偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語   作:名無しのモンスター

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短編集をやるのは初めてだなーってことで初投稿です。

今回は原作六巻の流れに合わせて、番外まぞくの内の三本を同時に載せておきます‼︎ 一度に三話も見れるってなんかお得な気がする(?)‼︎

びゃくシャミのイチャラブ要素がないのは許して……
 


まちカド短編集!! リコさんの尾行だったりミカンママ案件だったり、桃と柘榴さんの……だったり。

 

 

短編集① まぞくの兄と魔法少女の妹、知り合いの妖狐が大好きなバクの尾行をしているのを目撃する

 

 

 

 それはスカーレット兄妹がデパートへと買い物に行っていた事だった。ブラムのプライベートの服が古くなってかつ少なくなってきたからなのと、奈々が大学のレポートを書くのに必要な材料を買う為だそうだ。

 

 それらを買い終え、多摩動物公園経由の道を通って『本の祭典 スカーレット』への帰路を辿っていた。その動物公園へと差し掛かったところで……

 

 

「いたいた、マスターいたわぁ」

 

「あの……さすがにコソコソしすぎて怪しまれませんこと……?」

 

「っつーか、なにも尾行せんでも……」

 

 

 渋谷ハチ公前ならぬ多摩動物公園たまさくらちゃん前にて、ケモ耳と尻尾のある女性二人と赤髪ツインテールの少女を目撃。が、その内の一人──白い狐の耳と尻尾を持つ女性は知り合いである。

 

 そんな知り合いである彼女が何故この場に……不思議に思ったブラムは。

 

 

「そこの御三方、何をしているのだ? 内二人はお初にお目にかかるな」

 

 

 小声で三人に話しかけた。何やら後をつけているかの様子であったため、こっそりと。

 

 

「ウゲッ⁉︎ い、いや、アタシら本当は怪しいことするつもりはないんやで……⁉︎」

 

「そ、そうですわよ⁉︎ 怪しむのはこのケモ耳だけにしてくださいまし───」

 

「あ、その声はブラムはんやな? 悪いんやけど今は話しかけんでくれん?」

 

「「えっ?」」

 

 

 不審者だと思われているだろうかと警戒し、必死な弁明を試みようとする犬のケモ耳の女性と赤髪ツインテールの少女。が、一方の狐の少女が向こう側を向きながらも知り合いに会ったかのようなノリで話していたため、二人は思わず呆気に取られた声を上げた。

 

 

「こんにちはだなリコ殿。で、君達は一体何をしているのだ? 話しかけるなと言われても気になるのだが」

 

「……アレや」

 

 

 そう言って白狐の女性──『あすら』の店員リコがそのまま指差した方向に、ブラムと奈々は視線を向ける。その方向には『あすら』の店長白澤の姿が。しかし、今の彼はサングラスにポーチバック、そして髪型がソフトモヒカンといった、普段のお出掛けスタイルとしては違和感のある格好をしていた。

 

 そもそもバクが動物園や森の外、ましてや二足歩行で歩いている時点で、普段もクソもないとは思うが。

 

 

「アレって白澤さん? なんであんな変な格好してるんだろう……? いやバクだから格好を変だと思ってるのかな私? ……彼、今何をやっているんですか? リコさんは何か聞きましたか?」

 

「何も……最近マスターの様子がおかしいとは思ってはいたんや。あの格好、明らかにバクの道逸れとるやろ。ウチ怖くて何も聞けへん」

 

 

 不安そうな表情でそう呟くリコ。だが彼女の言う通り、白澤は従来のバクとはかけ離れた格好をしている。二足歩行をしている時点で従来のバクとはかけ離れている点が大きいが、バクに限らずいつもの当人とは異なる格好をした者への疑心を持ってしまうのも無理はない。

 

 

「あぁ……分かります、親しみのある人の変わり様に困るその気持ちは」

 

 

 奈々もブラムの突然の変容を想像してしまったのか、リコの肩をポンッと叩き、同意の言葉を促す。彼女もまた、親しみのある者の突然の変わり様に警戒してしまう者の一人。共感せざるを得なかったのだ。

 

 

「ふむ……白澤殿にしては違和感のある姿だな。特に髪型が。君もそう思うかね?」

 

「えっ。あ、そっすね……確かにソフトモヒカンはあかん。ちょっと疑ってしまいますわ……って、一緒に尾行する気満々やんこの人⁉︎ なんか意識してグラサン掛けとる⁉︎」

