偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語 作:名無しのモンスター
……GW中に投稿するの、これが初めてだな。
前回のあらすじィッ‼︎
小倉しおんが吉田家の結界をなんとかしようとしたら、その結界の時空に吸い込まれて迷子になってしまった‼︎ 自由気ままに実験とかをしすぎた因果応報か⁉︎
なんやかんやあったけど、とにかく彼女を救出するべく白哉達は動き出す‼︎ 平地白哉・シャドウミストレス優子ことシャミ子・千代田桃・伊賀山全蔵の四人が小倉しおんを救出しに異次元へ‼︎ 彼女と即合流できたものの、そこで彼らが目にしたものとは……⁉︎
………………なんか、モノローグみたいに全く知らない人の声が聞こえた気がしたんだが、気のせいだろうか? 異次元という超非常識なところに来たことによる影響か?
まぁ、そんなことは別に今考える必要は無さそうだからいいとして。まさか小倉さんを探しにこの世界に来てわずか一分弱で、彼女と再会するとは思わなかったぜ。しかも全蔵に上を乗られてのという痛い再会とは、恐れ入ったぜ(なんでだよ)。
とにかく無事(?)に彼女と再会できたことだし、さっさとこの世界から脱出……したいところなんだが、彼女はそうするにはまだ早いと言ってきた。何故だ? こんな上下関係の分からない景色のところにいたら、その感覚が狂いそうなんだが。
「ここは結界が防いだ、危険な運命の残骸を溜め込んだ場所。四人にはここのお掃除をお願いしたい……掃除したら時空のズレが近づいて帰りやすくなる〜」
あぁ……なるほど。今この世界には色々とバグみたいな変なことが発生しているから、それを直していかない限り安全に元の世界へ帰還することはできないってことか。
よく考えてみたら、どうやって帰ればいいのかなんて考えてなかったもんな……この世界の事を調べたらしい小倉さんがそんなことを言うのも無理はないか。
この世界の木が逆さになったり階段が変な位置に重なったりしているのは、幾多の並行世界のばんだ荘が重なり合っているからだそう。様々な可能性のある分岐点による、俺達の元いた世界の不確定要素が混合した感じ……だそうだ。
「……で? その危険な運命の残骸って一体どんなものなんだ?」
「そうだね……たとえば、あれ」
そう言って小倉さんが指差した方向を見れば、そこには扉の横に置かれている、最近式と思われるドラム型の洗濯機があった。……扉は何故か上にもあったけど。
……ん? ちょっと待てよ? そういえば吉田家の扉の横にも洗濯機はあったような気がするけど、もしかして……?
「シャミ子ちゃんの家の前の洗濯機がちょっと違うでしょ? これは多分、何らかの理由で洗濯機を買い替えた世界のかけら」
「え……えええホントだ───‼︎ 最新式だ──────‼︎ 乾燥が付いてます‼︎ 風アイロンって何⁉︎」
………………危険な運命となる要素? これが? 吉田家の金銭的にはあり得はするけど……なんだろうな……
ちなみにこれ、結界ごと剥がして捨てたかったらしいが重すぎて無理だったらしい。業者の連携プレイじゃないと到底運ぶの無理やて。というか、壊れてもないのにこんないいものを捨てるのはもったいない気が……
「こういうのを魔力でお掃除してあげて〜。ぺちっとね」
「これを捨てるなんてとんでもない‼︎ 持ち帰れませんか⁉︎」
「……よく考えたら、持ち帰った後は一体どうすんだ? 今使ってる洗濯機のこととか、それのサイズによる家の間取りのこととか」
「あっ……」
