手紙にはこんなのが書かれていた。

 

 

『フハハハハハ‼︎ よくぞここまで辿り着いたものだな‼︎』

 

 

 文面魔王かよ。

 

 

『ここまで来たということは、貴様はピース十四個を全て集め終わったということだな‼︎ ならば最後にインターホンを鳴らし、合言葉を我々に向けて伝えるといい‼︎ ちなみに合言葉はピースのアルミホイルに書かれた番号順の言葉を並べて言うのだ‼︎ ちなみに暗証番号を入れて入ろうだなんて思わない方がいいぞ‼︎ このためだけに一時期暗唱番号を書き換えたのだからな‼︎ 今日が終われば戻るけど‼︎』

 

 

 俺が早く終わらそうとするのを防ぐための、用意周到なこともしていたとは……絶対この家の主である柘榴さんも共犯してるじゃねェか。しかも我々って、他にも共犯者がいたのか? 目的次第では後で締め出そ。なんか遊ばされている気分で腹が立つから。前の家主である桃はあり得そう。

 

 ……まぁいいや、とりあえずアルミホイルに書かれた文字を番号順に見てと……ええっと、何なに……ふむふむ、ふぅむ……あ、こういう言葉になっているのか。よしっ、覚えたぞ。早速ピンポーンするか。

 

 

 ピンポーン

 

 

「白哉だ。言われた通りピース全部集めて来たぞ」

 

『……アイコトバハ?』

 

 

 なんか声が聞き覚えのないヤツなんだけど。ヘリウムガスでも使ったのか? ま、そんなことはどうでもいいさ。

 

 

「……《びゃくやさんへあいをこめて》」

 

『……ヨシ、オッケーダ』

 

『アンショウバンゴウハ《28282》、ニヤニヤニャーン』

 

 

 合言葉と言い、暗唱番号といい、お前らおふざけでこんなの作ったの? 合言葉の『びゃくやさん』って優子が考えた可能性が高くね? 俺の事をさん付けで呼ぶの彼女ぐらいだし。暗唱番号は桃が考えた可能性があるな。変更前の暗唱番号にも『ニャーン』があったし。共犯者、さらに二名が浮上したのか?

 

 

「28282……よし、開いたぞ」

 

『……ならばこのまま部屋まで進むと良い。貴様に見せたいものが──あっ』

 

「変声するの忘れないでもろて」

 

 

 ここで聞き覚えのある声が聞こえたけど、その事を指摘するだけにしてさっさと入らせてもらいますわ。そろそろこんな事をさせた目的を聞きたいんでね。

 

 とりあえずこのままお邪魔して、先に進んで……一応警戒心は強めでいこう。さっきの聞き覚えのある声が、可能性がない方が大きいけど知らん常習犯の物真似である可能性もあり得るからな。いつでも召喚師覚醒フォームになれるように、セイクリッド・ランスを解放できるように……

 

 

「ふぅ………………行くか」

 

 

 よし、準備完了‼︎ とりあえずそのリビングへのドアを開けさせてもらおう‼︎ とりゃー‼︎

 

 

 

《白哉(さん)(くん)(殿)、ハッピーバースデー‼︎》

 

 

 

 複数人による声援が響いたのと同時に、複数ものクラッカーの鳴る音が聞こえてきた。

 

 

「………………は?」

 

 

 ハッピー、バースデー……? は……?

 

 

「白哉さん、お誕生日おめでとうございます‼︎」

 

「白哉くん、おめでとう」

 

「おめでとう白哉、みんな待っていたわよ‼︎」

 

「白哉君、今日はみんなで盛大に祝福されてくれ‼︎」

 

「ホントにおめでとうね〜」

 

「おめでとうございますッス」

 

「……今日、君にはいっぱい楽しんでいってほしい」

 

「白哉君のために、みんなで結構準備させてもらったからね‼︎ 訳あって兄さんが暴走しそうになったけど」

 

「我の偉大なる祝福の準備が……」

 

「ウチも料理で祝おうと思ったけど、何故か途中で止められてもうたけどなぁ」

 

「リコ君は訳ありで控えさせてもらったから……」

 

 

 呆気に取られながらも各々の祝福の言葉を挙げられる俺氏。ふと辺りを見回せば、部屋中にはホームパーティーでありがちな装飾が一段と飾られており、あり得た可能性の低いシリアス要素は微塵も見当たらなかった。

 

 優子がこの部屋にいるだろうとは想定していた。桃もいるだろうとも想定していた。柘榴さんもいることは確信していた。ここに来るまでに来た×マークのところからして、色んな人達も共犯でここに来ているだろうとは想定していた。

 

 ただ一つ……ただ一つだけ、想定していなかったことがあった。それは……

 

 

 

「俺、今日で誕生日迎えてたの?」

 

 

 

《⁉︎》

 

 

 今日までに色々と濃厚なイベントがあったから、今日で俺が誕生日を迎えたということを忘れていたことだ。自分の誕生日を忘れるとか何やってんの俺?

