偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語 作:名無しのモンスター
今回はとあるキャラをまたフライング登場させました。それが誰なのかは、とある回を見た人ならわかるよね……?
『───て。───きて。───起きて。ねぇ、起きてったら』
う、うぅん……? だ、誰だ? 誰かが俺の事を呼びかけてるような、そうでもないような感じが……でもめっちゃ長く寝てるってことは感覚で覚えてるから身体が動かねェ……
というか、なんで俺はすぐに動けないって状態になるくらいに寝てたんだ? 確か俺は昨日、みんなと一緒に小倉さんを異世界から助けようとして……
『あっそっか。君とその仲間達が結構苦労した後だったんだね。それはお疲れ様。でもこっちは時間がないから、どうにかお話させてくれないかな?』
あっ、そっちは何か用事がある感じなのか? うーん、見知らぬ声だけどここは起きるべきなのか? なんか罠かもしれないが……
『罠とは失礼だね。こっちは普通に君とお話したいだけなのに』
……ん? んんんっ? なんかこの声、どっかで聴いたことあるような……にしては現実では聴いたことがないって感じがするのだが……
『とりあえず一旦起きて───』
「ああっ⁉︎ オイテメェッ‼︎ 白哉に何するつもりだッ‼︎ ってかなんでお前がこんなところにいるんだよッ⁉︎」
ファッ⁉︎ 今の声ってフードの人か⁉︎ 突然の久しぶりに聞こえてくれた声にビックリして起き上がったよ俺……まぁ、起きたといっても夢の中でだけどな。
で。起きてみたところ、そこにはフードで顔が隠れていながらも、口元で怒っているところを分かりやすく見せているフードの人と……
ん? あれ? この人、メタ子が見せてくれた桃の記憶の世界にいた黒い服装の人だよな……? 魔法少女かもしれないけど、エルフの耳してるからまぞくかもしれない人、だよな? 名前は、確か……
『あっ起きた? はじめまして、ぼくはスイカ。【誰何】と書いて【すいか】って読むんだよ』
あっそっか。この人すいかって名前だったな。彼女の説明からして『誰だよ』の『誰』に『何だよ』の『何』でそういう呼び方するんだな……
「いやもっと他にいい漢字あっただろ。そうはならんやろ」
『なっとるやろがい‼︎ ってね』
あっすいません、そういうのは心の中で言うべきでしたね。でもノリが良いわけでして……誰何さんありがとうございます。
というか。俺が起きてからなんだからいつからそうなのかは知らんけど、早くも気になってること言っていいかな?
なんかフードの人がずっと誰何さんの事を睨んでいるように見えるんだが。何故だか歯軋りしてるから絶対そうだよな。そしてさらに怒っているのが分かるんだが。
「なぁアンタ、なんで誰何さんの事を睨んでいるんだ? 彼女がアンタに何かしたか?」
「……俺がここにいる間は、俺しかお前の夢の中に出れないはずなんだ。それなのにこいつは、俺がこの世界にいたのに容易く出れた……そりゃ警戒するしかねェだろ」
あっそうなんだ。フードの人がいる間に白龍様達召喚獣が来ないのはそういう謎設定があるからか……いやよく分からんわ。
『あぁ、ぼくって警戒されているみたいだね。彼とも仲良くしたかったけど、まぁそんな能力みたいなのがあって警戒されているのなら仕方ないかな』
なんかすいません。俺もフードの人がそんな設定? 虫除けみたいな能力を使ってる? みたいなことしてるっての初耳なんで、気にしない方がいいと思いますよ? っていうか気にしたら負けというかなんというか……
いやそんなことよりも。
「その桜さんと何か面識がある誰何さんが、俺に一体何か用でしょうか? それと時間があればどうやって夢の世界に来れたのかを教えてほしいですね」
『あっそうだった、いっけない。面白そうだから目的を忘れて君達二人と何気ない会話して終わるところだった』
オイ。それだと何しに来たんだって話になるわ。まぁ、まだその会話を始める前みたいだから別にいいけど。
『それじゃあ単刀直入に言うね───
いつか勝負しようよ。ぼくと君達で、どっちの理想が多摩町を良くするのに相応しいのかを……ね』
「………………………………はい?」
えっ? この人は一体何を言ってるんだ? 自分の理想か俺達の理想、どっちが多摩町を良くするのに相応しいか? は? 何それ? 競走? それとも合戦? この人は一体何を目指してるんだ?
