偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語   作:名無しのモンスター

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パロとキャラクロスの同時併行だよってことで初投稿です。


特別編 パロ回だったりクロスオーバーだったり……でも大抵本編と繋がったりするから閲覧必須だよ
えっ? 性癖をぶちまける様になる催眠術? 日常会話が出来なくなって思ったよりも厄介じゃねェか


 

 桃の過去の記憶の世界にて、彼女と誰何の対決を見届けてから一週間が経った。

 

 この前お互い強くなろうと誓い合った俺と優子は今、○回目のデートからばんだ荘へ帰っているところだ。喫茶店に行ったり映画を観たり、ゲーセンで太○の達人やクレーンゲームなどで色々遊んだりしたぜ。結構楽しかった……

 

 ん? 『強くなろうと誓い合った後に行ったのが何故デートなんだ』だって? 『なんで今の今までデートしてるところを出さなかったんだ』だって? なんか一気に二つも質問がどっかから飛んできた気がするんだが……まぁみんな気になってるだろうし、言うタイミングがあれだけど説明するか。

 

 まず、『強くなろうと誓い合った後に行ったのが何故デートなんだ』って話からだな。

 

 確かにあの時お互い強くなろうとは言ったけど、とりあえずはお互いの心境とか信頼感とか、そういう人間関係は大丈夫なのかを確認しないと、それらの行き違いがあった時に強くなる方法を見つけても意味がなくなるからな。だからまずは当たり前の人間関係からよく見ないとってことだ。

 

 次、『なんで今の今までデートしてるところを出さなかったんだ』って話だな。

 

 ………………いや、ぶっちゃけ何の話だ? 俺は優子と○回もデートしていたぞ? しかも毎回……いや、ほぼ毎回か。そのデートの終わりにはばんだ荘に帰宅orラブホテルで○○○して一日を終えるから、結構みんなの印象に残ってるはずだが……最後のは印象に残らないでほしかったけど。

 

 ※作者の執筆する気力が偏っていた上に執筆するタイミングが分からなかったため、今の今まで二人どころか桃と柘榴がデートしているところを執筆しませんでした。しかも今回も終わりのところからしか書いておりません。誠に申し訳ございません。 By.作者

 

 

「……? あの、白哉さん? 突然難しい表情になってどうしたんですか? 何か問題事でもありましたか?」

 

「えっ? あぁ悪い、ただの勘違いだよ。心配させてごめんな」

 

 

 いけないいけない、誰に対してしてるのか分からない説明をしてるせいなのか、無意識に優子に心配されるような表情をしてしまってたようだ。気をつけよ。

 

 けど、なんで本当に見知らぬ遠くの奴に質問されてない事に答えてんだ俺? 前にもそんな感じのをやってたようなそうでもないような……おっといけない、こういう考え事でも変な顔しそうだからもう考えないようにしておこう。また余計な心配されそうだからな。

 

 

「……で、だ。優子? そ、その……今日も、そんな気分……か?」

 

 

 大体分かりきっている事ではあるけど、念のための確認としてデート終わりの事について優子にそう問いかけてみた。すると優子は一瞬驚いた表情を見せてきたが、すぐに俺の言った事を理解したのか、目をハートにして惚悦とした表情を見せてきた。あ、これは……

 

 

「フフフッ……そんな気分なのかどうかなんて、白哉さんはもう分かりきってるじゃないですか……♡」

 

「あ、あぁ……そ、そうだな。そうだったよな……」

 

 

 やっぱりねー。また搾り取られるわ俺。魔力を持てるようになったおかげだからか、そう簡単に萎えるわけなく同人誌みたいな感じに何度でも出来るとはいえ、体力の方は別に無限じゃないんだよ俺ァよォ……

 

 ハァ……やっぱり今日もクラック特製の精力剤に頼るしかねェか。アレ結構体力もめっちゃ付けられる優れものだから、使用する度に毎回滅茶苦茶助かってんだよなァ……何を素材にしたらあんなものができるんだよ……

 

 ってなことを考えながら、優子に腕を抱きつかれたままばんた荘へと続く帰路を歩いていると。

 

 

「シャミ子‼︎ 白哉‼︎」

 

 

 突然、叫ぶように俺達の事を呼び掛ける者が。この元気のある感じの声は……杏里か?

