偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語 作:名無しのモンスター
ネタバレすると原作ではウガルルの仕事探しの回の後にシャミ子の誕生日回になるから、前から考えてた話を……ってことで。
よぉみんな、白哉だ。突然だが、俺は今窮地に陥っている。何故かって? そいつはだな……
再来週に迫っている優子の誕生日、その日に渡すプレゼントに未だお悩み中なのだッ‼︎
今の俺の悩みを聞いた者の中には『なんだまだ二週間もあるじゃん、もう少しじっくり考えていけばいいじゃん』、なんて思う輩もいることだろう(聞けるはずもないが)。
しかし、俺にとってはたった二週間。たった二週間しかないのだ、優子の誕生日プレゼント選びを間に合わせなければならない期間は。
なんで誕生日プレゼント選びで苦戦を強いらなければならないのか、その理由は二つある。
一つ。今年から自分の立場とそれ相応によって渡すことになるプレゼントの種類が、去年までのとは勝手が違うからだ。
去年までは幼馴染・親友として彼女にプレゼントを渡してきた。彼女はこういったゲームが好きだったなとか、この香水なら優子も喜ぶだろうなとか、そういう軽い感覚でプレゼントを選んできた。
だが今の関係はどうだ。俺と優子は眷属と女帝、そして恋人同士という深い関係で結ばれている。だから生半可な気持ちでプレゼントを選ぶというのは無粋であるのだ。
それに、送るプレゼントにもきちんとした意味が備わっていたのだ。ネットで調べてたら出た。バッグは『もっと働きなさい』『勉強を頑張って』といった勤勉の意味合いが強く、櫛はく=『苦』・し=『死』を連想することから縁起が悪いとされている……などといった感じの意味がある。だからその意味の方にも注意する必要があるのだ。
二つ。早めにプレゼントを選ばないと、既に絞られているプレゼントの選択肢をさらに絞らされてしまうから。
原作知識を持っている俺はミカンや杏里、小倉さんや桃が優子に何をプレゼントするのかは知っている。ここまでならば『彼女達とは違うものを選ばなければ問題ない』程度で済むだろう。
だが、問題はそこからだ。この世界には『原作とはイレギュラーな存在でこの世界にとってはレギュラーな存在』つまりはオリキャラがいる。拓海や柘榴さん、全蔵や勝弥達が選ぶプレゼントによっては、俺が意味も調べて選んだプレゼントが彼等の選んだのと被ってしまう可能性があるのだ。
だからこそ、プレゼントは慎重にかつ早めに選ばないといけないのだ。優子なら何を選んでも喜んでくれるだろうけど、生半可な気持ちで選ぶのは後味が悪い。もう今からでも何をプレゼントするか考えないと……
というか、あいつらは何を優子にプレゼントする予定なんだ? 聞いてみないと何も始まらないじゃん。こんな時のために俺が作った優子の誕生日の事を話すSNSグループチャットで、みんなに誕生日プレゼントは何を選んだのかを聞いてみるとするか。
白哉:あと二週間で優子の誕生日だけど、みんなは何を優子にプレゼントするんだ?
このメッセージを送ってから僅か十五秒後、次々に返信が送られてきた。いくらなんでも早すぎじゃね?
ミカン:バスソープとキャンドルとネックレスよ
杏里:私とお揃いのスポーツウェア! あと焼肉券!
小倉:手作りのうごめく人形だよ
拓海:限定ゲームアプリのスマホカバーとストラップにしたよ
全蔵:ダーククエストの限定文房具の詰め合わせッス!
柘榴:道具無しで簡単に作れるダーククエストのキャラのプラモデル
勝弥:CDプレイヤーと彼女が好きそうな音楽のCD数枚にしたぜ!
