偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語   作:名無しのモンスター

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まさかのシャミ子と桃の初決闘回以来の、原作一話で二話分引き延ばしだよってことで初投稿です。

果たして白哉はみんなの元に戻れるのか⁉︎ 心して見よ‼︎


囚われの白哉。精神不安定なシャミ子。そして……彼女とリリスの覚悟

 

 白哉さんが突然気絶してしまってから数分が経った。

 

 ごせんぞ曰く、白哉さんは魂を『おくおくたま』の自然に棲む人ならざる者によって攫われたと言っていたため、この山一帯から白哉さんの魂が囚われていそうな場所の辺りを見つけることに……しようとしたのはいいものの、手掛かりも無い状態で闇雲に探すのは困難な状況である。

 

 でも、このまま何もしないままでいると白哉さんの体は弱まってしまう。体内の細胞は動かなくなり、最悪死んでしまう恐れも……

 

 私は、白哉さんに死んでほしくない。何としてでも彼の魂を取り戻したい。このままでは白哉さんと会えなくなるかもしれない悲しみから、私は私でなくなってしまうかもしれない。けどどうすればいいのかわからない。一体、どうすれば……

 

 

「……子。……ミ子。シャミ子ッ‼︎」

 

「───ハッ⁉︎」

 

 

 杏里ちゃんに呼びかけられて、私は正気を取り戻した。あ、危なかった……ッ。危うくまた暴走するところでした……ッ‼︎

 

 

「大丈夫? さっきの過呼吸程ではないけど、結構苦しそうな顔をしていたよ?」

 

「す、すみません。また迷惑をかけてしまいました……」

 

「いーよ別に。シャミ子は白哉がこうなってしまった現象に遭ったのは初めてなんだよな? だったら焦るのも無理ないよ、私もこんな事初めてだし」

 

 

 何そのまるで白哉さんが一度気絶した経験があるんだよって言ってるかのような言い方……あっ。そういえば白哉さん、私が自分の夢の中から記憶を辿ることにした時にも、不十分な契約のせいで気絶してしまったんだっけ。それはもう解決したし、それがきっかけで私達は付き合うようになったけど。

 

 でも、私が実際に白哉さんが気絶してしまう出来事に遭遇してしまうのは、杏里ちゃんの言う通りこれが初めてだ。突然起きた事だし、何より今回は私が寝た時のは違って魂を奪われている。だからこそ、白哉さんが無事に起きてくれるのか不安で仕方がない。

 

 それに……

 

 

「……白哉の事が心配?」

 

「……はい。でも、心配というか……不安なのは白哉さんの事だけじゃないんです」

 

「そこまで言われたらもう分かるよ。シャミ子自身が平常心でいられるか、でしょ。シャミ子は白哉の事が好きすぎて、今にも白哉を狙ってくる奴・傷つける奴を片っ端からぶっ殺しそうだもんなー。正しくヤンデレまぞく、みたいな?」

 

 

 私そこまで殺戮衝動に駆られてないですッ‼︎ というかそうなるほどに白哉さんに執着してるわけではないですッ‼︎ 皆私の事を酷く解釈し過ぎですよホントにッ‼︎ でもヤンデレなのは否定できないッ‼︎ 以前意味を調べて色々と私の心境と合ってたからッ‼︎

 

 

「……杏里ちゃんの言うことは正しいです。すぐにではないとはいえ、もしも白哉さんがこのまま目覚めず、最悪死んでしまったとしたらって考えてしまって……ッ」

 

 

 死んでしまう可能性がないかもしれないけど、どうしてもその可能性も考えてしまう。本当は白哉さんに死んでほしくはないし、目を覚ましてほしい。でも、もしかするとって思うと……

 

 

「………………あ、あれ? な、何だろう……なんか、視界が、歪んでいるような……ッ」

 

 

 お、おかしいな。なんか、頬に何か温いのが流れてきたような……それと同時に、何か込み上げてきたものが出てきたかのような感じが……

 

 な、なんだろう……そう考えると、より白哉さんに死んでほしくないって気持ちが強くなってきた気がして……

 

 い、嫌だ……ッ。死んでほしくない……ッ。白哉さんには絶対死んでほしくない……ッ。私の想いを受け止めてくれた恋人を、恩人を、幼馴染を、絶対に失いたくない……ッ。

 

 

「あ、杏里ちゃん……私、ここまで白哉さんに執着するのはおかしいでしょうか……?」

 

 

 気がつけば私は、杏里ちゃんにそんな事を聞いていた。白哉さんの事をこんなに想ってしまうのはあまりにも異常すぎると、改めて白哉さんの存在のありがたさと、白哉さんの事を愛し過ぎている自分の醜さが憎く感じてしまった。

 

 私、このまま白哉さんの事を今まで通り好きにした方がいいのかな? それとも彼と私自身のために距離を置いた方がいいのかな? それとも……

 

 

「いや、逆によく考えてみなよ。それほどまでに好きな人を愛することは普通だって」

 

「………………えっ?」

 

 

 は? えっ? こ、これが普通? えっ? わ、私のこの感情が普通? 危なっかしい武器を持って振り回す前の状態のも、普通……? わ、私のせいで人を愛するという認識が麻痺してしまったのですか……?

 

 

「あー……なんというか、形がシャミ子とは異なるってだけで、感情は皆誰かを愛する時は一緒なんだよって感じの意味」

 

「いや、あの……結構感情も異なるかと……」

 

 

 いやホントに。誰かに取られるくらいなら、私がこの手で……でも本当は誰もこの手に掛けたくは……ってな感じなんですけど。結構歪んでいるんですけど。なのに私のこの感情は、他の人達と一緒?

 

 いや、あの……まるで意味が分からなくて結構混乱してますが……混乱まぞくですが……?

