偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語 作:名無しのモンスター
面接で就職させる人決めれるなら頭の悪い猿でもできるわクソが。
それはそうと、今回はウガルルの仕事先を探す回です。また拓海の親バカが見られるのか……?
よっす、ただいま。白哉だ。
優子とミカン、あと拓海と一緒に学校から帰って来てたら(桃は柘榴さんのところに行った模様)、ウガルルがばんだ荘の前で掃き掃除をしていたのを目撃したぜ。本人曰く、これは門番をしているついでに掃除しているようだ。ただ敵が来ない上に俺達最近急ぎの用事が無いため暇な模様。
いや敵は来ない方がいいぞ。来たらそいつの強さとかヤバさ次第で町に大変なことが起きるって。
「ボス! この町で新しい仕事見繕ってくレ。オレのボスならオレに合う仕事、見つけてくれるだろウ‼︎」
「オレのボス……‼︎ わっかりました‼︎ 貴方のボスに何でもまかせるが良い‼︎」
「優子……ボスと呼ばれるようになって嬉しくなるのはいいことだけどよ、あんまり調子に乗らない方がいいぞ? 悪いことしてなくても痛い目に遭うことだってあるからな」
優子……ボスと呼ばれるようになって嬉しくなるのはいいことだけどよ、あんまり調子に乗らない方がいいぞ? 悪いことしてなくても痛い目に遭うことだってあるからな。
「……なんか、言ったことを頭の中で復唱しているかのような顔になっていたわよ?」
「キッショ……なんでわかるんだよ」
「頭にメロンパンの化け物みたいなのが寄生した呪詛師か何かかい?」
あ、拓海は○術○戦の事を知ってるのね。メロンパンというネタの言葉が出たってことは、きっとそうなんだろ? なぁ、そうなんだろう?(圧)
まぁそんなことは置いておいて。
ウガルルの頼み事をえらく安請け合いした優子であったが、今回は優子にも自信がアリアリのようで。人間だろうと魔族だろうと(優子とは関わりのない魔法少女以外なら)大歓迎で人手不足な優子のバイト先……そう、喫茶あすらに連絡するとのこと。
で、早速優子がスマホで連絡しようとするも……まさかの、というかこちらとしては予想的中なバッテリー切れである。
「電池なんでじゃいっ‼︎ 頑張れハイテクよ‼︎」
「複数のゲームアプリをたくさん起動したからだろ。アプリは偶に落とせとあれほど言ったのに、結局やらなかったのかよ……」
「こ、こういう場面で影響されるんですか。忠告は聞くべきでした……つらたん」
うわお、『つらたん』なんて言葉を実際に聞くのは初めてだな。なんか少し古さを感じていたものだから、今の時代だと絶対聞かないと思ったんだが。
その話題も置いておいて。代わりに俺が自分のスマホで連絡を入れてみたところ、あすらは原作通りの留守番状態となっていた。というわけで直行して行くことに。というわけで俺も同行しよう。死亡フラグじゃねェからな? 絶対に。
「俺も一緒に行くよ。ウガルルちゃんの勇姿を見届けたいからね」
「私もついて行くわ。私、あの子の同居人みたいなものだし」
「自分をウガルルの父親だと信じてやまない男と、ウガルルの実の母親のコンビか。やれやれ、頼りになるけど面倒臭そうだぜ……」
「実の母親って……違うから‼︎ 親になったわけじゃないから‼︎」
そうは言うけどよぉ……ウガルルの再召喚に成功した後、彼女に仕事とかが見つかるまでここに住めとかマイファミリーだとか言っておいて、母親認識はやめてだなんてそりゃ無理なわけなんよ。自分の言葉には責任を持ちなさいな。
『魔力をもって魂的なものを育んだなら、それは魂のママだぞ。余もそうやって子孫を増やしたのだ』
「えっそうなんですか⁉︎」
「………………すんません。優子には失礼ですが、魔力というか別の手段で子孫を産んだものかと思ってます。一族の強さの問題とか格好とかで色々……」
『なんかよく分からんが、それシャミ子よりも余の方が一番失礼な目に遭ってないか⁉︎』