白哉:男性の半分がゲーム関連のじゃねェか
ミカン:シャミ子はそのゲームが好きみたいだから別に問題ないでしょ
杏里:そうそう
オリ男どもは勝弥以外が『ダーククエスト』関連のグッズにしたという。これだから男子は(お前も男子じゃい)……と言いたいところだが、先程のやり取りのように優子は『ダーククエスト』が好きなのでそれを考慮して選んだのだと思わせていた。あいつらも優子の趣味を知ってのプレゼント選びをしたのか……ちょっと複雑。
とりあえずオリ男どもが選んだプレゼントを見るに、スマホグッズ・文房具・プラモデル・CD関連の選択肢も潰されたって認識でいいってことは分かった。さてと、ここからどういった感じにプレゼントを決めるべきか……
ん? なんかまた返信が来たんだけど? 一体何があったと───
拓海:シャミ子君ならなんでも喜んでくれるとは思うけど『プレゼントは俺』理論なのは避けた方がいいよ
全蔵:みんなからのプレゼントとしてシャミ子にサプライズってことにしたッスからね
白哉:まさか俺の誕生日の夜に優子がやったアレか? 一ミリも考えてないから。お前ら俺の事をなんだと思ってんだ
ミカン:セッッッする程イチャラブなカップル
杏里:セッッッする程イチャラブなカップル
小倉:セッッッする程イチャラブなカップル
拓海:セッッッする程イチャラブなカップル
全蔵:セッッッする程イチャラブなカップル
柘榴:セッッッする程イチャラブなカップル
勝弥:セッッッする程イチャラブなカップル
白哉:優子も巻き込む形で何考えてたんだ。お前ら後で覚えとけよ
なんだよ、人を性欲持て余す発情の獣みたいに思いやがって……‼︎ 言っとくが獣なのは優子の方だからな。魔族だけど。夢魔だけど。戦闘衣装が淫魔とはいえ実際には淫魔ではないけど。
ミカン:じゃあ結婚指輪にするってのはどうかしら? あれなら『プレゼントは俺』理論なのよりも重くはなさそうだし!
白哉:充分重いプレゼントになるわ。それにまだ結婚は早いんだよ
杏里:いや実際には結婚しているようなものじゃん
白哉:恋人同士になっただけだから。カップルってだけだから。まだ結婚は早いっての
全蔵:『悠久』を共にするパートナーになったってことは実質結婚したようなものじゃないッスか。実際に営みの行為を何回もしてたじゃないッスか
白哉:強調も兼ねやがってチクショウが……‼︎
勝弥:というわけで白哉は指輪にしろよな
拓海:白哉君が指輪はピッタリだね
柘榴:指輪にして男を見せるんだ白哉君
小倉:指輪の方が一番喜ぶかも
そういえば白哉君夏休みに自分専用の武器を手に入れたんだったよね? しかも色んな必殺技を使えるとか言っていたけど。それってその槍の中がものすごい構造になってたりしないかな? ちょっと調べたいから分解してもいいかな? 先っちょだけ! 先っちょだけでもいいからさ!
白哉:人のものをなんだと思ってんだ。先っちょも分解させてやらんからな。持たせること自体もさせねェから。絶対に。マジで。後絶対指輪にしねェから。別のにするからな
桃:えっ何の話? 分解したって何を?