ふと思い浮かんだ疑問を呟いた途端、優子は何かに気がついたのか青冷めた表情を見せた。持ち帰った後の事を考えたら色々と不安な要素が浮かび上がってきた、そんな心境が表されているかのように見えた。
最新式は便利すぎるから欲しいって気持ちは分かる。けど手に入れた後の事を考えると、無闇に持ち帰るのはどうかと思うぞ。そもそも異質な世界から持ち帰るって自体もなんか危ういし……
「どっちにしろ、それを持ち帰るとあっちの世界がバグっちゃう……」
「……仕送りされた金を貯めて買えるか検討すっから、我慢な」
「……はい」
俺のいた世界でとんでもないことが起きるかもしれない可能性を消したいから、とのことで諦めるよう促したら涙目で了承してくれた。ごめんな優子、吉田家の『月四万円生活』の呪いが解けてからそういう点に触れていかなかったばかりに……
結局、その最新式の洗濯機は桃が刀を振るって消しちゃいました。そしたら周囲の景色の違和感が減っていることに気づいた。天井のドアが消えたのがその証拠だ。
「運命ゴミを掃除すれば、元の世界にどんどん近づける……。分岐世界の欠片……即ち元の世界だとありえん物を探してみて〜」
「あり得ないもの……『イ○ャイ○ャパ○ダイス』関連のインテリ品とかッスかね?」
「それは『NARUT○』を知ってるヤツにしかわかんねェよ。というかなんだそのインテリ品は」
全蔵が変な可能性を言っていたのを軽くツッコんであしらったところで、その俺達の世界では無さそうなものを探してみることにした。探し回ればいくつかすぐに見つけられそうだが、果たしてどんなものが……
と。ふと洗濯機のあるところの壁を見れば、そこには『イ○ャイ○ャパ○ダイス』の表紙が描かれたポスターが貼られてあった。
「あったんかいッ‼︎」
それを俺はすかさずセイクリッド・ランスで一突きするッ‼︎ さすがにあり得ないと思ったものが実際にあったとは思わなかったじゃんッ‼︎ ツッコまざるを得ないよこんにゃろーがッ‼︎
「……今のは千代田さんが魔が刺してああいうの関連を集めている世界線のだね」
「尚更なんでだよッ⁉︎」
いや普通に考えておかしいだろッ⁉︎ 一体どのようにして運命の軌道がズレたら桃がそういう奇行(?)に走るんだよッ⁉︎ そもそもあんなの関連のグッズって売ってるのかよ⁉︎ 色々と理解不能、意味不明☆
「……名前と表紙絵見たら、私でも内容気になるかも」
桃さん? 今、聞き逃してはいけないのが聞こえたんですが?
『しゃみこ〜』
「「⁉︎」」
『しゃみこや〜、しゃみこや〜』
ファッ⁉︎ な、なんじゃこりゃあッ⁉︎ こ、これってごせん像かッ⁉︎ なんか仰向けの状態で四足歩行してるし、頭部の天辺と右横腹にも短い手があるし、腹部に青筋が浮かんでいるし、原作二巻で見た時のニューごせん像よりも酷くて怖いってッ⁉︎
「とんでけー」
「ニューごせんぞおおおおおおおおおっ‼︎」
見つけてコンマ三秒ぐらいで、桃が思いっきり激ヤバなニューごせん像をぶん投げてしまった。何やってんだお前ェッ‼︎
……と思ったけどアレも運命ゴミだったらしく、景色の違和感も少し減ったので結果オーライだった。どんな間違いをしたらあんな受肉したんだよリリスさん……
「っていうかお前はよく迷い無く投げてたな⁉︎ 少しは様子見したり警戒したりしろよ⁉︎ 俺達の世界のリリスさんがこの世界に来るため用の受肉をしたって可能性だってあっただろ⁉︎」
「本物でも投げてた」
「えぇ……」(汗)
ま、まぁあの形はゴキブリっぽいし見た目がゴキブリ以上の危険度がありそうだし、別に分からなくもない……か?