日頃の行いを白龍様と一緒に振り返ってから出直してください。【えっ?】
後、優子? 分かりきっていたことだけど顔真っ赤にするのやめてもらっていいか? そしてミカンと拓海に気づかれないように息を荒げるのやめてもらっていいか? 妄想してるよな? 絶対子孫の増やし方を理解して何かしらの妄想してるよな? その惚悦とした顔やめて? 身構えてしまうから。
『まっ……まぁとにかくだ。ミカンよ、腹を括って認知するが良い……お主はこれから十五歳ママ魔法少女として活動するのだ……』
「認知って言い方良くないわ‼︎」
確かにその言い方はまずいな。認知しろって言い方がまるで無責任で女を妊娠させた糞男に言っているかのようなものだし、何より十五歳でママとか色々と闇が深く聞こえるから……
「あの……すみません、リリスさん。俺の霊力はウガルルちゃんを陽夏木さんの中である程度の原型を保たせていますし、彼女の依代を作ることに応用させるために混ぜてもあります。正直に言って俺の霊力もあってウガルルちゃんは再召喚されたのですから、俺もウガルルちゃんの十五歳パパ陰陽師ってことには……?」
「「「『えっ?」」」』
おい、また変なこと言ってるぞこの自称・親バカが。どうしてもウガルルの親権を握ろうとしてるじゃん。姑息な言い訳してくるじゃん。お前さすがに引っ込めよ。
『え ゙っ。………………お、お主の霊力が魔力と似てなるものであれば、その方法でだと実質お主も産みの親になるのかもしれん気がするな……?』
「いや納得しないで⁉︎ そして私はこれにはどう言い返せばいいの⁉︎」
「笑えばいいと思うよ」
「シン○君か何か?」
すまん。適当な対応してしまったわ。だから綾○レ○みたいにホントに笑うのやめてくれない? 原作○ヴァじゃなかったら罪悪感がデカいのよマジで。
まぁそんなことはおいといて、拓海に一言……
「拓海……ウガルルの親になるなら色々と責任取れよ」
「は?」
「………………ッ」
あ、すまんミカン。また顔を真っ赤にしたってことは聞こえてたってことか。さらにまた拓海の事を意識しやがって……応援してるぞ。
♢
で、あすらに行ってみたところ、何故かドアに『臨時休業』の看板がぶら下げられていた。なんか定休日以外では絶対休みそうにないと思うんだよなぁ個人的に。一体何があったのだろうか(我ながら白々しい)。
とりあえず店の中にリコさんも白澤さんもいたので、事情を聞きたいとか言ったら、すんなりと入れてくれたわけで。で、一体何があったのですか?(だから白々しいって)?
「リコ君が料理スランプになってしまったのだ」
「あの料理好き過ぎなリコ先輩が、スランプに……⁉︎」
「おいその反応は失礼だろ」
目を見開くな。迫真の演技すんな。後その言葉は何かしらの怒りを持っているんだろ、絶対そうだろ。
「この前ウチ、全力の唐揚げ拵えたやろ? それ以来、作る料理作る料理気合い入りすぎるようになってしもうて……何作っても食うた人がガンギマってしまうんや」
「ガンギマるとは……?」
「大麻や覚せい剤を飲んだ後みたいに、テンションとかが色々とおかしくなっちまうことを言うんだよ」
「それ色々な方向性でヤバいのでは⁉︎」
ぶっちゃけヤバいけど、それは大麻や覚せい剤を飲んでしまった場合の話。リコさんの料理の場合は一時的なだけだから多分大丈夫……だと思う。じゃないと店はやっていけないでしょ。
しかもその時に作って失敗した料理は全て、しまった冷蔵庫をぶち抜く程の光を放つ程のヤバさだとのこと。ちなみにリコさんは料理を粗末にしたくないとのことで冷蔵庫に入れたとのことで、後で白澤さんに食べてもらうつもりのようだ。白澤さんへの扱いは粗末にしないでくれます? 彼がガンギマったらヤバいですって。
えっ? なんでここでリコさんが言った時のところを出さなかったのかって? いや、その……なんとなく俺が説明したかったってなだけなんです。ただ気分でやっただけなんです。本当に申し訳ございませんでした……
