偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語 作:名無しのモンスター
今回は『あすら』で何かあったか回となります。そして何やら不穏な感じが……もう嫌な予感を出すのは堪忍して。
やっはろー。俺、白哉。今日は『本の祭典 スカーレット』に用があったので、そこにお邪魔することになったぜ。
何故そこ行くことにしたかって? 面白い本が新しく並んだんじゃないかって思ってね、気分で行くことになったってわけ。後最近行ってないし。もちろん本は買うぜ。お店に来たらなんか買う、当たり前だよなぁ?
というわけで、早速来たぜ。何かしらのキャンペーンやセールは……やってないな。今は通常営業なのだろうか。にしては外からでもバタバタとした音が伝わってきているような……
とりあえず店の中に入ってみよう。入ってみないと中で何が起きてるのかわからないしな。
「こんにちは───」
「我が妹よ、そっちの方はどうなのだ⁉︎」
「ダメ‼︎ この区域も良い物件が無くて、空き地は一件だけあったけど土地が悪いみたい‼︎」
「そうか……こっちの区域は物件どころか空き地すらないのだ……我々は一体どうすれば良い……‼︎」
………………あ、あるえぇ? なんかかなり深刻な様子なんですけどぉ……? 何やら空き地を探してるみたいだけど、一体何事……? 俺、一旦退散した方がいい系? と、とりあえずお邪魔しました───
「ん……? ア、アレ⁉︎ びゃ、白哉君いたの⁉︎ ヤバッ、『臨時休業』のビラ貼るの忘れてた……‼︎」
「あっバレた。いえ、今来たばっかですが……お二人とも何をそんなに慌ててるんですか?」
奈々さんに見つかってしまったので、恐る恐るそう問いかけてみたら、ブラムさんがクワッとした切羽詰まった表情をこちらへと向けながら叫ぶ。
「我々に何か問題があったわけではない……だが、同志『あすら』組の危機ではあるッ‼︎」
「……『あすら』組? あぁ、白澤さんとリコさんの事ですか。それが一体どうしたと……」
あっ(察し)。ここでも原作知識がふと降りてきたわ。そっか……もうその時が来たのか。
「喫茶店『あすら』が……潰れたのだ」
この後のブラムさんが言うにはこうだ。
優子の誕生日会の日に奈々さんがリコさんから店の休業をすると聞き、それを教えられたブラムさんと一緒に店の再開の為の手伝いをしに行った時に……閉店の話を聞かされたらしい。
先日の魔力料理の件が原因……ではなく、リコさんがこれまでに何度か店を料理したことがあり、店の修理代を払っていく内に文無しとなってしまい、累積退場をする他なくなったようだ。
それを聞いたブラムさんと奈々さんは居ても立っても居られなくなり、白澤さんとリコさんの青空生活阻止の為に店を開けそうな物件や空き地を探すことに……したのだが。
「現状の通り、中々良い物件も空き地も見つからなくてな。物件の方はバク相手でも貸せるかどうか判断が難しいところだらけで……」
「そ、それは結構苦労しているようで……と、ところでなんで『あすら』の新しい店を建てれる場所を探そうと?」
二人とも俺の記憶だけの見解だと『あすら』組と会ったのはかなり少なかったはずじゃ? 奈々さんはリコさんと一回多く会ったはずだけど。
「「すごい愛情が伝わったからだ(なの)ッ‼︎」」
「はい?」
「「リコ殿(さん)の料理に対するッ‼︎」」
「あ、なるほど」
あ、なるほど(二回目)。俺の知らないところで『あすら』に行っていて、そこでリコさんの料理を食べておかしくならずに済んで味に感動したってわけか。
「リコさんの料理に対する想い……『お客様に美味しく食べてもらってほしい』『また食べたくなる思い出を作ってほしい』などといった想いが味として伝わってきて、思わず感情が噴き出しそうになった……ッ‼︎ 料理を愛する人が料理しなくなるなんて考えられない‼︎ だから作りたいの、『あすら』の新しい居場所をッ‼︎」
「我が妹よ、我の想いを丸々全部言わなくても良いではないか……ッ‼︎我のあそこに対する想いが言えなくなったではないか……ッ‼︎」
「この想い、誰かに語らずにはいられないじゃない……ッ‼︎ 兄さんだって同じ感情でしょ……ッ‼︎」