 

 

「ほら、愛や恋は人を変えるって言うじゃん。一度『恋』という感情を持ってしまえば、好きな人を独り占めしたい。他の異性と話してるだけで嫉妬して、自分だけを見てほしいと思ってしまう。けど、それが実は当たり前の事なんだよ。だって、みんな好きな人に惹かれた時は、自分の中の何かが変わっているのかもしれないって思えてくるじゃん? それほどまでにその人に影響されて、この感情を伝えたいって思えるようになる……えっと、簡単に言えばこんな感じかな。

 

 

 

 人はみんな、恋をしたら恋に溺れて、それと同時に、本当の自分を見つけられるものだってこと」

 

 

 

「………………‼︎」

 

 

 ……そっか。そういうことだったんだ。いや、そうだったと言う方が近いか。

 

 私も白哉さんに恋をしてから、彼に近づきたいがために自分を変えたいと努力をするようになった。学力も体力も向上させていってたし、何より暴走しない程度で白哉さんに私に意識してもらえるようにする方法を色々と考察するようになった。

 

 あぁ、そうだった。私は白哉さんに救われたから、白哉さんに恋というものを教えてくれたから、弱かった自分を変えていけているんだ。そしてそれは、他人によって自分を変えることができた人達と同じだったんだ。

 

 ……そっか。つまり、普段の愛の重さだったら特に大したことはない……そう捉えて良いのかもしれない。

 

 よく考えてみれば、桃やミカンさんも好きな人と関わった時には、その時だけ人が変わったかのような感じだった。いつも根は優しかったりちょっと特殊だったりとしている彼女達も、好きな人の事になるとその時は人が変わってしまうし……

 

 ……そう考えてみれば、私のこの感情も桃達と一緒だったんですね。形が違うってだけで、誰かを愛することは同じことだったと……そっか、よかった……なんだか安心した。

 

 

「杏里ちゃん、ありがとうございます。おかげでちょっと勇気が出ました。これからもいつも通りの私としてやっていきます‼︎」

 

「……うん。その曇りの無い明るい顔ができるのなら、その言葉を信じてもよさそうだね」

 

 

 そう、私は決めたのだ。もう白哉さんの事でマイナスな思考になるのはやめにしようって。私がこんなにも鬱になってしまったら、白哉さんに生きてほしくてもそれに答えてくれないと思うから……

 

 だから、私が今できることは二つだけ。白哉さんの魂の場所を探す、白哉さんが生きていることを信じる、それらだけ‼︎ 白哉さん、待っていてくださいね。絶対貴方を助けてあげますから───

 

 

 

『みんな、聞こえるか⁉︎』

 

 

 

「ファッ⁉︎」

 

 

 お、思わず変な悲鳴みたいな声を出してしまった……今のドデカい音……というよりは声のせいでウガルルさんと蓮子さんの耳がやられて気絶状態に……

 

 というか、今のこのめちゃくちゃ聞き覚えのある声って、ま、まさか……白哉さんッ⁉︎ 白哉さんですかッ⁉︎ い、生きてたッ⁉︎ 当然まだ死んでないとはいえ、生きていたんですねッ‼︎ よかった……ッ‼︎

 

 ………………あれ? でも魂を奪われたはずなのに、どうやってここまで声を……? と、とりあえず会話できるか確かめないと……

 

 

「びゃ、白哉さん……? その声は、白哉さんですか……?」

 

『おう、そうだ‼︎ どうやらお互いの声は通じるみたいだな‼︎ よかった……‼︎ 声がデカかったら悪い、テレパシーを使うの初めてだから……けどあまり時間を掛けるわけにもいかないから、単刀直入に今の状況を言わせてくれ‼︎』

 

 

 い、一応声量は最初に発した時よりは結構落としてくれたので問題ないですけど……というか、いつテレパシーを使えたのですか⁉︎ 羨ましい‼︎

 

 

『まずは朝見た祠のところまで来てくれ‼︎ 実はこの多摩川の祠に棲む大蛇……蛟さんに魂を連れ去られて絡まれてしまって、召喚術で彼の暇つぶしに付き合ったら好感度上げ過ぎちまって、帰してくれなくなってしまった‼︎ で、皆と交渉してどうするか決めることになって───』

 

 ブツンッ

 

 

 えっちょっ、白哉さん!? ここでテレパシーを途切れさせないでください!! わ、私は今もっと貴方の声を聞きたいんですが⁉ ちょっとォっ⁉ ……声ェ……。た、助けられたらたくさん聞けるから仕方ないか。白哉さんも初めてテレパシーを使ったって言ってたし……

 

 

「シャミ子……白哉くんの声を聞けたおかげなのか結構ヤバい笑顔になった気がするけど、私達はこれを見て安心した方がいいかな……?」

 

「あっ。す、すみません。今更すぎるので今言っても意味ないかと思いますが、今の私の顔について触れないでいただけないでしょうか……?」

 

 

 変な顔してたのまたバレたッ‼︎ というかまたいつの間にかそんな表情をしてしまったッ‼︎ さすがにこの癖だけはどうにかして治さないといけませんねッ‼︎ はいッ‼︎

 

 

「そんなことよりもッ‼︎ 朝に見たあの祠に何かあるみたいですね……ごせんぞ、どうしましょう?」

 

「急いでその祠に向かうぞ。白哉本体はあまり動かさない方がよいから、杏里と勝弥で白哉を温めていてくれ」

 

「おう‼︎ 任せてくれ先リリさん‼︎」

 

「先リリ……? 余に対して言ってるだろうが、何の略称だ……?」

 

 

 先リリ……あぁ、『ごせんぞ』と『リリス』を合わせて略した感じですか。勝弥くん、なんて面白くて気になるあだ名を……

 