おっといけない、本題の事を忘れていたわ。ほらウガルル、自分の本題は自分でお願いしといて。
「オレ、この店デ使ってくレ‼︎ なんでもやル! 二十四時間サービスで働ク! オレ、頑張ル‼︎」
「今時の子には珍しいスピリットだ……‼︎」
「……マジで二十四時間も働かせないでくださいよ? コンビニ店員でもやりませんし、ブラック企業扱いで社会的に取り締まられますよ?」
「いやそれくらい分かってるから⁉︎ そもそもウチの店は二十四時間営業じゃないし⁉︎」
すみません、どんな人でもここで働かせてあげられるそのお人良さを試そうとしてました。一瞬人が悪いことをしてしまいました。ホンマにすみませんでした。次からは気をつけます(うっかりやっちゃいそうなのでやらないとは言ってない)。
召喚されたばかりでまだ日も長くないのにやる気十分なウガルルの勇気を白澤さんは買うも、まずは研修からとのことだが……ウガルル、まさかのカタカナすら読めないでいた。こんなにも最先不安になることってある? 少し予想はついたけども。
「ウガルルはまだ字は勉強中で、数字も十以上は苦手なの。柑橘と蜜柑と檸檬は教えたわ。大事よ」
「なんて無駄なリソースを‼︎」
うん、正論。別に柑橘類はカタカナで覚えれば充分だろ。漢字で覚える必要があるの、ネプ○ーグの時ぐらいなだけじゃね? そもそも一般人がネプリーグに出られるわけないし。
「陽夏木さん‼︎ 君は母親としての自覚が無さすぎる‼︎ もっと基礎的なものを先に教えるべきだ‼︎ 俺が父親なら当然そうしていた‼︎ それらの漢字を教えて覚えさせても、後で『なんのこっちゃ』と思われる可能性がある‼︎」
「そ、それはそうだけど……って母親じゃないから‼︎ とりあえず親目線になるのもやめて⁉︎」
うわここでまた出たよ、自称・ウガルルのパパの親バカモードが。ホント何偉そうにウガルルの父親ぶってんだよお前は。まだ(?)認識されてないんだから偉そうにすんなよ。
「そしたら裏で料理を練習して貰おうか」
「オレ、手の毛ボーボーだゾ。厨房ニ毛まみレで入っていいのカ……?」
「んんん〜ッ‼︎ そこを深く考えるとこのお店の人ほぼみんなアウトだからやめようか‼︎」
ほぼってことは拓海は含まれないようだ。そこは当然っちゃ当然だな。
で、実際に厨房に立たせてあげてみたものの……ナイフの持ち方が両手持ちで危なっかしい。得意な爪で食材を切ってみたらまな板どころか台所まで切断。ついでにその時に白澤さんの右耳……じゃなくて耳毛も一緒に切断……
これは大失敗とかの問題じゃねェよヤベェよ。ウガルル本人もやっちまったって顔で血の気が引いてるし。まぁ、唯一良かったのは爪で切られた食材の繊維が潰れてないってところだけど。
しかし、それでも白澤さんはウガルルの事を責める気は一切なかった。それどころか。
「ウガルル君ができないことを教えるのではなく、この世界でできることを教えてあげよう。そのためにはまずたくさん失敗することだよ」
「おぉ……‼︎」
思わず歓喜の声を上げてしまった俺氏。その人の長所を活かせる仕事を見つけるために、まずは失敗を恐れず何事も挑戦することが大事……そんなメッセージが込められているかのようなアドバイスを、白澤さんはウガルルに送ったからだ。
ヤバい、全人類皆こんな度量の良い人であってほしい……いや、そうでないと困る。特に職場環境では絶対必須な上司だよマジで。ブラック上司は糞喰らえ。白澤さんマジ理想の上司。最悪部下を殺す事もあるフリー○様よりも理想なのかもしれねェ。
ちなみに台所が破壊されてしまうことはこれが初めてではない模様。昔のリコさんが店に火を噴かせてしまったことに比べたら、ウガルルの失敗は十万倍マシだとか……店に火を噴かせたって何? 昔のリコさんは一体どんな事をしたらバカ強い火を噴き出させることができるのさ? リコさん、これまでにも何をやらかしたんです?