 

 

「ちょ、ちょっと白哉さん⁉︎ あ、貴方今日が自分の誕生日なのを忘れていたんですか⁉︎」

 

「お、おう。お恥かしながら、今年色々あったせいで気づいてなくてな……」

 

 

 優子にすごい切羽詰まられたんだけど……素で今日が自分の誕生日であることを忘れていたのが申し訳ない……

 

 

「えっと……お、怒っていたからそんな反応を見せているってわけじゃないの……? なんかごめんね……?」

 

「いや違うから。何だろうなとは警戒していたけれど、怒っているわけじゃないから。色々あってガチで忘れてただけだから。お願い、信じてくれない?」

 

 

 というか桃、お前ガチでの申し訳無さげな感じに顔に影を落とすのやめてくれない? こっちの方が申し訳無く感じて結構傷つくんだけど。

 

 まぁ、俺も最初は仲間外れにされてるような感じがして寂しかったって思っていたけどな。っていうか今気づいたけど、もしも俺が誕生日であることを覚えていたら用事があると嘯かれた俺がどういう感情になってしまわないかとか、そういうこと考えたことあるの? そこらへんは考慮して?

 

 

「そんなことよりも、よくこんな用意周到なことをしようと思えるなお前ら。ここまでされて正直戸惑ったぞ」

 

「まーね。この日のために私達は事前に色んな人達に協力をお願いしたからね‼︎ ……即でのOKをしてくれるとは正直思ってもいなかったけど」

 

 

 それはこの町の人達が非常に優しすぎるからでは? さすがの杏里でも不安だったみたいだけど。

 

 

「実は当日も平地くんがあちこちの×マークに来るまでは大変だったッスよ。知らない人とかが誤ってピースを奪わないかを監視するために交代交代でこっそりと隠れて、平地くんがピースを取ったところを確認するまでずっと身を潜めてたッスから」

 

「それはそれで大変でございやしたね」

 

 

 っていうか俺が各×マークに来た時も陰から見られてたの? 全く気が付かなかったんだけど。確かに突然見知らぬものが置かれたらそりゃみんな警戒するだろうけどさ。後お前らよく身を潜められてたな。そしてよく素早くここに戻ってこれたな。腕の良いスパイか何かか?

 

 

「けどまぁ……こんな用意周到なことをやってまでして、俺の誕生日を祝おうとしてくれたのはすごく嬉しいよ。ありがとうなみんな、手間を掛けさせてもらって」

 

「我はもっと盛大に祝いたかったのだがな‼︎」

 

「さっきも似たことを言ったけど、兄さんの祝福はとんでもないことになるから止めておいたよ」

 

「あ、そうですか」

 

 

 とんでもないことになる祝福って何? ブラムさん、一体どんなことをして俺の誕生日を祝うつもりだったのですか? 取り返しのつかないことや大事になるようなことならやめてくれません? まぁ祝ってくれるのは嬉しいですけどね。

 

 

「ウガルルも蓮子もありがとうな。二人とも今日が俺の誕生日であることを聞いたばかりだってのに、みんなに協力してくれて」

 

「んがっ‼︎ 俺、いつかボスの眷属にお礼がしたイと思っていタ。それを今日するコトができタ。だかラ何の問題モなイ‼︎」

 

「僕は主人様が何かしらの暴走がしないか不安で、思ったよりは作業に集中できなかったですけどね……」

 

「それだけでも助かるよマジで。あいつもブラムさん並にやらかしそうな気がするから」

 

「それ、どういう意味だい?」

 

 

 お前の過保護さのあり過ぎる祝福の仕方が、ブラムさんが本来したいとか言うだろう祝福の仕方と似たような境遇の可能性があり得るからなんだよ。どっちかというとお前の方が安心感があるけどな。

 

 

「まぁとにかく、白哉が喜んでくれたのならモーマンタイ……と言った方がいいのかな?」

 

「おう、そういうことにしてくれ。寧ろそうでないと逆に強張るから」

 

「じゃあそういうことにしておくわ。ささっ、そろそろパーティーを始めましょうか」

 

