偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語 作:名無しのモンスター
原作通りの流れで白哉がニセ小倉と対話すると思った? 残念、きらファンオリジナルの方のシャミ子と遭遇することになりました‼︎
超簡単なあらすじ
運命の残骸だと思わしき球体に飲み込まれ、優子の夢の中に似た世界にて、別世界で多摩町の魔王と化した世界線の優子と邂逅しました。
いやなんで? どういう風の吹き回しでこんな展開になったんだ? 俺達はただ元の世界に帰るために、その世界とは異なる間違いを消していっていただけなんだが? 訳ワカメなんだが?
それにしても、優子が魔王になった世界線か……俺達の世界の優子も魔王になりそうな予感がするな。おまけに多摩町の守護者という立場でもあるらしいし。優しい性格の彼女なら、強くなれば絶対なれるかもな。
『フフンッ……そっちの世界の私も魔王になれるかどうかは、そっちの私と皆さんの働き次第ですよ。そう簡単になれるとは思わないことです‼︎』
ッ⁉︎ よ、読まれた⁉︎ 俺の考えていたことが優子に読まれたのか⁉︎ い、いや待て。落ち着くんだ俺。いくらなんでも魔王になった彼女が心を読む能力を得たとは限らない。多分俺が無意識に口に出していた言葉を聞かれただけのはず───
『口に出てはいませんよ? 私が作ったこの領域は、夢魔の世界と同じ領域ですからね。ごせんぞがその世界で私の思考が読めるのと同じように、私もこの領域にいる人達の心を読むことが出来ます‼︎ これぞ私が魔王になって強くなった証拠の一つです‼︎ フンスッ‼︎』
「精神的系な領域展開か何かか?」
悪い、やっぱり読まれていたわ。魔王になったということは、彼女の持つ魔力も増大・増強されたはず。だから心を読める能力も持てるはずだわ。うん、絶対そう。
俺達の世界の方の優子が、目の前にいる魔王の自分と出会ったら、一体どんな反応をするんだろうな。キラキラと目を輝かせるのか? それとも別世界の自分の方が強いと分かって、嫉妬などの感情で頭がごちゃごちゃしてしまうのか? うーん、分からん……
『少なからずとも、私がそちらの世界の私と同じ立場だったとしたら、尊敬の眼差しを向けた後に羨ましいって感情を出していたと思いますよ。だからそちらの世界の私もそんな反応するのかと』
「……まぁ、こっちの優子も同じお前だし、あり得るかもな」
また心を読まれたんだが。なんだろう……人の心を読めるのはすごい事だけど、さすがにプライバシーに関わるから控えてもらってもよろしいですかね? 実際に読まれるの嫌なんで。
「あの……平地くん、ちょっといいッスか?」
と、そんな事を考えていたら全蔵が耳元で声を掛けてきた。こんな時になんだ? あの優子が魔王になった世界線があることが信じられないのか? 世界の分岐点というのはいくつも存在するし、様々な運命の残骸を見てきたのだから、今更疑心暗鬼になるのも……
「魔王になった(?)シャミ子ちゃんと仲良くなるのは別にいいとは思うッスけど……俺達の世界のシャミ子ちゃんがいるということは、この結界の中にいる運命の残骸ってことになるんじゃないッスか? だったら悠長に彼女をそのままにして、あまり時間を掛けるのも良くないと思うッスが……」
「……あっ」
そうだった。俺達は運命の残骸を掃除して元の世界に帰らないといけないんだった。なのにずっとぺちゃくちゃ喋って時間を掛けすぎたら優子達に迷惑かけてしまうよな……
それに、優子は今この世界に住んでいそうな方のニセ小倉さんの隣にいて何もされないとは限らないから、急いで戻らないといけない。俺の予想からして危害を受ける可能性は低いだろうが、今思うとそうとも言い切れないしな……
「……けど、本当に彼女相手にもそんな事しないといけないのか? まるで俺が優子の事を物理的に否定しているような気がするんだが……いや、あいつは別世界の優子なのは分かっているけどさ」
「出たッスね嫁バカが。まぁ分からなくもないですけど」
喧しい。せめて彼氏面してる程度って認識にしろや。大体な、俺はこれまでに彼女の事を何度も受け入れている身だぞ? それが異なる形でとはいえ、否定するような方向性……というか消すという形での対応をしろというのか? 精神的に辛いんだけど。
『でも、全蔵くんが急かすのも一理ありますよ?』
えっ?
