偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語 作:名無しのモンスター
久々に原作の話を二話くっつけました。
それは、俺の部屋にこの俺白哉・優子・桃・ミカン・ウガルル・遊びに来た拓海・蓮子・いつもの桃の米炊きのついでに遊んで帰ることになった柘榴さんの計八人が集まっていた時の事だった。
『余がどうして怒ってるか分かるぅ?』
「えっ……?」
リリスさん、顔が歪む程に絶賛イライラ状態真っ最中です。なしてさ?(知らないフリするのやめろ)
「……ごせんぞ怒ってるんですか?」
「ウチの召喚獣の何匹かがリリスさんの悪口を言ってたことにですか? その時は俺とメェール君がお灸を据えてやったので勘弁してやってください」
『えっ? 余、召喚獣達に陰口叩かれてたの? 初耳なのだが……いやそうじゃなくて‼︎ もっと別の方で余は最近ご機嫌斜めなの‼︎ なんでか分かるか⁉︎』
あぁ、この後の展開を知っていることを悟られぬためにいい加減なことを言ったけど、自分の悪口の事は知らなかったみたいだな。貴方のプライドに関わることなので陰口には目を光らせてもらわないとダメですよ?
「さっぱりわかんないっす。……あ、★5演出だ」
「桃、お前は人が大事な話してる時にスマホ弄るな」
『それもガチャ引きはすごい腹立つぞ‼︎ ……まぁ良い、単刀直入に言う‼︎ 余にもおっきい依代を寄越せ‼︎』
「被りキャラだった……」
『聞けぇぇい‼︎』
真面目に聞く気が毛頭ないらしい桃に対して迫真の怒号。一瞬ホラーな感じの表情をしていたものだから、これは相当お怒りであると見て間違いないだろうな。
リリスさん曰く、ウガルル召喚の時の自分はやたら協力的であるため、然るべき褒美としてウガルルと同じ等身大かつ長持ちするボディーを所望したいとのことだ。まぁウガルルの依代を作るのに何が必要なのかとかを色々と説明してくれたのだし、やたら協力的と言ったらやたら協力的だったな。
【言っとくけどお前さん、仮に依代できたとしてもほぼ無意味と化すで?】
『何故だ⁉︎』
「ってか白龍様、いつの間に現界したんですか」
【今日も今日とて小倉の実験の手伝いをしてたぜ】
突然の白龍様の登場にみんなビックリ。そりゃ先程までこの場にいなかった者が突然と現れたらみんなビックリしたり警戒したりするわ。出るタイミング諸々を考えてもろて。
【リリス殿……アンタ今のままでは現界するにも限界があるぞ】
『何故そこでダジャレを言う⁉︎《現界》と《限界》ってか⁉︎』
【いいところ見抜くなぁ〜……ってそんなことはどうでもいいとして】
今のダジャレは偶然だったんですかい?
【アンタの魂は古代の封印の術(?)によって邪神像に固く縛り付けられているんだろ? その封印を解くかそれに抵抗できる力が無い限り、外の世界に魂を送れたとしても、封印の術による強い引力の働きによって限られた時間が過ぎた後に無理矢理引き戻されるんだよ。つまりデカい依代に憑依しても、それを維持する力が無ければ秒で魂を戻されるぞ】
ほとんど原作で桃が説明する内容と同じではあるが、古代の封印の力に今のリリスさんが抗えないことは確か。その封印を解除する術が今の俺達にあるわけでもないし、そもそもそれに抵抗できる力とはどのようなものなのかもまだ分かっていない。だから現状、リリスさんを長時間現界させるのは非常に困難というわけだ。