 

 

 リコ達と同様に白澤を尾行することにしたのか、ブラムは既にサングラスをクイッと掛け簡素な変装をしていた。そんな彼に赤髪ツインテールの少女──朱紅玉は思わず驚きの表情となり呆気とした声を上げた。

 

 と、その時だった。何かに気づいた犬の魔族──ミトが声を掛ける。彼女の視線の先には男性飼育員と話しかけている白澤の姿が。

 

 

「……あら? よく見てくださいまし。何やらスタッフの方とお話しておりますわ。あとなんか……いつの間にか手には花束が……?」

 

「飼育員さんに告白……ではないよね絶対。相手は男性の方だし」

 

 

 何故彼が花束を持って飼育員と話をしているのか(いつ・何処から取り出したのかは別として)、五人は疑問に思いながら彼の様子を窺う。

 

 白澤はバクにしか恋愛感情を持てないらしいが、バクではない飼育員、しかも男性の前で花束を持ちながら会話をしている様子は疑問に思うことだろう。警戒せざるを得ない。

 

 

「……ちょいと待って? もしかしてマスター……」

 

 

 何やら不吉な予感を察知したリコ。実際に白澤の恋愛感情について直接本人から聞いた彼女だからこそ、彼に恋愛感情を持っていた彼女だからこそ、その予感は察知されるものだ。何故なら……

 

 

 

 白澤は持っていた花束を、園内にいたメスのバクに渡したのだ。

 

 さらにはそのバクにフレーメン反応を見せ、彼女に求愛行動を起こした。

 

 結果、成功。白澤とそのメスのバクは、お互いの持つハートに心を奪われたのだ。

 

 

 

「やっぱり……マスターは園内のバクに惚れとるんや‼︎」

 

「園内のバクって何やの」

 

 

 そしてリコはショックを受けた。南無三。

 

 

 

 

 

 

「人の大切なバクの心盗むなんて泥棒猫や‼︎」

 

「いやバクやろ」

 

「そもそもリコ殿の物では無かろう? 『あすら』の料理が好きな客は白澤殿が好きなのと同じであるからな」

 

「それもないとは思うんだけど?」

 

「ムグムグ」

 

 

 その日。スカーレット姉妹一行は現在の通り、夕方からバーにてテキーラなどの酒を自棄飲みしているリコの愚痴に付き合うことになった。ミトは食べることに集中してしまう癖で全く耳を傾けていない様子だが。

 

 昔から好意を寄せていた男性が他の女性に心を奪われた。その自分の恋心を抉られたかのような現場に居合わせてしまえば、愚痴の一つや二つは吐かずにはいられないのも事実だ。今がその状況に当たる。

 

 が、しかし。

 

 

「ブラムはんの言うことも事実やけど、ウチがマスターを先取りしたのも事実やん‼︎」

 

「違うだろう」

 

「実質ウチのやん‼︎」

 

「それはないですよ?」

 

「ウチのもん勝手に取るなんて酷ない⁉︎ 犯罪や‼︎ 窃盗や‼︎」

 

「貴方も過去に同じことしてましたわよ」

 

「せやな……ってアンタはそこだけ地獄耳立てんなや」

 

 

 その愚痴の大半がただの思い上がり。大半がブーメラン発言。白澤がリコにしてきた事を好意のあるものだと勘違いしていたらしく、その上に過去に朱紅玉の誕生日プレゼントの中華鍋を持っていってしまった窃盗行為がある。かけられる同情は少ないものであった。

 

 だが、そんなことはお構いなしに……

 

 

「けもの出身やから人の心ゼロなんや‼︎ 人でなしの擬人化や〜〜〜〜〜〜‼︎」

 

「「「………………………………」」」

 

「………………ボケとるんよな?」

 

「なんで?」

 

 

 リコ、とんでもない特大ブーメランをかます。この発言に朱紅玉が呆気に取られた顔でツッコミ、他三人はバツが悪そうな感じにそっぽを向いてしまった。

 

 同じ獣。悪意の無い悪意。心身ともに擬人化した存在。自分がどのような存在であるのかを語っておいて何処がブーメラン発言ではないのやら。

 

 と、ここでブラムが大きく溜息をつき、カクテルを少量口に流し込んでからリコの方に顔を向け、酒気の混じった吐息を出しながら口を開く。

 

 