『確かに貴方は私の事をよく思ってくれています。でもそれはそちらの世界の私の方の話。もしこのまま私を放置して、そちらの世界の私共々この世界に留まるとなったら、この後はどうお過ごしになるというのですか? それに、今の貴方はそちらの世界の私を置き去りにしている状態。もし貴方がここにいたままだと、そちらの世界の私は貴方のことを心配するし、いずれ今何をしているんだろうと怪しまれるかもしれませんよ?』
「!? い、言われてみれば確かに……」
そ、そっか……だよな、よく考えてみればそうだよな。中々全ての間違いを見つけることが出来ずに難航していたし、さっき俺も帰れるかどうか不安になって荒れちゃってたし、この世界にずっと留まるのもどうかと思うな。正常さを保てそうにない。
それに、彼女の言う通り優子が今の俺の事をどう思っているのかも分からない。少なくとも俺の身を案じているだろうとは思うし、俺も同じ気持ちで優子が無事かどうか考えてしまう。
大体、俺に対して察しやすいあいつと別行動なんて、まるで敵組織のスパイなのではないかと怪しまれている有能そうな新人メンバーみたいなポジションにいるようなものだ。これ以上彼女の元から長く離れるのは、様々な不安要素が募ってくるのと同じだ。なるべく早く彼女の元へと戻らないといけない。
『それに……こっちの私もそうですが、そちらの世界の私は白哉さんの事で愛が重くなるんですよね? もしも疑心の念を持たれてしまったら、他の女性にカマかけているのではないだろうか……って疑われる可能性だってあるはずですよ? 白哉さんはそれが怖くないのですか?』
「すいません、めっちゃ怖いです……」
うん、分かってる。彼女がヤンデレだってのは分かってる。相手が別世界の優子とはいえ、これ以上知り合いじゃない女と一緒にいると、彼女の嫉妬心に喧嘩を売ることになって後が怖い。大抵は誤解や俺の無実証明の為として搾り取られることが多いが……
というかそもそも、俺達は小倉さんを救出するためにこの結界の世界に来たんだ。長居するつもりは毛頭ない。というか俺達の世界の分岐点だらけかつ違和感だらけの景色の世界に長居は気が狂いそうだしな。
『はい、というわけでしてね。白哉さんがそっちの私の元に帰り、目的を達成して元の世界に帰るには、私を攻撃してからここから脱出しなければなりません……が‼︎』
が?
『あっさりとそうさせるのは、私を見て『こっちの世界の優子も同じくらい強くなれるのでは』という妄想を膨らませていた貴方に申し訳ないですし、何より色々ともったいない……そこで‼︎』
そう言って何やら威張っている感じに鼻で笑いながら、魔王の優子が自身の持っている三叉の槍をこちらへと向けてきた。えっちょっと……えっ? いきなり武器を突き出してきて何をするつもりなんだよ? なんか、怖いんですけど……
『私、魔王シャドウミストレスはこれから、貴方達にゲームの魔王らしく攻撃します‼︎』
………………………………えっ?
『めっちゃ攻撃しまくるので貴方達に攻撃させる余裕を与えませんが、その代わり当たり前だけど死なないように魔力の強さはある程度調整しますし、いざとなったら回復魔法で貴方達の傷や体力を回復させますのでご安心ください‼︎』
いや、それは嬉しいけど……死ぬことがないってのはありがたいけどさ……えっ? ちょっと待って?
『攻撃を止める方法はただ一つ、私にどんな感じにでもいいから攻撃を当てるだけ‼︎ この間違い探しのラスボス相手に、貴方達はどれだけ抗えますか⁉︎ そして私を倒してここから脱出できますかー⁉︎』
「いやいやいやいや待て待て待て待てッ‼︎ ちょっと待てッ‼︎ ホント待てってッ‼︎」
すいません、いきなりボス戦だよーって宣言してくるのやめてもらってよろしいでしょうかッ⁉︎ いや確かにボスを倒せば次のエリアに行けるorそのコースがクリア扱いになって脱出できるのはゲームでよくあるけどさぁッ⁉︎
「平地くん……突然の事すぎて納得いかないって思っているのは顔で分かるッスよ。けど落ち着いてほしいッス。今はここから出る手段がこれしかないッスから」
「何を思ってるのかを顔見て簡潔に理解するのやめてもらってくれる?」
待って(二回目)。全蔵に指摘された途端に我ながら冷静になれたんだが。我ながらなんで冷静になれたのか不思議に思えるんだが? 我ながらなんでなん?