 

 

「ハァ……ハァ……た、大変だよ二人とも‼︎」

 

「落ち着け杏里、息が切れてるぞ」

 

「杏里ちゃん、そんなに慌ててどうかしたんですか?」

 

 

 息を切らしながらこっちに走って来たってことは、何か一大事な事でも起きたのか? 一体何があったとでも───

 

 

 

「全裸の男に何か一つ着せるとしたら、ワイシャツ派⁉︎ 腰巻きタオル派⁉︎」

 

「帰れ」

 

 

 

 いやなんだよそれ。ホントなんだよそれ。必死になる程に走って俺達のところまで来たと思ったら、なんでそんな事を聞くんだよ。馬鹿馬鹿しい内容じゃねェか。

 

 

「お前……突然俺達のところまで来て何男性に対する性癖を人に聞いてくるんだよ。しかも限定的な感じだし。それも俺達みたいなカップルに対してとか、嫉妬による嫌がらせか?」

 

「ち、違うんだって‼︎ 私は真剣に、男の裸体を彩る唯一の宝石とは何かと……裸ワイシャツか風呂上がり腰巻きタオルか、軽率に選べない……‼︎」

 

「帰れ‼︎ 寝ろ‼︎」

 

 

 真剣に何どうでもいい事を伝えて来たんだよお前はァッ‼︎ ……けどなんでだろう、性癖について突然暴露してくる奴が男性だったらまだマシだったと思えたのは、俺の気のせいなのか?

 

 

「え、えっと……わ、私は裸ワイシャツがいいかなと……ほ、ほら? ワイシャツの中にチラつかせる屈強な全裸が結構唆るというか、男性の色気を本格的に引き立たせてくれるというか……」

 

「お前は何まともに受け止めてんだよッ⁉︎ 頭淫魔だからかッ⁉︎」

 

「あ、頭淫魔……」

 

 

 あ、ヤベッ。思わず優子に対する暴言を吐いちまった……いくら夢魔で俺の精○をたくさん搾り取ってるとはいえ、普段の彼女は純潔方面寄りなんだ。頭淫魔とか特殊な悪口なんて言っちゃアカン───

 

 

「頭、淫魔……エヘヘッ……」

 

 

 前言撤回。優子の奴、頭淫魔と言われて何故か照れてやがる。褒めてねェよ、純潔さの残ってるお前を貶しちまったんだよ。察しろや。

 

 

「話は聞かせてもらったよ」

 

「……というか、偶々全部」

 

「‼︎ 桃‼︎ 柘榴さん‼︎」

 

 

 救いの手を差し伸べてくれているかのように、どうやら俺達と同じく出掛けていたらしい桃と柘榴さんに偶々遭遇できた。しかも二人とも先程からの俺達の話を聞いてくれたというね。やったぜ。

 

 

「話を全部聞いていたのなら丁度良いぜ‼︎ 優子と杏里をなんとかして───」

 

「柘榴の隣で言うのは気が引けるけど……私は風呂上がり腰巻きタオルがいいと思う。全裸の上に敢えて下をカッコ良く隠すというが、その……結構セクシー、というか……」

 

「いや誰が性癖に答えろと言ったァッ⁉︎」

 

 

 前言撤回二回目。桃ならこのヘンテコな状況をなんとかしてくれると思っていた俺がバカだった。なんとかならなかったじゃねェか。寧ろ自分の性癖を暴露しちまってるよ。全然ダメじゃねェか。

 

 

「……白哉君。これは何かの隠喩(メタファー)じゃないのかな?」

 

 

 huh?(猫ミーム風)

 

 

「……杏里ちゃんは、裸ワイシャツかタオル……どちらかを介して、何かを伝えたいんだと思う」

 

「いや性癖ワードで介されましても⁉︎」

 

 

 仮に隠喩する必要があったとしても、もうちょっとまともなワードがあっただろうが⁉︎ 杏里は何故自分の性癖を隠喩にしようと⁉︎

 

 

「裸ワイシャツー‼︎」

 

「黙ってろやぁッ‼︎」

 

 

 そしてこいつはこいつで何まだ自分の性癖引っ張り出してんだよ⁉︎ 今日のこいつ、様子がおかしいにも程があるだろ⁉︎ 何か罰ゲームでも受けてこうなったのか⁉︎ 仮にそうだとしてもデートを最後の最後に台無しにさせんなよ⁉︎

 

 

「あぁもう……明日以降なら聞いてやるから、ホントお前今すぐ帰───」

 

だ……誰かーッ‼︎

 

 

 ッ⁉︎ い、今のは……悲鳴か⁉︎ しかも複数人もの声、どれも聞いたことがあるし、一斉に叫んでいるはずなのに誰がどの声を出してるのかって分かる……‼︎ 我ながら怖っ。

 

 

「この声は……にゃがちゃん⁉︎ それにおっちちゃんやしゅしゅー君の声も……‼︎」

 

 

 ん? しゅしゅーって誰だ? ……あぁ、秀の事か。秀の声が聞こえたから理解したわ。ってか、アイツ優子からあだ名で呼ばれるようになったのか……みんなからもそう呼ばれていたからか?