「……あまりリコ殿を否定したくはないが、それは君の行いが悪かったからああなったのだと思うぞ。人の気持ちに気づかず……というよりは空気を読むことが出来ず、自分のやりたい事だけを押し付けてしまえば、叶えたいものも叶えられぬぞ」

 

 

 ブクッ。思い当たる節があったのか、奈々はコーラを飲んでいたストローから大きな泡を吹き出してしまった。ブラムが先程リコを説教するために使った言葉が、あまりにも彼にとってのブーメラン発言となっていたからだ。

 

 そして、徐に呟いた。

 

 

「………………兄さんもボケてない?」

 

「何故だ?」

 

 

 白哉君と初対面だった時の事を思い出してよ、奈々は心の中でそう思いとどまった。あらかじめ本人に気づいてもらうべきだと察したからだろう。

 

 

「……そやな、ブラムはんの言う通りやからああなってしまったんよな。ウチ……大切な物盗られる時の気持ち、やっとわかった。これからはマスターが求愛顔をしてくれるメスになるよう頑張るの。群れで生きる」

 

「でも白澤さんはバクしか───」

 

「やめやミト、リコの気持ちのためにもステイや」

 

「アッハイ」

 

 

 人の心を理解するという意思を示すリコ。そんな彼女に無意識な水を差す言葉を出そうとしたミトを、朱紅玉は焦った表情で待ったをかける。これ以上リコの心を抉るわけにはいかないという、彼女なりのフォローだろう。

 

 

「……ま、理解できたからと言ってすぐに改善点を実行できるものではないのも事実だからな。気長に変わってゆくしかないぞ」

 

「………………兄さんも身近な人の恋心に気付けるようになってほしいなー……なんて」

 

 

 また徐に呟いた奈々の言葉は、ブラムに当てられたものだが彼の耳には届かなかった。否、届かないようギリギリ小さくない声で呟いており、敢えて聞き取りにくいようにしていた。本音を当の本人に聞かれるということに恥じらいを感じているからだろう。

 

 この後、リコが話を聞いてくれたことに礼を言いながらマスター()カードで会計しようとして四人全員にツッコミを入れられることになるのだが、それはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

短編集② ミカンが周囲からウガルルのママと認識され、拓海もウガルルのパパ認識されようとしてる件

 

 

 

 それは、白哉・シャミ子・杏里の三人が買い物に出掛けてようとばんだ荘で待ち合わせした時の事だった。

 

 

「……で、いつの間にかウガルルがいなくなっていたわけか」

 

「そうなのよ。いなくなる前に何かに声を掛けていたかのように聞こえたのは確かなんだけど……」

 

 

 ばんだ荘の門番(というか周りを掃き掃除していた)ウガルルが突然いなくなってしまったらしく、それに気づいたミカンが偶然鉢合わせた三人に彼女を捜してもらうように頼み込んでいたところだ。

 

 自分の仕事をこなすまでの間やミカンの指示以外で一人でに動くことがあまりない彼女が、突然ばんだ荘からいなくなってしまったのだ。不穏な気分になるのも無理はない。

 

 もしや誘拐されてしまったのではないか。ウガルルには戦闘能力があるのだから問題の無いことだろうが、その可能性も捨てられないものだ。益々ウガルルの身が心配となる。

 

 と、その時。シャミ子の呼ぶ声が聞こえてきた。

 

 

「白哉さん〜、ミカンママ〜。ウガルルさんが土管に嵌って動けなくなってます」

 

「ママじゃねぇゆーとろーが‼︎ どうしてそうなったのよ‼︎」

 

「……ってゆーかそこにいるってことは、案外ばんだ荘から離れてなかったのか」

 

 

 シャミ子の元へと駆けつけてみたところ、ウガルルは小さな土管に顔どころか上半身すっぽりと入れていたようだ。出してあげたところ、ウガルルは雑草まみれの子猫を抱えていた。どうやら子猫を助けるために土管の中に入ったらしい。

 

 

「ミカンママ。ウガルルを風呂に入れてやれよ」

 

「ミカンママ。もっと可愛い服着せてあげたら?」

 

【ミカンママ草wwwwww】

 

 

 白哉と杏里、悪気も煽る気もない煽りでミカンにウガルルを娘のように接するべきだと促す。そして本気でミカンを煽った白龍はこの後白哉に絞められた。

 

 ※この後ウガルルが助けた子猫はばんだ荘みんなでお世話することになりました。

 