「え……っと。もしかして、貴方もこの町を良くしようと?」
『そう‼︎ まぁ……とはいっても、さすがに桜ちゃんや君達とは考えていることが違うけどね』
そ、そうなのか……まぁ桃の記憶の世界でも、桜さんが誰何さんに向かって『今回は共闘』とか言っていたし、彼女とはきっとより良いまちづくりに対する意見の食い違いとかで争っているのだろうし、それは仕方ないかもな。
「……で、なんで白哉に対して勝負しようって言うんだよ? 考えていることが違っても、目的は一緒なはずだろ? だったら一度協力した方がいいんじゃないのか?」
『ぼくとしてはそれは嬉しいんだけど……それじゃあダメ。それだと意見の食い違いによる言い争いで、お互いにまちづくりに貢献できる時間が長引いちゃう可能性があるし……そして何より、
そうか? そうかも……確かに考えている事が相手と合わなかったら、口論になる可能性があるよな。それを危惧するとまちづくりに支障が出るけど、なんだかなぁ……
ってか、さっき『面白くない』って言わなかったかこの人? 協力することが面白くないって何? 意見の食い違いがあるのはともかく、その事で話し合うことが面白くないというのは、ちょっとどうかとは思うのだが?
『だってね? 君達のところには──あいたっ⁉︎』
誰何さんが俺達に協力しようとしないのかの理由を言おうとしたところで、何故か頭を叩かれたかのような反応を見せてきた。えっ何事?
『えっ嘘? もしかして外の方で白哉を起こそうとしてる子がいるの? せっかくのいいところだったってのに……』
せっかくのいいところだったってのにって何? 一体何をするつもりだったのですか貴方は?
『まぁ、仕方ないか。なら最後に一言だけ言わせてもらおうかな』
長話はできないと思ったのか、誰何さんは溜息をついてから再び俺の方に視線を向け、口に人差し指を当ててウインクしてきた。あっ色仕掛けは間に合ってます。既にお互いに心を決めた幼馴染を恋人に持っているので───
『ぼくがなんでこんな事を言ったのかを知りたかったら、桃ちゃんにぼくの事を聞いておいてね♪』
……? どうしてそこで桃の名前を? 貴方、一体何者───
♢
【───ター。───スター。マスター、起きるメェ〜。さすがに寝過ぎだメェ〜】
ジリリリリリリリリリ
ファッ⁉︎ 目覚まし時計うるせェッ‼︎ さては俺の耳元ゼロ距離に置いて大ボリュームで鳴らしたなッ⁉︎ 起きれた事に文句はないけど鼓膜が破れたらどうすんだこのヤロー‼︎
……ん? 今、目覚まし時計が示している時間は何時だ? えっと、七時五十分ね。そんなに寝てたのか俺………………って。
「ヤベェじゃん寝坊してるじゃんッ‼︎」
【マスター、人生初の寝坊だメェ〜。まぁ徹夜で小倉さんをみんなで助けに行ってたから無理もないメェ〜な】
人生初の寝坊⁉︎ 確かに寝坊したの初めてな気がする‼︎ でもこんな初めては体験したくねェよ‼︎ 遅刻するっての‼︎ まずい、朝飯食いたいけど食ってる場合じゃねェ‼︎ 早く着替えて出る準備しないと……‼︎
【はい、これ。寝坊するだろうなと思って、手軽に走りながらでも食べられるようにとサンドイッチを作っておいたメェ〜。シャミ子ちゃんも遅刻してる感じだったし、一緒に食べておくメェ〜】
おぉ、前もってこうなることを予想してのサンドイッチか‼︎ しかも優子の分まで作ってある‼︎ これは彼女にとっても助かる処置やん‼︎
「ありがとうなメェール君‼︎ あっそうだ、出る前に一つお願い事していいか?」