「あの……さっきから私……ウガルルの同居人として言いたいことが。向いてる仕事じゃなくて……ウガルル自身のやりたい仕事って何なのかしら」
「確かにそれは気になるね。人にはやりたい仕事とかたくさんものだし、それに見合った仕事を見つけてはすぐに挑戦する精神が長く保たれるようにしないと」
ここでミカンと拓海がウガルルに合わせた提案を出してくれた。産まれたばかりの子の心に合わせようとしている……お前らやっぱり夫婦になった方が良くね? そして幸せになれこんちくしょーが。
「オレ、使い魔。頼まれた仕事ガやりたい仕事‼︎」
「もう使い魔じゃないんだって。何か貴方自身の願望を見つけて欲しいのよ」
「他の人の意見に振り回されず、自分はこうしたいんだっていうのを出して、取り組めるようにしないと」
一理あるな。他人に言われるがままになって自分の本心に従わず、それで色々と挫いてしまったら元も子もない。自分がどうしたいのか、自分が本当は何がしたいのかをはっきりとさせて、それを実行していけば本当の自分も見つけられて一石二鳥だと俺は思うよ。
とはいっても、一方のウガルルはまだ再召喚されて間もないから、まだ自分のしたいことが何なのかが分からないけどな。まぁ食欲があることはまだマシなもんだがな。
そんな事を考えていたら、何やら不吉な衝撃音が響いてきた。どうやら謎の原理で冷蔵庫が爆発したようだが───
『ゴ…ゴ…ゴハンヤデ…クエヤ…クエ…』
「ギャアアアアアアアアアッ⁉︎」
「ヒィッ‼︎ マジで何⁉︎」
お、思わずどえらい悲鳴を上げてしまった……だって原作知識でこうなるとは分かっていたとはいえ、突然禍々しく動いた冷蔵庫が黒いモヤを出しながら喋って動いているんだよ? 思ったよりもホラーじゃんか……
「なっ……あれは……料理の強い魔力が冷蔵庫を動かしとる……純度の高い魔力料理達が冷蔵庫の中で共食いし合った結果、強力な呪いとなって冷蔵庫を乗ったんだんや‼︎」
「説明されても何も入ってこない‼︎」
「ってか料理が共食いし合ったって何だよ⁉︎」
今、原作読んでたけど読み逃していたところがあったみたいなワードが聞こえたんだが⁉︎ 料理……というか調理されていない動物でもないものが共食いって何だよ⁉︎ 一体どんな原理になったら料理が別の料理を食うんだよ⁉︎ 小倉さん興味津々案件じゃねェか⁉︎
と、とにかくあの暴走冷蔵庫を止めないと、店どころか町が危ないってマジで……‼︎ なんか思ったよりも魔力が強いみたいだし……‼︎
えっ? ご飯はなるべく粗末にしたくない? リコさんこんな時にそれ言わんといてくれます⁉︎ そんな事言っていい状況じゃないんですよ今は‼︎ 下手したらアンタの料理を作って振る舞えるこの店が壊れるんスよ‼︎
「じゃあ私が散らしますか」
「ミカン君お願いできるかね!」
「俺もやります。これ以上店が壊れたら取り返しがつかない……‼︎」
暴走冷蔵庫を破壊すべく、ミカンと拓海が魔力の矢やら陰陽札やらを展開する。さっさと破壊した方が残るは冷蔵庫の破片と散った魔力料理となるだけだし、それほど被害は出ないとは思うが……
「アカーン‼︎ あの料理はウチの子や‼︎」
案の定、魔力料理を作った本人がそれを許すわけも無かった。リコさんがミカンと拓海に飛びついてきて妨害に入っていく。ってかウチの子て。言い方。
……ん? アレ? なんか拓海を押してるような……しかも彼の目の前にミカンがいて……
「後生やからウチの子を殺さんといて‼︎ 生まれたての最高傑作なんや‼︎ 堪忍して〜‼︎」
「あっ、ちょっ、やりづらぁい‼︎」
「わっ、あのっリコ先輩押さないでください倒れ───」
ムニュッ
「んひゃっ⁉︎」
「あっ……」
「「あっ……」」
おいなんか既視感があるんだがこの流れ。押し飛ばされた拓海の顔がたまたまミカンの胸に突っ込んだんだけど。そして最終的には床ドン状態になってるんだけど。これ、俺が優子にラッキースケベの被害に遭わせてしまった時みたいになってね?