【つまり膨大な魔力を取り戻さない限り、アンタの魂はずっとそのクソダサ銅像に縛られるままなんや】
「きさまクソダサ銅像とはなんだ」
【あるぇ〜? なんかシャミ子にタメ口で怒られたんだけど】
「先祖を馬鹿にされたらそりゃあ怒りますよ」
優子はなんやかんやリリスさんをすごく慕っているし、そもそも人を馬鹿にしないというか馬鹿にしたくない性分であるからな。魔族のノウハウみたいなのを教えてくれたリリスさんが馬鹿にされたらキレるに決まってる。
というか、スケッチブックに書いた文字の中で『クソダサ銅像』ってデカデカと強調するのやめてもらってもよろしいでしょうか? 悪意マシマシすぎるでしょ。
「ごせん像はまぬけじゃないです。ごせんぞはとってもかっこいいですよ」
『へったくそなフォローをするなっ‼︎ 余だってこんなダサ像とっとと捨てて自由になりたいわ‼︎』
「すみませんが無理なので……それにリリスさん、体を取り戻したら世界征服……とか言ってたし」
『そんなしょーもない夢マジで言ってるわけ無いだろう‼︎』
「数千年前の封印の力ってのはそう易々と解けないもんすよ。色々と封印の構造が複雑になっているのかもしれませんし」
『可能性はあるから‼︎ ご都合展開があるから‼︎ おぬしの召喚獣を呼び出す力ならなんとかしてくれると信じたい‼︎』
「それで貴方を自由に出来たら苦労はしねーよ」
優子のフォロー、桃からの断りの言葉、俺の補足での説明、これらを持ってしてもリリスさんは等身大依代を手に入れることを諦めようとはしなかった。そもそも『諦める』という文字すら頭に浮かんでいない様子だ。
俺の召喚師としての力頼りになろうとしたり、挙げ句の果てには漫画とかでありがちなご都合展開を願ったりするつもりのようだ。ぶっちゃけ召喚師の力を使う時はオート操作みたいな感じだし、ご都合展開なんてそう易々と起きるわけがない。無理が通れば道理がひっこむわ。
『ヤダヤダヤダヤダヤダヤダ‼︎ 一生お利口さんするからーっ‼︎ 靴とか舐めるからー‼︎ 桃ちゃま白哉ちゃまなんとかしてーーーっ‼︎』
「えぇぇ……」
「正直に言って靴を舐められるの嫌なんですけど。人権的にも衛生的にも」
というか五千年程前まで偉大そうな立場にいたはずの者が、駄々こねて脛かじって尊厳捨てて恥ずかしくないんですか? 永劫の闇を司る魔女でしょアンタ。
「……私はほんとにかっこいいと思ってたんです……ごせんぞのこと……」
『えっ? 何故シャミ子が泣くのだ?』
「貴方の事を本気で慕っているからこそですよ。これ以上、子孫の目の前で情けない姿を見せないでやってください」
『お、おぉう……』
もしかしてこの人、優子にもそこまで慕われていないと思い込んでるのか? 貴方自分の子孫の事を信じなさすぎ。もうちょっと信頼感を持ってですね……
とはいっても、リリスさん遥か昔に訳も分からずいつの間にか封印されて、五千年間もごせん像の真っ暗な空間で孤独な人生を送ってきたもんな。小さい依代でも味覚も触覚もほぼ無いと言うし、そりゃちゃんと外の世界の空気を吸いたくなるよな。そこは分かる。俺ならめっちゃ心折れてたと思うし。
と、そんな事を考えていたら、何やら天井から人が降り立って来た。えっ何事? 天井には小倉さんが勝手に居座っているのは分かるけど、梯子は……?