「そうだな。さ、我がむ……白哉よ、そこの特等席に座ってくれ」

 

「お、おう。ありがとう……」

 

 

 また俺の事で気を重くされると困るから早く始めようかと促したら、突然背後にいたピエロのマスクに衣装という、完全にピエロのコスプレをした二人の人物に俺専用だという椅子に座るよう誘導された。この誕生日パーティーの主催者みたいなポジションの人達なのか? にしても誰がこんなコスプレを───

 

 

 

《ところでそちらのピエロのコスプレをした二人組の人達、どちら様ですか?》

 

 

 

「………………はい?」

 

 

 えっ? は……えっ? 一同戸惑っている? この二人はお呼びではない? そもそも正体が誰なのかも分からないご様子ですか? えっ、じゃあこの二人は一体何者なの? 律儀に顔を隠して分かり辛くして……怖っ……

 

 こ、これはアレだな。これこそいつでも戦闘態勢に入れるようにしないとだな。まずは相手の様子を伺って……

 

 

「待って待って、そう睨まないで。分かった、分かったから。教える、正体について教えるから。そんな目で睨まないで白ちゃん」

 

「別に睨んでなんかな───えっ?」

 

 

 今、俺の事を『白ちゃん』って呼ばなかったか? 俺の事を『白ちゃん』って呼ぶのは母さんぐらいしかいないって。ということは、このピエロコスの人達、もしや……

 

 

「母さん、父さん……二人とも何してんの?」

 

「あっ、バレた……」

 

「お前が白ちゃんと言うから確定されるに決まってるだろう」

 

 

 一人がエヘヘみたいな反応を、もう一人がその反応を見て呆れたような様子を見せる。そして正体がバレたことで諦めを覚えたのか、二人揃ってピエロのマスクをゆっくりと脱ぎ取った。一人はどこかが引っ掛かったのか手間取っているようだが。

 

 マスクを脱ぐのに手間取った方は二十代前半みたいな可愛く美しい顔立ちをしている、夕日のように明るい赤色で艶やかなロングヘアーを持つ美女。手間取ってない方は三十代前半のキリッとしながらも逞しさのある顔立ちで、小さなツンツンがたくさんある黒髪の中に濃い紫色のメッシュがある勇ましさの強い男性だった。

 

 はい出ましたこの年齢に合わず結構若い顔立ちの二人組、やっぱり俺の父さんと母さんです。やっぱりピエロの正体はこの二人だったようやな。

 

 

「えっ⁉︎ 白哉の両親の方達⁉︎」

 

「い、いつの間に俺達の輪の中に⁉︎」

 

「あ、一昨日ぶりだー。思ったよりもかなり早い再会だねー」

 

「ボスの眷属の親‼︎ また会えテ嬉しイゾ‼︎」

 

「えっと……あの時の件はお世話になりました……?」

 

 

 案の定というべきか、いつの間にか紛れていた二人の正体を知った途端のみんなの反応がちょっと面白かった。いやそこは笑うところではないとは思うけど……

 

 

「というか二人とも、みんなからの反応からしてお呼ばれされなかったみたいだけど、なんでこの場に紛れるようになったんだ?」

 

「いやぁ、最初はサプライズとしてアポ無しでプレゼントを直渡ししようと思っていたのよ? でも白ちゃんが出掛けている時に身を潜めていた良子ちゃんとしおんちゃんを見かけてね? もしかして彼女達も白ちゃんへのサプライズのために何かしてるのかなって思ってたら、つい……ね?」

 

「誰にも気づかれぬよう、後をつけてなんとかここの輪に紛れたってわけだ。俺は尾行することは乗り気ではなかったがな」

 

 

 あぁなるほど。ドッキリを仕掛けるためにプレゼントを直接渡しに来たら、ほとんど行き当たりばったりな感じで優子達と一緒に祝う方向性に変えたってわけか。よくバレずにみんなの輪の中に入り込めたな二人とも、普通どっかのタイミングで気づかれてもおかしくなかったぞ。

 

 というか、後をつけていたって……何普通に犯罪ムーヴをかましてたんだよ。父さんの方は反対の意思があったみたいだけど、大人二人が揃いも揃って女子高生と幼女の後をつけるとか、なんつーストーカー行為してんねん。バレたら通報案件不可避だったぞ。

 

 

「俺にサプライズをしようとするその精神は良い。だけどアンタらに気づかれないように後をつかれた良子ちゃんと小倉さんには謝った方がいい。特に母さんは。本来ならストーカー行為は警察沙汰だけどな」