『問答無用‼︎ いずれ貴方達が戦うだろう敵の中には、そちらの都合などお構いなしに襲ってくる敵もいます‼︎ なので私もいきなり襲っちゃります‼︎ 喰らえ、雷の杖ーッ‼︎』
「うおっ⁉︎ ひ、光の壁よ、俺達を守れ‼︎ シャイニング・ウォール‼︎」
マジでいきなり襲い掛かってきたんだがッ⁉︎ 俺達の心の準備を待たずに攻撃してきたんだがッ⁉︎ ア○ンジャー○のトー○みたいにバカでかい圧のある雷を放ってきたんだがッ⁉︎ と、咄嗟で出したシャイニング・ウォールで防げて助かったぜ……
あ、危ねェ……危うくめっちゃダメージを受けるところだった───
『安心するのはまだ早いです‼︎ もう次いきますよ‼︎ 炎の杖ーッ‼︎』
今度は太陽に近い大きさの炎の球を生成してきたァァァッ⁉︎ そして嫌な予感が的中してすぐさま投げてきたァァァッ⁉︎
「シャ、シャイニング・ウォール‼︎」
クソッ、まだ突然の襲撃に対する想定が出来てないからこれもシャイニング・ウォールで防ぐしかねェ……いやあっついッ⁉︎ 光の壁で防いでも熱までは防ぎきれなかったんだけどッ⁉︎ 熱波が壁を通り越したんだけどッ⁉︎ あっついッ‼︎
「ひ、平地くん大丈夫ッスか⁉︎」
「だ、大丈夫だ……それよりもまた攻撃してくると思うから、お前も油断は絶対するなよ……」
「いやいきなり襲い掛かってきているものだから、油断しようにもできないッスが⁉︎」
油断する前提は考えんな。戦場は余裕をかましていい程甘くはねェんだよ。チート能力持ちの主人公でも油断して負けることがある、ここ大事ね。
だが、次からはシャイニング・ウォールを壊す魔法を出してくるかと……いや、それどころかシャイニング・ウォールさせる余裕すら与えてこないだろうな……
魔王の優子は本気で俺達を攻撃してくる。殺す気は彼女にはないだろうが、こちらも反撃しないとやられる。相手が身内だからって躊躇っている場合じゃない。
……なるほど、闘いというのはどんな奴とどういう風になるものなのかは分からないってことか。魔王の優子はそれを伝えようと……勉強になった。
だったらこちらもその気でいなければ、無作法というもの……
「お前がその気なら、こっちも攻撃させてもらうぜ…… 尋常無き寒波に凍りつけ、ブリザードタイフーン‼︎」
まずは相手の動きを封じる必要がある。エドヒセブ・エレキックはある程度以上対象から離れていたら届かないため、氷結の竜巻をぶつけて敵の身体を凍らせるしかない。
というわけで今のようにすぐさま実行。その氷結の竜巻をセイクリッド・ランスから巻き起こさせ、振るってそれを魔王の優子にぶつけることに。
別世界のとはいえ優子を攻撃するのは本来遠慮したいところだが、四の五の言ってる場合じゃない。これが上手くいけばいいんだが……
『やっと攻めてきてくれたのは良かったですが、そう簡単に喰らいませんよ‼︎』
炎の杖状態だろう三叉の槍を地面に突きつけ、そこから炎で作られた壁を呼び起こし、それに衝突した氷結の竜巻を一瞬で掻き消してしまった。
もしかするととは思ったが、やっぱり完全に防いでしまうか。そう簡単に攻撃を当てることも許してくれないってか……
だが、今ので隙は生まれた。その瞬間を逃す程俺は間抜けじゃねェよ。
「悪の急所を射抜け‼︎ ダイレクトスナイプ‼︎」
こいつは瞬きしてでも捉えられない程の速さで放たれる光の球体‼︎ しかもそれは狙った敵を追跡するし、威力が下がることもない‼︎ ここでもうお話できないのは残念だが魔王の優子、お前が本気でかかってくるのなら俺もそれに答えるだけ‼︎ 悪く思うんじゃねェぞ?
