偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語   作:名無しのモンスター

75 / 117
原作五巻編なのに原作六巻のネタバレしてるじゃんってことで初投稿です。

オリ主は原作六巻以降の原作知識を全く知らない設定になっています。いやマジで。


転生者、桃色魔法少女の真実の過去の一部に触れる(原作六巻ネタバレ注意)

 

 あ……ありのまま、今起こったことを話すぜ‼︎

 

 この俺・平地白哉は、朱紅玉さんを『ご主人様』と呼ぶオリキャラまぞくのミトさんが抱えていた誤解を夢の世界で解いてあげ、さらには本当は何をすべきなのかを教えてあげて和解した。そしたら別の人の夢の世界へと自動的に移動することになり、そこで筋肉モリモリマッチョマンの猫ちゃんと出会うこととなった……

 

 な……何を言ってるのかわからねーと思うが、俺も何をされていたのかわからなかった……頭がどうにかなりそうだった……

 

 異世界転移だとか、突然の崩壊世界化だとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ……もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……

 

 

「いや前回ネタを引っ張ってくんなよ。いや、この場合なんて言えばいいんだっけか?」

 

「うるせェよっ‼︎ こんなとてつもなくヤバい見た目の猫というか人を目の前にして、何をそんなに平然としていられるんだよっ‼︎」

 

 

 しかも俺達、突然として他人の世界に勝手にお邪魔してしまったんだぞ⁉︎ その人の夢の世界を守る番人が来てもおかしくない状況なんだぞ⁉︎ 現にそういう感じの奴がいるんだしッ‼︎

 

 というか筋肉モリモリマッチョマンで身長のデカい人間の身体をした猫ってなんだよッ⁉︎ 改造ポケ○ンでいうゴ○チュウのような禁忌の生物か何かなのかッ⁉︎ 幾多の戦闘訓練を積んだ狂暴な獣か何かッ⁉︎ 勘弁してくれよ俺はまだ死にたくねェよッ‼︎ ここ夢の世界だから実際に死ぬわけじゃねェけどさッ‼︎

 

 

「そう警戒すんなって。俺とこいつはこの世界で知り合ったダチだからさ。な? メタトロン」

 

「………………えっ? 友達? こいつとお前が?」

 

 

 は? えっ? お前、俺の知らないところで他人の夢の世界にお邪魔して、いつの間にそんな交流をして来てるの? 何それ、俺聞いてない……

 

 

出会った当初は呑気かつ何食わぬ顔で訪れた者である為、未だ不信感が拭えぬ。よって友とまでは言わんが、悪気のしない親近感ならばある

 

「えーっ? なんだよその認識はー。主人の事をどう想っているのかを話し合った仲なんだからさー、ダチとして認めてくれよー」

 

まだその時ではない

 

「ブーブー」

 

 

 あっ、この猫にとってはフードの人は良い認識ができないのか。まぁ突然主人の夢の世界に他人が現れたらそりゃあかなり警戒するわな。しかも呑気にって、ダー○ライでもそんな軽い気持ちで人に悪夢を見せないってのにさ……このフード野郎は何したんだよまったく。

 

 っていうかさ……筋肉モリモリマッチョマンの猫さん? アンタ誰だよ?

 

 

そういえば、うぬには自己紹介をしていなかったな。

 

 

 

 我はメタトロンの三十六万五千の目が一。光の巫女の潔き御魂に悪い虫がつかないよう監視する、天つ使いの機構である

 

 

 

 ??????

 

 えっと……なんて?

 

 

「メタ子の分身の一体ってこと。ほら、シャミ子が桃の夢の世界に訪れた時に言ってただろ? ムキムキのメタ子って。それがこいつ」

 

その時は気がついたらおいしそうな虫を追いかけ回していた

 

「………………あっ、そっか。桃の夢の世界のメタ子か。あぁあぁ、そういえばここではそんな見た目だったな。思い出した」

 

 

 いっけね。突然出てきた時のインパクトが強すぎて、メタ子にもう一つの姿があるんだってことを忘れてたわ。というかその時にそれに関する原作知識が飛んでったんだったわ。

 

 筋肉モリモリマッチョマンは一時的に記憶障害を起こしてしまう程にインパクトが強いんだって。しかも顔は猫ってさ、ネットミームになりそうな程ヤバくね? ヤバくない?