 そしてショッピングセンターにて、ミカンがウガルル用の子供服を見ていたところ。

 

 

『多摩市からお越しの陽夏木ミカンさん。陽夏木ウガルルちゃんが三階の迷子室でお待ちです』

 

「えぇ………………」

 

 

 まるで、というよりもミカンがウガルルの母親であるという認識をアナウンスにされてしまう。仕方ないとのことでそのアナウンス通りに迷子室に来たところで……

 

 

「あ、来た来た。こっちだよミカンママー」

 

「ミカンママよ、親よりも親ではない我々に先に迎えに来れないのはどうかと思うぞ」

 

「ミカンマ……陽夏木さん、ウガルルの面倒を見るならきちんと責任持って側にいないといけないよ」

 

「今、拓海もミカンママって言おうとしなかったかしら……?」

 

 

 何故か同じショッピングセンターにいて、何故かミカンよりも先にウガルルのところに来た拓海とスカーレット姉妹に、ウガルルの保護者としての自覚を持てと怒られてしまう。

 

 ちなみにウガルルが迷子になった理由としては、ショッピングセンターに初めて来たことによる緊張でうっかり逸れてしまったとのこと。初めての出来事に頭の回転や理解が追いつかないのも致し方ないものだ。

 

 余談だが、ウガルルを迎えに行った後。

 

 

「ミカンママ〜。マスターが怒っとるんやけどなんでやろ?」

 

「ミカンママ。この服の組み合わせどう思う?」

 

「貴方達のお守りはしないわよ?」

 

 

 桃とリコにも大抵悪ノリな感じでミカンママ呼びされてしまう。この後お守りしないとか言いながら、二人の面倒もある程度は見ることになったのだが。

 

 ここまでの流れからして何を伝えたかったのかというと、ミカンは既に完全に周りからウガルルの母親として認識されてしまい、ミカンはそれに困っているということだ。

 

 ウガルルが元・使い魔であるということもあって一緒に住まわせているからという理由もあるが、ミカンはウガルルに飽き足らず様々な人の面倒も見ることがよくある。そのためミカンママ呼ばわりされてしまったというわけだ。

 

 それによって生まれた彼女の悩みがもう一つ。

 

 

「えっと……なんで拓海まで私達に同行しているのかしら? 貴方、確か買い物を終わらせたんじゃなかったの……?」

 

「なんで一緒かって……決まってるじゃないか。俺も……というか俺はウガルルの親だからね。子供の身の安全を確保することが母親・父親に関係なく、親の役目であるからね」

 

 

 ミカンがママ呼ばわりされる度に、拓海がその分だけ身を張ってウガルルのパパであることを言い張ってくるのだ。その日にではなくても、翌日以降には彼は必ずそのような行動を起こしてくる。理不尽といった形でだ。

 

 最初は誰も拓海のことをウガルルの父親と認識されることはあまりなかった。だが今では……

 

 

「拓海、本当ニオレの靴下とかを買ってもらってもいいのカ?」

 

「構わないさ。子供に必要な物を買ってあげるのが親の役目であるからね。それにメインとなる服じゃなかったら、どれもお安い御用な値段だからね。それにそうじゃなくても、俺は買ってやりたいって思ったらそうしようとする性分でもだから」

 

「んがっ……!! 拓海、ありがとウ!!」

 

 

 最近では、拓海はいつもよりもよくウガルルに懐かれていることが多い。

 

 それだけに飽き足らず。

 

 

「おぉ拓海じゃねぇか……ん? ………………お前、なんか父親感が板についている気がしないか?」

 

「拓海くん、本当にウガルルさんのパパになっている気がしますね……」

 

「おー拓海パパじゃん、よっすよっすー」

 

「……フフッ、何度でもパパと呼びたまえ」

 

 

 周囲からも拓海のことをウガルルの父親であるという認識をされているらしい。無論、その事実に本人は喜びを覚えているため満更でもない……というよりも寧ろ歓喜している様子だ。

 

 一方、ミカンの方はというと。

 

 

「……嬉しいのか切ないのか、どう思えばいいのか分からないわね」

 

 

 喜ぶべきなのか、はたまた怒りに震えるべきなのか。複雑な感情で悩まされていた。

 