「それは否定できぬ……ッ‼︎」
あの……分かりました、分かりました。お二人がどれほど『あすら』の事を想っているのか分かりましたから、すんごい量の涙を流すのやめてもらってよろしいでしょうか。店が濡れちゃいますよ。
とにかく、二人が『あすら』をなんとかしたいという意思は伝わった。このまま俺も新しい店を建てれる土地か物件を探すところ……なのだがここでも原作知識が活かせられるところ。とっておきの情報を彼らも聞く資格がある……いやなんの資格だよ。
「あの二人が新しく店を開ける場所、その宛てがあるところを俺は知ってますよ」
「「それは本当か(なの)ッ⁉︎」」
うおっすごい食いつき⁉︎ 『あすら』組の二人の居場所が見つかったことがそんなに嬉しかったのか……そこまでするほど『あすら』……というかリコさんに感化されていたのか。ホントに中毒性があったんだな、リコさんの魔力料理ってのは……
ま、まぁいいや。とりあえず新店ができそうな場所を教え───
「こうしてはおられぬ!! 早速あの二人にこの事を報告せねば!! 白哉よ、着いてまいれ!! 今から『あすら』に行くぞ!!」
ちょっ、いきなり翼広げないでもらえます⁉ 突然の行動はかなりビックリしますから……ってか。
「今から行くって……直接伝えに行くんですか⁉ 俺、まだ新しく見せ建てれる場所のことを言ってませんし、確証があるわけではないですよ⁉ それに直接だといない可能性もあるので電話での方……」
「休業中に彼等が電話に出てくれるわけがなかろう‼︎」
「あっ」
「そもそも口頭で言った方が嘘か誠なのかどうかが分かりやすい!! それに、確証がなくても可能性がないってわけではない事がわかるだけでも安心できるはずであろう!!」
あ、なるほど(三回目)。要するに、四の五の考えてる暇があるならさっさと現状を報告するべきだと。けど音声通話だと本当だと受け入れてくれるからわからないから、直接会って直々に伝える必要があると。探す時間によってはそれこそさっさと報告するには合わないのでは?
「えぇい、話はもうよいだろう⁉︎ 直ちに『あすら』に向かうぞ‼︎ ついて来い‼︎」
「うん‼︎ 白哉君、私達先に行くからついて来て‼︎」
「あっ、ちょっと……」
ば、爆走するバイクの如く走り去って行ってしまった……それほどまで『あすら』の料理に惹かれてたのか。いつか健忘状態になってしまっても知りませんよ?
で、遅れながらもさっさと『あすら』に辿り着いた時には。
「「既に外に出ていた……」」
白澤さんもリコさんも店にいなかったことに落ち込み、店の扉のに座り込んでいた。知ってた。
♢
落ち込んでしまった『スカーレット』組を宥めて数分後。
「ここが……『あすら』の新しい店ができるかもしれないところか?」
「はい。広さも申し分ないと思います」
せめて新しく『あすら』を建てさせてあげる予定となっている場所の把握を先に済まそうとのことで、俺は二人にその場所へと案内することになった。その場所というのが……
「いや、ここ……どう見てもばんだ荘だよね? 近くに廃墟も空き地もないんだけど……」
「店をやれる場所ありますよ。一階の部屋全部使ってもらいます」
「「なんて?」」
そう、俺や優子達が住んでいるばんだ荘の一階の部屋丸々である。幸い一階は一部屋ながら上の階の俺達の部屋を合わせた間取りとなっている。そう、一つの部屋だけでそこそこの広さを使いながら、店を開けることができるのだ。ここが無人物件だったのが不幸中の幸いだったぜ。
っていうのを二人に説明したら『あぁ……』ってな感じで納得してくれた。納得してくれたってんなら無問題だぜ、やったぜ。
「なるほど、それなら臨時営業再開にはもってこいだな。ここに救いの手があったとはな……‼︎」
「よかったぁ〜……ここなら狐であるリコさんにもバクである白澤さんにも快く部屋を貸してくれるだろうし、何より家賃もかなり安いよね。正しく魔族の為のアパート……」
気に入っていただけたようで何より……いやアンタらが気に入っても、最終的には契約者である『あすら』組が住むかどうかで決まるけどな。まぁ原作通りならここだって……
「アラァ? 白哉はんにブラムはん兄妹やないの」
「あっ……この声は‼︎」