 

 いや、そんな事考えてる場合じゃなかったな。急いであの声がするところへ向かわないと。

 

 

「すぐに向かうぞ‼︎ 我が名は召喚師・白哉───‼︎ 白龍様、召喚‼︎」

 

 

 急いで召喚師覚醒フォームになり、それによって等身大になれる白龍様を召喚した。……等身大の白龍様、久しぶりに見た気がする。

 

 

【状況は大体分かったぜ 現場へレッツゴーだ】

 

「はい‼︎ みんな乗れ‼︎」

 

 

 俺達が会話してるのを覗いて聞いてたらしい白龍様。すぐさまに前屈みになって俺達を乗せる態勢を取ってくれた。順応が早いなこの龍。

 

 さてと……待ってろよ秀達、何が起きてるのかは知らんが必ず助けてやるからな‼︎

 

 

「あっそうだった、杏里はそこで待っててくれ。戦いになった時に巻き込みかねないから」

 

「じょ、上半身の上にタオル……」

 

「まだ性癖言っとんのか‼︎」

 

 

 この時、俺達はまだ知らなかった。杏里が性癖を言いまくっている事が、とある事件に関わってくるということに……

 

 

 

 

 

 

 ビルや街灯などの明かりによって暗き夜を照らしている、多摩町のとある街道。そのとある一本道にて、何かから必死に逃げているかのように全速力で走っている者達が。

 

 勝弥・秀ことしゅしゅー・友香里ことゆかりん・誠司ことくすくす・阿音ことせいーん・南野ことみなみ・落合ことおっち・永山ことにゃが・鶴牧ことつるちゃんの、体育祭実行委員会のメンバーである。

 

 彼等は体育祭が終わってからも、実際に休日などで待ち合わせしたりSNSで連絡を取り合ったりと、交流を続けているのだ。『魔のものファンクラブ』なるSNSグループも作る程に、だ。

 

 しかし、この日は厄日だろうか。彼等はカラオケを満喫したその帰りにて、目を疑うような光景を目の当たりにし……現在に至るのだ。

 

 

「ねぇ何あれ⁉︎ 何なのあれ⁉︎ カラオケ店を出る前に変な眩しさが起きたと思ったら、町の人達の様子が……‼︎」

 

「知らねェよ⁉︎ 俺もお前達もあんなの分かるわけないの分かってるだろ⁉︎」

 

「だ、だよね⁉︎ 出ようとしたら突然だったしね⁉︎」

 

 

 お互いがお互いを疑っているというわけではないが、誰かが何かしらの目的のために謎の光を外で発生させたのではないか……現状が分からないからこそ、思わずその可能性を孕ませてしまうようだ。無論意味はなかったが。

 

 

「いいから早く逃げようよ⁉︎ 急いでこの事を警察に連絡を……」

 

「いや、それじゃダメだ‼︎ 誰でもいい、魔力とか何やらを持ってるあいつらの誰かに伝えるべきだ‼︎」

 

 

 みなみが通報を促そうとするも、ゆかりn……友香里がそれを制止し、代わりに白哉などの戦闘経験のある者達に伝えるべきだと訴える。

 

 

「お前達もガラス式のドアから見ただろう⁉︎ 困惑してる町の人達を見ながら佇んでいたあの男を‼︎」

 

 

 謎の光が発生した時の状況を振り返るように、友香里はその時の事を彼等にも思い出させるように語る。

 

 

「あいつの耳、明らかに尖っていた……‼︎ きっと何かしらの魔族に違いない‼︎ それに、見えたあいつの表情……‼︎」

 

 

 彼の脳裏に即座に繰り返し再生されるように浮かぶ、一人の男性の姿。はっきりと覚えているのは顔のみだったが、それでも尖った耳がある程印象が強かった模様。そして……周囲を嘲笑うかのように浮かべている、不適な笑み。

 

 

「さすがに一般な俺でも分かる‼︎ あの表情は……かなりヤバい奴のする顔だ‼︎」

 

 

 その男性の表情から、友香里は本能で感じたのだ。あの男は危険だ、絡まれば只ならぬ目に遭ってしまう、と。

 