「失礼。ちょっといいッスか?」
「って全蔵かよ。まさかまた小倉さんに絡まれたのか」
「これで十二回目ッス。それよりもこれ、小倉さんに渡してきてって言われたものッス」
十二回目って、お前どんだけ小倉さんに連行されたんだよ? 忍術を実験の何かに使われてるのか? 何はともあれ、ご愁傷様だな……
で、今俺が全蔵に渡されているものは、『おぐらボタン』と書かれてある赤い『押』マーク付きのボタンだ。うん、予想できる。『おぐら』って文字があるせいでどんなものなのか想像ができるよ、マジで。
「これってさぁ……今ここで押さないといけない系なのか?」
「そうッスね。小倉さんがこのタイミングならこれが役に立ちそうとか言ってたッス」
あーやっぱりか。タイミングって言葉を聞いただけでこのボタンがどんなものなのかが確信つくわ。厄介なものではないけど不気味だから押したくねぇ……
「まぁでも、どうせ天井に向かって呼べば問題無いことなので、適当に捨てるなりしてほしいッス」
「オッケー、今からこれぶっ壊すわ」
「待ってっ‼︎ 壊さないでっ‼︎ みんなの為を思って作ったものだから壊しちゃヤダッ‼︎」
「うわでた」
やっぱり小倉さんを呼ぶためのボタンだったか。けど勝手に出て来たからやっぱり意味ないかもしれんな。
んで、何故小倉さんが登場したかというと、リリスさんの等身大依代が作れるかもしれないからそれを報告したいとのこと。ウガルルを召喚する時に精製した素材が少し余っており、薄めて使ってもかなりの濃ゆさの魔力粘土になるため、古代の封印に多少だけど抵抗できるらしい。
せっかくの機会が出来たことだし、リリスさんにはこれまでに色々と手助けしてくれたお礼があるのだから、その魔力粘土を作ってそこから依代を生成することに。
ちなみにあのボタンは俺達の部屋に無理矢理付けられました。しかもドリルでだぞ? 解せぬ。
何はともあれ、早速リリスさんの依代作りに挑戦。本来の魂の形に近づけないと依代の寿命が減るらしいので、慎重に作らんとな……
♢
そして翌日。
「お待たせーーーーーー‼︎ 余、降臨だ‼︎」
リリスさんの等身大依代完成&魂移出、成功。別に衣装は魂に寄せなくても大丈夫とのことで、二度目の優子との魂交代時に着たゴスロリ風のものにしたようだ。
当然実際に見たことのない姿の依代を作るのはかなり大変だったので、完成したのが徹夜明けだったわけなので、ぶっちゃけ疲れました。もちろん桃はめっちゃ眠そうにしてます。
だが俺は眠くない。メェール君の回復魔法で安眠できたので、ぜーんぜんっ眠くないもんねー‼︎ 桃には申し訳ないけど、優子を俺と一緒の部屋に居させなかった中であいつを俺の部屋に居させてメェール君の回復魔法を受けさせるわけにもいかないし……な?
「へー。リリスさんって実際に見るとスレンダーなモデル体型なんですね」
「なんだ褒めてるのかー? ホントはシャミ子の身体が好きな癖に余の身体の事を褒めるのかー?」
「いや優子の場合は身体どころか性格諸々全部含めて愛しているので、変なこと言わないでくれません?」
「か、身体だけじゃなくて……ッ。わ、わかりきっていたことだけど、そうなんですね……フフッ」
……あっ。今、すごく恥ずかしい事を言っちゃった。ヤベッ、顔が熱くなった気がする……
ちなみにこの依代、七日で活動を終了するとのことらしい。これでも努力して活動寿命を延ばした方で、魔力・筋力・色んなところをコストカットしたことにより、戦闘力も昆虫レベルしかないらしい。セミとかに負ける等身大って何……?
「セミ並みの寿命、余すことなくお外を謳歌するぞ‼︎ 五千年引き篭もった鬱憤を七日で晴らすのだ‼︎ ついて来いシャミ子‼︎」
「は、はい‼︎」
「あ、ここからは魔族の先祖と子孫水入らずで楽しむんですね。じゃあ俺はこれで───」
「何を言う‼︎ 白哉も一緒に遊ぶぞ‼︎ シャミ子の悠久を共にするパートナーなのだから、おぬしが同行しても何の問題もない‼︎ というか一緒に来い‼︎」
ぐえっ。襟を強く引っ張らないでもらえませんか。というか昆虫並みの力でも人の襟を引っ張れるくらいの腕力はあるんだ。マジもんでの昆虫パワーしか無いってわけじゃなくてよかったよ。いやマジで。
「私寝ていいですか? 依代作りで徹夜なんです」
「ダメ‼︎ 桃も一緒に遊ぶの‼︎」
「俺が同行するんで別に桃も連れ込まなくても……」
「いーや‼︎ せっかくの外だから桃とも一緒に楽しみたいのだ‼︎」
「子供ですか」
まぁ二千数年も封印空間に閉じ込められたんだし、複数人で楽しみたいと思うのも無理もないよな。それに桃とも色々と世話になってるみたいだし、もっと仲良くなりたいと思う意思もありそうだし……桃がさらに疲れるのは申し訳ないけど、リリスさんのわがままを聞いてやるとするか。
「これからは秒単位のスケジュールだ。まずは銭湯巡りだ‼︎」
あっ(察し)。男女混合のメンバーで秒単位での銭湯巡りはまずいのでは?