 じゃないッ‼︎ 今はそんなことを考えている場合じゃないッ‼︎ 早く白哉さんの魂があるという祠のところへと向かわないと‼︎

 

 もちろん私はごせんぞと共に祠に向かい、桃と柘榴さんが同行してくれることに。ミカンさんと拓海くんは耳をやられたウガルルさんと蓮子さんの介抱もするために、杏里ちゃんと勝弥くんと一緒にここに残ることにしたそうです。ただ……

 

 

「白哉を攫った相手が撃てそうな子なら、ここから狙撃するわね。まっかせて♡」

 

「そこまで遠くなかったらここから術を出して、解放するまで一生麻痺らせておこうかな……♠️」

 

「出る前にもっといい丸太を探さないと……」

 

「……ウデガナルゼー」

 

「おぬしら過激派しかいないのか⁉︎ なんか段々暴走した時のシャミ子の方がマシに思えてきたぞ⁉︎」

 

「だからそう思われるのは複雑なんでやめてくださいッ‼︎」

 

 

 四名の方々が物理的に白哉さんを助けようとしてるのですがッ‼︎ 白哉さんの事で負の感情が強まった時の私よりも、遠慮というか躊躇いもなく人を物理的に傷つけそうなんですけどッ‼︎ 拓海さんに至っては一瞬ヒソ○になってませんでした⁉︎ それと柘榴さんのその台詞の元ネタは何なんですか⁉︎

 

 もしかして私も躊躇いもなく人を傷つけようと決めたら、あんな風にサイコパス要素ありの思考になるのではッ⁉︎ やっぱり自分の性格は改善しておかないと、なんか魔族以前に人でなくなってしまいそう……気をつけよ。

 

 

 

 

 

 

『汝よ、連れとの連絡はできたか?』

 

「えぇ。途中で途切れてしまいましたが、通じることはできたみたいです。後数分すれば祠まで来てくれると思います」

 

『ふむ……そうか』

 

 

 蛟さんに魂を祠に入れられ、言われるがままに召喚獣を呼び出して好感度を上げ過ぎて気に入られた俺は、優子達にテレパシーを送って祠まで来るようにと伝えた。先程俺をこの祠から解放してほしいと必死に蛟さんに頼み込んだら、優子達と話し合う……つまりは交渉して決めると言ってくれた。

 

 ただ優子達にこの事を伝えるには条件があるらしく、《汝にはまだ不思議な能力があるようだから、それで連れにここまで来るように伝えてみよ》と言ってきた。テレパシーなんてやったことないからどうしようかと思っていたところに……ふとある事を思い出したんだ。

 

 それは、優子の誕生日プレゼント作りの時、小倉さんがくれた《どこでもテレパシー》だ。これを持っていたおかげでどうにか外の世界にいる優子達にテレパシーを送ることができ、彼女達をここまで来るように伝えることができたのだ。小倉さん、ホントにありがとう……

 

 

「……本当に、交渉次第で俺をここから解放させてくれますよね?」

 

『うむ、我は嘘をつかぬ。我をあそこまで慰めてくれた汝へのせめてもの情け……というべきだろうな』

 

 

 気に入られてから外に出さない気満々な感じがするんだけど……意外と結構優しい方なんだ、嘘なんてついてないはずだ。……そうであってほしい。でないとこっちが困るから。

 

 

【祠……この鏡が結界との窓か】

 

【ここに白哉さんが……ッ‼︎】

 

 

 こ、この声は……優子とリリスさんか‼︎ ここの場所が分かったんだな‼︎

 

 

「おーい優子‼︎ リリスさん‼︎ 俺はここだぞー‼︎」

 

銀の輝きを持つ者の連れか。この力の流動からして、小さき者もいるな

 

 

 小さき者……というのは優子の事か。なんか蛟さんの口が孤を描いているように見えるけど、やっぱり優子もここに連れて来て俺と同じことをするみたいに束縛する気満々じゃん……この人(大蛇)も実はヤンデレ気質があるんじゃないだろうな……(震)

 

 ってかそんなことよりも、蛟さん声を変えた……というよりは戻してません? 雰囲気作りのために戻したんですか?

 

 

【この地の主か? 住処を汚したこと、心から謝罪する】

 

【私もゴミとなる物を不本意とはいえ落としてしまって……本当に申し訳ありませんでした】

 

我はもう怒ってはおらぬ。だがこの者は返さぬ

 

 

 ………………は? 今、蛟さんなんて言った? 《返さぬ》、だって? は?

 

 

「ちょっ話が違っ───」

 

『一旦ちょっと黙っててね。後今のはただの雰囲気作りの為の嘘だから』

 

「あっぶなっ⁉︎」

 

 

 あ、危うく尻尾で巻きつかれて発言権を潰されるところだった……セイクリッド・ランスを展開してシャイニング・ウォール・ビットを体周りに発動させておいてよかったぜ……

 

 というか、雰囲気作りの為の嘘だったんかい。焦ったぜ、いきなり嘘つかれて裏切られたのかと思ったぞ……いや今でもまだ焦るけど。

 

 

本来ならば、百五十年の長く淋しき封印生活の慰みに、この者の魂は封印解けし時まで我が貰い受ける予定だったが……銀の輝きを持つ者からの熱い懇願があったのでな、汝らとの交渉を持ち込むことにした

 

【交渉……ですか?】

 

左様。銀の輝きを持つ者に我を慰めさせる代わりとなる等価交換だ。それが可能となる適切な案を我に教えるが良い。銀の輝きを持つ者の意見無しに、だ。その者の声は既に無音にさせているためそもそも聞こえないだろうがな。中々に相応しいと思う案が思い浮かばなければ、今我が結んでいる約定……銀の輝きを持つ者の魂をこの祠に留まらせる約定を変更することは出来ぬ。そうなれば、銀の輝きを持つ者の魂は封印解けし時までこの場から離れん

 

【【なっ……】】

 

 

 ……あれ? ちょっと待って? よく考えてみたらこれ、俺が横槍入れても交渉が成立するような感じにならなければ意味がない? 俺の意見はあまり意味がない感じ? 俺の意見は聞かないとか言っちゃってるし、全ては優子達次第ってか?