と、そこに俺達に声をかけながらこちらに来る人影──というか狐の影が。このはんなりとした声と喋り方は……
「リコさん!! お変わりなくてなによりです!! でも、なんでここに?」
「ん〜? そろそろ三人にも伝えようと思うてたところなんや。
ウチら、このばんだ荘で『あすら』を再開させようと思うとるんよ」
「なるほど、そうでしたか………………えっ?」
あーらま、もう既にここでお店を再開させることにしたところだったんですね。タイミングが良いのか悪いのか分からなくて複雑になるわ。いやどっちかというと悪い方かもしれん。
直接伝えに行ったのに居らず、仕方なく新住居の把握から進めることにしたところで既にそこで店を開くことが決まった……こんなの複雑な感情を抱くこと待ったなしだな。
「えっ……あっ……そ、そうでしたか……そ、その……おめでとうございます……?」
「そう言ってくれると助かるわ〜。でもなんで顔引き攣っとるん? まぁえぇか。ほな、ちょっとお店の準備の続きしてくるな」
「あ、はい……ど、どうぞ……」
いつも通りのほんわか笑顔で去っていくリコさんを見送った後、奈々さんは虚ろな感じの眼差しになりながらこちらに振り向いてきた。ちょっ、そんな目しないでくれません? ショックを受けたのは分からなくもないですけど、その目は怖すぎますよ……
「………………人って、自分がすべき事を先回れてやってもらったら謎の虚無感に駆られるんだね」
「そんなに深く考える程ショックだったんですか?」
無言で頷き心境を肯定した奈々さん。自分達が恩人の力になれるチャンスが来たと思った矢先、その手段を既に相手が見つけてしまったなんて、どんな感情を持てばいいのか分かりませんよね……
「まぁそう落ち込むでないぞ、我が妹よ」
「兄さん……?」
一方のブラムさんはなんとも思わない感じの笑顔になってんな。というよりは器の広さを表してる感じの笑顔だな。
「我々の目的は『掴んだ成果を路頭を迷った仲の良き知人達に報告すること』でなく『仲の良き知人達の新たな居場所を見つけてあげること』だ。彼等がどのようにしてその居場所を見つけることができたのかは定かではないが、意図がどうであれ、あのように活き活きとしてゆける居場所を彼等は掴めたのだ。誠意を持って祝福すべきであろう?」
そう淡々と語りながら、ブラムさんは『あすら』の再開の準備を進めている白澤さんとリコさんを見つめる。その瞳は曇り一つ無く紅く透き通っており、情熱と抱擁の意を持って二人を見つめていることだろう。俺の勝手な解釈だけど。
「………………そっか、そうだよね。あぁしてまた『あすら』を味わえるようになったもんね。だったら私達が落ち込む必要ないか」
「うむ………………こうしてはおられぬ、早速営業再開記念となる品をいくつか用意しに行くぞ‼︎ 白哉よ、我々は一旦これにて失礼するぞ‼︎」
「また『あすら』で会おうね‼︎」
「あ、はい」
……ホントさぁ、この二人はどんだけ『あすら』の事が好きになったんだよ。どんだけリコさんの料理に目を惹かれたんだよ。あの人の料理の中毒性、ヤバすぎね? 人をここまで動かせることあるゥ? 意地でも新しい店舗を見つけようとする行動力に発展させたりとかさ……
と、そんな事を考えていたら、優子と桃が俺に気づいたのかこちらの方へと来てくれた。
「白哉さん、ちょうどいいところに……って、そんな苦い顔してどうしたんですか?」
「あぁ、優子と桃か。いやなに、『あすら』の隠れファンが身近にいたんだなって思ったらちょっとな……」
「もしかして、白哉くんも既に知ったの? リコさん達がここに住むことを?」
「ん。まぁそんな感じだ」
二人の話によれば、白澤さん達が公園の片隅で青空レストランを開こうかと考えていたところ、優子がばんだ荘の一階の部屋で開業してみてはどうだろうかと提案したらしい。桃は最初は乗り気じゃなかったらしく、優子も双方の意見の食い違いでバグってしまったとか。
「で、いざとなったら桃は柘榴さんに住ませてあげている自分用の家に帰れるとか言ってしまって、あっちの方が快適だとか言ったら虚しく感じて、それらが相間ってモヤモヤしちゃいまして……」
「私もどうしてそうなるんだろうとは思ってた。で、白澤さんが白哉くんとの穏やかな暮らしも大事だとか言ったら、今度は白哉くんが退去するという選択肢もあるとか言って……」