【どうしたメェ〜?】
「ついさっき夢の中で誰何さんって人に何故か会ったんだ。彼女、考えていることが読めないほど謎すぎるから色々と調べてくれないか?」
【考えていることが読めないほど謎すぎる、かメェ〜? ……分かったメェ〜、調べておくメェ〜ね】
あれ? 『どうして桃の記憶の世界の人に夢の中で出会ったんだ』みたいな質問はしないのか? ぶっちゃけくると思ったけど、俺だってなんでそうなったのか分からないし……
ま、聞いてたら俺が遅刻するかもしれないと思ってのことだろうし、それなら仕方ないか。帰って聞かれたら答えられる範囲で答えてやるとするか。それじゃあイテキマース‼︎
んで、外に出れば優子とバッタリ出会うというね。
「おはよう優子、お互い寝坊したようだな」
「あっ……お、おはようございます……」
ん? 何やらちょっと浮かない様子だな。とりあえずサンドイッチ食べながらの移動で何かあったのかを聞くとするか。ちなみに彼女はやはり朝飯食べずに起きてすぐ着替えてすぐ出たところらしい。ありがとうメェール君、優子の分も作ってくれて。
「どうした? まるで昨日観たアニメの考察で伏線が気になりすぎている人みたいな顔して」
「なんか例え方が限定的すぎません……?」
それほどまでにお前が心配されるような顔してるってことだよ。で、何があったのか教えてみ? ん?
「えっと……実はおかーさんに、ここ十年くらいの間にお隣に住んでいた人を覚えているのかと聞いてみたんです。そしたら何故かおかーさんはその人の事を思い出せないみたいな様子を見せていたもので……」
「え……?」
思い出せない……? あの記憶力がかなり良さそうな清子さんが? 優子の過去とか昔の多摩町とかに結構詳しい感じのあの人が思い出せない記憶ってあるのか……?
「その時おかーさんは年のせいなのかど忘れしたとか言ってましたけど、なんだかモヤっとして……」
「……確かに、よく聞けばおかしいと思うところはあるな。長年ばんだ荘に住んでたらしいじゃないか? なのに隣人との記憶が思い出せないなんて……しかも十年くらい前と言ってもど忘れする程ではないとは思うぞ? うっすらぐらいなら覚えているはずだが……」
「うーん……個人差というものなのでしょうか?」
個人差か……それもあり得るだろうな。俺が十年前でもうっすらと記憶してるだろと言ったのは、あくまで個人の意見だし。単に清子さんが記憶の容量に入れたままにできなかったって可能性もあるだろうな。
……だからといって、まぞくと魔法少女の関係性よりも重要であろう身近にいる人間との記憶が曖昧になるってことはないはずなのだが……うぅむ、謎すぎてこっちもモヤっとするぜ。
って、優子? 原因が分からないからって携帯で調べても意味ないと思うぞ? 清子さんの場合は特殊すぎるだろうから。というかなんでスマホじゃなくてガラケーの方で? スマホ忘れ……てないな、カバンの中に入ってたのがチラッと見えたから。
「歩きケータイまぞく」
「にょわっ⁉︎」
「うおっビックリしたっ」
なんだ桃か、どっから現れた⁉︎ おはよう。
「ちゃんと前も後ろも見て歩いて。急な通り魔法少女がいるかもしれないんだから」
「きさまのことだ‼︎ 尻尾を折り畳むな‼︎」
「まぁ確かに車とか来たら危ないよな、俺も気をつけるよ」
ただ一ついいか? 通り魔法少女って言い方は通り魔みたいな殺人鬼扱いしてるような感じがして嫌だからやめてくれない?