って、そんなことを考えている間に光の球体は魔王の優子の背後に素早く回り込み、背中に直撃──したのだが。彼女の身体は一瞬にして発光し、姿を変える。それはただの長い切り株となっており、球体で貫かれた跡を見せながらその場に転がった。
……えっ? ちょっと待って? アレ、魔王の優子じゃなかったの? 俺、間違えて切り株を狙っちゃったのか? いや、さすがにないよな? 俺は彼女の姿を捉えたはずだが……
『フハハハハァッ‼︎ 私を狙ったはずなのに関係ないものに攻撃が当たった、その信じられない事実に驚かれているようですね‼︎』
「うおっ⁉︎ いつの間にそこにいたッスか⁉︎」
ふと後ろを振り向けば、そこには全蔵の後ろに立っている魔王の優子の姿が。全蔵はそんな彼女に驚きすぐさま俺の元へと後退したが、相手次第ではあの場で攻撃させていたかもしれない……その可能性に思わず背筋が凍ってしまった。
『これぞ忍法の杖・変わり身の術です‼︎ 攻撃を受ける瞬間に身代わりをその場に残して別の位置に移動する忍法……に見えた魔法ですよ‼︎』
「……全蔵よりも忍者っぽいことできてそうだな」
「それ、どういう意味ッスかッ⁉︎」
彼女のイメージ次第なら忍者の技もなんでも使えそうだなって意味だよ。忍法の杖とか言ってたし。別にお前の事を悪く言ってるわけじゃないってことは察して?
……にしても驚いたな。今更気づいたことだが、どうやら彼女が持っているあの三叉の槍がなんとかの杖だったとは。魔力の扱いやイメージする力が上手くなったことで杖もグレードアップしたというのか? こっちの方の優子にもその力を分けてもらいたいよ。
って、んなこと言ってる場合じゃねェな。また魔王の優子が攻撃してくると思うし、またこっちが攻撃する隙を失くされる前に行動せんと。ん? 変わり身の術の対策はどうすんだって? 心配すんな、それについてはちゃんと考えてある。
「炎と氷よ、相殺されずに我が槍に纏わりつき、放たれよ‼︎ フレイムフロスト・ショット‼︎」
炎の渦と吹雪の渦をセイクリッド・ランスに纏わせ、それをすぐさま放った。優子の夢の世界で使った、纏うだけで槍の強化を図る方法とは異なり、『ショット』って言葉を付け加えれば遠距離でも活用できるのがこの技だ。
火傷を負って攻撃する余力が失われるか、凍ってしばらく動けなくなるか、果たしてどっちだろうな? ……なんでポケモン準拠で考えてんだろ俺。
「……ん? ちょ、ちょっと平地くん⁉︎ どこ狙って……というかどこに撃ってるッスかッ⁉︎」
全蔵が思わず声を荒げていたが、それも無理はない。何故なら俺は今……魔王の優子に向けてではなく、彼女から見て右方向にフレイムフロスト・ショットを放っているからだ。
これを見た人は混乱でもしたのかなどと思うだろうが、勘違いしないでほしい。俺は魔王の優子に今の魔法を当てるために、敢えてあの方向に撃っているのだ。
攻撃を当てようとしているのに、何故標的に向けて放たなかったのか? それは……
『ななぁっ⁉︎ ひ、光の壁・生成モード‼︎ ……あ、危なかった……判断が鋭いですね』
このように、本当の標的は俺が放った方向にいたからだ。まぁ壁を作られて塞がれたんだけどな。
どうやら魔王の優子は自身の魔力を消し、魔力の探知ができる俺に気づかれないように隠れていたようだ。全蔵はそもそも魔力を持たないから気にしてなかった感じだろうけど。
じゃあ俺達二人の近くにいる方の魔王の優子は何なのか? それは……
「あっ⁉︎ 近くにいる方のシャミ子ちゃんがドロンって消えたッス⁉︎ まるで分身の術ッス‼︎」
「……やっぱりな。忍法の杖って聞いた時には、きっとそうするだろうとは思ってたぜ」
そっちの彼女は、忍法の杖の能力によって生み出された分身である。忍法の杖って言葉が出た時にピンと来たんだよ、もしかすると分身の術と同じ能力が使えるんじゃないかってな。分身の術はみんながよく思い浮かぶ忍法の一つだしね。
『……フフッ。そっちの私を分身だと見抜いたのは褒めてあげます。世界は違えど、さすがは白哉さんですね』
半分は勘で見抜いたんだけどな。
『でも……一番気になったのが、本体であるこの私が何処にいるのかを見抜いたことです。魔力も完全に隠したはずなのに、一体どうして私がここにいると……』
確かにあの時は魔王の優子の魔力は完全に消していた。同じく魔力を持っている俺に察知されないように。
なら切らした息が何処からするのか聞いて見つけたのだろうか……と思うだろうが、それはない。魔王の優子はどうやら体力も向上しているらしく、ちょっと動いただけで息を切らす……なんてことはなかった。魔王に飽き足らず強者ならちょっと動いただけで息切れしないだろ。
ならどうやって魔王の優子の居場所を突き止めたのか。それは……
「影だよ」
『か、影……ッ⁉︎ し、しまった……ッ‼︎ まさかそこに目を付けられたとは……ッ‼︎ そう早くは見破られないと思ったのに……ッ‼︎』
いや、ちょっと待って? 察しがつくの早くね? そこは『なんで影が自分のいる場所の分かる術となるんだ?』みたいなことを言うべきだと思うんだが? 分かってた? もしかして分身する上での弱点が何なのかを分かってたのか?