「も、桃ッ‼︎ それは私自身も気にしてるんですから言わないでッ‼︎」
「いや出て行く気なんてねェから。ホントに思考がバグったのかその時の優子は」
えっ? 俺まで退去させられるところだったのか? 俺なら別に食べ物の香りがするのは構わないのだけど、さすがにここを退去することはできないな。何より優子が困りそうだし。色んな意味で。
で、優子がパニクって俺か桃のどちらかor両者退去してもらうかの流れを、小倉さんが発案みたいな形で止めてくれたって話も聞けた。俺は優子の事を考えて、桃は食生活的にここに残るべきだという感じで。小倉さんGJ。俺の知らないところで退去の話題をされたらたまったもんじゃないからな。
結果、最初ただ少しだけ意地を張っていただけで本当は大丈夫だとのことで、桃も店を作っていいとの許可を出した。桜さんの代わりに街のボスとして最善を尽くした優子の頑張りを無下にする気がない上、もうしばらくここに居たいからとのこと。この前騒がしいのも良いとか言ってたみたいだし、信じてもいいかな。
「ま、本当は柘榴さんと同じ家に居るのは心臓が持たないからとかじゃね? なんちゃって───」
「その事、絶対誰にも言わないでね。特に柘榴とリコさんには」
「アッハイ。スミマセンデシタ」
予想的中だった。図星だった。剣幕した真っ赤な表情で迫ってきた。これは謝るしかないでしょ、だって怖いもん。肩を掴んだ手の握力がヤバいもんイタタタタタタタタタタタタッ‼︎
あ、ありゃ⁉︎ 今の痛みでなんか大事なことが頭から飛んでっちゃってる気がするけど、気のせいだっけ⁉︎ 何かしらの襲撃とか起きなきゃいいのだけれど……
♢
二日後。『あすら』はばんだ荘店として再開することになった。廃墟をリノベーションしたコンセプト喫茶として再出発……いや、冷静に考えたらあそこを廃墟扱いは許せんな。俺も住んでるところだし。
ちなみに新しい店はビラ配りだけでなくSNSでも宣伝するらしい。住んでるところがSNS映えするとか複雑なんだけど……召喚獣達の結界を張るから問題ないだろうけど、優子との夜のお楽しみは……営業時間次第ではタイミングとかを見極めないといけなくなったかもしれん。俺は我慢できるけど優子はどうなんだろうな……
開業当日にはスカーレット兄妹の他に杏里や勝弥も祝いに来てくれた。そして店の入り口を見て怪しげに感じたのか入りづらいとぼやいた。古びた外見に素朴すぎる展示云々は確かに抵抗力を持たせちゃうけどさ……隠れ家感があるし中もアットホーム感があって良いから遠慮せず入ってって? お願い。
で、今気づいたんだけど原作よりも一日早く桜さんの結界が移転していた。誰かが結界の事を思い出してここまで持ってきてくれたのだろうかと思い、優子や桃達に喫茶店の結界について聞いて回ってみた。そしたら……
【僕が持ってきたんだメェ〜。この街のまぞくが結界を忘れるなんてどうかしてるメェ〜】
ってな感じでメェール君が持ってきてくれたとのこと。お前ってホントしっかり者だよな。いやホント、マジで助かったよ。ありがとう。これでイレギュラーな襲撃が起きずに済んだ……と思う。
んで、今俺達は何をしているかというと。
「じゃーん‼︎ 似合うかしら‼︎」
「……ウェイターの制服、いいね」
「………………なんで私まで?」
「開業一日目くらいは人員を多くしないと、人手が足りないとかで色々とこの店は大変なことが起きるからな」
臨時的な従業員となり、元々従業員である優子と拓海と一緒にホールの手伝いをすることになった。初日くらいはたくさんの客が来そうだし、これくらいの人員は用意しておかないともう忙しくて忙しくて……俺は実際に飲食店では働いてないけど。
しかしこの立地で客は来るのだろうか、白澤さんがそんな不安の声を挙げる。まぁ外見が不気味に見えるから仕方ないか。けどリコさんが丹精込めた料理の匂いを外に香り出させたおかげなのか、店は初日から結構繁盛した。マジでウチがSNS映えしそう。
ってなわけで接客の仕事が案の定結構大変忙しいもんで。リコさんの中毒性のある料理を食ってハイッ!! な感じになってる客を見ながら接客をするとか何かの地獄なのか?