 ミカンは拓海がウガルルの父親という認識を否定していない上、彼に対して好意を抱いている。だがしかし。自分は実際にはウガルルの母親ではない上、拓海も実際ウガルルの父親ではない。何しろ拓海は、ウガルルの親は自分だけで充分だという、謎の譲らない姿勢を持っている。

 

 どういうことかお分かりだろうか。ミカンが拓海の事をウガルルの父親だと認めてしまえば、自分もウガルルの母親だという認識を認めなければならない。だがそれ以前に、拓海がそれを認めようとしないのだ。複雑な感情を持ってしまうのも無理はないのだ。

 

 

「(……って、いやいや。認めたからってなんだって言うのかしら。それで進展があるとは限らないんだし……というかさっきから一体何を考えてるよ私……)」

 

 

 迷走している自分に苦笑するミカン。ああいう認識があるからどうなるのか、などといった想像があったからといって大きな変化があるとは限らない。その事実を思い出しての苦笑だろう。そうする分だけ虚しく感じるようだが。

 

 だが。

 

 

「……オレ、ミカンと拓海の側安心すル。オレ、ミカンも拓海も大好きダ。ミカンと拓海、本当ニオレのママとパパかもしれない……」

 

「「………………‼︎」」

 

 

 ウガルルのこの発言により、吹っ切れた。しかも二人揃って。ミカンは照れくさそうに、拓海は悲願が叶ったことへの喜びで。

 

 

「パパ……‼︎ ウガルルちゃん、俺の事をパパと認めてくれたんだね……‼︎ パパは嬉しいよ……‼︎ 唯一の親って認識じゃないのがちょっと悔しいけど」

 

「も〜……そんなに言うなら、たまにママって呼んでもいいわよ……拓海がパパか……やっぱりいいわね……フフッ」

 

 

 

 

 

 

 そして、その日の夜。ミカンはつぶやいたーにて以下のツイートを上げていた。

 

 

 

ミカン:家族ができました♡

    付き合ってすらいねえけど(笑)(笑)(笑)

    [拓海とウガルルの顔をスタンプで

     隠したスリーショット写真付き]

 

 

 

 翌日、彼女のスマホから両親や担任からの留守電が三桁もある回数発生した。

 

 さらには、拓海が自身の両親を引き連れ……

 

 

陽夏木さん……こんな下手したら炎上しかねないツイートをして、一体何が目的なんだい?

 

「す、すみませんでした……」

 

 

 影を落とし圧のかかった笑顔を浮かべ、ツイートに関することへの追求をしてきた。というよりは問い詰めてきた。かなり激怒しているらしく、ミカンは彼に対して土下座する以外の選択肢はなかった……

 

 ちなみに拓海の両親はただ拓海について来ただけであって、説教には参加せず少し離れた位置で拓海の説教を観戦していたのだった。いつミカンが拓海の妻になるのかという温かい目はしていたが。

 

 

 

 

 

 

 

 

短編集③ フレッシュピーチ、ついに好意を寄せている同じパワータイプの幼馴染と……?

 

 

 

「………………んんっ……? あ、あれ? 私、こんなところで何をしているんだろう……?」

 

 

 魔法少女・千代田桃は今、睡眠から目を覚ましてすぐに違和感を感じ始めた。ソファに横たわって寝ていたはずだというのに、今の自分は横たわっておらず只々その場に立っていた。

 

 寝ていた途中に目覚めた記憶もなければ、身体を起こした実感もない。なのに何故起きた時には立っている状態でいるのだろうか、そんな疑問を過っていく。

 

 刹那、桃の脳裏に新たな疑問が。

 

 

「……ちょっと待って? 私、いつから寝ていたんだっけ……? 寝るまでに何があったのかが思い出せない……」

 

 

 そもそもいつから寝始めたのか。その前に何をしていたのか。ここまでに自分が何をしていたのかすら不思議と思い出せずにいた。先程まで何をしてきたのだろうかと戸惑いを感じながらも、桃は辺りを見回してみることにした。

 

 今彼女が立っている場所は、何故か自分の部屋ではなく結婚式で使われていそうな、西風の純白とした会場だった。しかし桃は結婚式会場に来たことが無い。ならば何故この場所に立っているのだろうか。何かしらのトラブルかドッキリ企画に巻き込まれてしまったのだろうか、そう考えていると……

 

 

「………………………………えっ⁉︎ な、何この格好⁉︎」

 

 

 ふと自分の姿を見れば、衣装そのものが変化していたことに気づいた。

 

 