「か、影……? なんでそれが本物のシャミ子ちゃんのいる場所が分かる要因になるッスか……?」
うん、お前のその反応が一番正しいぞ。今のはまるで意味が分からんぞ、みたいな反応をする奴が多いと思うぞ。初見みたいなタイミングで敵の戦略を、こんなにも早く見破れるとは思わないもんな。な?(圧)
「変わり身される前にもなんかちょっと違和感を感じたんだけどよ、さっきの分身を見た時にもそれを感じたんだよ。ほら、この空間でも俺達の影は地面に映っている。なのに分身の方にはそれが映っていなかった。生き物には影が付き物なのに、だ。だから思ったんだ。もしかするとあれは魔王の優子の偽物で、本物は他のところで佇んでいるんじゃないかって。遠目からそれが見えるのかどうか不安ではあったけど、見つけられてよかったぜ」
何故影が魔王の優子が本物か分身かどうかの判断ができるのか、何故影で魔王の優子のいる場所が分かるのか、それを長々と説明した俺氏。そしたらその説明に魔王の優子は共感したのか目を輝かせ、全蔵は目を点として唖然としていた。
「な、なるほど……?」
「まだ納得してないのかよ。ま、お前は気づけなかったんだからしょうがないだろうけどさ」
っておっといっけね。長々とした説明をしている場合じゃないよな。これは容赦なく襲い掛かってくる敵との闘いのデモンストレーションみたいなものだから。気を抜いてたら魔王の優子にボコボコにされかねん、気を引き締め直さないとアカン。
「さてと……続き始めようぜ、優子」
『……はい、私ももうちょっとだけマジになってやりますよーッ‼︎』
……は? おまっ、あれだけ攻撃しておいて実は俺が思っていた程の本気じゃなかったってか? 何それ……俺、ちょっと遊ばれてたのか? なんかショックなんだが……
クソッタレェ……ッ‼︎ だったら本気を出させるまでだッ‼︎ そうでもないともしもの時のためのデモンストレーションにならないし、何より俺がいい気がしない。それに、なるべく早めに本気出させた方がそいつが疲れやすいって場合もあるしな。
「ってなわけで、一旦俺の全力をぶつけさせてもらうぜ。今の俺が本気を出せばどれだけいけるのかってのを確かめたいしな」
そう宣言した俺はセイクリッド・ランスを両手で持ち、天に掲げた。そして気を集中させる為に目を閉じ、精神を研ぎ澄ませる。魔王の優子が全力をぶつけてくれることを信じながら、集中……集中……
刹那。セイクリッド・ランスどころかその上空の部分全てを覆い尽くすかのような光の柱が、槍の形を作るように生成された。それが出来たことに気づいた俺は左手を離し、持ったままの右腕を後方へと下げ───
「穿て、ロンゴミアドッ‼︎」
光の奔流と化した光の柱を魔王の優子の方へと思いっきり放ち出す準備を整えた。どうだ、これを受けたらお前もひとたまりもないだろ‼︎ さぁ、今から放つがどう立ち向かう⁉︎
『それが貴方の全力の一撃となり得る技、ですか……ならば私もそれに答えるまで‼︎』
その光の魔力に感化されたのか、魔王の優子は三叉の槍をその場で突き刺した。その刺された地点から巨大な赤紫色に淡く輝く魔法陣が展開され、俺……というかロンゴミアド状態の光の柱に向けて両手を翳した瞬間───
『これが私の……いや、私達の全力ッ‼︎
───咲き誇れ、せいいきサクラメントキャノンッ‼︎』
巨大な桜の花の形をした淡い光が、咲いた。
サクラメントキャノンって……確か、桜さんが使う大技だったっけ。ミカンが言ってた。桜の花びら状のプリズムが散る時の花びらと同じようにと舞い、その後景色がピンクになって極太レーザーが放たれる……って技だったよな?