白哉:お前は今の会話について何も知らなくていいからな
どいつもこいつも俺の誕生日プレゼントを指輪にしようとしやがって……‼︎ こっちは色々と考慮して本気で考えてるってのにふざけやがって……‼︎
というかここでやっと桃が返信するのかよ。グルチャ見なさすぎだぞお前は。まぁ原作準拠のために優子の誕生日の事を話さないけどな、許せ。
「……とは言ったものの、ホントどうしよっかなァ……」
そう呟きながら、俺はハァッと一つ溜息をついた。実際まだプレゼントは何にすれば良いのか決めてないんだし、どうにかしないといけないんだよな……何か良さげなものとかないのかな───
「ん? これは……」
ふと俺の視界に映った一瞬の眩きが、視線を無意識にそちらへと向けさせる。その眩きが見えたのは、俺の部屋のタンスの上に置かれてあったとある物だった。
タンスのところまで行き、その上に置いてあるものの一つを手に取る。ピンク色の何かしらの宝玉のようなものの破片、俺が奥々多魔駅の山中にて倒した使い魔の粉々になった勾玉だ。あの日は優子と同じく現実世界での初戦闘かつ初勝利を飾ってたな。懐かしいなー……
ん? ちょっと待てよ? この勾玉の破片なら……
「アクセサリーを作れる可能性、出てくるんじゃね……?」
うん、そうだ。きっとそうだ。この破片から出来上がるものだっていくつかあるはずなんだ。だからここからイヤリングとかブレスレットとかだって作れるはずだ。
うん、決めた。今年の優子への誕生日プレゼントはこの勾玉の破片で作るアクセサリーで決まりだ。……と、言いたいところなんだが。
「ここからどんなアクセサリーを作ればいいんだ? というかそもそもアクセサリーの作り方自体がわかんねェ……」
迂闊だった。紐を通すものを作るにしても綺麗に穴を開ける方法が分からないし、何よりこんな歪な形からどうやって綺麗な形のアクセサリーを作ればいいってんだよ……職人並のが作れないにしても、もっと色々と考慮してから作ろうって言えばよかったじゃんか……何やってんだよ俺……
うーむ……職人じゃなくてもできるアクセサリーの作り方でも調べておくべきか? それと破片とかからアクセサリーを作る方法とかも念のため調べておくか? とりあえずやれるだけやってみて───
「こんな時こそ私の出番だね‼︎」
「小倉ァッ⁉︎」
「はーい小倉でーす‼︎」
思わず奇声みたいな声を上げてしまった……まさか突然小倉さんがこのタイミングで天井から出て来たとは思わなかったじゃん。唐突に来たんだよ唐突に? せめて何か一言声を掛けてくれよ……いや、それでもビックリはするだろうな。優子達原作キャラじゃあるまいし。
お前何しにここに来たんだよ。つーか……
「まさか盗み聞きしたわけじゃないだろうな? 天井から俺達の話し声を聞いてたのか?」
「いーや‼︎ 先程のグルチャのやり取りからもしかするとって思って‼︎ さっきまで見守るだけのつもりだったんだけど、タンスの上の破片がどう見ても気になっちゃって…… だから助けに来たんだー‼︎」
「それ助けに来てくれたんじゃない、勾玉の破片に興味ありげになっただけだ」
これが勾玉だと察したかのような反応をしやがって。これだからマッドサイエンティストは……
っておい、勝手に破片を触るな。指切ったらどうすんだ。後それを勝手に何かしらの材料にすんなよ、アクセサリー作りに使う予定なんだから。マジでやめろよ?
「ふーむふむ……なるほどなるほど……」
「何がなるほどなんだよ」
俺がそう問いかけると、小倉さんは微笑ましいと思っているかのような笑みでこちらを見てきた。なんだよ、何か良からぬ事考えてんのか?
「さっき聞いた話によれば、これをシャミ子ちゃんの誕生日プレゼント用に作りたいんだったよね?」
「やっぱり盗み聞きしていたのかよ」
うん、最近よく天井にいるからなんとなく聞こえてしまうだろうなとは思ったけど……ウチの部屋、メェール君達の作った防音の結界を張ってもらったんだぞ? それに小声で呟いていたはずだから聞き取れないはずだぞ? なのになんで聞き取れたんだよ。お前の耳って異常に聞き取りやすいのか? 結構すごい地獄耳なんじゃね?
「……で? それがどうしたってんだよ?」
「フフンッ。平地くんにはこれまで召喚獣の子達のデータを取らせてもらった恩があるからね、その一環として……」
………………? その一環として? 一体何をする気だってんのか?