 

 今の桃が着ている格好は寝巻きのものではなく、純白で清廉としたウェディングドレスだった。しかも両手にはいつの間にか桃色の花束を抱えており、完全なる花嫁の衣装となっていた。

 

 

 

「(な、なんで⁉︎ なんで私こんな格好をしているの⁉︎ 私、寝始めた時の記憶すら思い出してないけどさっきまで寝ていたよね⁉︎ なのになんでこんなことになっているの⁉︎)」

 

 

 顔を真っ赤にして困惑する桃。寝る前の記憶の有無すら危ういというのに、何故自分は結婚式会場のような場所で、花嫁衣装でこの場に立っているのだというのか。状況の整理と記憶の掘り起こしを試みようとした、その時だった。

 

 

「桃、おめでとうございます‼︎」

 

「⁉︎ シャミ子……⁉︎」

 

 

 突如聞こえてきた、宿敵かつ親友であるシャミ子の声。そしてはっきりと彼女の口から聞こえた、『おめでとう』という言葉。それらが桃を驚愕させ、状況の整理をするための頭の回転を止める。

 

 不意にシャミ子の声がする方向へと振り向けば、そこにはお呼ばれドレスの格好をしたシャミ子が。そして……

 

 

「おめでとうな、桃」

 

「桃、おめでとう‼︎」

 

「ちよもも幸せになれよー」

 

「桃君おめでとう‼︎」

 

『おめでとう‼︎』

 

『おめでとう‼︎』

 

『おめでとう‼︎』

 

『おめでとう‼︎』

 

「えっ? えっ……えっ?」

 

 

 白哉やミカン、杏里や拓海といった知り合い達も集まっており、何やら桃の事を祝福しているかのような言葉を掛けてきていた。自分を祝福してきて何事なのか、そんな戸惑いを感じている中で。

 

 

「……綺麗だよ、桃」

 

「………………ッ⁉︎」

 

 

 義姉・桜の次に聞き覚えのある、よく聞いていた声。その声が近く、一番近くから聞こえてくる。もしやと思ったのか、桃が正面へと振り向けば……

 

 

 

 そこには、彼女の幼馴染でこれまでに好意を寄せてきた男性・柘榴の姿が。しかも白いタキシードを着こなしており、結婚式の新郎であるを証明しているような姿で桃と向き合っていた。

 

 

 

「えっ……⁉︎ ざ、柘榴……⁉︎ な、なんで……⁉︎」

 

「……やっと、この時が来たんだね」

 

 

 何故柘榴がタキシード姿で自分の目の前に現れたのか困惑する桃に対し、拓海はそんなことなどお構い無しにと彼女の顎を軽く持ち上げ、自分との視線を無理矢理合わせてきた。これにはさすがの桃も再び顔を真っ赤にする他なかった。

 

 

「……君はずっと、僕に想いを寄せていたんだよね? 僕はそれにずっと気づいていた。それは僕も同じ。でも、本気でその想いを伝えることは、恥ずかしかった。だから、あの時までずっと告白できなかった」

 

「えっ? えっ……えっ⁉︎」

 

 

 何故自分の好意がバレたのか。そして柘榴も本当に自分に恋愛感情を持っていたのか。桃はその様々な疑問と受け入れ難い事実にさらに困惑し、目をグルグルと回してしまう。

 

 

「……でも、もうこの想いは隠さない。君にも隠させない。お互い、愛を打ちつけあっていこう」

 

 

 そう言いながら微笑みを浮かべ、そっと自分の顔を桃に近づけ始めた。顔と顔が近づき、重なる可能性があるとすれば……この後に何が起こるのかは、ただ一つだ。

 

 

「ま、ままままま待って⁉︎ ま、ま、まだ心の準備が……⁉︎ ちょっと、待って、本当に……ッ‼︎」

 

 

 それに察することが出来ない程、桃は気の抜けるタイプの女性ではない。しどろもどろな様子で柘榴に待ったをかけるが、本人は彼女のそんな制止を無視して顔を重ねようとする。

 

 そして、唇と唇が触れようとして───

 

 

 

 

 

「待って待って待って待ってホント待ってああああああああああああっ‼︎ ………………って、あれ?」

 

 

 気が付いた時には、桃はガバッとソファから起き上がっている状態だった。場所は結婚式会場ではなく自分の部屋になっており、服装も花嫁衣装ではなく寝巻の衣装となっていた。無論、近くには柘榴もおらず、周りにシャミ子どころか他の人もいない。