と、そんな事を考えていたら階段を上って来る足音が聞こえてきた。カツン、カツンと優しく足音を立てているようだが、それでそこまで警戒する必要がないと決めつけるのはよくないな。何が来るのか用心しないと……
『───話をしよう』
という、どっかで聞いたことのあるネタにされがちなセリフを言いながら現れたのは、どっかのネタ動画で見たことあるような男性だった。
百八十もありそうな長身に、整えられた黒い頭髪、黒いシャツを身に纏い、スラリとしたスタイリッシュな彼の出で立ちをより際立たせている黒スーツを着込んでいた。
『あれは今から三十六万……いや、一万四百年前だったか。まぁいい。私にとってはつい昨日の出来事だが、君達にとっては多分明日の出来事だ。彼には七十二通りの名前があるから、なんて呼べばいいのか……』
なんか突然語りかけてきたんだけど。しかもなんか三十六万年以上も生きてるみたいな発言してるんだけど。というか名前を挙げようとした人の名前が七十二通りもあるってなんだよ。何なのこの人……
『………………………………』
「「「「「………………?」」」」」
あ、あれ? なんか突然黙り込んだんだけど……どうやら誰かの話をしたいらしいけど、その人に関することを思い出すための長考に入ったのか……?
『………………どうした?』
「「へっ?」」
『君達は帰るために異変を探してるんだろ? ならその一つである私を放っておくのは、あまり君達にとってはよくないんじゃないか? さ、早く私を消してくれ。そうすれば私も元の世界に帰れるから』
「「えっ。あ、はい……?」」
えぇ……? いや、彼も異変だろとは思ってはいたけどさ? その異変本人に自分を消すよう促されるって何なのさ? というか自分が運命ゴミだと自覚してるって何? そして消えれば元の世界に帰れるって何? 色々と怖っ……
結局、言われるがままにやることに対する味気なさと申し訳なさが相まって、ぽすって叩く感じに男性を消してしまった。消え際に『助かるよ』と言ってたけど……なんか、釈然としねぇ……
「今の人、なんだか白龍様に似た素質の魔力を持っていたなぁ……もしかするとあの人、きっと白龍様のポジションとして生きてきた世界線の人かも」
「なんでだよ。どんな因果であぁなるんだよ」
まぁ白龍様は神様が俺への転生特典として一緒に住むことになったって感じだけど、別世界では人種も全く違う人が同行することになるってなんだよ。その人は一体どんな能力を持っているんだよ。色々と気になって仕方ないんだが。
「この世界、ちょっと苦手だから早く帰りたい。引き続き間違えてるところを探してみよう……」
「確かにそうした方がいいッスね。色々とあり得ないものを見つけ続けたら、なんだか気が狂いそうッスよ。早急に全部見つけないと」
それもそうだな。場合によってはあり得たかもしれない運命ゴミにたくさん遭遇していたら、もしかするとって思ってしまって色々と考え込んでしまうだろうからな……
というようなことを考えながら運命ゴミの捜索を続けていたら、今度は天井か窓を突き抜けているようなデカい木を見つけた。何やら果物の実が成っているようだが、これは……
「皆さん! 見てください、みかんの大木です」
「誰がやらかした世界がわかりやすいね……」
おっ、そうだな(便乗)。こんなことしそうな奴は一人しかいねぇよ。
「俺達の世界でも将来的にやらかしかねないな、これ……」
「でも成ったら成ったで少しは食生活に困らないかもしれないッスね」
確かに食料確保には困らないことだが、毎日食べるってことを考えると飽きたりして別の意味で困ってしまうだろ。作ったというか作りそうな本人はそうでもないだろうけどさ、他の食料も欲しいっての。
………………いや、ちょっと待てよ? 並行世界による可能性という間違い探しってことは、もしかすると……