というか……
「ブラムさんと奈々さんは一体そこで何をしてるんですか?」
このスカーレット姉妹は一体何をしてるのだろうか。店の隅っこに小さな屋台を建てて……
「よくぞ聞いてくれたな白哉よ。我々は『あすら』の再開記念に白澤殿の許可をもらって食関連の本を商品として並べることにしたのだ!! より食に対する理解や共感をしてもらおうとするためにな!!」
「ただ開店祝いをするだけだと店の為になるのかと考えてみたんだけど、やっぱり料理店と言ったら食べ物のことを伝えるべきじゃないかなって思ったら今に至ったってわけ」
あぁなるほどね。自分達の売ってる本で『あすら』だけじゃなくて食べ物についての理解もしていってほしいって寸法なのね。それでそのように本を並べていると……こういう促進の仕方もあるんだな。勉強になる。
ただ『ト○コ』は一般の食とは大きくかけ離れてね? 寧ろどっちかというとジャンプ漫画だからバトルもの……同じジャンプ漫画である『食○のソー○』だって現実でも作れそうな料理の可能性があるというのに、なんだろうな……
「あ、ブラムはんに奈々はん。良かったら切り上げてウチのまかない料理で休憩していきな〜」
「む? いいのか? 我々は従業員のような働きはしてはおらんぞ」
「えぇよえぇよ。形がどうであれお店の手伝いをしてくれてるんやし、何よりウチが振舞ってやりたいんやし」
「そ、それじゃあお言葉に甘えます‼︎ まかない料理の方も食べてみたい‼︎」
リコさんのまかない料理と聞いて奈々さんが速攻で食い込んでいった。それほどまでにリコさんの料理に中毒性を持つようになったのか? あの時の優子みたいに健忘状態にならなきゃいいんだけどな……
ってそんなことを考えていたら、奈々さんはもう既にまかない料理を食いに厨房へと向かってったよ。中毒性は行動力にも影響されるんか? 怖っ……
「まったく、我が妹は本当にリコ殿の料理が好きなのだな。ま、我もそうではあるがな」
自分の事を理解していることは良いことです。誰かと比較するにはまず自分からって言いますしね(言わないと思う)。というかブラムさん、食べられない食材とかあるんじゃないんですか? 例えばニンニクとかニンニクとかニンニクとか……ニンニクしか思いつかんのだが。他に何かないのですかね?
「兄さーん、今日のまかない料理はガーリックライスのカレーだってー」
はい、いきなりニンニクが入ってるのが出てきたんですが。ヤバいですってブラムさん、他のまかない料理を頼んだ方がいいですよ。
……って、アレ? なんか噛むブ○スケアを口に入れてるんですか、何してるんですか?