 

 

「え、えっと……こ、これって、まさか……?」

 

 

 結論、桃が先程まで体験していた結婚式は……彼女が寝ている間に見てきた夢であった。

 

 

「………………~~~~~~!?」

 

 

 顔を真っ赤にし、思わず掛け布団を被り真っ赤な顔を隠す。誰も今いないことに関係なく、羞恥心を落ち着かせるために。

 

 

「ゆ、夢……⁉ さっきまでのは、全部夢……⁉」

 

 

 何故自分は柘榴と結婚する夢を見たのか、何故心の何処かで望んでいたことを夢として見てしまったのか、その理由や可能性を整理してみた結果……

 

 

 

 

 

 

「シャミ子!! あんな良かれと思って友情ごっこしてきた裏切りの皇が手を叩いて喜びそうな夢を見せつけて、一体どういうつもり⁉︎ シャミ子はよこしままぞくだったんだね!!」

 

 

 シャミ子が仕掛けたことによって見ることになった夢であるという結論に至った。シャミ子には夢魔の能力を持っているため、その可能性があると断定したようだ。

 

 が、しかし。

 

 

「え……? 昨日はミカンさんの誕生会で、徹夜でゲームしてました」

 

「みんなでピザ食べてたわよ」

 

「っていうかもう朝になってたのか。清子さんと良子ちゃんと杏里以外みんな起きてたから気が付かんかったぜ」

 

「……え? あ? そうなの? ならいい」

 

 

 予想は完全に外れてしまった。どうやらシャミ子達は朝までゲームをして起きていたらしく、夢魔の力を使用していた気配は一切なかったようだ。

 

 自分の予想が外れて呆然とし、その恥ずかしさが歪に強かったのか虚な表情を浮かべる桃。シャミ子によこしままぞくとは何か、たてじままぞくもあるかというピュアな質問をされたことでその感情はさらに増してしまった。

 

 

「……ていうかミカンの誕生会してたの? なんか昨日の記憶が曖昧だったんだけど……」

 

「無理もねぇよ、お前はジュースと間違えて柘榴さんが飲んでいたチューハイ飲んで、たったの一杯で一発K.Oしちまったんだから」

 

「あっ……そ、そうなんだ……」

 

 

 ここで記憶が飛んだことに関する真相が発覚。どうやら桃もミカンの誕生会に参加しており、その時に柘榴が飲んでいたアルコール飲料をジュースと誤って飲んでしまったようだ。そして桃はアルコールの耐性がかなり弱く、一杯飲んだだけで気絶してしまったらしい。

 

 自身のうっかりで白哉達に迷惑をかけてしまったことに自責を感じる中、桃の脳裏に新たな疑問が過る。

 

 

「………………あれ? じゃあお酒を間違えてお酒を飲んで倒れてしまった私を、部屋まで運んでくれたのは……?」

 

「柘榴さんだよ。他の参加者は彼しかいなかったしな。お前を運んだ後帰ったのは、あらぬ誤解を防ぐための措置だろうな」

 

 

 刹那、桃の思考は再び停止した。

 

 

「………………………………えっ? じゃ、じゃあ私、柘榴に寝顔を見られた……ってこと?」

 

 

 寝ていた自分が、好意を寄せていた幼馴染に運ばれた。少なくとも(ベッドは自分の部屋に無いため)ソファで寝かしつけられるまで、ずっと彼が近くにいた。これらが意味することは、そういうことだ。

 

 

「くぁせdrftgyふじこlpくぁせdrftgyふじこlpくぁせdrftgyふじこlpくぁせdrftgyふじこlpくぁせdrftgyふじこlp」

 

「ちょ、桃ォーッ⁉︎ 走りながら思いっきり色々なところにぶつかりまくってますが大丈夫ですかー⁉︎ そしてめっちゃフラフラーッ‼︎」

 

 

 再び、というよりは今日以上の濃さで顔を真っ赤にした桃は、その羞恥心で周りを見ずに走ってそのまま自分の部屋へと直帰し(シャミ子の言う通り様々な箇所に衝突しながら)、寝落ちするまでソファの上で掛け布団を羽織りながら悶絶するのだった。

 

 




おまけ:台本形式のほそく話

……は、今回はあろうはずがございません。今回のはほそく話の厳選みたいな感じだからね。
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