「悪い‼︎ ちょっと失礼‼︎」
「えっちょっ、白哉くん⁉︎」
「急に形相変えて走ってっちゃったッスよ⁉︎」
「わ、私が後を追いかけます‼︎」
そんなことを考えていたら、俺はいつの間にか走り出していた。まるで探すべき答えの一つが分かるかの如く、その場所を既に把握しているかの如く。
「びゃ、白哉さん……待ってくださいよ……‼︎ ひ、一人で勝手に行くのは、さすがに危険かと……‼︎」
気がつけば優子が少し息を切らしつつも俺の事を追いかけていたようだが、そんなことは関係ないと思っていたのか、俺は歩を止めることはなかった。そして不意に視界に入ったものがあることに気づいた途端、その歩を完全に止めた。
「……あった‼︎ やっぱりあったんだな」
そう言いながら立ち止まった視線の先にあったのは……
何重にも重なり、何重にも交差されている鎖によって開きづらくなっている、『平地』と書かれてある表札のドアだった。
「ッ⁉︎ ………………びゃ、白哉さん。これって……このドアと鎖って……」
「あぁ。俺と優子の事だからな、きっと……いや、絶対こういうのや似たような可能性はあるという確信はあったよ」
俺が確信していたという可能性、それは優子の性格に関与しているものだった。
優子は俺に対して偶に愛が重くなってしまうヤンデレ性質がある。行動や可能性次第ではその性質がかなり強まり、俺や彼女自身でも想像のつかない愛情の表現の仕方がされることもあるだろう。そのやり方次第では、俺は彼女を拒み、無理矢理にでも関係を無くそうと思うことだって……
そんな分岐点もあるのだろうと感じたからこそ、俺はここまで自分の意思で探し回り、この運命ゴミを見つけることができたのだ。
優子と、そして俺自身と向き合った俺だからこそはっきりと言える。俺達の関係を無くすような間違いは、人間関係そのものを否定するような間違いは……あってはならない。
迷いも躊躇いもなく、俺はそのドアをセイクリッド・ランスで強く突きつけ破壊するように消し飛ばした。景色の違和感がまた少し減った。
「………………あ、あの……白哉さん……わ、私……」
隣の方に視線を向けば、優子が顔に影を落としながらこちらを見ていた。先程の運命ゴミを見て自分ならあの間違いを生んでしまう可能性もあっただろうと感じ、俺に対する罪悪感で表情が曇っているのだろう。
そんな彼女の頭を、俺は何の迷いも無く撫でてあげた。
「気にするな優子。あれはもしもの可能性であって、俺達にはもう関係のないことだ。それに……お前が俺の事を想ってくれたからこそ、俺は大切なことにたくさん気づくことができたんだ。過去の『もしも』なんてもう考えないでくれ。俺はもう、お前から逃げないからさ」
「びゃ、白哉さん……」
俺の慰めが効いたのか、優子の曇った表情は徐々に晴れていっているのが見て感じ取れた。そうだ優子、俺は今お前や自分自身と向き合い、お前と共にいられているんだ。
だから先程の運命ゴミみたいな『もしも』なんて気にする必要なんてない。今を……目の前の俺に目線を向けてくれ。それが俺の今の願いだ。
「……はい‼︎ あんな誰だって望まない運命なんて気にしません‼︎ それらなんてチャチャっと掃除して、みんなで私達の世界に帰って、いつもの日常に戻りましょう‼︎」
「おう、それが一番だ」
よかった、彼女の心の曇りは完全に晴れたようだ。これならもう先程のと似た運命ゴミに遭遇してしまっても、それに負けない強い心で掃除してくれることだろうな。
「そう決まれば思い立ったが吉日‼︎ さっきのと似た間違いもパパッと消してやります‼︎ 私達はそのような最悪な可能性に負けないってことを証明するために‼︎」