「すみません、それだと俺まで男湯に入った時に出るタイミング云々で時間の割が合わなくなるのでは? あっ、俺が外で待てば良───」
「クックックのク……そういうと思って、こんなこともあろうかと白哉、おぬしも余達と一緒に風呂に入れる場所のみを回ることにしたぞ」
「あ、そうですか。それなら時間が削られてしまう恐れもないし、よかった………………ん?」
えっ? 俺も優子達と一緒に風呂に入れる銭湯? それってつまり……
「おぬしも察したようだな。そう、今から回る銭湯は………………
全て混浴のあるところだぞ‼︎」
「ニュエェッ」
「ウェエェエェエェッ!? こ、こここここここここ、混浴……ですか⁉︎ えっ⁉︎ えぇっ⁉︎ 嘘ですよね⁉︎ ええぇっ⁉︎」
顔辺りに何やら爆発を浴びたかのような、熱さを受けたかのような感覚を得てしまった気がする。少なくとも優子は確定しているかのような真っ赤な表情をしている。まるで実際に入ってのぼせてしまったかのような様子だ。うん、可愛い。
というか銭湯にも混浴のところとかあったんだ……二次創作の世界でもそんな設定聞いたことないぞ……なのになんでこの世界にはいくつもあるんだよ、怖っ……
「なんだ? 二人とも一緒の風呂に入ってる経験をしたのではないか?」
「ないですね。ウチの風呂は吉田家と共同で使ってるってこともあるので」
「そ、そもそも考えたことすらなかったです……」
うん、それもある。いつもの風呂で二人っきりで入るだなんてことは考えていなかった。いつもあのドエロな危機管理フォームの優子を抱けるって考えるだけで興奮して飽きない……って何考えてるの俺。おもっくそ変態発言してるやんけ。恥ずい。
「まぁよい、この混浴巡りを機に今後の性交は風呂とかでもやろうって考えてみるのも良いぞ。……どっかの銭湯でヤるというのなら、待ちながらスケジュール調整もしておくが?」
「「結構ですッ‼︎」」
他の人達も使う銭湯で何ヤらせようとしてんだこの淫魔っぽい魔族がァッ‼︎ 人目や場所すら気にしない程には盛ってねェよ俺達は‼︎
「……今、何やらねむけが覚めそうで面白そうなことが聞こえたような気がする……」
「いや、気のせいだ。追求するな」
この桃色魔法少女はこの桃色魔法少女で何を言ってんだよマジで。
♢
そんなこんなな会話がありながらも、リリスさんの外界謳歌のプランがスタートした。行くぞー‼︎ うおーっ‼︎ デッデーデデデデーッ
まずは先程も宣告された通り銭湯巡り(混浴ありの)だ。しかも二十分で出て次の店へ、冷風呂と温風呂にそれぞれ片足ずつ入るという感じでだ。この入り方はリリスさんしかやってないが。途中でサウナにも入った。頭がパンクしそうだ……
ちなみにこの銭湯巡りで、結局何軒目かの銭湯にて、何回か優子に○かせてもらう羽目になりました……
混浴でタオル巻いて風呂入るなと指示してくるところばっかりで、優子の裸が何度もチラついて思わず興奮してしまったものだから、リリスさんに気づかれぬ様に優子にパ○ズ○で至らせてもらったら、そこからヒートアップして……
こん時、桃が寝ていただけまだマシだったのかもしれねぇ。あぁもう、何やってしまったんだ俺……
この後はリリスさんや我々の体調の事も考え、スケジュールを組み立て順番を一部変更しながら行動。ホットヨガ教室で身体をほぐし、SNS映えする仲良し写真を撮り、有名ラーメン店でニンニク野菜増し増しラーメンを食い、三本連続で映画鑑賞(内一本は3D体験型)をし、最後は家族で雑魚寝をすることに。
このスケジュール、やっぱり思った通り初日からハードル過ぎね?