 

「アッハイ………………良子ちゃん、怖いことしてごめんね?」

 

「小倉も、すまなかった……」

 

「あ、ううん。悪意はないみたいだし、別に気にしてないから」

 

「堂々と後をつけれるなんて尊敬しちゃうから、寧ろ無問題ですよぉ〜」

 

 

 両親に良子ちゃんと小倉さんへの謝罪を促し、二人からの許しを受けさせた俺氏、なんかこの時だけ親よりも偉くなった気分に浸れた気がする。これが将軍や皇帝になった人の気持ちなのかな、俺の個人的意見だけど。

 

 

「さてと……この話はおしまい。そろそろ始めてくれないか? パーティーを。ぶっちゃけここからが楽しみすぎて仕方がないんだよ、俺。へへへっ……」

 

「ニヘラニヘラな白哉さんの笑顔、初めて見ました……」

 

「いや、ニヘラニヘラって何だよ……」

 

 

 

 

 

 

 はっきり言って、誕生日パーティーは滅茶苦茶楽しかった。料理もどれも美味いのばっかりだったし、ゲームも結構楽しめた。召喚獣達によるコントとか、いつの間にか杏里や小倉さん・勝弥に全蔵が練習していたバンド演奏(楽器はどこでどう手に入れたんだ……?)とか、とにかく楽しい出し物を用意してくれた。

 

 プレゼントももらって嬉しいものばかりだった。男性用化粧品とかワイヤレスイヤホンとか、洋服とか筆記用具とか……どれも今後の生活で役に立つものばかりで結構嬉しい。

 

 ただ、個人的に男子があげそうなプレゼントであるプラモデルはちょっと……プレゼントとしてはどうなんだろうな……専門の用具なしでも組み立てられるタイプのものだったからまだよかったものの、素直に喜べるものではないんだよな……

 

 ゲームも色々と面白いものばかりだった。椅子取りゲーム(リコさん勝利)とか大人数でのUNO(奈々さん逆転勝利)とか、後は王様ゲームもあった。

 

 王様ゲームの方はみんな面白い命令をしていたな。相手の好きな○○を当てないとハリセン叩きだとか(勝弥に桃のを当てるように杏里が命令して失敗)、セクシーポーズ勝負をするようにとか(拓海がミカンと全蔵に命令してミカンが赤っ恥ながらも勝利)、三回クルクル華麗に回ってワンと言うとか(小倉さんがブラムさんに命令されたものの羞恥よりも息切れが勝った)……

 

 一番キツかったのが、ほっぺにチューするという命令だが、組み合わせが俺と優子の場合はベロチューとするという、おふざけが過ぎる上に俺と優子を公開処刑する気満々な限定的命令に怒りを覚えたよ。しかも命令した人が桃じゃなくて母さんだという……

 

 これにより、みんなに俺達のベロチューを見られたということで優子がしばらく羞恥で放心状態になったものの、母さんは父さんからの説教を受ける羽目に。痛い目に遭ってくれたのはある意味助かったぜ。これで少しは反省してくれ母さん。

 

 で、パーティーが終わって解散し、今は優子を自室に連れていくことになったところである。

 

 

「いやぁ色々とありすぎたけど、結構楽しかったな」

 

「私は一部記憶が飛んじゃいましたけどね……」

 

「アレは仕方ないだろ。あんな命令した母さんが悪い、間違いない。あのからかい上手の桃でもドン引きする程だったぞ」

 

 

 まぁ、王様ゲームのルールとはいえ素直にあの命令に従った俺達も俺達なんだがな……とはいっても、意を決したような表情になった優子が半ば強引にキスしてきたんだけどな。無茶するから放心状態になるに決まってるでしょうが。一方の俺はなんで放心しなかったのかは自分でも不思議に思っているんだけどさ……

 

 あっそうだ、別に伝え忘れていたわけじゃないけど伝え忘れていたことがあるんだった(哲学かよ)。

 

 

「優子、誕生日プレゼントありがとうな。これ、大事にするからな」

 

「あ、い、いえ‼︎ 喜んでくれたのなら何よりです‼︎」

 

 

 優子がくれたプレゼント、それは清子さんに編み方を教わりながら作ったのであろう、赤紫色の手編みのマフラーだ。温かくて、もふもふでめっちゃ触り心地が良い。一体どこでこんな生地を見つけたのだろうかと気になってしまう程のクオリティだ。なんとかの杖を上品な布生地を作れる杖にして生成したのか? 錬金術師か?