優子がそう高らかに宣言すると、偶然立っている位置から見えるドアをバンッと全開させた。いや、思い切った行動をするのと何の考えもなしに行動するのとは全く別だと思うぞ? もし開けた途端に大変な事態が起きたらどうすんだよ……
「今のドアには『吉田』という表札が書かれてありました‼︎ もしかすると別の世界では、私が自分の部屋で白哉さんを束縛したりして無理矢理独占しようとしているのだと思います‼︎ そんな分岐点なんか許しません‼︎ それもパパッと掃除し……て………………?」
人の気持ちを考えない自分なんてクソ喰らえ、みたいなことを言っていた優子が、突然拍子抜けしたかのような感じで戸惑いだした。一体何を目にしたと───
『ごめんね、白兄。お姉の行動からこんなことを調べて、それを行動に移しちゃって……でも、なんでだろうね。こうやって白兄を縛ってみたら、なんだかすごく楽しくなっちゃったんだ……大丈夫。良は白兄をこれ以上は傷つけないし、お姉から白兄を取る気もないよ。ただこうやって、良の新しい楽しみ方に付き合ってもらえればいいから───』
ベチンッ
「「………………………………」」
………………えっ? なんか、優子じゃなくて良子ちゃんが俺のことを椅子と鎖でぐるぐるに縛っていなかった? そして良子ちゃんがヤバい表情で俺を見てなかった? しかも荒い息を立てていたような……
「………………良が誤った知識を手に入れないよう、改めて私自身の行動を配慮する必要がありますね……」
「そ、そうだな……俺も良子ちゃんに悪影響を与えないよう用心するよ……」
なんだろう……良子ちゃんの将来も心配になってきた……
♢
桃達のところに戻ってきて、改めて固まって運命ゴミを探すことにした俺達。辺りを回っていく内に、いくつかのあってはならない可能性が見つかってきた。
【ウガルルのお墓】
《ウガルルちゃんごめんね》
「そんな結末許しません‼︎」
「激しく同意だ‼︎ こんなことあってたまるか‼︎」
【文化祭準備の件で片腕を失った拓海】
『ちょっとヘマっちゃったようだ……』
「ふざけるな‼︎ 体の一部も犠牲があっていいわけがねェ‼︎」
「はい‼︎ こんなの平和でもなんでもないです‼︎」
【スレンダーな美バグに店長を寝取られて泣いているリコ君】
『シャミ子はん……どうにかして……』
「なんじゃその未来⁉︎」
「ってか寝取られたってことは、一応リコさんは白澤さんと結婚できたのか……?」
【克服した太陽の光を浴びすぎて常時身体から光熱を放つようになってしまったブラム】
『このままじゃ兄さんが内部から消滅しちゃうよぉ‼︎ 助けてェ‼︎』
「どうしてそうなったんだよ⁉︎」
「めちゃくちゃ眩しくて何も見えません……」
【4WDメカごせんぞ】
『シャアァァァミコーーーーーーシャァアァァアァミ』
「おふざけがすぎるッ‼︎」
【荒ぶる白龍様(荒ぶるパ○ガスの派生系)】
『ファァァアアアアア!!!!!!! ファァァアアアアア!!!!!!! ファァァアアアアア!!!!!!!』
「白龍様の身に一体何があったッ⁉︎」
「私達、いろんな未来を回避してきたんですね……」
「ほとんどがあり得ないものばっかりで、めっちゃハリセンで叩いたな」
「まぞくハリセンいいな〜」
「というかどんな経路を辿ったらあんな未来になるんスか。おかしいッスよ」
「もう帰りたい……」
悲しき分岐点を見たり、変な未来を見たり、とうしてそうなったってツッコミたくなる程の光景を目撃したりと、こっちの世界で回避してきた未来の運命の残骸の掃除をしてきた。白龍様が荒ぶった未来もあるのは謎すぎるが……
だが、これだけ間違いを消しても元の世界に帰れる気配が全くしない。まだ間違いが残ってるってことだ。一目見覚えのあるものを見れば『これは分岐点のヤツだな』って思えるものはいくつかあるだろうに、もう見えなくなるとは……