「今回は特別にッ‼︎ 私がRPGや異世界モノでよくある魔道具のようなものを作る工程の一つで、君のシャミ子ちゃんへの誕生日プレゼントを一緒に作るのを手伝ってあげるよッ‼︎」
「あ、それなんか嫌な予感がするんでいいっす」
いやホント、そんなもの教えようとしないで? 魔道具のようなものを作る工程の一つって何? アンタ俺達の知らないところで何を作ってんのさ? 現代社会とファンタジー要素が半々混じったこの世界で魔道具を作ってるとか、なんか碌でもないことが起きそうな予感がするんですけど。マジでやめて?
「えーなんでー⁉︎ プレゼント用意できるチャンスだよー⁉︎」
「それもそうなんだけど、アンタが常識的に絶対にあり得ないことをするとなると、どうしても警戒せざるを得ないんだよ。プレゼントの用意を一緒に考えてくれるのは嬉しいけどさ」
実際に『日夜明けるまで人形の姿になる薬』を俺に見せようとして、事故とはいえぶちまけて俺を人形にしてしまった前科があるからな。
「大体さぁ、お前俺がアクセサリーを作ってみようかって話を盗み聞きしたんだろ? なのになんでそこから魔道具のようなものを作ろうかって話になるんだよ。とんでもない効果のものが完成して優子に何かしらの影響を与えてしまったらどう責任取ってくれるってんだ? えぇ?」
「危なっかしいものは絶対作らないって。そこはちゃんと保証するからさ」
『そこは』? そこ以外はどうなんだって話になると思うが? これまでのお前の行動からして信用できるところとできないところがあって完全に信用することなんてできねェぞ?
「それでも平地くん一人でなんとかするっていうのなら、私もとやかく言うつもりはないけど……これからどうやって安全なアクセサリーを作れるというのかな? 割れた箇所の尖ったところがシャミ子ちゃんに当たったら大変じゃない? 作るのも難しいのに割れたところを削るのも大変だよ?」
「グッ……‼︎」
こ、こいつ……俺がアクセサリーの作り方を全く知らないことを機に痛いところ突きやがって……ッ‼︎ 事実だけど……ッ‼︎ 素人が作れるとは思ってないんだけど……ッ‼︎ ぶっちゃけ普通のじゃないものを材料として何かを作るのは小倉さん専門だと思ってるけど……ッ‼︎
チクショウ……‼︎ 言い返せない、事実すぎて言い返せない……ッ‼︎ ここで小倉さんに手伝ってもらわなければ、また優子の誕生日プレゼント作りに悩んで、悩みすぎて優子の誕生日が近づいていく可能性だってあるんだよな……
クソッ、ここは素直になるしかねェ……ッ‼︎ はい土下座ァッ‼︎
「大変申し訳ありませんでした。アクセサリーの作り方を教えてください小倉サマ」
「もう、平地くんってばビクビクしすぎだって〜。そこまでさせるほど私も野蛮な子でも意地悪さんでもないよ〜。もちろんオッケー、一緒に頑張ろうか」
ぐぬぬ……やっぱりこいつは苦手だ……ッ。
【マスター……そこは僕ら召喚獣にアクセサリーの作り方を聞いてみるとかしないのかメェ〜?】
【それもそうだな。俺がそれを今からマスターに伝えておこう‼︎ 苦手なものがある中にいさせるのもマスターの気が気でないしな‼︎】
【シッ‼︎ 言ってやるなヒヒン。それを聞いた白哉が罪悪感に埋もれたり発狂したりして壊れてしまって、寧ろ逆効果だぞ】
【白龍様はそれはそれで酷いと思われますがな‼︎】
【マスター……南無だメェ〜……】
♢
はい、事実と小倉さんの根気に押し負けたってことでね。今から彼女に勾玉の破片達からアクセサリーを作ることになったわけですがね。その……なんで言えばいいのやら……
「今の俺の台所、魔法薬の研究所か何かなのか?」
「今はもうそうなってるよ、雰囲気だけそうした」
「はっきりと言いやがって……ッ‼︎ ってか俺達、今からアクセサリーを作るんだよな? 魔法薬は作らないよな?」
「もちろん‼︎ 私もラボでは作りたいのはこんな感じの雰囲気でやってるよ」
「形からそれっぽいことをする感じか?」
えぇ、今ウチの台所がどうなっているのかというと……キッチン全体に迷彩柄の布が敷かれており、その上に理科の実験に使われる器具やなんかカタカタと動いている人形、青色のドロッドロとした怪しげな液体の入った容器などが置かれているってわけだ。
どう見ても普通のアクセサリー作りをする雰囲気じゃないんですけど。禁断の薬物でも作りそうな感じになっているんですけど。終わったら絶対元に戻せよお前。
「さてと、早速アクセサリー作りに取り掛かるよ〜……と、言いたいところだけど」
ん? まだ何かあるってのか?