 

 

「つーかさ? なんで本体の方で会わせてくれないんだよ? そんなに俺との壁が作りたいのか?」

 

本体は本題に本格的に入った時に、我と交代で出ることにしている。よってまだその時ではない

 

 

 本題……? 一体何を言っているんだこの人(?)は? 俺達に何か伝えようとしているのか?

 

 

シャドウミストレスの眷属よ。うぬとうぬの上司……大まぞくの子・シャドウミストレスには多大なる恩義を受けさせてもらった。よって汝にはシャドウミストレスよりも先に、とあるものを見ていただきたい

 

 

 お、恩義……? 恩義って何の事? というか誰が俺達にしてもらったのだと? さすがにメタトロン、というかメタ子には……無いよな? メタトロンの分身なんて俺は初めて会ったばかりだし……

 

 

うぬとシャドウミストレスは、心に負の感情を持った巫女に手を差し伸べ、その心を洗い流してくれた恩義がある。主である巫女が受けた恩義は案内者である我の本体の恩義でもある。よって本体にはうぬへの恩を返す必要があると考えた

 

「あっ、そういう……」

 

 

 そっか。そういうことか。そういえばそうだったな。俺も優子も、父さんやヨシュアさん、桜さんの事で一人悩みだしてしまった桃を励まそうとしたんだったな。それにメタ子も恩を感じ、それ相応のお返しをしようと考えて……ってわけか。

 

 

「なるほど、大体わかったよ。で、その恩をどうやって返すつもりなんだ? あっ、嫌味で言ってるわけじゃないぞ?」

 

……先程も言ったが、汝にこれを見せ、共有させたい

 

 

 見せて共有させたいもの? 桃にも見せていないものでは無さそうだけど……見せていないものである可能性の方が高いのは何故だろうか?

 

 

これは、ある大まぞくによって封じられた……桃の幼少期の記憶である

 

 

 メタトロンがそう言った途端、突然俺達の目の前に扉が出現した。しかも厳重に鎖が巻き付かれており、隣には『止まれ』という表示形式の看板が。えっ……何これ……怖っ……

 

 

「おうおう、なんだこれ? 滅茶苦茶ヤバいバケモンが封印されてんのか? つまるところ桃はこの中の尾獣の人柱力ってか?」

 

「んなわけないだろ」

 

その扉は、大まぞくの手によって厳重に封じられたもの。我にもうぬにも、シャドウミストレスにも桃にも開けられぬし、永久に開けなくて良いものである

 

 

 大、まぞく……? その者によって封印されたものが、夢の世界に……? まさか、その大まぞくって……

 

 

「んなもんを俺達に見せるために開けるってか? それで桃がこん中のものが何なのかを分かっちゃったら大変じゃね? 頭悪くね?」

 

「お前はちょっと黙ってろよ。見せてきたからって開けるとは限らんだろ。そもそも無理とか言うし」

 

その通り。代わりにうぬに授けるは我が本体の記憶。猫の本体が見た、桃と桜の出会いの場面である

 

 

 桃と桜さんが、初めて出会った時の記憶……? えっ何それ、超気になるんだけど。その記憶、貴重すぎるから見てみたい。

 

 

ここから先、目にしたことは桃にも、何人にも話すな。後に本体に教えられるであろうシャドウミストレスにもだ。約束できるか

 

「貴重すぎて忠告されなくても教えられないかもしんない。誰にも言わない。マジで。優子にも実際にその目で見てもらった方が良い」

 

 

 というか言ったら言ったでとんでもない事態が起きてしまう可能性があるから、それも理由に含めて誰にも教えられない……と思う。内容次第では言うべきかも悩みどころなんだよな……

 

 でも、実際に口から内緒にするとか言ったんだし、絶対に口外しないようにしとかないとな。

 

 

よし……ならば、時を戻そう

 

「えっ何? ぺこ○?」

 

「お前は最後の最後まで……‼︎」

 

 

 フードの人がボケをかましてきたことにツッコミを入れた途端、景色が一瞬にして渦巻いた───

 

 

 

 

 

 

 景色の渦巻きが収まった時には、俺達は見知らぬ場所に立っていた。

 

 木の小屋に数本もの枯れた木、辺り一面に広がる雪の野原、遠くから響く銃声のような音──いや、それにしてはあまりにも強く響きすぎている。この音が聞こえるだけでも居心地が悪いことは確かだ。

 

 

「な、なんだここは……?」

 

「うわさむっ。しかもバンバン銃声が聞こえてくるじゃん。ガチモンの戦争かよ」

 

我の記憶の中である。ついてくるが良い

 

 