「ここで帰ってもいいですかって言っても、貴方はそれを許してくれないでしょうね」
「当たり前だ‼︎ 子孫の眷属だって我が一族の仲間……謂わば家族のようなものだぞ。そんな奴らを除け者にするなど言語両断、おぬしも家族として最後まで付き合え‼︎」
それって、ただ俺も一時的な感じに眷属になった桃も巻き込みたかっただけなんじゃね? と思ったけど、そういうのは微塵も指摘しないでおくことにした。古代より生まれし者に家族として認識されたのが嬉しかったから……いやマジで、素直に。
「そこまで言うのでしたら、みんなで一緒に川の字で寝ましょうか。家族ですし」
「うむ、みんなで仲良く寝た方が楽しいぞ‼︎」
「か、家族……」
「えっもしかして私も家族扱い?」
そりゃそうだよ。リリスさんが眷属の事を家族として認識しているのだから、そういうことになるんだよ。原作でも百合厨なネット民によって優子との百合な関係を持ってると思われているんだし、それでも家族扱いされてるようなもんだろ。俺は断然NL派だけど。
「家族……白哉さんが、私達と家族……と、ということは、いつか白哉さんと結婚して、さらに子供が何人も……えへへっ……♡」
で、優子は優子でまた妄想を飛躍させすぎてるよ。リリスさん、とんでもない地雷発言をしやがってチクショウ……‼︎ 嬉しいことに変わりないけどさ、今となって複雑になってしまったじゃねェかよオイ……
で、翌日からは俺達は学校ということで、ここからは柘榴さんがリリスさんの外界謳歌満喫プランに同行することになりました。柘榴さん、貴方も仕事があるのでは? いや就職してるのかは知らんけど。
♢
で、四日目となったある日のことだった。
柘榴:学校終わった?
とんでもないことになった
助けて(>人<;)
という顔文字つきのメッセージを柘榴さんが送ってきた。顔文字可愛い。
二日目から学校に行ってた俺達に代わってリリスさんの外界謳歌満喫プランに付き添っていた彼からのSOSのメッセージということは、他の人なら柘榴さんが体力や精神に限界が来たことで送られてきたものだという捉え方をするだろうが……
「あぁ……やっぱり『生き急いだら逆効果だよ』とか言うべきだったかもしれないな」
原作推奨済みの俺だからこそわかる。これは多分柘榴さん自身に関するSOSではない、リリスさんに関わるSOSだ。あれだけ秒単位で現実世界を体験しようとしてるし……
「シャミ子や〜……お帰り……」
「ごせんぞぉぉぉ⁉︎ どうしたんですか⁉︎」
あぁやっぱり。ホームレスな大人みたいになってますよリリスさん。結構心が荒んじゃってるよこの人。やっぱりスケジュールがカツカツってレベルじゃない程にヤバかったんだな。
「……なんか、リリスさんが求めてたことを片っ端からやってたら、病んじゃった」
「柘榴は止めなかったの……? ずっと一緒にいたんだよね……?」
「……古生の人がしたいことを咎めるのは、ちょっと違うかなって思ってた。けど、結果的に逆効果だった」
あぁ、柘榴さんは数千年出来なかったことを止めるのは野暮だと思ってたんだな。他人の長い間我慢していたことは最後までやらせたい派……みたいな感じか。その結果がこれだけど。
リリスさん、一時的かつ条件つきとはいえ封印から解放された喜びから色々なことをやりたいと思ってたんだろうな。それが先走りしすぎて裏目に出て……だったら尚更、このまま疲れた気持ちで封印空間に帰らせるわけにもいかないな。
「あの……ごせんぞ。残った時間で、思い切って静かなところに旅行に行きませんか? 水と森が綺麗なところを知っているんです。明日から……『おくおくたま』で大自然キャンプに行きましょう‼︎」
おっ。そうこう考えていたら、優子が原作通りリリスさんに残りの時間を素敵な思い出で埋め尽くそうと言っているな。リリスさんに心を安らぎを与える為には、静かで自然豊かな場所でみんなとワイワイするのが一番だな。