つまり……これから行われるのは、俺がゲームの必殺技を参考にした最高火力の大技と、魔王の優子が実際にいるファンタジーな大物系の人物の使う超火力の大技のぶつかり合い……ってことなのか?
……なんだよ、そのバトル漫画でありがちなワクワク感のある瞬間は。
柘榴さんとの闘いでも似たような事は起きたけど、アレは夢の世界でやったのであって現実世界ではこれが初めて。しかも超大物のを模様したかのような大技とのぶつかり合いだぞ?
こんなの……こっちの世界の優子程ではないかもだけど、ものスッゴいワクワクするじゃねェかッ‼︎ 早く……早くッ‼︎ 俺の技とお前の技、どちらが強いのか確かめたくなってきたッ‼︎
『フッフッフ……どうやら白哉さんも高揚感が高まっているようですね。興奮しているのが顔で分かります』
えっ? 俺、今の気持ちを顔に出していたのか? ヤバい、お恥ずかしい限りです……
『さぁッ‼︎ 今からせいいきサクラメントキャノンとロンゴミアド、どちらが強いか勝負と「うにゃああああ⁉︎」はうあぁっ⁉︎』
ファッ⁉︎ な、なんだ今の悲鳴はッ⁉︎ な、何やら可愛らしい悲鳴が聞こえたような気がするんだが……しかも優子とは別の、聞き覚えのある……
刹那。優子のいた位置に、爆音が鳴ったのと同時に桜色の爆発が巻き起こった。それは思わず綺麗だと思ってしまう程の爆発で、桜色の煙があまりにも美しいものだと思い込んでしまった。
そしてその煙が晴れた時には……そこに立っていた魔王の優子は、プスブスと身体中に焦げた汚れが付着し、ケホッと咳き込むのと同時に口から桜色の煙を吹き出した。なんだその児童向けのギャグ漫画にありがちな場面は。
『……ケホッ。桃のあまりにも可愛らしいビックリ声にビックリしてしまったせいで、せいいきサクラメントキャノンを発射させる前に誤爆させてしまいました……油断なんて久々です……』
「えっと、その……大丈夫か、魔王の優子?」
なんか俺だけいつでもロンゴミアドを撃てるようにするのも申し訳ないしってことで、その魔力を解除して魔王の優子に無事を聞くことに。
というかビックリ声にビックリしたって何だよ。どんなものにビックリしたんだよお前は。確かに桃があんな感じに叫ぶとは思わなかったけどさ。ってか桃は何にビックリしたんだ? 心配になってきたんだが……
……とりあえず、今は気を取り直してこの闘いを再開するようにするか。
「あぁ……今のはデモンストレーションでも起きないと思うし、一旦その爆発のダメージを回復するために休憩でもするか?」
『……いいえ』
は? 『いいえ』? なんだお前、大技撃てなくてショックを受けたのか? メンタルちょっと弱くなったんじゃねェの?
『白哉さん……私が攻撃する前に言ったのを覚えてますか? 【私にどんな感じにでもいいから攻撃を当てるだけ】って』
「ん? まぁ言ったけど……」
………………ん? んんっ? んんんっ? えっ? 待って? ちょっと待って? もしかしてさ……
「その……お前の今の自爆も、お前自身に対する攻撃に含まれる……ってことになるのか?」
『……はい。闘いには実力だけじゃなく、その場での運も伴い、それによって勝敗が左右されることも意外と結構あります。だから今の自爆も私の言葉も、その場で起きたイレギュラーな事態次第で勝敗がつくことがあるんです』
「えっと……つまり?」
『そう……この闘いでは、自爆も私が受けてはいけない攻撃の一つとなり、私はそれを実際に受けてしまった……よってこの闘いは白哉さん、貴方の強い運でこの私に勝ったのです‼︎ おめでとうございます‼︎』
「………………えぇっ……」
なんだよそれ……釈然としない白星を獲得したんだが……優子の夢の世界でのリオレウスもどきとの闘いといい、柘榴さんとの模擬戦といい、俺がサシで闘う時っていつも納得のいかない結果になるんだけど……さすがにこれも転生者の権限、とかじゃないよな……? それはないと言ってくれ……
次回、魔王シャドウミストレスの秘密が明らかに……?