ハッ⁉︎ もしかすると、俺達の誰かがなんやかんやで小人になってしまった世界線とかあるのでは……いや、さすがにそれはないか。うん、ない。
「『サイゼリャー』の間違い探しみたく、難しい系かもしれません。柵の高さが一センチ違うとか」
「それって『ガスモ』のでもあるよな。僅かな違いもあるから、まるで『ウォー○ーを探せ』みたいだ」
「えっ? それヤバくない? しばらくすると大音量の叫び声とともに恐ろしい顔の画像が表示されるヤツだよね? それ」
「それは『検索してはいけない言葉』の類の方だ。何だろうと思って見に行ってしまった俺のトラウマを思い出させるな」
間違いが見つかりにくくなったことに関する話し合いをしながらも、どうにか他の間違いがないかを探し回ることに。今のところ分かりやすく目立った間違いが無さそうだが……
ん? 『サイゼリャー』や『ガスモ』の難しい系? 僅かな間違い? 今のところ分かりやすく目立った間違いが無さそう? ……もしかすると。
何かに気づいた俺は、とりあえず壁の一つを軽く叩いてみた。そしたらそこに出来ていた小さなヒビは無くなり、ほんの少しだけ景色の違和感が減った気がした。
「びゃ、白哉さん。今のって……」
「……あぁ、いじわる問題だな。『サイゼリャー』とふとした思考がこの解決法を見出せたみたいだ。他にもこういうのがありそうだし、探し回ってみようぜ」
どうやら俺の勘は当たったようだ。その後も階段が一段多いところとか、微妙に見えづらい割れ目のある窓とか、ほんの少しだけ錆びている柵とか……色々な細かい間違いが見つかり、掃除していく内に景色が戻っていっていた。
それでもその間違いの数は多く、それ故に普段のよりも細かすぎて見つけにくく、広い場所に散りばめられているかのように分けられている。そのせいかだいぶ時間も経ってきた。
結構間違いを見つけられたとは思うが、それでも元の世界に帰れる気配はない。まぁまだ景色が完全に元の世界と一緒って感じじゃない、無理もないだろうけどな。
と、ここで何やら腹の虫が鳴ったかのように聞こえた。一応俺達は飯食ってきたけど……?
「……小倉さん。もしかしてここに来てから何も食べてなくて、お腹空いていたッスか?」
「う、うん。ここを調べるのに夢中になりすぎて、食料の確保は全然してないんだぁ……」
「……だと思ったッスよ」
やっぱり腹の虫の正体は小倉さんだったか。まぁこんなわけわからんところで食料の確保なんて難しいもんな。腹が減るのも仕方ねェよ。
「お腹空いているのなら、これあげる」
「え……ありがとぉ……変わったパン……」
あれ? なんか桃が仲の良くないはずの小倉さんにパンを渡したんだが……? もしかして、間違い探しを協力してやっていく内にお互いの警戒心が自然とほぐれてきたのか? 協力プレイをしていく内に仲が深まる……コラボ配信などの良いパターンみたいだ。
ってかよく見たらそのパン何? コッペパンしらす味ってなんだよ。パンにしらすって合うものか? なんでこんなもの売ってあるんだよ。
まぁ買ったのは桃本人じゃなくて、お使いを頼まれたウガルルだけどな。しかも半紙と間違えて買ってきたものらしいし。
「あ……そうッス。小倉さん、よろしかったらこれもどうぞッス。パンだけじゃ足りなかったでいいッス」
ふと何か思いついたかのように、全蔵も小倉さんに何かを渡した。これは……『一本満腹バー』のチョコレートパフェ味じゃねェか⁉︎ この世界の『一本満○バー』の、しかも高級品(リッチ)の方だぞそれ⁉︎
「へっ……えっ……? い、いいの……? 『一本満腹バー』って伊賀山くんの好物だよね……? しかもこれ、結構値段高い方の……」