 ここが、桃と桜さんが出会った場所……? なんでこんな殺風景が広がりそうで出会ったんだ……? いや、まだここで会ったとは限らないか。戦場の最中っぽいし。戦場であることは確かだけど。

 

 

「メタ子。生きてる子がいるかもしれない。通じそうな言葉で呼びかけて」

 

 

「えっ……? あれって……」

 

「おやおや、ここで千代田桜をお見えすることになるとはねェ」

 

 

 足を止めた猫の姿の──おそらく本体と人格も外見も交代させた方のメタ子は、堅苦しさを感じる防寒着を着た険しい表情の人──千代田桜さんに頭を撫でられながら指示を受けていた。

 

 いや待て。ちょっと待て。どういうことだ? 何故桜さんがまるで冬の戦場に赴いている軍人みたいな服装を着ているんだ? もしかして彼女、事態の終息の為に軍人になりすましているのか? それとももしや、戦場に狩り出された孤児とかじゃ……

 

 

 

『організація,що контролює вас впала Ви не маєте більше вчиняти самогубства』

 

 

 

「なんてッ⁉︎」

 

 

 いや待って⁉︎ ちょっと待って⁉︎ ホントに待って⁉︎ メタ子は今、何語で話してるんだ⁉︎ 英語ならなんとなく分かるんだけど、それ以外の国の言語は挨拶しか知らんぞ⁉︎

 

 

「ウクライナ語だな。『あなたを管理している組織はいない。自殺はやめろ』って言ってる……気がする。ちょっと曖昧だからわかんね」

 

「ちょっとだけでも言語が分かるのはスゲェよッ⁉︎」

 

「いや翻訳機を使った」

 

「この野郎っ‼︎」

 

 

 まるで大抵理解できるよみたいな感じにドヤ顔しやがって‼︎ でも言語が分かる手段を持っていてくれたのは素直に感謝します‼︎ ありがとう‼︎ マジ感謝‼︎

 

 

「スイカ‼︎ 後で泣け‼︎ 今は防げ‼︎」

 

 

「えっスイカ……?」

 

 

 なんだ? メタ子の他にも桜さんの味方がいるのか? あっそういえば隣に誰かが座っていたような……

 

 ふと桜の隣に視線を向けると、そこには彼女と同年齢であろう一人の女性が体操座りしながらメソメソと泣いていた。

 

 三つ編みに束ねた銀髪に黒い帽子を被っており、耳は尖っていた。メイン画像のような『黒いドレス』と、『メッシュのかかったインナーに半袖、手袋を着込んだもの』を着込んでいた。

 

 この人……耳を見るからにエルフのまぞく、か……? 果物の名前で呼ばれているから魔法少女か?

 

 

「どうしてこんなことができるんだ……かわいそうだ……あんまりだ……」

 

 

「あっこいつの事か。メソメソと泣いちゃってまぁ、えらい泣き虫だなー」

 

「オイ記憶の世界とはいえ聞かれたらどうすんだ」

 

 

 いくら記憶の世界だからといって、その世界の人達が俺達に気づかないわけがないでしょうが。もうちょっと警戒しろや。というか空気読め。

 

 

「……ん? 何かがシェルターみたいな建物から出て来たぞ」

 

「えっ? あ、ホントだ」

 

 

 フードの人に呼びかけられたため、不意に彼が向いている方向へと俺も視線を変えてみた。その先では、出入り口を塞いでいた人工物を雪ごと持ち上げて建物の外に出ようとする、一人の少女がいた。その少女は持ち上げていた人工物を地面に置き、両手を挙げて外気に晒すポーズを取った。

 

 ………………オイ待て。これは一体、どういうことだ……?

 

 

「лише я не вмер Здаюсь」

 

 

「こいつは……『私は死ねなかったので降参します』と言ってるのか? 翻訳機で翻訳してるから実際にどういう意味で言ってるのか分かんねェな。………………ん? 白哉、どしたの?」

 

 

 気候に全くもって適合していない素足と、患者か何かの実験の被験者が着ているような質素な服。これだけなら雪国に放り出された難民の子供という悲しき認識だけで済むが、問題は髪だ。

 

 見慣れた桃色の髪(・・・・)。それを留めている、見慣れたものに似たボサボサになった()()()()()()()。この子はまるで……

 

 

 

「桃、か……?」

 

 

 

 どういうことだ……? 何故桜がこんな戦場真っ只中な感じの雪国にいるんだ……? 彼女は確か施設育ちだったはずじゃ……

 