「えっちょっ……えっ⁉︎ えっ⁉︎ た、たたたた、拓海が……わ、わわ、私の……お、おぱっ、おっぱっ……ガクッ」
「プハァッ‼︎ だ、大丈夫だったかい陽夏木さ……陽夏木さァァァァァァんッ⁉︎」
あーあ、案の定何かしらの反応を見せると思ったけど、まさかミカンが顔を真っ赤にして気絶するとは……いやまぁ、先程の瞬間からして恥じらうかラブコメみたいに羞恥ビンタが起きるだろうなとは思ってはいたけど、まさかの錯乱からの気絶方面になるとはな……
ってんなこと考えてる場合じゃねェ⁉︎ 冷蔵庫‼︎ 暴走冷蔵庫の方をなんとかしないといけないやんけ‼︎ なんかミカンと拓海の方を見てる気がするんだけどあの暴走冷蔵庫⁉︎
と、そんな事を考えていたら、透明化を解いたのであろう拓海の式神・蓮子が突然その姿を現した。しかも状況をちゃんと理解してか陰陽札を持って構えていた。
「主人様、ここは僕に任せて陽夏木さんの介抱をしていてください‼︎ 霊力に似たもののみで動いたものならば、僕みたいな式神がソロでも祓えますので───」
「あっそこの式神さんも堪忍して‼︎ 食わないにしてももうちょい自由にさせといて〜‼︎」
「グエッ⁉︎ 脚でヘッドロックしてきたよこの人ッ⁉︎」
結局彼もリコさんのもったいない精神に適うはずもなく。いつの間にか蓮子の背後に飛びついて思いっきりプロレスみたいな技で妨害を起こした。いやどんだけ暴走冷蔵庫……というよりも自分の作った魔力料理を粗末にされたくないんだよこの人は。空気読んで?
「てんちょおおおっ‼︎」
「あ、ヤベッ⁉︎」
と、そんな感じに呆れていたらいつの間にか白澤さんが暴走冷蔵庫の魔力に捕まってしまっていた。ケモノの触手シーンって誰得だよ。ヤベッ、こんな時なのに気分悪くなりそう……
【おいマスター、これは一体どんな状況なんだよ】
【ウワァ……バグさんが締め付けられてるよォ……】
これは運が良いと言うべきか、二匹の動物……正しくは一匹の動物と一匹の生物がこの店に入ってきた。この声とあの見た目、俺は知っているぞ……‼︎
動物の方は白い体毛、黒い筋肉、後頭部にサラサラとした黄色いロングヘヤーが靡いているゴリラ。俺が召喚師覚醒フォームになることで呼び出せる召喚獣の一体・剛鬼である。
生物と解釈している方は、様々な動物を合成しているかのような存在だった。全体の色は青白く、額の一本角が鋭利かつ金色に輝いていた。顔は龍に似て、牛の尾と馬の蹄をもち、麒角、中の一角生肉。背毛は五色に彩られ、毛は黄色く、身体には鱗がある。彼こそ伝説の動物・俺が召喚師覚醒フォームで呼べる麒麟の聖である。
なんで俺が召喚師覚醒フォームになってないのに、この二体が外にいるのかは分からない。けどこれは運が良い。彼等の力なら暴走冷蔵庫を止められるかも‼︎
「剛鬼‼︎ 聖‼︎ 丁度いいところに来てくれた‼︎ 今かなりヤバいから簡潔に説明するが、かくかくしかじかまるまるうまうまてめーのちのいろはなにいろだ、というワケなんだよ‼︎」
【なんか、北○の拳の名セリフみたいなのが紛れている気がするんだけど……】