 

 

「そういえば……お前からの誕生日プレゼントで思い出したけど、去年はお揃いの柄のハンカチにしたんだっけか? それもそこそこ値段の高い生地を再利用してお前が作ったヤツ。あの時の貧乏だったお前にしてはよく資質の良いもん使ったもんだな」

 

「そ、その事は言わないでください……あの頃はまだ付き合ってもないのに、なんであんな愛の重たいものを作ったんだろうって今でも申し訳なく思ってますから……それに余った生地で私の分までをも作ってしまって……」

 

 

 そうは言うけど、ぶっちゃけすごいよ? そういう方向性で実行できるなんて、そう簡単にできることじゃないよ? 発想と実現する意欲が余りすぎてね? その時のお前。

 

 

「そうしてしまうほど、お前は俺の事を好きになってくれたんだろ? こんなにも可愛くて誰にでも優しい女の子の恋人になれて、俺はすごく嬉しい限りだよ」

 

「そっ、そうですか? そうなん、ですね……えへへっ。で、でしたら来年は可愛いコーデした手錠でも───」

 

「手錠なんてどうやって手に入れるんだよ。っていうか怖い怖い怖い怖い、プレゼントに手錠をあげるとか絶対良からぬこと考えてるだろ」

 

「冗談ですよ。独占できる時間がほしいのは変わりないですけど、白哉さんを苦しませるようなことはしませんから……ね♡」

 

 

 あの、すみません。わざと見せつけるかの如く目のハイライトが消えた笑顔を見せてくるのやめてくれませんか。本当は本気で無理矢理にでも独占する気満々ですと言っているようなもんだよその表情は。

 

 ……ま、そんな性格があることを知りながらも告白したのが俺なんですけどね。我ながら根性あったなー俺。

 

 

「………………あの、白哉さん」

 

「ん? なんだ?」

 

「じ、実はその……白哉さんへの誕生日プレゼント、もう一つ用意しているんです。で、でもみんなの前では見せられないので、白哉さんと二人きりになった時に用意したいのですが、いいですか……?」

 

 

 みんなの前では見せられないプレゼント……? えっ何それ。愛の重い感じのものである可能性はあるのだろうけど、それを渡すことを宣言されたら気になって仕方がないんですが……

 

 

「おう。わざわざ俺に渡すために用意してくれたんだろ? 是非見てみたいものだよ」

 

「ほ、本当ですか……‼︎ で、では早速準備してきます……‼︎ あっ隣の部屋、お借りしますね‼︎」

 

 

 そう言って優子は、いつの間にか持ってきていた紙袋を持って別室へと行ってしまった。部屋を移動してまで準備するもの……組み立てとかが必要なヤツなのか? だとしたら時間がかかりそうだな。

 

 なんかハラハラッと布の落ちる音が何回か別室から聞こえたんだけど、なんか嫌な予感がするんだが。色んな意味で。

 

 

「お、お待たせしました。こ、こちらに入って来てください……」

 

 

 あ、数分で準備が終わったのか。短くても二十分くらいかかるのかと思ってたんだが、実際にかかったのはその半分である十分くらいか。思ったよりもそんなにかからなかったんだな。それはそれでお互い助かるけどさ。

 

 

「待っててくれ、すぐそっちに行くよ」

 

 

 さてと、別室に行くためにオープン・ザ・ドアっと。優子は一体どんなものを用意してプレゼントしようと───

 

 

 

 一瞬とはいえ、思わず言葉を失ってしまった。今の優子の恰好が、一糸纏わぬ姿──全裸──の上に胸や下半身、それぞれの大事な部分を隠すように赤いリボンを巻いているという、危機管理フォームよりも露出度がかなり高い衣装となっていた。

 

 

 

「あ、改めて白哉さん……た、誕生日……お、おめでとうございます……も、もう一つのプレゼントは……わ、私、です……♡」

 

 

 刹那、己のタガが外れたかのような感覚を覚えた。気がつけば俺はその場で優子を押し倒し、彼女の唇を奪った。

 

 

「………………そのプレゼントの中身、隅々まで見させて使わせてもらうからな?」

 

「ッ………………はい♡」

 

 

 嗚呼、やばい。今日は自分から干からびにいきそうだ……

 

 




この日が白哉君の誕生日ってわけじゃないですけど、物語の流れ的にも、そして一回はやってみたいなって感じで、白哉君の誕生日回をやらせていただきました。

実はまだオリジナル回があるので、それと登場人物紹介を投稿したら原作五巻編を投稿します。お楽しみに‼︎
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