 

 というか俺の声を聞こえなくさせたって何ッ⁉ あっよく考えたら俺の声、出なくなっとるッ⁉ すっごい違和感ッ⁉︎ いつの間にそんな能力をかけたんだよッ⁉

 

 ……どうしよう。ここから出たいのに出れそうにないんだけど……優子達の決心次第ではとんでもない結末になりそうなんだけど……

 

 

【……ねぇ、もし今定められている約定を変えることができなくなったら、どうする?】

 

【その時は交渉決裂。更地にするから】

 

【待てッまだ決めつけるなッ‼︎ 壊したら連絡すら取れなくなるぞ‼︎】

 

 

 なんか約二名が物騒なことを考えてるんだけどッ⁉︎ 頼むから最悪な事態を招くのはやめてくれ‼︎ 俺はそんな結末絶対嫌だから‼︎

 

 

 

 

 

 

 せっかく白哉さんの魂を見つけることができたというのに、彼の魂を匿っている蛟さんからとんでもないことを申しつけられてしまった。百五十年もの孤独を埋めれる代償を払わなければ、白哉さんの魂を解放することはない……と。

 

 蛟さんのその言葉から考えるに、白哉さんは私達がここに来るまでに彼を慰めており、その方法を気に入られて固執するようになった……というべきだろうか。経緯や真意は分からないけど、白哉さんは他の人にも気に入られる性分があるから、蛟さんに固執されてしまうのも分からなくもない。

 

 だけど、問題なのは私達の方だ。白哉さんを解放するには、彼に代わって蛟さんの百五十年もの孤独を埋める提案をしなければならない。等価となるものが見つからなければ、白哉さんの魂は一生祠の中。祠を破壊してしまえば魂は迷子になって一生現世に戻らなくなる……最悪だ。

 

 百五十年の孤独って、私が重たい愛を出している時よりも色々とヤバいものを背負っている感じがして、悲しみなどのスケールがデカ過ぎると思う……でも、何か良い案を考えないと、白哉さんが本当に死んでしまうかもしれない……一体どうすれば……

 

 いや、ちょっと待てよ? 私にはなんとかの杖がある。私の想像力次第だけど、もしかすると……

 

 

「後で元の世界に脱出できる能力が使える杖に変形させて使えば……」

 

 

 この作戦が上手くいけば、白哉さんを救えるかもしれない……‼︎

 

 

「桃! ごせんぞ! 私……白哉さんの身代わりになって彼の魂を解放します‼︎ そして色々披露したりなんとかの杖の力でなんやかんやしたりして蛟さんの心を癒したら、また杖の力を使って今度は私の魂を元の場所に戻します‼︎ 上手くいけば実質ノーコストで白哉さんの魂を取り返せることになると思います‼︎」

 

 

 それに一時的な魂の離脱ならそこまで悪影響は及ばないはず……‼︎ なんとかの杖なら心を安らげる能力を持つ杖に変形できて、それで蛟さんの百五十年の孤独をちゃんと埋められるかもしれない……‼︎ ごせんぞと夢の中で修行したあの経験がさらに活かせられる時が来たッ‼︎

 

 

「……確かにシャミ子ちゃんの力なら、この山の主を満足できるとは思うけど……」

 

「で、でもそれだと逆にシャミ子が気に入られて、今の白哉くんみたいに囚われ続けるかもしれないよ⁉︎ その脱出する手段どころか心を癒す手段が上手くいくかも分からないし……」

 

「もう一ヶ月以上前の発想力の乏しい私じゃありません‼︎ それぐらい創生してやります‼︎ それに……‼︎ 白哉さんにこれ以上の苦しみを与えることになるのは、もうごめんですから」

 

「シャ、シャミ子……」

 

 

 今言ったみたいに、白哉さんにこれ以上苦しい思いをさせるのはごめんだから……というのが本音です。これでもし私が祠から脱出できなかったとしても、哉さんはその時の悲しみを月日が経った頃には乗り越えられると思う。私とは違って。

 

 白哉さんと一緒にいられなくなることよりも、白哉さんが死んでしまう方が、私にとっては一番辛い。だから、白哉さんには生きてほしい。だからといって、この作戦で私の魂が元に戻らなくなるのもごめんですけどね。

 

 とにかく、蛟さんに私の魂を祠に入れて、白哉さんの魂を返してもらうように交渉を───

 

 

「───それでも、その作戦が上手くいくとは限らんのだろう? おぬしらへの負担を与えない手段なら、余は考えておる」

 

「へっ? ご、ごせんぞ……?」

 

 

 一体、何をする気で……?