 と、そんな事を考えていたら、上空から一人の男性が桜さん達のところへと降り立ってきた。

 

 その男性は全身を羽織っているフード付きの灰色のコートで隠しており、他人視点では眼球すら全く見えない程に真っ黒なレンズを付けた灰色の縁のドミノマスクを付けていた。

 

 そして彼の右腕をよく見れば、その腕には一人の少年が抱え込まれていた。桃と同じく素足で質素な服が見えるからするに、彼もこの記憶の桃と同じ境遇を受けてしまっていたのか……? しかも、あの()()()()()()()()()()()()()は……

 

 

「向こうで座り込んでいた少年を保護してきた。今なら敵らしきものも見当たらん、何処か安全な場所に身を潜めるぞ」

 

「グッドタイミングだよドリア‼︎ ちょうどあそこにいる女の子も見つけたんだ、彼女も一緒に連れて行くよ‼︎ 今なら私達のアジトからも近いし‼︎」

 

「……彼女もか。あぁ、了解した」

 

 

 ドリア……? あぁ、ドリアンって言う果物(?)の名前が由来か。そういう名前でそう呼ばれているからに、あのドリアさんって人は柘榴さんと同じ、男性だけど魔法少女のポジションにいる人ってことか。ドミノマスクみたいな形の縁の真っ黒サングラスって可笑しなファッションだけど。

 

 それはそうと……あの男性が抱えている少年、片目が隠れているところを見るに柘榴さんにそっくりだ。いや、ここで柘榴さん似の子と桃似の子が出会うとなると、二人とも本人である可能性が高いな。もっと観察しないと。

 

 

「ドリアくぅん……!! よかったぁ……君が来てくれて本当によかったよぉ……!!」

 

「スイカ、君はいい加減感情移入するように泣いてしまう癖をやめてくれないか」

 

「そういう割にはナデナデしてるから優しいじゃん。私じゃ怪しんでやらないかな」

 

 

 ……何これ? 怖いから構ってほしい彼女と、発言は辛辣だけど行動は甘々なツンデレ彼氏のカップルなの? スイカさんって人がドリアさんに抱きついているからそう見えちゃうんだけど。ちょっと誰か砂糖の少ないのコーヒー持ってきてくれる? 今なら飲めそうな気がする。

 

 

「……Що ти збираєшся з нами робити? Ти впевнений, що нас не вб'єш?」

 

『Ми вас не вб'ємо, ми вас захистимо』

 

 

「ふむふむ……少年の方は『僕達をこれからどうするの? 殺さないの?』で、メタ子の方は『殺さない。我々は君達を保護する』って言ってるな」

 

 

 なるほど……この時からあの二人は桜さんに保護されることになったってわけか。何というか……変わった出会い(?)的な感じだな。なんで二人はこんな戦場の雪国にいて、なんで桜さん達もここに来ることになったんだ? また謎が増えたよ……

 

 

 

 

 

 

「що це?」

 

「うどん‼︎ うどん‼︎ 絶対美味しい‼︎」

 

 

 気がつけば桜さん達は自分達のアジト認識してる感じの建物の中に入っており、桜さんが着ていた上着を桃に羽織ってあげ、ドリアさんが何処からか持ってきた緑色の防寒着を柘榴さんに羽織ってあげ、二人に出来上がったばかりのホカホカなカップ麺を渡していた。

 

 この時の桃の奴、自分はなんでこんなことしてもらっているんだろうって戸惑っている様子だな。というか緊張からなのか震えてるし。まぁ無理もないか、なんかずっとこんな境遇を受けたこと無さそうだったし。でもうどんは食べてみるんだな。お腹空いてただろうし。

 

 

「……смачний」

 

「美味しい⁉︎ 美味しいって顔してる‼︎」

 

「この少年は思ったよりも迎合が早いな。私達の事を警戒している様子が見れなくなっているからに、人を見る目は良いらしい」

 

 

 あっ、柘榴さんの方は確かに震えとかはない感じにすんなりと渡されたうどんを食べている。桃との違いからするに、合流するまでにドリアさんと何かあったからだろうか。

 

 

「かわいそう、かわいそう。二人ともいっぱい食べて」

 

 

 この人……スイカさんは、一体何なんだろうか。二人の事を気遣ってくれていることは確かなんだけど、何か歪な感情を持っているようなそうでもないような……何を考えているのかよく分からないな。

 

 いや、それを言うならドリアさんもそうだな。柘榴さんを保護してくれた上に桜さんと同じ接し方で柘榴さんに優しくしてあげて、彼を桃よりも早く打ち明けやすくしてくれているのに……何故か()()()()()()()()()()()()()()()。こんな人も初めて見た。

 

 この二人……まるで()()()()()()()()()()みたいだ。一体、何者なんだ……?