【ふざけるのも大概にしろマスター】
「いや普通に説明していただけなんだけど⁉︎」
なんで⁉︎ なんで簡潔に説明しただけで怒られなきゃいけないんだ⁉︎ ってか○斗の拳の名セリフなんて一言も発してないんだが⁉︎ 言いがかりはやめてくれね⁉︎
「とにかく‼︎ 今はまず白澤さん……あそこで暴走冷蔵庫に捕まってるバグさんを助けるためにも、お前達の力を貸してくれ‼︎」
【わかった。絶対に彼を助けるから】
おぉ……‼︎ 剛鬼よ、お前は即答で承ってくれるのか……ッ‼︎ そういえば確か召喚獣リストには『仲間を傷つけられると鬼の様に色々と強くなる心配性』だって書かれてあったんだっけか。もしかするとそれによる影響なのか、彼自身との面識のない人でも助けてあげられる思いやりの心を持っているのか? だとしたら健気な子だ……‼︎
【くだらねェ。自分の尻も拭えねェ奴が生み出してしまったモンの処理もできねェことに、わざわざ赤の他人が足突っ込むとかふざけてんのか? そんな無償行為、俺は絶対やらねェからな】
それに比べてこいつは全く持って協調性が無さそうだな。とはいっても協力しない理由はごもっともなんだけどな。身勝手な考えで周りに被害を与えるのはいけない、絶対。
けど今はそんな事を言ってる場合じゃないんだよ。原作通りの知識なら大丈夫だろうとはいえ、あの暴走冷蔵庫を放っておいても良くないことに変わりない。最悪の事態を招かないためにも、何かしらのアクションを起こしてもらわないと……
「頼む‼︎ お前の力が必要なんだ‼︎ でないと白澤さんの命が危ないかもしれないんだ‼︎ ホント、マジで頼む‼︎ 召喚獣最強クラスのお前の力でこの状況を打破してくれ‼︎」
「あの、聖……さん‼︎ どうにか手伝ってもらえないでしょうか⁉︎」
【ッ……‼︎】
お? 聖の心が揺らぎ始めたぞ。いくら頑固者とはいえ本気で頼まれてしまったら断れるわけもないもんな。
「ひ、聖先輩……でいいのカ? オレからもお願いダ、どうか力を貸してほしイ……‼︎」
【せ、先輩?】
……アレ? なんかウガルルの言葉に食い気味になってね?
【……し、仕方がねェな。こ、後輩ができたからにはそいつにだらしない様を見せるわけにはいかねェ。特別だ。特別に俺様の力であんな迷惑モンをぶっ飛ばしてやるよ】
わぁ、最終的にウガルルの後輩オーラに負けて承諾したよこの子。伝説の動物の威厳さが消えてっぞ。リストに書いてあった通りホントにツンデレなんだなこいつ。男のツンデレって女のツンデレとは違う良さがあるってもんなんだなぁ……
「……アレ? でも二匹ともあのまま戦わせて大丈夫なんですか?」
「ん? それはどういうことだ優子?」
あんな奴、召喚師覚醒フォームで呼び出せる方だからめちゃ強い二匹に勝てるわけがないだろ? ましてや一匹だけ相手することになっても勝てるはずがない。チート能力で呼び出された者達だからな。
「あの二匹……白哉さんに召喚されずに自分達の意思でこの世界に来てたみたいなので、それだと中途半端に力の半分を向こうの世界に置いていってしまうんですよね?