「あ、ごめんね白哉くん」
は? なんで謝ってくるんだよ。突然すぎてビックリしたわ。
「シャミ子の尻尾、猫の耳みたいな質感だからつい畳みたくなっちゃって……」
「……あぁ、そゆこと。俺、無自覚にお前の事を睨んでたんだな。悪い……いや待て。お前、俺が優子の何もかもを独占すると思ってたのか?」
「うん」
即答してきたのですぐさまに脛を蹴ろうとしたら避けられた。優子はとっくの前から自覚してるからともかく、俺の事までもヤンデレ扱いするんじゃねェよ。そこまで独占するわけねェだろ、優子に近づく男絶対殺すマンじゃあるまいし。
「むむぅ……私の尻尾を折り畳んでいいのは白哉さんだけですからね‼︎ 勝手に突然折り畳んでくるのはやめていただきたい‼︎」
「いや折り畳まねェからな?」
何の注意喚起してんのこの子は。桃に尻尾折り畳まれるの嫌ってたのに俺はいい、みたいなことを言わないでくれるか? なんかそれ聞くとお前の事をマゾだと思っちまいそうだから……
「ちょっと貴方達‼︎ 遅刻するわよ‼︎ キリキリ歩きなさい‼︎」
「ダラダラしてると結構早く時間が過ぎるよ‼︎ 止まるな止まるな‼︎」
「ミカンさんに拓海く……ミカンさんその自転車何⁉︎」
偶然出会ったミカンと拓海。拓海がミカンのカバンも持ってることには不思議に思わないが、何故かミカンが前チャイルドシートタイプの子供乗せ自転車を押している。えっどゆこと?
「ま、まさかお前ら……いつの間にそこまでヤったのかっ⁉︎ 魔法少女は子供を超早熟で───」
「ウエェッ⁉︎ ち、違うわよっ⁉︎ 二人でウガルルを保育園に送ってきただけよっ‼︎ デキたとしても色々とあり得ないでしょっ⁉︎」
あっそうなんだ。ウガルルを保育園に送るために子供乗せ自転車を買ったのか。ビックリしたぁ、魔法少女の身体の仕組みが一般と大きく異なるからあっち方面かとてっきり───
「や、殺った……⁉︎ 俺達人を殺してないぞっ⁉︎ 何故そんなこと言うんだっ⁉︎」
「「「「えっ?」」」」
「えっ?」
お前はどっちの意味で捉えてたんだ。いくらなんでもその捉え方は物騒じゃないか? まぁ、俺の言い方がよくなかったってのもあるけどさ。
「冗談はさておき……ウガルルを保育園に入れることにしたんだな。生まれてからの年月がまだ短いから妥当だろうけど」
「えぇ、パパとママからちゃんと育てろって言われたからね。あの子も興味津々だったみたいだし」
いやちょっと待って? それってミカンの親御さんからもウガルルの母親認識されてるってことになるんじゃね? なんか変な事考えているんじゃね? 未成年妊娠とかそういう……いや、そんなわけないよな。すいません。
「で、なんで拓海は不貞腐れてるんだ?」
「……陽夏木さんが、ウガルルちゃんを保育園に通わせることにしたのを今日まで教えてくれなかったからだよ」
あ、あぁ……(察し)
「そ、それは……貴方もウガルルを送ることになったら変な誤解を生むと思ったからよ……それに、迷惑かなって……」
「変な誤解? なんだいそれは? あとウガルルちゃん絡みで迷惑だと思ったことは一度もないからね? 一言声を掛ければ手伝ってあげるから」
いやそれ、お前の鈍感と親バカのダブルコンボのせいで、頼むにも頼めないんじゃないからのか? なんでミカンに遠慮されてるのか、自分の行動を思い返しながらその意味を調べてから出直せや。
っていっけね、そろそろ学校に向かわんとホントに遅刻するかもしんない。歩を進め直すとするか。
通学路を歩んでいけば、河川敷でリリスさんが子供達からゴミを買おうとしていたり、白澤さんがオシャレして動物園で知り合ったメスのバクと散歩しているところに鉢合わせしたりとしていた(園の方からの許可は頂いているらしい)。
「………………はー……なんだか……久しぶりに日常に帰って来た気がします……‼︎ 頑張って良かった……」
「ゴミを買ってる人がいたりバク二匹が町ん中歩いたりするのは日常とは言わなくね?」
どっちかというと平和な非日常というべきだろコレ。いや、非日常ってだけで平和じゃないのでは? トラブルとかないのは平和だけど……ヤベェ、頭がこんがらがってきた。この現実世界での常識がバグってきたわ。
「まー……でも確かに、なんだか短い間に色々あったわね。もうしばらく異次元とか勘弁してほしいわ。私達だって魔力と子供持ちなだけで年頃の高校生だもの───」
「拓海は魔力じゃなくて霊力だぞ。似てるものだけど。後、子供持ちはお前だけじゃい」
「ウッ……」
あっこれ余計なこと言っちゃった系? 図星を刺されて顔背けちゃってるし。一応事実を言ったまでだけど、ダメだったか。なんかごめんな?