 

 と、そんなことを考えていたら桜さんが別のうどんを二人にも渡してきたのが見えた。

 

 

「スイカも食べな」

 

「え⁉︎ ぼくは……」

 

「体冷え冷えでしょっ‼︎ まだ長いんだよ、ダシだけでも飲め。ほらっ、ドリアも」

 

「それは君が持ってきたものだ。私が受け取る義務なんてない」

 

「ここに入る前鼻啜ってたでしょっ‼︎ 君が今一番風邪引きそうなんだから食べとけ」

 

 

 えっ何これ? 桜さん、無理してまで働こうとするブラック気質な部下達のカウンセリングをしているホワイト上司なの? 何を考えているのか分からないこの二人の体を心配するとか……いい意味で人が良すぎるでしょ。

 

 

()()()()()‼︎ 今は私がリーダーだ。全ての業は私が背負う。食べて飲んどけい」

 

 

 ……ん? んんん? ()()()()()? 桜さん、この二人と前まではいがみ合っていたりとかちゃいます? それでも二人の事も気遣うとかどんだけ強い鋼メンタルを持っているんですか? 俺ビックリ。

 

 

「……やれやれ、結局君の言葉に甘んじてしまう」

 

「でもその分、桜ちゃんはぼくやドリア君のことをよく分かってくれてるってことだよねぇ。すごく嬉しい」

 

「いや二人とも全然わからんよ? 君達、変だもん」

 

「は? 一緒にするな」

 

「……たまぁに食べると、やっぱり美味しいんだよね」

 

「……ハァ」

 

 

 ……なんかドリアさんが一瞬一触即発しそうな雰囲気を醸し出したんだけど、スイカさんの呟きで溜息をつきながらすぐに落ち着いたんだけど。一緒にされたくないらしいけど彼女の言葉で頭を冷やせるとか、やっぱりこの人ツンデレ彼氏じゃないですかヤダー。

 

 

「かわいそうだったねぇ。これからは辛いことがないといいねぇ。ぼく、もうこれいらないからあげる」

 

「少なくとも日本なら、生き方が正しければ苦悩は無さそうだがな。……天ぷら食べるか?」

 

 

 何だろうな……この二人は桃と柘榴さんに心から優しく接しているはずなのに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。なんでこんな事を思ってしまうのか、自分でも不思議だと感じるくらいに。

 

 

「……ねぇ、君達。名前は?」

 

『Як вас звати?』

 

 

 あっそれ、俺も気になっていた。桜さん達に保護される前は変更前の名前があるかもしれないから、その名前がどんなものなのか気になる。果物の名前なのも魔法少女の習わしだろうしな。

 

 

「Мене звуть Операція 27」

 

「……Операція Z」

 

『……無いそうだ』

 

 

 いや無くはないだろ……ごめん、やっぱり無いと言った方が正しいかもしれん。ウクライナ語(?)が分からない俺でも少しは聞き取れたけど、オペ……って言ってたぞ二人とも。

 

 オペレーション……って言っていたのだろうか? 二人とも被験者のような服装を着ていたし、桃に至ってはシェルターみたいな建物から出て来たわけだし……

 

 二人が『オペレーション』と名乗ったのは、この時の桃と柘榴さんは名前を付けてもらえなかったからなのか、はたまた名前を忘れさせられてしまったからなのか……これらのどちらかに当て嵌まるな。名前が無いとか悲しすぎるだろ。誰がこんなことを……この二人が何をしたって言うんだよ。

 

 そんな悲観さを感じている中、桜さんは桃の頬をプニプニと触りながら笑顔で問う。

 

 

「……じゃあ〜、君の方は『モモ』って名前で呼んでもいいかな?」

 

「Мон-мо?」

 

「ピンクできれいな花が咲くんだよ。もうすぐ咲くよ。んで、そっちは……」

 

 

 おっ、ここで桃は今の名前を手にしたのか。もしかすると、桜さんに命名されたこともあって、彼女の事を十年間も探し続けてきたのかもしれないな。親しくなる程執念さも増すってのかな?