二匹がかりでも、アレに勝てるんですか?」
「………………………………」
優子のこの一言で嫌な予感を察した途端、何やらガシッという何かがデカいヤツを掴んだかのような軋んだ音が聞こえてきたんだけど。骨の折れたかのような音ではないみたいだけど、なんか嫌な予感が……
【ギャアアアアアアッ‼︎ 巻きついてくんな気持ち悪いイィィィィィィィィィッ‼︎】
【い、今のままじゃいつもの力が出ないの忘れてt くぁせdrftgyふじこlp!?】
「アイツ……店長を引き剥がしタ後先輩達をぐるぐる巻きにしタゾ……‼︎」
「なんかめっちゃすまーーーんッ‼︎」
ウチの未熟状態の召喚獣二体、暴走冷蔵庫の触手(のような何か)に滅茶苦茶巻きつかれて身動きが取れない状態になってしまったッ‼︎ 白澤さんは解放されたけどその代償がこれって‼︎ しかも白澤さん、白目剥いちゃってるよ‼︎ 逆に状況がある意味最悪なんですけど⁉︎
「あれ……リコさんによれば呪いなんですよね。どうしたら……後なんか触手のぐるぐる巻きもそれはそれでなんか……」
「やめろ、その点は絶対に考えるな。こっちも変なことを考えそうで吐いちまいそうだからさ……」
ケモノ……触手……獣か──ウッ、頭が……
「オレ……あいつノ気持ち、分かるかもしれなイ。料理として生まれテ、食べて欲しくテ、動き出しテ……でモ変な形になっテ、どうしていいか分からなイ。だからあんな事してル。だから……オレ、あいつ切って食べテ助けてやりたイ‼︎」
お、おぉ……‼︎ 原作既読済みの俺は分かりきってはいたんだが、ウガルルの奴、アレとかつて同じ呪い扱いであった自分を重ねて、アレの望みを叶えてやりたいというのか‼︎ かつて同じ境遇であった者だからこそ、救いの手を差し伸べようと決めたのか……俺、親代わりになるつもりはないけど父親目線になった気がして感動した……ッ‼︎
早速ウガルルはリコさんに暴走冷蔵庫の魔力料理を食べていいという許可をもらうことに。というかまだ蓮子に脚でのヘッドロックをキメてるよこの人。やめてくださいしんでしまいます。
「オイ! オマエ……オレの体、トクベツ! よく食べないトすぐハラペコなル。魔力料理大好物ダ! かかってこイ。残さズ……喰らウ‼︎」
そしてウガルルと暴走冷蔵庫の戦いが始まった。自分(魔力料理)の事を食べてくれると分かっていながらも、剛鬼と聖をぐるぐる拘束したままウガルル目掛けて思いっきり突進する暴走冷蔵庫。自慢の爪でタイミング良く狙い通りの箇所を切りつけるウガルル。バトル漫画でもないというのに、思ったよりも激しい攻防が続いていく。
「けど思ったよりも結構暴れるなこいつら⁉︎ やめて物理的にこの店に爪痕残すのやめて⁉︎ そしてこれを召喚師覚醒フォームになってないのに反射的に紙一重で躱せてる俺ヤベェな⁉︎ 自分でもどうなってんのか分かんねェ⁉︎」
俺が必死な感じに斬撃らしきものを躱しながら叫んでいる間に、剛鬼と聖は解放され、暴走冷蔵庫はバラバラに壊され魔力料理ごとウガルルの腹の中へと消化されていった。使い魔の腹の中って特殊なものなのだろうか? よく食えたな冷蔵庫なんて……
とりあえず全部消化されるまで、剛鬼と聖に再召喚するべきだったことに気づかなかったことに対して謝っておくか。本人達は勝手に出てお出かけしてた感じだったけど、やっぱり気づいてあげられなかったのがなんか……ね?