 だからこそ、友全員で彼から逃げなければならない。逃げねば最悪死ぬだろう、そんな不吉な予感を抱え込みながら。

 

 

「だから、今は奴から離れ───」

 

「‼︎ みんなストップだ‼︎」

 

 

 勝弥の突然の叫びにより、全員が思わず足を止める。ふと前方を見れば、そこにあるのは……ビルの裏にある道に置かれてある、コンクリートの巨大な壁だけだった。

 

 

「そ、そんな……⁉︎」

 

「ど、どうしよう……行き止まりだよぉ……」

 

「こ、こんな時にあの男の人が来たら……」

 

 

 この場にいる全員が動揺し、混乱に陥いる。あの男性が追いかけて来ていないことを信じて、一度途中の道のりまで引き返すべきか。或いは……

 

 

「ふっふっふ、夜遊びとは悪い子達だね」

 

『‼︎』

 

 

 この場を打開する方法を考える余地など無く、絶望へと導かれるかのように、男性の声が後ろから聞こえてくる。

 

 

「だがそんな我欲に素直な悪い子達が私は好きだ」

 

 

 カッ……カッ……という靴の音を鳴らしながら、彼等の元へと確かに歩み寄ってくる人影が。暗闇に隠れているせいかその姿は見えづらくなってはいるものの、水晶らしきものが付いている杖を右手に持っているところははっきりとしていた。

 

 刹那。その杖を人影が掲げた途端、水晶玉が浅紅色に光り始める。

 

 

「さぁ、もっと素直にしてあげよう……‼︎」

 

「ッ⁉︎ さっきの光だ……‼︎」

 

 

 これはなんとか避けなければ。一同がそう悟り後退りするも、ここは狭い路地。目の前には光を放とうとする人影。おまけに背後にはコンクリートの壁……逃げ道などない事を理解するのに充分な条件下だった。

 

 遂に光は太い光線となり、勝弥達に目掛けて放たれた……その瞬間。

 

 

「バリアの杖ーッ‼︎」

 

『⁉︎』

 

 

 魔族で勝弥達の親友・シャミ子ことシャドウミストレス優子が、危機管理フォームの姿で何故か上空から舞い降りて来た。

 

 しかも着地する前に、RPGゲームに出てきそうな形状の杖に変形させたなんとかの杖から丸状の透明な壁を生み出して纏い、その身で受けることで光線を防いだのだ。

 

 格好いい守り方だが、この後着地した途端に『ぎゃふんっ』と可愛げな声を上げながら尻餅をついてしまった。ドジだ。だがそれが彼女である。

 

 

『シャミ子‼︎』

 

「何っ……魔法だと⁉︎ しかも悪魔みたいな角に尻尾……我が一族とは違う種族の魔族か⁉︎」

 

「おーい‼︎ お前らー‼︎」

 

 

 人影がシャミ子……自分とは違う種族の魔族の登場に驚きを隠せずにいる中、もう一人上空から舞い降りて来た者が。召喚師覚醒フォームとなって展開したセイクリッド・ランスを持った、もう一人の親友でシャミ子の恋人・白哉である。

 

 

「びゃ、白哉君‼︎ 来てくれたんだね‼︎」

 

「おう、みんな無事か?」

 

「俺達は大丈夫だけど、シャミ子ちゃんが変な光に当たっちゃってねぇ〜……」

 

 

 勝弥達の無事を確認したところ、しゅしゅーがシャミ子の身の安全を心配するかのような言葉を溢した。魔法と彼女の思考によってバリアを身に纏ったとはいえ、正体不明の光線をモロに喰らったのだ。身の安全を心配するのも無理はない。

 

 

「そ、そうだった……‼︎ 優子、大丈夫か⁉︎」

 

 

 無論、白哉もシャミ子の事を心配していないわけではない。勝弥達を見かけた途端に彼女が突然、乗せてくれた白龍から飛び降りたのだ。突然の行動である上に光線を受けてしまっていれば、身体に異常が起きてないかどうか……そんな不安が過っていたようだ。

 

 目視だけでの判断とはいえ、シャミ子は今のところ何も問題はないようだ。何事も無く尻餅から起き上がり、背伸びをしたのだから。敵となるだろう者の目の前でとはいえ。

 

 そしてシャミ子は白哉達が自分の事を心配している事に気づいたのか、彼等の方へと振り向き、親指をグッと立てながら……

 

 

「はい、大丈夫です───

 

 

 

 白哉さんに何の前触れもなくいきなりおっぱいを揉まれると、かなり敏感になって色々と興奮しますので‼︎」

 