 

 

「……決めた‼︎ 『ザクロ』って名前で呼ばせてもらうね‼︎」

 

「TheКуро?」

 

「赤い花から成長して成る果実でね。その成長の仕方も変わってるから、将来結構成長しながら大きく変化してほしいという願いで‼︎」

 

 

 あぁ……髪の色が果実のザクロとは違うかな変だなとは会った頃から密かに思ってたけど、柘榴さんがそんな名前を付けられたのにはそういう意味が込められていたのか。んで、実際に桃の事が大好きだと言わんばかりに彼女に優しく接する人に成長・変わったと……いや、それは成長と言っていいものなのか?

 

 

「……地毛の色は変わるものではないぞ」

 

「そっ⁉︎ そ、それぐらい分かってるから……ハハハ………………ね、ねぇ君達。うちの国来なよ」

 

 

 図星かよ。そこ図星かよ。これで髪の色が変わるといいなって思ってたのかよ。染めるならともかく、地毛の色をどうやって変えるんだよ。気になるんですが。で、話を逸らすとかホント何なんですか貴方は。

 

 

「あっ、桜ちゃん。解散する前に連絡先……教えて」

 

「えっごめん無理。なんか死ぬほど電話かけてきそうだから。何故か毎回律儀に出てくれるドリアじゃないから」

 

 

 オイ待て、今とんでもないことを聞いた気がするんだが。優子のヤンデレに引けを取らない……いやそれ以上のヤバさを感じたんだが。スイカさんってしつこく電話をかけてくる人なの? しつこいメール送信よりもヤバすぎるんですけど。近寄らんどこ。

 

 

「ってか今よく考えたら、あのしつこい電話毎回出るとかいうドリアもドリアでヤバいよね。頻繁ってレベルじゃない電話受信を受けて毎回出るのはキツくない?」

 

「私はただ出なかった後が面倒に思えるから出てやってるだけだ」

 

 

 下手したら重度のヤンデレになる娘の電話に毎回出てあげてるとか、普通の人なら絶対考えられないよね。かなり警戒して最悪通報案件だよね。そんな彼女の歪んだ好意を蔑ろにせず毎回接しているドリアさんマジでメンタルが強すぎる。度量が広いってレベルじゃねェぞ……

 

 

「俺も毎日夢の世界でお前の事を呼んであげようか? びゃーくやっ」

 

「なんか普通に気持ち悪いからやめてくれ」

 

 

 

 

 

 

それから桃は桜とともにこの町に来て、時が経って、経って。別れの時が来た

 

 

 気がつけば周囲の風景は曖昧なものへと再び変わり、メタ子がその中を歩いていっていた。俺はそんな彼の後ろ姿を追いかけていきながら、ある疑問点を問いかけることにした。

 

 

「あのさ、メタ子……? 桃って確か、施設で育てられた孤児だったはずだよな? なのになんで戦争真っ只中な感じの雪国にいたんだ? さっきまでの記憶が最初に聞いた話と異なっているし、明らかに接点が違いすぎる」

 

それは大まぞくに上書きされた架空の記憶だ

 

 

 上書きされた……? まぞくに上書きされるって、はるか昔に一体どんな敵と戦ってたというんだ? しかも相手が記憶を上書きすることができるとか、そのまぞくはどれほどの手練れだと……

 

 いや、待てよ? ()まぞく? 大まぞくに記憶を上書きされた? ……何故だろう、不思議なことに思い当たる節が一つだけある。相手の記憶を上書きできそうなまぞくって、もしかして……

 

 と、そんなことを考えていたらメタ子が歩を止めた。そして彼が見つめている方向を見ると、そこには寝室らしき部屋のベッドで眠りについている桃と、彼女を見守っている桜さんの姿が目撃された。これは一体、どういう状況なんだ……?

 

 ここで一つ、扉がノックされる音が鳴った。

 

 

「入ってきて、()()()()()()

 

 

「………………………………へっ?」

 

 

 はい? 今、桜さんはなんて? ヨシュアさんって……えっ?