 

 

「シャミ子。桃。柘榴。おぬしらのどちらでもよい、余の体を邪神(ダサ)像諸共消し飛ばせ」

 

「「「えっ?」」」

 

「そうすれば余は魂だけになり、この世に留まれなくなる……だが……その刹那、一瞬だけ古代の封印から解き放たれる‼︎ その刹那の間に白哉を引っ張り戻し、余が身代わりとなって祠に留まる‼︎ そうすれば白哉の精神的ダメージはシャミ子の魂が戻らなくなったと知った時よりも小さいものとなり、シャミ子が代わりに死んでしまう可能性もなくなるぞ‼︎」

 

 

 えっ? えっ………………えぇえええええええええっ⁉︎ ご、ごせんぞが身代わりに⁉︎ しかも依代どころかごせん像ごと破壊して、無理矢理封印から出て白哉さんを助ける⁉︎ そ、そんなことしたら……ッ‼︎

 

 

「ダ、ダメです‼︎ そんなことしたらダメですごせんぞ‼︎ それじゃあごせんぞが代わりに犠牲になってしまうのと同じことです‼︎ 私のさっきの作戦なら、まだ誰も犠牲にならない可能性が……‼︎」

 

「リリスさんを実質消すなんて……私もさすがにやりたくない‼︎ できないよ‼︎ リリスさんの封印を解くだけなら、私の血を……」

 

「どれもダメだ‼︎ もしもの事があればそれこそ白哉は悲しみ、より一層心に深く傷口をつけることになるのだぞ‼︎」

 

「「ッ……‼︎」」

 

 

 私達はごせんぞのその言葉に、深く心を抉られたのか、口が軋むも反論出来ずにいた。

 

 私が身代わりになったら魂を自力で戻せる保証はぶっちゃけないし、桃も生き血を使ったら弱体化どころかコアに戻ってしまう可能性がある。ごせんぞの先程の案に比べれば、こちらの方がどれもハイリスクが過ぎるもの……そういう認識を持ってしまう。

 

 でも……だからといって、ごせんぞが犠牲になることなんて……

 

 

「白哉は小馬鹿にすることはありながらも、いつでも余の味方だったのだ。こんな余のためにお供えしたりフォローの言葉を掛けたりと、シャミ子程ではないとはいえ他の者達よりも余の事を気に掛けてくれていた。そして何より……いつも余の子孫であるシャミ子の心の支えになってくれた御恩がたくさんある。……白哉を助けるためならば余は何でもする」

 

 

 ごせんぞ……そっか、そうだったんですね。恋愛感情がないだろうとはいえ、ごせんぞも私のように白哉さんに心の支えになってもらっていたんですね。そんな彼を救いたくて、自分を犠牲にしようと……

 

 でも……それでも……

 

 

「それでもダメです‼︎ ごせんぞも私と同じく白哉さんの心の支えになっている‼︎ ごせんぞの存在があってこそ、今の私も白哉さんもいるんです‼︎ そんな存在が確実に消える作戦を立てるくらいなら、そうならない可能性のある私こそが白哉さんの身代わりになるべきです‼︎」

 

 

 白哉さんの支えになってくれている人が一人でも欠けるなんてこと、私が許しません‼︎ 本気で自力でこっちにまた戻ってくるので、ごせんぞはそれを信じてください‼︎

 

 

「いいや、この山に来たのも余が我儘を言ったのが原因だ‼︎ 余にはその責任を負う必要がある‼︎」

 

「私だってその山でゴミを落としてしまって、そのせいで白哉さんが連れて行かれたんです‼︎ 私にもその責任があります‼︎」

 

「それは余がゲーを吐いたから───」

 

「「あっ」」

 

 

 し、しまった。誰が身代わりになるのかと口論していたら、ごせんぞが自ら起こしてしまった悪態を吐いてしまった。これ……桃がどのような判断をするのか大体予想がつくのですが……

 

 

「あ、リリスさんのせいなんだ。消し炭にするに一票」

 

「やっぱり桃激おこだったッ‼︎」

 

「おやっ、これ桃もシャミ子の身代わりになる方に賛成になるパターン?」

 

 

 そうなるパターンが無くとも、ブチギレることに変わりないですけど……

 

 

「……よし、僕も加勢しよう。思いっきりボコボコにしてあげるね」

 

「ブチギレてる人がこっちにもいた⁉︎ やっぱり桃に従順なんですね柘榴さんは⁉︎」

 

「その言い方やめて、私が恥ずかしいから……」

 

「とりあえず余は直ちにこの世から退散した方が良いか?」

 

 

 あっすみません、二人の怒りに負けて犠牲にならないでください。私が帰ってくることを信じてここに留まってくださいお願いします。

 

 いや、ここは今すぐ蛟さんに直接お願いした方がいいか。こんな時に口論してたらそれこそ白哉さんが危ないし。とりあえずこの鏡を持って話しかければいいのかな?

 

 

「決めました蛟さん‼︎ 私の魂と白哉さんの魂を取っ替えてください‼︎」

 

「「「あっ⁉︎」」」

 

「できるか分からないけど、自力でこっちに戻れる力があります‼ それが上手くいけば一度貴方を満足させてあげたら自力で戻り、また貴方を満足してあげることになった時にいつでもそちらに魂だけで行ったりと往復できると思います‼︎ だから私を身代わりとして白哉さんの魂を……私の恋人の魂を返してください!!」

 

 

 ってあっ!? ごせんぞに鏡を取られた!?

 

 

「い、いや待てこの地の主よ!! 余ならおぬしと永き時を過ごせるから、身代わりなら余にせよ!! おぬしが嫌と言っても無理矢理そうする力が余にはある‼ シャミ子はアホアホだが何かを持っている。白哉もどこか抜けているところがあるものの同じく何かを持っており、何よりシャミ子の恋人でもあり眷属でもある。事故云々であろうとも、どちらも閉じ込めるにはもったいない存在だ。いつかきっとおぬしの封印だって解いてみせるぞ。だから……シャミ子ではなく余を身代わりにして我慢せい!!」

 

 

 今ちょっと私と白哉さんの事を馬鹿にしませんでした⁉︎ 悪気がないとはいえ、さすがのごせんぞ相手でも許せない……ここを譲ってたまるものか‼︎

 

 

「ご、ごせんぞがこの世にいなくなってほしくないので身代わりなら私の方に!!」

 