「平地くんはどんなアクセサリーを作りたいのかな? それによっては出す材料も変わってくるんだけど」
「どんなアクセサリーを、か……むむぅ」
迂闊だった。アクセサリーは幾多の種類があるっていうのに、なんでどれにするのかを考えなかったんだ俺は……一応ネックレスはミカンが出すからまぁいいとして、一体何を作ってあげれば良いのやら……
「そうだな……意味的に考えるとなると、『永遠の愛を誓う』っていう意味を込めたのを作りたいなって思ってはいるんだよな……悠久を共にするパートナーになったわけだし、改めてそれに対する誓いを立てたいというか」
「ふむふむ、なるほどね……」
優子ほどではないだろうとはいえ、我ながら重い想いだなとは思っている(激寒ギャグができたけど狙ってない)。
「……だったら、真珠のブレスレットを作るのが効果的かな」
「真珠のブレスレット?」
「そ。私の腕にかかれば、割れた勾玉……宝玉からでも綺麗な真珠が作れるからね。それに意味合いもぴったりだし」
ん? 意味ってさっき俺が言った『永遠の愛を誓う』のことか? もしかして意味が同じヤツを調べてくれたってのか? いつの間に? その即座の対応がありがたくはあるけどさ……
「真珠は愛情の象徴であるから、それを使ったアクセサリーを贈る意味は『本当に愛している』ってことになっているよ。しかもブレスレットの意味は『永遠』または『束縛』。この意味……分かるよね?」
「………………あっ」
それってつまり……いつもは優子に束縛されている感じなのに、真珠のアクセサリーをプレゼントしたとなると、束縛しているのは俺……ということになるのか?
………………いや、その……俺、誰かを束縛するの趣味じゃないし、そもそも動きを制限させる気なんてないし、なんというか……
いや待てよ? ブレスレットのもう一つの意味は『永遠』。それを観点とすれば……
「上手くいけば『束縛』の意味を伏せることができるかもしれないから、変な目で見られる可能性は少なくなるってことか……なら遠慮なく真珠のブレスレットを作れるな」
「そう‼︎ いいところに目をつけたね‼︎」
いいところ……か? プレゼントの意味を悟られないだけまだマシかもしれないとはいえ、安心できる可能性もないんだけどな……ま、そのプレゼントを渡す相手が優子だから、意味がバレない可能性の方が高いけどな。
……って、それって優子の事をバカにしてるようで逆に彼女に失礼なのでは? いけないいけない、恋人を貶すような思考までもうっかりしてしまわないようにしないと。
「とはいっても、シャミ子ちゃんの事だから『束縛』の方の意味を知ってしまっても、後々そうされるのも本望だと思うかもしれないけどね」
「ヤンデレの上にメンヘラになってしまう可能性もできるわ。これ以上優子が壊れるような考えはやめれ」
ヤンデレになってるだけでも大変だってのに、そんな彼女がメンヘラにまでなってしまったら収集がつかなくなって対処が追いつかなくなるっつーの。そういうとこも考慮して?