……俺も、それを促すように自分なりの言葉をリリスさんに掛けてみるか。
「リリスさん。貴方が心を弾ませることができないのは、実質一人で限られた人生を送ろうと必死になりすぎたからなんだと思います。人も魔族も、一人で色々やってみたいと思っても、自然に寂しさを募らせて己の心を削ってしまうものです。だからこそ、その荒んでしまった心をみんなで修復していき、限られた時間を賑やかで楽しいものにしていきましょう」
「シャミ子……‼︎ 白哉……‼︎」
よし、どうやらリリスさんの心に俺達の言葉は響いたようだ。これなら安心して明日からのキャンプに望めるってわけだ。後は杏里と……ついでに勝弥も呼ぶか。あいつ偶にソロキャンしてるって言うし、キャンプに必要なもんを杏里と一緒に持って来てくれるだろ。
……となると、あの原作イベントか。優子に何かあったらを想定しながら動かないとな。
♢
翌日。リリスさんがデカい依代ほしい宣言した時にいたメンバーに加え、家族用のキャンプセットをそれぞれ持ってきてくれた杏里と勝弥も入れて『おくおくたま』でキャンプすることになった。
「うわー‼︎ めっちゃ山‼︎」
「山だから山だけどすっごい森山感‼︎」
「やーーーーーーっほーーーーーーーーー‼︎」
「頂上何処だ頂上ォォォーーーォォォーーーッ‼︎」
「二人とも喧しいわ」
ホントそれですね。杏里は原作読んで知ったからともかく、勝弥まで山に来て興奮するとかさ……この二人も結構お似合いなのでは? お前ら付き合っちゃったりしない?
と、そんな事を考えていたら古い形の鏡が入っている祠を見つけた。昔の人間が自然を畏れて建てたものだという。古い土着の信仰が沢山あったから魔力も高く、霊水の質もかなり高いかもしれない……というのが我々の憶測だ。
いや、よく考えたら霊水は桜さんの魔力の質の良さに影響されてすごい回復力になったのかもしれないな。でないとあんな回復力はあの時起きなかったかもしれないし……
まぁいいや。せっかくとのことでお祈りもしたことだし、そろそろキャンプ用テントの準備でもしておくか。
『ふむ……銀の輝きを持つ者の力、他の者とはかなり異質なものだな。さぞ面白かろうな……』
ん? なんか直接語りかけられた気が……?
♢
この後みんなでキャンプの準備をし、念願のバーベキューターイム。実は俺、優子やリリスさんと同じくキャンプどころかバーベキューなんてした事がなかったから、どんな風に楽しめるのか結構期待している。
焚き火で周囲があったかくなったところで、いよいよバーベキュー開始。杏里が実家の店から持ってきたドデカい牛肉を、さらには勝弥が父親の釣ってきたエビやホタテなどの魚介類をタッチオーブンでローストしていく。
というか勝弥のお父さんって漁師だったんだな。今知ったわ。なんでこのタイミングで初耳なんだよ。なんで教えてくれなかったんだよ。えっ? 聞かれなかったから? なんだその理由は、ふざけてんのか。
「……では。余命三日のシャミ先に黙祷を捧げてから、かんぱーい‼︎」
「オイ不謹慎だぞ。かんぱーい‼︎」
勝弥も勝弥で乗るな、それこそ不謹慎だぞ。というかお前ら、もうすぐ封印空間に帰る魔族の長な人に対してよく黙祷とか乾杯とかできるな。どんな精神の持ち主達だよ。
「その乾杯、余はどういう顔をすればいい?」
「笑えばいいと思うよ」
「……フフッ」
「いや乗るんですか。ノリに乗るんですか。自分から振っておいてなんですが、よくもあんな不謹慎なのからノリに乗れますね。貴方の精神力も中々ですよ、病んでるのに」
いっそのこと魔が刺してエ○ァを出してしまったこの俺にビンタをかましてやってもいいのに……なんであそこで笑えるん?