「ダメだここは余にせよ!! 封印の解きやすさなら余を身代わりにする方がよりお得だぞ!!」

 

「いいえ私に‼︎」

 

「いいや余に‼︎」

 

「いいえ私に‼︎」

 

「いいや余に‼︎」

 

「いいえ私に‼︎」

 

「いいや余に‼︎」

 

「じゃ………………じゃあ私が‼︎」

 

「「ダ○ョウ倶楽部じゃないです(ぞ)ッ‼︎」」

 

「ご、ごめん。つい反射的に……」

 

「……何これ」

 

 

 すみません、冷静になってみたら自分達でも何をしていたんだろうって思ってます。白哉さんを助けたいからとはいえ、どうしてこんなにも張り合ってしまったのでしょうか……穴があったら入りたい。

 

 

………………汝らの想いは伝わった。よって銀の輝きを持つ者……白哉とやらの魂を解放する為の約定が決まった。小さき者の祖先よ、そのまま鏡に触れ強く祈れ

 

 

 えっ……? 蛟さんが、ごせんぞに指示をした……? ハッ⁉︎ ま、まさか鏡の力で依代とごせん像を破壊するつもり⁉︎ そ、そんな……ごせんぞが身代わりになるなんて───

 

 

「ゲフッ!!! な、なんだ……」

 

 

 ファッ⁉︎ な、なんか宝玉みたいなものが鏡の中から出てきて、ボディブローのようにごせんぞのお腹に直撃したァッ⁉︎ そしてごせんぞのお腹の中に入っていったァッ⁉︎ 何これェッ⁉︎

 

 

汝の体に約定の龍玉を埋め込んだ。汝には、未来永劫多摩川を浄めるお役目を与える。汝は明日より一日三貫のごみを欠かさず拾え。約定を破れば龍玉は直ちに汝の体を焼き尽くす!!……これが、白哉とやらの魂を返す為の等価となる約定だ

 

「えっ……ゴミ拾い? なんで?」

 

 

 本当になんでですか? それが白哉さんの魂を返す為の条件って……どういうこと?

 

 

「いやいやいや、同居の話はどうなった。余は腹を括ったのだぞ」

 

「わ、私も腹を括ってましたよ……? なのにどうして……?」

 

理由は二つある。まず一つ。小さき者……シャミ子とやらの存在だ

 

 

 えっ私?

 

 

その者は白哉とやらとの深い繋がりを持っており、我にここに留まることを考え直すよう要求してきた時もその者の事を淡々と話していた。そして自分がいなければシャミ子とやらが彼女本人では無くなるとも言って心配だと……深く想う言葉を語る程にな

 

「え ゙っ」

 

 

 わ、私の事を結構話してて……しかも深く想ってたって……な、何度も改めて聞いても慣れない……だ、だって私の恋人がそこまで話していたと知ってしまったら、悶絶しかねませんよ……ウヘェ♡

 

 

そんな深い関係を持ち、シャミ子とやらの祖先の言う特別な力を互いに持つ二人を引き離してしまうわけにはいかぬ。よってシャミ子とやらの魂を連れて行かぬし、そのまま白哉とやらの魂をこちらに居座らせるわけにもいかぬ

 

 

 すみません(?)ありがとうございますッ‼︎ 私達のことを考えてくれてありがとうございますッ‼︎ 正直嬉しすぎて心臓が色んな意味でヤバいッ‼︎

 

 あれ? じゃあごせんぞの魂を連れて行こうとしなかったのは……

 

 

理由二つ目。ぶっちゃけシャミ子とやらの祖先とは共に過ごしたくない。喋っても楽しくなさそうだし

 

「わかる」

 

「……それね」

 

「「えっ?」」

 

 

 なんか色んな方面からごせんぞがディスられませんでした? ごせんぞって他の人からはそんなに評価ない……?

 

 蛟さんの話によれば、彼は人が自分の領域に鉱山の毒を流したことに怒って暴れ、巫女さん──昔の魔法少女に封印されたという。今でも多摩川の下流はゴミで汚れるものの、信仰し続けてその汚れを浄めることで封印は解け、ただの蛇になるとのこと。

 

 その封印がいつ解けるか分からないし、毎日拾えというゴミも三貫(ごせんぞ曰く九キロ)もあるという……それと月に一度祠を掃除してお酒とお菓子をお供えしろとのこと。ごせんぞ、結構な重労働を任されてません? これを毎日とか……ゴミの量だけでもヤバいですって本当に。

 

 

これにて約定の変更は終わった。よって白哉とやらの魂は返しておく。我との約束、忘れるでないぞ

 

 

 その言葉が聞こえたのと同時に、蛟さんの言葉は聞こえなくなった。約定は変わって、もう私達と話す必要はないと判断されたようだ。でも、これで本当によかったのかな……? 釈然としないようなそうでもないような……

 

 

 

 

 

 

 気がついた時には、俺はみんなに看病されてるような感じに囲まれていた。シートとかで体を包まれていたことから、どうやら俺は魂を抜かれた間、みんなのいるところで横になっていたようだ。ちなみに杏里と勝弥に両手を、気絶して寝てしまっているウガルルと蓮子に胴体を温めてもらっている状態だ。

 

 そしてふと見上げれば、俺の頭を乗せて膝枕している優子がいた。あれから俺は魂が返ってくるまでの間、彼女に膝枕してもらって暖を取りながら体勢を楽にさせてもらったらしい。

 

 というか、何気に膝枕されたのこれが初めてなんじゃね? ……よく見たら改めてデッカく感じる。どこがとは言わないが。

 

 

「びゃ、白哉さん……目を覚ましたんですね」

 

「あ、あぁ。……すまんみんな。どうやら迷惑をかけてしまったようだ」

 

 

 そう言うとみんな一斉に首を横に振った。タイミングが全員ピッタリ……ここまでシンクロすることってある?