「ま、まあまあ。俺達が普段は普通の学生なのは確かだからさ、今は青春を謳歌しようじゃないか」
まぁ、それも一理あるか。魔力なんて戦闘の時しかあまり使わないし、戦闘になる場面なんて日常ではほぼ絶対ないわけだし。そう考えれば普段の俺達は普通の高校生やわな。当たり前の事を忘れるところだったぜ───
「あの泥棒バク‼︎」
ファッ⁉︎
「埋め……たらマスターに嫌われるからやらんけど‼︎ コンプラの範囲内で邪魔せんと気〜すまん‼︎」
「コンプラの敷地に刃物は入れんのよ‼︎」
……え? アレってリコさん? なんか長細い包丁持って走ってない? 抑えてる朱紅玉さんに動じてなくない? しかも泥棒バクって、もしやさっき白澤さんと散歩してたバクの事? 彼女を追いかけてるの? えぇ……(焦)
「フハハハハハァッ‼︎ おはよう諸君‼︎ ただいま我々兄妹は暴走列車ならぬ暴走妖狐のリコ殿と追いかけっこをしているところだ‼︎ 諸君らも青春を送れる時は迷わず青春するといい‼︎」
「いやこれは青春じゃないからね⁉︎ 追いかけっこでもないからね⁉︎ 追いかけっこだとしても血みどろな感じで楽しいと言ってる場合じゃないヤツだからね⁉︎ 寧ろこれドロッドロで胸糞悪そうな昼ドラな感じだからね⁉︎ ちょっと通報してリコさん止めて⁉︎ 後兄さんも楽しんでる場合じゃないよ‼︎」
あっ。そんな彼女を菅原兄妹が追いかけてってる。しかもほっといたらヤバい感じなのに、ブラムさんそれを結構楽しんでない? もしやアレも小説のネタにするつもりですか?
……平和な日常って、何だっけな……(悟り)
※この騒動は桃が手短かに穏便に処理しました。ステッキ持ちながら『説得する』という物理交渉しそうで矛盾してそうな雰囲気が出ていましたが、ああ見えて穏便に処理しているのであしからず。
♢
学校に着いてしばらくして休憩時間。優子が何やら杏里に聞きたいことがある感じだから、今は声を掛けない方がいいな。というか、用も話したい話題もないのに声を掛けるのもどうかと思うって話だけどな。
うーん……暇だ。いくら自分の部屋にいないからって暇になることってあるぅ? 優子と一緒の時はそんな事は思ってないんだけど、だからって暇だと思ってしまうんか? それってそうなる程に、俺は優子に依存してるってことか? 共依存症はヤバくね? ヤバいカップルになるわこれ。
あぁダメだ、暇になると退屈になって一時的な植物状態になりそうだ。困ったもんだ……
「オッス白哉、随分とつまらないと思ってそうな顔してんな」
「んっ? ……あぁ、勝弥か」
なんか俺の表情が良くなさそうな感じらしく、それに反応したのか勝弥が俺のところに寄ってきた。まだ何年生か分からない一人の男子高校生を連れて。
勝弥と一緒に来たその男は、メッシュみたいなちょっと長めの一束以外の前髪を上にまとめて額を出していて、左側には髪留めを付けている。腰元まで伸びている後ろ髪をまとめており、襟足も出している。