「………………よし、準備万端である」
「いや、何してたんですか?」
「む? あぁ、ニンニク料理を食べる前によくやってることだ。事前に噛む○レスケアを食べることでニンニクを食しても全くの無問題となるぞ」
全くの問題も無くニンニクを食べれるようになる……? 噛むブレ○ケアはニンニクなどを食べた後の口臭を消すためにあるものですよ? それを事前に食べることでニンニクへの耐性にするとか……どんな身体になってるんですかアンタは。
「では我も昼食を食べてくる。使い魔達よ、店番頼むぞ」
《キキキッー‼︎》
「一号から五号は店の物を運ぶ手伝いもしていたからな、先に我と一緒に休むか」
『『『『『キキッキキッー♪』』』』』
あ、使い魔君達久しぶり。夏祭り以来だな。浴衣に着替えさせるためとはいえ連携して俺の身包みを剥がしたのは度肝を抜いたぞ。でもいきなりそんなことするのやめてくれないかな? 突然の事で警戒するしビックリもするし、後下手したら敵視されるから。
ま、心の中で呟いたものだから聞いてくれるわけないか。もう既にブラムさんのところへと行っちゃってるし。というかブラムさんと奈々さん以外の言葉が伝わるのかどうかも少し怪しいし、あまり変わりない……のか?
「白哉さーん、四番テーブルお願いできますかー?」
「おう、すぐ行くわ」
いけないいけない、仕事はきちんとしないと。俺も臨時とはいえ従業員だから。いらっしゃいませー。ご注文は何にいたしましょうか?
♢
フゥー、特に何の問題も無く一日目が終了したぜ。トラブルがあったのはガスが火を噴いたことだけだったし、焦ったけど何事も無く解決したからな。それで火事になったらそれこそ『あすら』の危機だし。
それと、一番の不安要素が起きずに済んだのも運が良かったと言うべきか。それは……桜さんの結界を一日貼り忘れたせいで(原作では二日)、原作に登場しない・または未登場であって本来ならまだ登場しないだろう原作キャラが来てしまうということだ。
もしもその来た奴ら中に過激派な奴がいたら大変なことになっていただろうし、この後の原作の展開にも大きな支障が出てしまうからな。登場しなくて助かったぜ。そもそも未登場キャラがどんなのかなんて知らないし。五巻までしか読んでないし。
「一日だけ結界の貼り忘れがありましたけど……大丈夫でしょうか?」
「結界を貼り忘れるなんてことは初めてだから、どうすりゃいいのか分からんくなるな……」
「二日なら結界の保護から外れても……普通は問題無い……はず。特定の魔法少女にめっちゃ恨まれててマーキングされてるまぞくなら補足される可能性あるけど」
「そんないけずな人おるの〜?」
いやいやリコさん、そんないけずなまぞくは貴方ですよ貴方。この前魔法少女を返り討ちにしたとか言ってたじゃないですか。それで仲間の魔法少女に恨まれないわけがない。ま、この後の展開では別の目的で恨まれてるだろうけどね。
結界が一日だけとはいえ外れてしまっては今後何が起こるのか分からない。というわけで桃が念のためしばらく白澤さんとリコさんの近くに居ることになった。万が一に備えて、だな。
「桃はん、追い焚きのあるお風呂の家行こっ。床暖房〜。今の家主の柘榴はんがどんな風に使ってるのかも気になる〜」
「バランス釜で満足してください。そもそも今は柘榴が使ってるので───」
「……いいよ、お泊まりしても」
うおっビックリしたッ⁉︎ 柘榴さんいたの⁉︎ もしかしてずっといたのか⁉︎ 話に入ろうとしたけどそのタイミングが分からず、ずっと黙って俺達の話を聞いてたのか⁉︎
「ざ、柘榴ッ⁉︎ お泊まりしてもいいって……本気なの⁉︎」
「……桃の友人だし、行動が悪意なものであっても、心そのものに悪意が無ければ、問題無い」
「えぇの? やった〜柘榴はんありがとな♪」
「ちょっ、勝手に………………ヌェッ」
急に変な声出さんといて。柘榴さんが無言かつ円らな瞳を向けてきてハートにダイレクトにきたのは分かるけどさ、そんな声を出してたらリコさんに揶揄われるネタがまた増えるぞ。