「とにかく、作るアクセサリーの種類も決めたんだ。早く作るのを手伝ってくれ」
「はーい」
やれやれ、やっとアクセサリー作りに入ることができ───
おい待て。待て。ちょっと待て。やっぱり待ってくれ。
「なんでさぁ……すり鉢なんか用意してんの? 作るの練り物料理じゃないよな?」
「うん、そうだよ? そもそも私、基本的には料理を作らない派なんだし」
じゃあなんでそんなものを用意して………………あっ(察し)。
そういえばこいつ、優子が手に入れたピンク翡翠を(無理矢理)もらってすぐ砕こうとした時にもすり鉢出してたよな? それも闇堕ち安定剤を作ろうとして。
……俺達、今から真珠のアクセサリーを作るんだよな? 薬を作るわけじゃないんだよな?
「これに例の勾玉の破片を全部入れてっと……はい平地くん、これをこのすりこ木で砕いて粉状にすり潰しておいて。私はこれを混ぜ合わせて真珠を作るための真珠専用錬成液の調整して仕上げておくから」
「錬成液ってなんだよ……念のため聞いておくけど、本当にそれを使ってブレスレット用の真珠を作るんだよな? 完成するよな? 安全なものとして完成するよな?」
「もちろんだよ。使ってもデメリットなんて起きないし、どんなに悪意の強い敵が相手でも勝てる保証のある力を携えるし」
絶対に防御用の魔法具を作る気満々じゃねェか。それはそれで優子を助けてくれるのなら嬉しいけどさ……
「ま、プレゼントとして渡すなら見た目と長持ち性を重視したいから、そういった力を入れるのは難しいだろうけど」
「そ、そっか……まぁそれが普通のアクセサリー作りだけど。職人は長持ちするかどうかも考えて作ったのかどうかは知らんが」
優子を守れる力を入れれそうにないのは悔しいが、小倉さんの言う通り、アクセサリーをプレゼントするに見た目は重視すべきだと思うけどな……
「まぁいいや、とりあえず俺は言われた通り勾玉を砕いておくから、小倉さんも小倉さんで準備しておいてくれ」
「はぁ〜い」
これ以上雑談でアクセサリー作りの時間を食うわけにもいかないし、じゃけんさっさと作りましょうねぇ〜。とりあえずこの破片達を粉状に砕いてっと……
パリンッピリンップリンッペリンッポリンッパリンッピリンップリンッペリンッポリンッパリンッピリンップリンッペリンッポリンッ
………………なんか、パ行を連発しているかのような、物が軽く割れる音が聞こえたような気がするんだが……気のせいか? 元が二次創作の世界だからこそなのか? うーむ、分からん。
「平地くん、勾玉の破片は全部粉々に砕けたかな? こっちの仕上げは終わったよ」
「おう、そうか。こっちも準備完了したぞ」
そう言って振り返ってみれば、小倉さんが仕上げたと言う錬成液を見せてくれた。青いのドロッドロとした液体は俺が破片を砕いている間にあら不思議、赤紫色のサラッサラとした液体になっていた。その液体、中に入っている何を溶かしたってんだ?
「あのさ、小倉さん……?」
「ん? 何かな?」
「見かけた時からずっと思っていたんだけどよ……その液体、一体何を材料として使ったんだ?」
深く追求するのは野蛮だとは思って聞かない方がいいな、と最初はそう思っていたんだけど……さすがにね? 突然溶かしてサラサラな液状に変化させたとなるとね、一体何を思ってどんな材料を作ったんだよって思ってしまうわけよ。もういい加減、気になりすぎて聞かざるを得ないよマジで。
「んー? それはね……トップシークレット☆ 特定の条件とかがない限りは、たとえ仲の良い人達相手でもそう簡単に教えるわけにはいかないんだよねぇ」
まぁ……ですよね。こんな貴重なものの作り方を他の人に教えてしまったら、何かしら悪用されてしまう可能性もあるもんな……悔しい。
「でも完成させるために最後に使ったものだけなら教えてあげられるよ。最後に使ったのは……温かくしたハチミツでーす☆」
「それだけ教えられましても」
最後の一つだけを教えてもらっても、それは意味があんのかって思うわ。マジで。大体なんでアクセサリー作りの材料としてハチミツ? 一体何を色々と混ぜ合わせたら『あ、これハチミツいるな』って思えるんだよ。やっぱり料理でも作ってんのか?