魔力料理を全て平らげたことにより、満足したのか魔力の渦は静まった。そして目を覚ましたミカンが拓海にここまでの状況を説明した。ちなみにあの朴念仁、ミカンを避難させる時に彼女をお姫様抱っこしたそうやで。ホント、こいつはさぁ……
「……オレ、分かっタ。オレは字ニガテ、道具もニガテだけド……爪でモノをズバズバ切れル! 少シ戦えル! だからそれ活かせる仕事探せバ、いい使い魔になれル──そういうことだナ、ボス‼︎ 店長‼︎ ───アッ……」
ウガルルがどうやら自分のしたいことを見つけ、その答えを出した時、とんでもないことになった事に気づいたが既に遅し馬刺し(くだらね)。店内はウガルルと暴走冷蔵庫の戦いの跡でめっちゃボロボロ。あすらは当面休業になった。
今気づいたけど、これ優子の貴重な出稼ぎ先が停止したんじゃね? ……来月また家族が勝手に金を仕送ってきたら、全部優子にあげるとするか。どうせ金はまだいっぱい有り余ってるし。
「あぁ……いや、お前は悪くないからな? あの暴走冷蔵庫を止めてくれなかったらこれ以上の大惨事が起こっていたからな? 快挙だから、な?」
「………………」
頷いてはくれたけど、やはり罪悪感は残るようで。まぁ分かるよ? こんなつもりはなかったんだって思ってることぐらいは。でもよく頑張ったから気落ちしないで? な?
「ウガルル君、君はあの料理を助けたいと思っただろう」
すみません、俺はアレを料理じゃなくて冷蔵庫の方で捉えてました。なんかすみません。
「それは君が自分の生き方に軸を見つけられたということだ。それに引き換えならばお店が全壊したことなんて些細な問題だ。今後もその調子で励みたまえ」
「ボスのボス……‼︎ ありがとウ……‼︎」
店の全壊を些細な問題にするための対価、なんかおかしい気がするんですが。俺の気のせい?
ってかアレ? ちょっと待って? 白澤さん、ウガルルの観点からして優子のボスって認識にされてない? ってことは優子の側近みたいポジションである俺も、白澤さんの事を優子のボスという認識をしないといけないの?
「………………なんか、複雑すぎてしばらく白澤さんの事をどう見ればいいのか分かんないです……」
「えっそれどういう意味⁉︎ 白哉君一体何を考えるようになったのかね⁉︎」
「これで勝ったと……いえ……勉強させていただきました……‼︎」
「優子君は何をだね⁉︎」
カップル揃って白澤さんに複雑な感情を抱く羽目になりました。クソッ、なんか納得いかねェ……‼︎
おまけ:台本形式のほそく話その27
ウガルル「ムムゥ……」
白哉「ど、どうしたんだウガルル? 俺の顔になんか付いてる」
ウガルル「んがっ? すまなイ。ちょっとボスの眷属の呼び名を変えようと思ってナ」
白哉「俺の呼び名?」
ウガルル「んがっ。ボス、ボスの眷属と結構仲が良かった。ミンナの中で一番デ、ボスの眷属の事となるとすごい笑顔になっていタ」
「だから、ボスの眷属として呼び続けるのもどうかと思ったんダ。ボスも、ボスの眷属の事をボスの眷属兼恋人と言っていタシ……」
白哉「……ウガルル。俺が優子の恋人になってやれたのは、俺が眷属になれるきっかけを作ったからなんだ」
ウガルル「……そうなのカ?」
白哉「おう。経緯は訳ありだからまだ教えられないけど、そのきっかけのおかげで俺と優子は成長した」
「主人と眷属の関係として、恋人として、お互いの立場を理解して分かち合うこともできたんだ」
「だからこそ、今があるからこそ、俺は優子の……ボスの眷属として頑張っていこうって思える。ってなわけで、俺は今まで通り『ボスの眷属』と呼ばれることを誇りに思えるよ」
ウガルル「……そっカ。喜んでいるのならオレも安心しタ。だったらこれからもボスの眷属として呼ばせてくレ」
白哉「おう。これからもよろしくな、ウガルル」
ウガルル「んがっ‼︎』
シャミ子「(き、聞いてしまいました……は、恥ずかしいです……これで勝ったと思うなよぉ〜……墓場まで持って行きますからねェ〜……)」
仕事って、何なんだろうね……(悟り)