あと糸目だ。この男の目は糸目をしておる。糸目って大体裏切りをするキャラがなるとかの偏見的意見があるらしいけど、俺個人そうとは限らないと思うんだよなぁ……顔芸しまくるデュエリストの方が裏切りのキャラで印象深いわけだし、糸目だけど裏切らない円卓の騎士だっているんだし。
まぁ糸目の話は置いといて。彼はウチのクラスメイト……ではないよな。もし彼がクラスメイトなら、あの個性的な髪で記憶に焼き付けてたと思うし。
「……その人、誰だ?」
「ん? ワシか? ワシは青銅阿音じゃ。阿音と呼んでおくれ」
へぇ、この人は阿音っていう名前の人か。っていうか一人称が『ワシ』で老人みたいな喋り方してるなこの人。のじゃロリならぬのじゃショタってか? ……ブフッ(笑)
「阿音は一年C組、秀のクラスメイトで同じ体育祭委員なんだ」
あっ、秀のクラスメイトなのか。で、委員会も彼と同じで……いや待てよ? 俺が手伝いに行った時は見かけなかったような……? 見かけてたら特徴的な顔立ちで記憶されてるはず……
「ワシはお主やシャドウミストレス……今の吉田優子じゃな、お主らが手伝いに来た時ワシは買い出しに行っておったのじゃ。準備するための素材がなかったようじゃからのぉ。戻って来た時には何やら事件(?)みたいなものが起きてしばらくしてからじゃから、その間とその日の夜にお主らが何をしておったのかちんぷんかんぷんじゃったわい」
「あぁ、そうなのか……どおりで目立ちそうな感じなのに見当たらないわけだ」
「……? 何故ワシが目立つと思っとったのじゃ?」
「あっヤベッ」
多分これ地雷踏んだわ。この人『それどういう意味』って言ってるような感じを出してる気がする。でも髪の色と糸目とのじゃ口調で目立たないわけないだろ。お前、普通の人とは違うって自覚ないの? 特に喋り方で。
「……こいつがこんな喋り方なのは、こいつのお爺さんの喋り方の独特さに興味を持ったからなんだってさ。で、真似したら自然とこんな喋り方になったってワケ」
「これ広瀬、ワシの事はワシ自身の口から話させんか」
「あぁ悪い、つい俺の口から言っちまった」
へぇ。祖父譲りというか、祖父を勝手に真似してなった口調なのか。こいつ、実はお爺ちゃんっ子だったりして? 祖父の真似事してたらそりゃそんな口調になるし、お爺ちゃんっ子だと思われるわ。初対面だからまだ俺しかお爺ちゃんっ子扱いしてないと思うけど。
「……で、二人して俺に何か用なのか?」
「俺というよりも、阿音の方が用があるって感じだな。俺はお前のとこまで案内しただけであって。まぁ俺にも関係ある用事なんだけどな」
阿音が俺に用がある? どういうことだ?
「ワシがいない間にお主らは色々と頑張っていたようじゃからの、どうにか労えんもんかと考えておったんじゃ。それで他の体育祭委員のもの達と相談した結果……こうすることにしたんじゃ」
あぁ、彼が言ってるのはミカンの呪い暴走事件とウガルル召喚時の事だな。まぁ色々と苦労したけど、円満で終わったからもう気にしてねェよ俺達。
と考えていたら、『ホイッ』と阿音が何やらスマホの画面を見せてきた。何々……? 何かのホームページか? えぇっと、『スイーツラウンジ 桜ヶ丘店』?