「いやなに、現世の宴なんて久しぶりだなって思ってたらいつの間にか笑えるようになっていてな。皆が余のために集まって、あそこまで賑やかにしてくれている……そう考えたら、心が結構軽くなってきたのだ」
「リリスさん……」
そっか……そうなんだな……あいつらも悪意があって言ったんじゃないってことを理解した上で、あそこまで賑やかにしてくれた優子達への感謝の気持ちが強くなったんだな。それで不謹慎なのをあまり引っ張らなくなったと……
リリスさん、それほどまでに既に心の安らぎを取り戻してくれたのか……よかった。
「……白哉よ」
「はい?」
「元々この案を出してくれたのは、余の子孫であるシャミ子だ。そしておぬしはそいつの恋人だ。だからこそ、改めておぬしに頼みたい。これからもシャミ子の為に、お互い死なない程度で良いからその身を捧げてやってくれ」
「……はい、俺に任せてください」
どうやらここでリリスさんに優子の事を直々に託されたようだ。しかも突然というタイミングで。心に光を取り戻してくれた彼女だからこそ、このタイミングで俺に託したのだろうな。どうであれ、改めて優子の先祖に優子の事を託されたんだ。この約束は最後まで果たしてみせるぜ。
この後リリスさんは肉や魚介類を食って目にも光を取り戻したり、ミカンの作ったホットカクテルで酔ってしまったり、それのせいか裸踊りをしようとして優子に止められたり、桃に絡み酒したり、寝ながら直接脳内に歌を流し込んできたりと……とにかく結構楽しんでもらえてよかったぜ。
「皆、余に優しすぎる。出会いと仲間に感謝……大自然に感謝……」
「リリスさんがいつもの調子に戻ってくれてよかったです。俺も安心しましたよ」
「でも、ちょっと飲み過ぎかもしれないですね。酔い醒ましに散歩させましょう」
「なら俺が片方の肩を持つよ」
アレ? 二人で一人の肩を持つって、なんか戦場で負傷者を担いでいるように感じるのだけど、気のせいか?
「星が綺麗だ……」
えっ? あっ、ホントだ。よく考えたら前世と優子がヤンデレだと知った頃からはそんなに夜空を見たことがなかったから、久々に見たら本当に結構綺麗に星が見えるな。
「おっ、流れ星がたくさん」
「あっホントだ。皆でお願い事をしましょうか」
「うむ、そうだな。封印空間に戻ってしまえば、もう流れ星にお願い事することはないだろうしな……」
不吉な事を言うのやめてもらってもよろしいでしょうか。久々に外に出られたんですよね? 長年封印空間にいた時の感覚で言わないでもらってもよろしいでしょうか。
まぁいいや、とりあえずお願い事するか。流れ星は結構早く消えるから、欲張らずに……
「皆で平和な人生、皆で平和な人生、皆で平和な人生……」
「最強まぞくになる、最強まぞくになる、最強まぞくになる……」
「封印解放、封印解放、封印解ほ──う……うっ……おえーーーーーーっ‼︎」
「あっぶねっ」
「ごせんぞぉぉぉぉぉぉ‼︎」
いやマジで危ねェ、咄嗟にエチケット袋を出してリリスさんが口からリバースするところに出しておいてよかったぜ……シンプルにリバースしたものを土の中に埋めるとか、自然の摂理を考えたら生理的にも嫌なんだけど。
「ここの湧き水、綺麗なんです。口を濯ぎましょうか……あっ⁉︎ カップが……‼︎」
湧き水の勢いによって優子が落としてしまったカップを、素早く動いて回収‼︎ とはいっても、反射神経で体が勝手に動いたってだけなんだけどな。ま、ゴミとなる物をそのままにするのも環境に悪いから正しいけどな。
「す、すみません白哉さん。カップを拾ってくれてありがとうございます……というか召喚師覚醒フォームにならなくても柔軟に動けるんですね……」
「いや自分でもそのままでも動けるとは思わなかったけどな」
気づかぬ内に自分の身体能力が向上していた事に、我ながら内心めっちゃビックリしていた……その時だった。
『川に、ゴミを、捨てるな!!』
「ヒィエッ⁉︎ す……すすすすす、すいませんでした‼︎ 今のは捨てたんじゃなくてちょっとしたミスなんで優子を責めないでやってもよろしいでしょうか⁉︎」
「ホ、ホホホホホ、ホントにすみませんでした‼︎ 今のは本当に事故だったんです‼︎ ごめんなさいでした‼︎」
めっちゃ不気味な声が聞こえてしまったため、思わずめっちゃビビった声を出してしまった。いやね、脳内にめっちゃ響いてそうで響いてそうにない不気味な声ってのがより恐ろしさを感じさせるんだけど。怖がらない方がおかしいってこれは。
いや、今はそんな事を考えている場合じゃない。来てしまったのか、あの原作イベントが。このイベントは優子がとある突然のピンチに陥ってしまうものだ、充分に警戒を……
『川を穢したな、
……ん?