「まぁまぁ、とにかく平地くんはこれと擦った破片達をボウルの中に入れて泡立て器で混ぜておいて。今度はブレスレット用の真珠の型と固めて真珠にするための結合液を作るから」
「本日二個目の聞き覚えのないワードが出てきて困惑状態なんですがそれは」
結合液ってなんだよ、接着剤みたいに物をくっつけることができるってのか? 大体そんなもの作って真珠なんて作れるのか?小倉さんなら出来そうなのが否めないけどさ。
っつーかさ、他にも気になるとこがあるんだが。真珠って型を作って特定の物質を流し込めばできるもんなの? なんかそれ聞いたら小さい丸の型でも出来そうなんだけど。何なら昔の冷蔵庫で氷を作るのと同じ手順で出来そうなんだけど。
というか……そもそも真珠ってどうやって作るのかすら分からないんだけど、本当にこんなやり方で出来るの?(錯乱)
「………………いや、考えすぎだな俺は。しっかりしろ俺」
そう言って俺は自分の両頬を強く叩いた。魔族とか魔法少女とかがいるこの『二次創作』という現実世界で、非常識ともなり得る事に対して必要以上の追求はよくないよな。考えすぎては後々辛くなって原作に影響してしまう。こういうのは『この世界にとっては常識かもしれない』と済ますべきだ。うん、そうした方がいい。
「わかった、混ぜておくよ。泡立つまで混ぜて混ぜて、立派な真珠が出来るようにしてやる」
「おぉ‼︎ その意気だよ平地くん‼︎ 二人で力を合わせて綺麗で立派な真珠を作って、私の分の手柄も全部平地くんのものにして、シャミ子ちゃんのハートをまた奪っちゃえ‼︎」
「人を手柄泥棒にすんな」
確かに完成した真珠のブレスレットは俺が優子に渡すけどさ、いくらなんでも最初から俺一人で作ったかのような感じにしようとするのやめてもらってもよろしいのかね? 俺は嫌なんだけど、他人の手柄を横取りとか後味が悪いもんだから。
「そうは言ってもさ? 私が平地くんと一緒に用意したんだってことがシャミ子ちゃんにバレちゃったらどうなるのかな? シャミ子ちゃん、嫉妬や怒りとかで思考がごちゃごちゃになって壊れてしまうかもしれないよ?」
あっ(察し)。よくよく考えたらヤバいじゃんこれ。俺が他の女と共同作業とか絶対優子は許してくれないじゃん。やらかしたわ、俺……
「すみませんでした……貴方の言う通り、これは全部俺一人で準備したってことにしておきます……」
「よろしい‼︎ これでシャミ子ちゃんの怒りを買わずに済んだ‼︎」
絶対大丈夫とは言えないけどね、最近勘が鋭いから。
それから混ぜ混ぜをして数分後。小倉さんが作り上げたブレスレット用の型(紐を通す穴ももちろん作ったらしい)に混ぜ混ぜした液体を流し込み、それを冷蔵庫に入れて冷やすことに……
いや待って? やっぱりこれ料理作ってるやんけ。型に流して即冷蔵庫行きって、絶対そうやんけ。
「後はこのまま冷やして三日放置すれば完成‼︎ そのまま冷やしたまま出した後にコラーゲンジェルと一緒に入れ直して丸一日以上冷やしておけば、さらに硬度が上がって長持ちしやすくなるよ」
「なんでまた固めるのにコラーゲンジェルがいるんだよ」
小倉さんがものを作る時の過程云々、全然分かんねェな……どういう想定をしたらめっちゃいい物を作り上げられるんだよ。
とりあえず、これで後は上手くいけば真珠のアクセサリーは完成するってわけか……まだ作り上げたばかりだから完成すらしてないけど、これで優子の誕生日プレゼントの準備は万端……でいいのか?