「ワシら体育祭委員会の何人かでの、打ち上げ的なもの……お疲れ交流会をやることにしたのじゃ。そこでお主にシャドウミストレス、千代田に陽夏木、それと仙寿に……事件に関わってないのにあの日の夜に手伝いをしてくれたという平賀も誘うことにしたのじゃ」
はえーっ、打ち上げかー。そいつは楽しそうだな。前世ではご時世だったこともあって、学生時代は打ち合げなんてやったことなかったんだよなー。しかもウガルル召喚に付き合ってくれた全蔵も誘うことにしたのか。そいつは楽しみだ。
ちなみにだが、全蔵は小倉さんが手伝ってくれる時に流れで手伝うことになったってだけで、自分から進んでやってるわけではないと思う。多分。
「それと、佐田がもう一人誘うことにしとるらしいのじゃ。何やら別件でそのものに迷惑をかけたらしくての」
「もう一人? 迷惑かけた? ………………あぁ」
「む? 心当たりあるのかの?」
「まぁ……うん。多分、あの人のことかもしれねェな」
杏里の奴が迷惑をかけたという、最近学校関係者じゃない人というのが誰なのか、ちょいと最近まで振り返ったら納得しちまったぜ。まぁ当の本人は気にしてないみたいだけどな……
「で、白哉は行くか? お疲れ交流会。打ち上げ場所ではケーキ食べ放題だけど───」
「行く。ケーキめっちゃ食いたい」(キリッ)
俺ケーキ大好き。ショートケーキとかチョコケーキとかタルトとか。参加しないでいつその店に行くってんだよふざけんな。
「け、結構食いついておるな……」
♢
お疲れ交流会当日、スイーツラウンジ桜ヶ丘店。
『お疲れ様でーす‼︎』
そこでは俺をはじめ、優子・桃・ミカン・拓海のいつものメンツに杏里・勝弥の仲良し元気ハツラツなクラスメイト、秀・友香里・誠司のオリ男三人衆と、南野・落合・永山のモブかと思ったら原作ネームドキャラだった女の子達、それと阿音に同じ体育祭委員女子の鶴牧……といった体育祭委員会のメンバーが集まっていた。
いや、よく考えたら俺と優子は保健委員じゃねェか。それと拓海は美化委員だった。なんか当たり前みたいに混ざらせてもらったから、委員会も同じだと思い込んじまった。イカンイカン、己の所属を忘れるな俺。
あ、そうそう。同じく一緒にいる全蔵は広報委員だということは分かってるよ。誘われた時に阿音が同じ委員会じゃないのにとか言ってくれたから、改めてそういう認識でいたんだよ。
……んで。
「……なんか、僕も混じることになったけど、いいの? 僕、学生でもなんでもないんだけど」
何故自分がここにいるのかも分からないという柘榴さんも一緒にいるわけで。彼は高校生どころか桜ヶ丘高等学校の職員ですらないし、ウガルル召喚の時にもいなかった。だからこの場に無関係な人とも言える自分がいるのはどうかと思っているだろうな。
「優子と杏里からもらった焼肉屋の割引のチケット、あれを無料券だと勘違いして渡されたじゃないですか。杏里がその事でお詫びしたいと言ってましたし、みんな了承の上でこの場にいさせてもらっているんですよ」
「……別にあの時は、気にしてなんかないのに……」
「まぁまぁ。相手側がそうしたいと言ってますし、素直に楽しんでいきましょうよ」
「……うん、そうだね」
部外者だから行かなくてもよかったじゃんとか、別に気にしてないとか、そんな感じで乗り気じゃなかったらしい。なので今みたいに宥めたら納得してくれた感じだ。でもそうなるの早すぎません? その方がいいですけど。
「うちら女子は全員C組だから中々こういう機会無くてね〜。来てくれてよかった‼︎ 合コン始めまーす」
「合コンではないだろ」
「もーゆかりんったら固いんだからー‼︎」
「ゆかりん言うな」
うーん……友香里の奴固いぞって女子に言われてるけど、ケーキ美味そうに食ってるし、他の人とシェアし合ったりしてなんやかんやで楽しんでるみたいだな。それならよかった。
……ゆかりん(笑)
にしても……なんだろうな。異世界に関するものとかないし、魔力に関係するものもないし、異形もない。これは……普通の青春だ、マジもんの普通の青春だ……‼︎ 真の平和って感じが良すぎて逆に違和感が……常識が歪んでヤバくなってるよ俺。気をつけよ。
「おっち、助けてもらってから桃ちゃん推しだもんねー‼︎」
「助けたっけ……?」
「うん、ミカンちゃんのあれで」
「あ、そっか」
………………ん? 今、落合と南野が桃の機密情報を聞こうとしてない? ちょっと、取りたいもん全部取ってはよ席に戻って聞く耳立ててェ……‼︎
「おい待てミカン、人のプレートに大量のレモン入れようとすな」
「あっごめんなさい、つい……」
この柑橘教もなんとか抑えないといけないし、激ムズな盤面かこれ……?
ケーキバイキング、行きたいなぁ……