『しかし、汝らの能力は比興なり。本来ならば魂二つ纏めて我の元へと誘いたい所存だが、今の我の力では不便であるが故、一つしか連れて来れぬ出来ぬのが残念だ……』
は? 汝ら? 魂二つ纏めて? い、一体何を言って……
『……決めた。
「えっ……?」
今、俺の事を指摘しなかったか? しかも汝の異質な力って、それは一体どういう───
「───って、ファッ⁉︎ ど、何処だここ⁉︎」
な、なんだここ⁉︎ なんか迷彩柄の背景が一面に広がっているんだが⁉︎ うわっ、地面はめっちゃ紅い‼︎ けど血の色みたいな濃さはないことは確か‼︎ でも背景含め怖っ⁉︎ なんだここ⁉︎
どういうことだ……⁉︎ 俺、さっきまで優子とリリスの三人で多摩川の湧き水付近にいたはず。なのになんで一瞬でこんな異質な場所に……⁉︎ 俺の精神世界ではないことは確かなんだが……優子とリリスさんは一体どこに……?
『ここは、我が体内。汝の魂だけをつと引き寄せた』
「ッ⁉︎」
ふと俺の目の前に現れたのは、白と薄紫の鱗で覆われた巨軀の大蛇。突然現れたその存在に俺は咄嗟に後方へと飛躍し、呼称も無しに召喚師覚醒フォームになり、セイクリッド・ランスも展開して構えを取る。
『そう警戒するでない。我は汝や連れの命を喰らうつもりなどない』
「……申し訳ありません。突然俺をここに呼び寄せその姿を顕にして来たとなれば、即座に敵視せざるを得ないと判断しなければならないもので……」
『……汝の心境も分からなくもない。我の行いが強引であったことも確か』
思わず謝ってしまったけど、ぶっちゃけこの大蛇が俺に何をしでかすつもりなのか分からないし、何よりも白龍様に負けない程の威圧感がある。下手をしでかせば魂を喰われるかもしれない。だからこの者の出方を疑わないと……
『我は多摩川の遍く支流を司りし
「………………」
多摩川の自然の摂理を厳重に守る存在・蛟。彼に目を付けられたということは、多摩川の環境を穢した罪で抹殺されるということだ。けど俺は優子が迂闊にも落とした酒のカップを拾ったんだ。彼の怒りをあれ以上に買うようなことはした覚えが……
『ちょっとうるさいし川を汚されて怒ってるけど、それはそれとして汝の力は小さき者の力と同じくらい気になる。暇つぶしに付き合って』
「えっ? ………………あ、はい。そういうことですか。分かりやすい言葉で翻訳していただきありがとうございます……?」
お、思わず気の抜けた感じにしてきた蛟さんにお礼を言ってしまった……そういえばこの大蛇、原作でも何かと優しいところがあるんだよな……つ、つい気が抜けてしまった。
って、よく考えてみたら、なんで蛟さんに魂を引き寄せられてしまったの、優子じゃなくて俺なんだ? 原作では優子の方が引っ張られてしまったのに……いやぶっちゃけここでも優子が引っ張られたらめちゃくちゃ困るんだけど。
というか、それってつまり……この後は優子が俺の魂を奪われたと思って、ヤンデレな感情が爆発してとんでもない暴走を起こしてしまう展開が来てしまう……ってコト⁉︎ ちょっ、ヤバいじゃんそれ早くここから出してェェェェェェェェェッ⁉︎
意外ッ‼︎ まさかのシャミ子ではなく白哉の魂が攫われてしまったッ‼︎
原作とは大きく異なる展開となってしまった今、白哉やシャミ子達はどう抗う⁉︎ 次回以降を待て‼︎
ん? ほそく話? こんなとんでも展開の中でそんなの流せられるかッ‼︎