「別に構わないッスよ、小倉さんの体調が良くなるというのなら。それにこれ、この前の商店街のくじ引きでたまたま引き当てたものッス。俺、自分の好きなものの値段の高いの方をタダでもらうってのにはなんだか抵抗感を感じてしまう系なんス。食うのを躊躇って腐らすよりも、誰かに食べてもらった方が俺的にも安心するッス」
なんじゃそりゃ。なんで商店街のくじ引きでそんな高級品が景品として出てたんだよ。しかも高級品をタダでもらいたくない性分ってなんだよ。誕生日プレゼントで高級品を貰った時はどうしてたんだって話だよ。
でも、今ので分かったことがある。全蔵は小倉に対する警戒心がほとんどなくなったってことだ。そんなものがあったら自分の好物の高級な方を易々と渡すわけがないし、何より小倉さんの事を気遣っているかのような言葉も述べている。これで警戒心が強いとは思えねェよ。
「そっか……ありがとう伊賀山くん、ありがたくいただくね」
「えぇ、どうぞッス。それも食べて腹が膨れたら間違い探しの続きを再会するッスよ」
これで全蔵の小倉さんに対する反応を、彼女が改めて認識してくれればいいんだがな……そうすれば全蔵への扱いが変わって、彼の表向きでの対応も良くなると思うけど。
「……その優しい対応、しおんちゃんの方にしてほしかったなぁ……今は私がしおんちゃん認識らしいけど」
………………ん?
「ん? 小倉さん、今なんか言ったッスか?」
「……うぅん、なんでもないよぉ。気にしないで」
いや、なんでもないとか言ってるけどさ……今、小声で何か呟いていたのはたまたまとはいえ俺は聞いてたからな? 一体何を呟いてたんだお前は……いや、どうせ実験したいことうんぬんかんぬんだろうから、下手に気にしなくてもいいか。
「それよりも千代田さん。ここ……もう危険度は低そうだよぉ。手分けして探してみる? プライバシーな場所とか、まだ探してないし」
「うーん……」
プライバシーな場所、か……確かに人に見られたくない場所にも運命ゴミがあるかもしれないし、そういった場所は本人が行ってそこにある間違いを消しておく必要があるな。他人を連れ込んだら黒歴史を見られる可能性があるし。そう考えると、危険度の低さを考慮して手分けして探すのは良い事かもしれないな。
で、戦闘能力の無さそうな小倉さんは誰と一緒に同行させるか……桃はわだかまりが少なくなってるとはいえ、彼女の言えない秘密を小倉さんに握られそうだからダメだから……
刹那。何やら赤紫色のモヤモヤとした球体が、俺達の間を横切るかのように通り過ぎた。
「………………?」
「びゃ、白哉さん? どうしたんですか豆鉄砲を食らったかのような目で向こうを見て?」
「……今、何かが横切ったような気がして……」
とそんな事を呟いていたら、優子は理解していないかの如く首を傾げた。ふと視線を感じたので皆の方を見れば、桃も全蔵も小倉さんも同じく首を傾げていた。
「えっと……私は何も見えていませんが……? 皆さんは何か見えました?」
「い、いや。私も何も……」
「俺も何かに横切られた感じはしなかったッス」
「……私もぉ」
えっ? あ、あれ? みんな気づいていないのか? そ、それともアレか? 俺が疲れてるから何かが通り過ぎていったかのように見えただけか? アレェ……?
「そ、そっか……多分、俺の気のせい……だろうな。すまん、今のは忘れてくれ」
うーん……きっと間違い探しに没頭しすぎたのか疲れてきたんだろうな。さっさと全部の間違いを掃除して、早くここから帰らないとな……
『ふぅ……危うくバレちゃうところでした。でも、もう少ししたら直接お会いしますからね? ……白哉さん』
※白哉君はエルシャダイの事もルシフェルの事も知りません。『大丈夫だ、問題ない』『神は言っている。〜』はネタ動画とかで偶に聞く程度で知りました。
最後の最後で謎のキャラのセリフがありましたが、何やら聞き覚えのある感じが……?