 

 

……再び見よ。シャドウミストレスの父親、大まぞくヨシュアの姿を

 

 

 その言葉が出たの同時に扉が開き、一人の人物がこの部屋に入ってきた。金色の短髪に褐色肌、そして角と尻尾。これって……

 

 

「お邪魔します。この子が例の桃さんですか?」

 

 

「……嘘だろ。マジでヨシュアさんだ」

 

「意外と童顔なんだな。初めて見たけど、渋い声と合わねー」

 

 

 喧しい。お前は引っ込んどれぃ。合わないかはともかく、確かに渋い声に童顔はギャップがあるけども。

 

 でも……そっか、そうだったんだな。大抵予想していたとはいえ、大まぞくの正体はやはりヨシュアさんだったんだな。

 

 相手の記憶を操作できるまぞくは夢魔ぐらいしか思い当たらないし、そもそもまぞくなんて四人というか四種類くらいしか実際に目撃していないから、他にどんなまぞくがやったのかなんて皆目健闘がつかん。出会った魔法少女もそんぐらいの人数だし。

 

 そして、桃の生い立ちに関する記憶が無かったのは、ヨシュアさんが何かしらのアクションを起こしたからなのだと思う。何か理由があるからとかじゃないと、あの時会った彼は優しくなかったし、優子もその性格を遺伝できなかったし……

 

 

「この子が保護されるまでの記憶を全部消してほしい。普通の施設で育った思い出を上書きしておいて」

 

「わっかりました!! ボコボコに消しちゃります!!」

 

 

 そんなことを考えていたら答えが出た。どうやら桃の記憶がメタ子に見せられた上書きされる前のと矛盾していたのは、桜さんがヨシュアさんにそうするようにと頼んだからだそうだ。

 

 というかボコボコに消しちゃるって、言い方も優子にそっくりだな……これも遺伝してるってか?

 

 

「あと……私への過度な愛着も消しておいて」

 

「えっ?」 「えっ……?」

 

「これから大変なことになるから、この町を離れてもらいたいんだけど……話聞いてくれなくて」

 

 

 自分に対する愛情も消させる……つまりはこれまでの関係性も無かったことになるように塗り替えてほしいってことか? なんでそこまでして桃の記憶を上書きしてもらおうと……? なんかこれから大変なことになるとか言ってたけど、それが何か関係しているのか……?

 

 

「……それは、ちょっと……」

 

「あ、やっぱ嫌だった⁉︎ ごめんごめん」

 

「あ、いえ! 難しいだけです」

 

 

 嫌ではない。ただ成功する確率が高くないだけ。そう言っているように聞こえるけど、ヨシュアさんは乗り気では無さそうだ。愛着諸共記憶を無かったことにさせるなんて気が引けるのも無理はないよな。

 

 ……でも、なんだろう。先程のだんまりからするに、何か別の理由があるのかとも感じる。

 

 

「辛い記憶は結構簡単に消せます。でも……経験上、誰かを愛した記憶ってすごーく消しづらいんです。何かのきっかけで簡単に戻っちゃったりします。夢魔は真実の愛には勝てません。魂に刻まれてるんです」

 

 

 魂の存在。それは人が生きている証。その魂がある限り人は何かを学ぶし、失った記憶や感情がそこから戻ってくる可能性だって出てくる。魂の記憶は夢魔に飽き足らず、誰からも干渉することはできない……否、干渉してはいけない。魂が得た愛も無敵である。ヨシュアさんは、そう伝えたいのかもしれない。

 

 

「そっかぁ……ちょっと優しくし過ぎちゃったなぁ。でもこれからアレと戦うしなぁ……」

 

 

 ここで映像でも見ているかのように、俺達の立ち位置が桜さんの背後より離れた位置へと移動させられていた。彼女の顔を拭う仕草からして、メタ子は彼女の泣き顔を見せたくなかったのだろう。

 

 

「この子には普通の人生を生きてほしいな。整合性が取れる程度にうまく消しておいて。……ごめんねぇ、こんな事させて」

 

「いえ‼︎ こういう時のためのまぞくですから‼︎ まっかせてください‼︎」

 

 

「………………こういうところも、優子に遺伝してくれたんだな」

 

 

 ポロリ、心の中にだけ留めようとした言葉が口から漏れた。どんなに厳しい状況であろうとも、他人の為に自分ができることを尽くすあの精神は、家族に遺伝さえしない限り到底できないことだと感じたからだ。

 

 もしもあの場に優子が立っていたら、ヨシュアさんと同じことを……いや、彼以上の成果を持ってして成し遂げようとするだろう。不思議とそんな予感がした。

 

 

「桃さん……ごめんなさい。新しい町で、僕が貴方から奪う、桜さんとの思い出を塗り替えられるような……生きる理由になる、素敵な誰かに出会えますように」

 

 

 尻尾で桃を囲い、星型の結晶の杖を振るいながら言葉を紡ぎ終えた途端──俺達が見たその記憶は、終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

「……桃の奴、あんな過去を持っていて、それを桜さんとヨシュアさんに上書きされていたのか」

 