 

 

「そんなことないよ。突然の出来事だったんだから……」

 

「寧ろ私達にも謝らせて。貴方が気を失った後どうすればいいのか分からなくて、しばらく何もしてあげられなくてごめんない……」

 

「けど、白哉君が無事でよかったよ。俺何回闇雲に霊術を使おうとしたことか……」

 

「どんな心境⁉︎ でも本当によかったよ、白哉が無事に目を覚ましてくれて」

 

「正直言って本当に起きるのかってハラハラしたぜ……最悪な一日になるところだったぞ」

 

「……不謹慎やめて。今は白哉君を慰めよう」

 

 

 ……ハハッ。どうやら俺は愛されてるようだな(粋がるな)。こんだけみんなに心身共に助けられて、心配かけられてさ……みんな俺の事大好きだったりする?(だから粋がるな)。いやぁ照れちゃうなぁ……(いい加減にしろ)

 

 いや、なんでこんなに楽観的なのさ俺。先程まで死んでしまうかもしれなかった状況に陥ってたってのに。これが死の淵から助かって安堵した者の状況ってか? 怖っ……

 

 ………………ん? んんんっ? なんか、優子がめっちゃ泣きそうな顔してるんだけど……まぁ、そりゃそうだよな。いつ死んでしまわないかという状況で泣かない方がおかしいもんな。いやホント、特に彼女には多大な心配をかけたと……

 

 

「白哉さん……その……ごめんなさい」

 

「………………えっ?」

 

 

 はい? なんで突然お前が謝ってくるの? なんで?

 

 あっ、俺を助けるために身代わりになろうとしたこと? いや正直叫声して心臓が止まりそうな程ビックリしたぞ? 声を出させてくれなかったけど。もしもあのまま優子が封印されてしまったら、原作の物語はどうなるんだとか、俺を愛せない点はどうなんだとか……そういう事を色々と考えさせられてしまうくらい───

 

 

「私……白哉さんが封印されてすぐ、人の命を奪いそうなことをしてしまいました」

 

 

 ………………はっ?

 

 

「白哉さんが気絶してしまったことがショックで……もしかすると数日間このままになるんじゃないかって……そんな事を考えていたら、ごせんぞの口から『誰かに魂を攫われたんじゃないか』って言葉が聞こえた途端………………私は、少しの間だけとはいえ自分を見失ってしまいました」

 

「見失った……?」

 

「はい……。気がついたらなんとかの杖をドデカい死神の鎌に変形させていて……ごせんぞのおかげで我に返ったんですけど、白哉さんが死んでしまうんじゃないかって考えてたら、呼吸しづらくなったりまたヤバい武器に変形させたりとまた自分を見失いかけて……」

 

 

 あっ………………そっか、そういうことか。

 

 優子は俺が倒れてしまったという事実を受け入れられなくなって、攫われたのかもしれないって思ったその瞬間に……自分自身が今までずっと溜め込んできたものを、爆発させてしまったんだな。

 

 

「私、白哉さんの見えないところでとんでもない過ちを犯しそうになりました。白哉さんやみんなを傷つけかねない、最悪な過ちを……だから、白哉さんにはこの事を謝りたいんです。本当に、ごめんなさい……」

 

 

 そう言って深々と頭を下げる優子。そんな彼女を俺は、優しくその頭を撫でてやった。

 

 

「………………ありがとうな、優子」

 

「えっ……?」

 

「確かに過ちを犯しそうになるのは良くない。けどな……良い点だけを見ると、それはそこまでする程に俺の事を強く想ってくれているってことだろ? 個人の為にそこまで感情を昂らせたりするなんてことは、そう簡単にできるものじゃない……その観点で考えてみたら、嬉しく感じちまったんだ。だからさ、もう一度お礼を言わせてくれ。ありがとうな、優子」

 

 

 ……よく考えたら、これが初めてかもしれないな。ヤンデレの良くて鋭い点を見てやれたのは。我ながらすごい快挙なんじゃないのか? なーんてな☆

 

 って、うおっ⁉︎ 優子の涙腺かめっちゃ崩壊したァッ⁉︎ 感情が爆発してすんごい涙の数を流しとる⁉︎ 顔もすんごい泣き顔で歪んどるゥッ‼︎

 

 

「ひ ゙ゃ ゙く ゙や ゙さ ゙ん ゙あ ゙り ゙か ゙と ゙う ゙こ ゙さ ゙い ゙ま ゙す ゙ゥ ゙ウ ゙ウ ゙ウ ゙ッ ゙‼︎」

 

「お、おう……分かった、分かったからとりあえず顔拭いてくれ。なっ?」

 

 

 感情が爆発して周囲が引きそうなくらいの大泣きをしとる……何処ぞのポケ○ンの美術教師兼四天王になってんだよ……気持ちは分かるけどさ。とりあえずハンカチ渡すから顔拭いてくれ。言いたくないけどさ、ちょっと鼻水出てるぞ……

 

 というか、俺も謝らなきゃいけないことがあるじゃないか。

 

 

「リリスさん、申し訳ありませんでした。俺を助ける為とはいえ、貴方を犠牲にするような事に……」

 

「謝るでない白哉よ。おぬしがシャミ子と共に健やかに生きてくれればそれで満足だ。子孫の眷属の為に何かすることも余の役目だしな」

 

 

 おっふ……子孫だけでなく子孫の眷属の力になれるのなら己をも犠牲にするというその精神……グッときました。さすがは古代メソポタミアから生けし魔族、尊敬したくなる───

 

 

「っていうか、この体は後三日で土に戻る‼︎ 封印空間にずらかれば約定は追ってこない‼︎」

 

 

 うわずる賢い。実体が無くなる点に気づいて調子乗ってるよこの人。前言撤回していいですか?