「あ、そうだ。はいこれ」
「ん? なんだこれ?」
なんだこのスプーンは? 優子のなんとかの杖のスプーンver.とか言うんじゃないだろうな? いくらなんでも棒となるものならなんでも変形できるアレを再現できるとは到底思えないが……
「フフフ……それは普通のスプーンに今回使った真珠の材料とその他諸々を混ぜ合わせて固めた特別なスプーン……名付けて『どこでもテレパシー』‼︎」
「どこでもド○のパクリじゃねェかッ‼︎」
いくらなんでもおふざけが過ぎるだろそのネーミングは‼︎ ドラえ○んの著者に謝れ‼︎ 今すぐ‼︎
「待って待って‼︎ さすがに能力は全くの別物だから‼︎ それを使えばいつでもどこでも、話したい人に念話を送れて、その念話を通して会話をすることもできる優れものだよ‼︎」
「いつでもどこでも念話で話せる、だって?」
それって、緊急事態の時にいつでもどこでもこっそりと協力要請をすることができる……ってコト⁉︎ ………………‼︎ 天才だったか‼︎
「ありがとう小倉さん‼︎ これでとんでもないことが起きた時にも色んなところからお前に聞きたいことが聞ける‼︎ 良いプレゼントをありがとうな‼︎」
「どういたしまして〜」
フッフッフ……さっきまでぐちぐち文句とか不安げなことを心の中でも言っていたけど、これを渡してくれたおかげでそういったのを全て前言撤回できるぜ‼︎ ま、上手くテレパシー能力が出来なかったら今のも前言撤回するけど。
この後余った液体は全て小倉さんが持って帰ることになった。実を言うとあの液体は結構匂うのだが、それでも意外と香水の香りがして悪くはな───
……アレ? ちょっと待てよ? 匂い? 香水? ………………
あ、勘違いでの優子ヤンデレフラグだ。シャンプーとかで匂いの上書きしないと。早くしろー‼︎ 間に合わなくなっても知らんぞー‼︎
おまけ:台本形式のほそく話その28
白哉がシャワーを終えた後の事
シャミ子「……白哉さん」
白哉「はい」
シャミ子「なんで正座してるんですか? 私、ただ白哉さんにお風呂を借りるために部屋に入っただけなんですけど……」
白哉「あぁいや、その……な? ただ瞑想をやってみたくなったから、それをやってるだけで……」
シャミ子「いや、瞑想って坐禅してやるものでは……?」
白哉「正座した方がより瞑想に集中できるかなってな……」
シャミ子「………………白哉さん、無理に嘘を隠そうとしなくていいですよ。私が来る直前に、香水に近い匂いを微量ながら落としきれなかったんですよね?」
白哉「ッ⁉︎ な、何の事───」
シャミ子「私がそれに気づいてうっかりファーストキスしてしまったこと、覚えてますよね?」(暗黒微笑)
白哉「………………はい、そうです。落としきれませんでした。すいませんでした」
シャミ子「まぁ白哉さんのことですから、浮気になるような事で付いたわけじゃないのは確かだから許します」
「ただ、素直に言ってくれればよかったことを隠そうとするのが許せないんですよね……」
白哉「はい、仰る通りです……」
シャミ子「で、ですから白哉さん……」
白哉「なんでしょうか」
シャミ子「こ、今夜……びゃ、白哉さんを私の匂いで染められるか、やってみてもよろしいでしょうか……?」ハァハァ
白哉「(えっ。マジおこじゃなくて発情パターン? なんで?)」
END
次回は原作パートのシャミ子誕生日回です。いや我ながら雑な説明だな。