 

 周囲の風景が曖昧なものへと戻った後、俺は徐にそう呟いた。

 

 あの記憶からするに、桃は柘榴さんと共に何かしらの実験に巻き込まれてたけど、その時の事を何とも思わなくなるほどに桜さんから色々なことを教わったってことなんだろうな。あの記憶の桃は今までのよりも正の感情に欠けている感じだったし、桜さんの事を思い出すのも納得がいく。

 

 そして……壮絶な想いを持った桜さんが桃の身を案じ、彼女の記憶から自分が消えるようにとヨシュアさんに頼んだけど、桃からは彼女への愛着は消えなかった。それほどまでに桜さんとの思い出が素晴らしいものだと感じたんだな。

 

 そういえば、その記憶の事を、これまで柘榴さんが話してくれたことは一度もなかったな。桃の記憶が上書きされることを事前に知らされるも了承したからなのか、はたまた察しがついたけど敢えて言わないことにしたのか……そのどちらかだろうな。

 

 

「それほどまでに、あの記憶は貴重なものだった……けど、たとえそれが消える羽目になろうとも、それを乗り越えていける程の記憶を、俺達が刻ませる必要がある……そう言いたいのか? メタ子」

 

 

 あの記憶から読み取り、可能な限り理解して至った、俺自身が想像する結論。これが正しいのかどうかをメタ子に問いかけたところ、彼は小さく首を横に振った。だが、それは否定によるものではなかった。

 

 

何が正しいのか、何を汝らにしてもらいたいのか、我にはその答えを見つけることは出来ぬ。だから……だからこそ、汝らに桃とともに見つけてほしいのだ。彼女が桜の存在とは別として見つけられる、本当の幸せを手にする為の答えを。……無理強いするつもりはないが、可能な限り頭に入れてはくれぬか?

 

 

 この先で見つけてほしい、か……メタ子が本当に伝えたいことは、俺達が桃に一緒にいてほしい……ということだろうな。

 

 無理強いをするつもりはない、か。それはやらなくてもいい、と言っているのか? なら、答えは決まっている。

 

 

「俺はもう前から、優子と一緒に桃を救おうって決めたんだ。優子の場合は俺よりも先にそう決めたんだろうけどな。だから言っておく。やるからには全力で見つけてやるよ、その桃が手にするべき【本当の幸せ】ってのをな」

 

「ヒュー。白哉カッコいいー。俺が女だったら惚れちゃうかも」

 

 

 オイ馬鹿やめろ。せっかくの約束する宣言が台無しになるだろうが。あとお前みたいな奴が女になるとか悪寒で体が震えてくるっつーの。ハァ……締まらねェ。

 

 

そうか……そう言ってくれるのならば安心できる。汝に桃の記憶を見せられてよかった

 

 

 一方のメタ子は悪い気分ではなかったみたいで。というかフード野郎のチャチャ入れを全く気にしてないようだ。桃の事を考えて言ったことが頭に入らなかった、なんてことにならなくてよかったー。

 

 

「……ん? オイ白哉、俺達の体が薄くなってるぞ。本体がそろそろ起きる」

 

「……もうそんな時間か」

 

……時が来てしまったな。大まぞくの子の眷属よ……今日は話せて楽しかった。シャドウミストレスにもあの記憶を見せた時には、メタトロンが宿る猫の体に残された時は少なくなるだろう

 

 

 メタ子がそうもの惜しく寂しそうに語る中、俺とフードの人の体は徐々に透けていく。そろそろ本体の目覚めが近くなる証拠だ。

 

 

我々案内役(ナビゲーター)は弱き人の子を正しく導くために生まれた。その理が今の時にそぐわぬ歪な古の異物であってもだ。そして、我は個人的……いや個猫的に桃の幸せを心から願っている。……桃を、頼むぞ

 

「あぁ、約束する。優子と一緒に桃をこれでもかというほどに幸せにしてやる。だから……そこからずっと見守っていてくれよ」

 

 

 改めてそう宣言した途端、俺の意識は一瞬にして一筋の光へと導かれていった。

 

 その間際にて、メタ子が徐に何かを呟いたことに気付かぬまま───

 

 

 

……汝の転生が、正道であったことを祈る

 

 




かぁーっ‼︎ とんでもないネタバレしちまったなぁーっ‼︎ これ、元は原作六巻の話なのにッ‼︎

次回で原作五巻編は終了です。どんな感じに終わるのかな……?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。