 

 

「所詮ヘビ頭! 余の作戦勝ちよ‼︎ 短寿命ボディーで良かったー‼︎ ふはは───」

 

 

 

「……龍玉をもらった人は、寿命が伸びる」

 

 

 

「………………へっ?」

 

 

 勝利を確信していたリリスさんの昂りを破壊するように、柘榴さんが横槍を入れた。

 

 

「……蛇の魔族を倒して落ち着かせるために調べたものなんだけど、古来、蛇は龍の子供として畏怖の対象になってきた……龍に玉を授けられた人が長寿になる伝承も各地に残ってるんだって。だからその体も信仰の力とかで維持し続けると思う」

 

「………………………………マジ?」

 

「……マジの可能性高い」

 

 

 えぇ……柘榴さんそんなに詳しかったんですか? 原作では三日経った時に小倉さんがそう説明したんだけど、まさか柘榴さんも龍玉の事を知っていて、もらった当日にすぐ教えるとは……時間掛けてから教えるよりは絶望感は無さそうだけど、なんだかなぁ……

 

 

「余、ゴミ拾いから逃れられないの⁉︎ 月一で酒瓶持って登山するの⁉︎」

 

「……信じないで過ごして焼かれるよりもちゃんとやった方がいい」

 

「嫌だァァァァァァッ‼︎」

 

 

 と嘆いていたものの、後日リリスさんは毎日欠かさず律儀にゴミ拾いすることになるのはまた別の話……まだそうなる時ではないけど。

 

 とりあえず今日は寝よう。いつもよりめっちゃ疲れた……

 

 




おまけ:台本形式のほそく話その30


バレンタインデー前日

桃「………………………………」
シャミ子「えっ、と……こ、焦げてるところが無くてよかったですね……」
桃「うん……またピンク色に光ってるから安全に食べれる保証がないのだけれど……」
「シャミ子、ごめん……せっかくバレンタイン用のガトーショコラを作るの手伝ってくれたのに……」
シャミ子「だ、大丈夫ですよ‼︎ わ、私だってバレンタイン用のどころか、チョコを作ること自体が初めてなものなので‼︎ それで失敗してしまったのだと思います‼︎ 多分‼︎」
「ほ、ほら‼︎ 私、まぞくになる前は貧乏だったので‼︎ 市販のチョコすら買えなくて白哉さんから一方的に貰うことしかなかったですし……」
桃「いや、この失敗にシャミ子は関係してないと思う……あとその話聞くとこっちも虚しく感じる……」
シャミ子「な、なんかそれはそれですみませんでした……」
「そ、それで……どうしましょうか? 一応私のはピンク色になっていませんし、切り分けて渡しましょうか……?」
桃「それはシャミ子が白哉くんのために作ったんだよね? なら貰えないよ」
「私は……柘榴には悪いけど、市販のを渡すよ。こんなのを渡して彼の身に何かあったら困るし……」
柘榴「……呼んだ?」
桃「ウ ゙エ ゙ェ ゙ッ ゙⁉︎ ざ、柘榴⁉︎」
シャミ子「ど、どうしてここに⁉︎ 白哉さんをゲームセンターに誘ったんじゃ⁉︎」
柘榴「……うん。遊んで満足したから、クレーンゲームで取った、たまさくらちゃんの抱き枕でも、桃にあげようかなって」
「……で、これは何? 果物の方の桃のケーキ?」
桃「く、果物の桃でもこんなにピンク色にはならないよ……そ、その……バ、バレンタインの日にあげる用のが失敗しちゃって……」
「それで、時間掛けながら一人で一口ずつ食べようかなって……」
柘榴「……ふーん」パクッ
シャミ子「えっ? ちょっと待ってください? 今、その桃が失敗したチョコを食べませんでした?」
柘榴「……食べたけど?」モグモグ
桃「へっ? ……えっ? ………………えぇええええええっ⁉︎」
「な、何やってるの柘榴⁉︎ そ、そんなの食べたらどうなるのか分かんないよ⁉︎ ペッしてっ‼︎ 早くっ‼︎」
柘榴「……もう全部、じっくり噛んで飲み込んだ」
桃「んなっ⁉︎」
シャミ子「あ、あぁ……柘榴さんも、本当にダメな食材のヤツじゃなかったら何でも食べられる系だったんですね」
柘榴「……別に、そうじゃない。桃が一生懸命作ったものを、失敗作と片付けるのが、勿体なかったから」
「……それに、失敗してもそれが無駄にはなるわけじゃない。また次頑張ればいいから」
桃「ざ、柘榴……」
柘榴「……それじゃ、抱き枕はここに置いておくから。チョコ作り、頑張ってね。また明日」
桃「………………………………」
シャミ子「も、桃……た、食べてもらえてよかったですね……」
桃「………………シャミ子」
シャミ子「は、はい?」
桃「私、もうちょっと頑張って作ってみる」
シャミ子「あ、はい。お付き合いしますよ」

白哉「で、どうでした? 頑張って作ってくれた桃のチョコの味は」
柘榴「……味の濃すぎるピーチパイを食べてる感じだった」
白哉「あ、そっすか……」


『ん? バレンタイン回? 今シリアス真っ只中なのにそんなの書けるかッ‼︎』と前回言ったな? あれは嘘(となったの)だ。

この回でちょうど白哉君が蛟さんから解放される&今日が水曜日ってことで、急遽バレンタイン回をほそく話で作りました。何故柘榴×桃なのか? そんな気分だったからだよッ‼︎(おい

 
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