「………………分かりました。迷惑をかけない範囲でどうぞ」
「はぁい♪」
あーあ、結局柘榴さんに押し負けてリコさんと三人で寝泊まりすることにしちゃったよこの人。ま、知ってたけどな。柘榴さんが絡んできたら絶対彼の意見に根負けすると思ってたけどな。ホント個人的な恋愛耐性が弱いなオイ。
「桃……いつか何もかも柘榴さんの思い通りにされそうな気がします」
「もうなってると思うけどな」
オイ睨んでくるなよ桃色魔法少女。知らないから、俺知らないからな。
♢
夜の多磨町の、とある住宅地の街路。灯を室内から照らしている住宅が少ない中で、紅い輝きを灯されていた。
「……本当に、この町にアタシの家を……町をめちゃくちゃにした妖狐がおるんやな? ミト」
紅い輝きを放つ、薔薇の形に似た宝石を持って先頭に立っている少女が、彼女の後ろで犬の耳のようなものを頭部でぴょこぴょこと動かしている女性──ミトに声を掛けた。
「ですわ‼︎ 僅かな時間で発された異族のまぞく匂いは、この町のから感じ取られますわ‼︎ ただ、何処の建物からなのかとまではいきませんでしたの……」
耳と尻尾が嬉々としてピンッとして伸びたり、残念がったのかペタンッと垂れ下がったりと、表情に出さなくても分かりやすく豊かな感情を見せるミト。それによる感情の理解のしやすさに少女は思わず苦笑いを浮かべた。
「そこまでできただけでもすごいことやで……にしても、ホンマにこんな町にヤツがいるんか? アタシも十年ぶりに気配を掴めて喜んどったけど、それも一瞬だけやったしな……」
「ご心配いりませんわ‼︎ わたくしの嗅覚はどんな場所からどんな匂いが短時間で発されようと、その匂いを感じ取った特定の位置を把握することができますわ‼︎ ご主人様もあの魔力のある位置を感じ取ったのですから、自信を持ってあの狐を探しましょう‼︎」
活き活きと笑顔で何かの目的を遂げることを推進させるミト。そんな彼女の笑顔に吹っ切れたのか少女も微笑み、半月の夜空に拳を突きつけた。
「……それもそうやな。妖狐め、アタシやじいちゃんの人生までもめちゃくちゃにしよった罪は重いで……首を洗って待ってな‼︎」
「ですわー‼︎」
紅いと獣、この二つが多磨町に舞い降りて来たのは、悲観の嵐とでもなり得るのだろうか……
おまけ:台本形式のほそく話その32
シャミ子「桃〜極上スマイル三兆個ください」
ミカン「私にもすてきスマイルちょうだいな」
柘榴「……桃色キャピキャピスマイル五分間分ほしい」
拓海「あえてブラックスマイルで」
桃「………………ははっ」
白哉「………………………………なんだこれ」
リコ「桃はんのスマイル只今爆売れ中なんや‼︎ うちで一番の人気メニューなの」
桃「とても良くないノリですね。嫌いです」
白哉「本人の許可無しで売るのは色々と法を犯してますよ。桃が闇堕ちする前に販売中止してあげてもろて」
リコ「え〜? 好評やから派生商品を増やしたいんよ〜。『桃はんがオムライスに好きなメッセージ』とか『桃はんとデュエット』とか『桃はんのラブ注入』とか」
桃「そろそろ訴訟しますよ」
白哉「ったく、勝手にメイド喫茶の奉仕みたいなことをさせられる桃が気の毒でしかならね───」
リコ「んだったら代わりに白哉はんver.も作るけど、どうや?」
白哉「桃、しばらく耐えろ」
桃「いや見捨てないで⁉︎ 一番倫理観のある白哉くんが見捨てるのやめて⁉︎」
白哉「いざとなったら通報するけど後がめんどくさいからな……それに俺が奉仕みたいなことをしたら優子がどう思うか───」
シャミ子「白哉さんの魅力を引き出すために私も派生商品をいくつかあげてもよろしいでしょうか⁉︎」
リコ「えぇけど、内容次第では大抵恋人特権として非売品になるよ〜」
シャミ子「寧ろ好都合です‼︎ 後でお話しませんか⁉︎」
白哉「えぇ……」
END
労働基準法は正しく守りましょう。