 

 

『なんて?』

 

 

 何故かドヤ顔で突然のマゾ気質な発言をするシャミ子。それに対して白哉達は思わず呆けた反応をせざるを得なかった。当たり前である。

 

 

「ッ⁉︎」

 

 

 本人はそれを語ってすぐに、自分は今何を言っていたんだと言うかのように顔を真っ赤にし、思わず口を両手で抑える。いや自分の口から言っておいて何今更恥ずかしがってんだ。

 

 

「いきなり何を言い出すんだお前はッ⁉︎ しかも何俺との夜迦に関する事を口にしたんだッ⁉︎ 俺がめっちゃ恥ずかしいからそんな事言うのやめてくれよッ⁉︎」

 

「ホントだよッ⁉︎ なんで今白哉君におっぱい揉まれたくなるのッ⁉︎ あっ、でも今は夜だからそうなるのも分からなくもないか……」

 

「ち、違うんですッ‼︎ 『揉んでもらいたい』というよりは『勝手に揉まれたい』んですッ‼︎」

 

「いや違いがあんまり分かんねェよッ⁉︎」

 

 

 白哉達が何故この場面で性癖を暴露するのだと指摘したところ、シャミ子は何やら代弁しようとしたようだが、かえって先程の性癖の補足をする羽目になった。色々とおかしいと思う。

 

 

「ふっふっふ……君も既に我が術中」

 

「何っ⁉︎」

 

「だ、誰だッ⁉︎」

 

 

 シャミ子が何故か動揺を隠せずにいる中、白哉が怒号を上げたのと同時に人影の姿を覆う暗闇が晴れ、その全貌が明らかとなった。

 

 赤いネクタイとチェック柄のある黄色いスーツ姿をしており、七:三に分かれた金色の髪と尖った耳と牙の見える初老な顔立ちの男性……耳の形と見える牙からして、人間ではないことは確かだろう。

 

 

「私は魔族の一人・吸血鬼Y談おじさん」

 

『吸血鬼Y談おじさん⁉︎』

 

 

 魔族、それもブラムと同じ吸血鬼だと明かす男性。実際にブラムと同じ一族であるかどうかは不明だが、口から見える尖った細い牙の形からすれば、吸血鬼である可能性は高いだろう。

 

 

「えっなんだその名前というか名称はッ⁉︎ 何かしらの罰ゲームでそう言わないといけないとかそんなものなのかッ⁉︎ 誰だそんな名称付けた奴はッ⁉︎」

 

「私だが?」

 

「お前が自分でそう付けたのかよッ⁉︎」

 

 

 しかも『吸血鬼Y談おじさん』という名称、それは本人が自分からそう付けたものであるらしい。何を思ってそのような虐めに近そうな名称を自分で付けたのか、謎にも程がある。

 

 

「い、いや名前の方は今気にする場合じゃないか……お前!! 優子に何をしたんだ!!」

 

「おやおや、彼女の身に何があったのかが気になるのかい? いいだろう、初めから教えるつもりでいたのだからね」

 

 

 我に返って怒りの矛先を向ける白哉に対し、男性もといY談おじさんは不敵な笑みを浮かべる。そして杖を見せるようにゆっくりと突き出し、語り始める。

 

 

「先程私が彼女に当てたのはY談波といってね、私のこの催眠術にかかった者はY談しか話せなくなるのだよ」

 

『………………は?』

 

 

 一同、思わず思考停止(フリーズ)状態となってしまう。Y談しか話せなくなるとかどんな催眠術なのだと、そんな考えが頭から離れなくなってしまったようだ。

 

 ちなみにY談とは猥談のことで、性に関する淫らな話・下ネタな言葉のことを指す。その催眠術となる光を、バリアを貼ったとはいえシャミ子は直接受けてしまった。よって彼女は自分の意志に関係なく、話したい事の代わりに己の性癖を暴露するようにしまったようだ。

 

 

「言っておくが、私は世界征服だとか何かしらの野望を持って動いているわけではないよ。性癖をぶちまけて慌てる人間を見るのが私の趣味でね……‼︎」

 

「めっちゃどうしようもないな」

 

 

 催眠術を使えたのなら、もう少し強い野望とか持てないのか。友香里はそのような想いでY談おじさんを蔑んだ目で見つめる。

 

 

「きさまー‼︎ 私は白哉さんに唐突な感じでおっぱいを淫らに触られて発情したいんですよ‼︎」(訳:きさまー‼︎ 私の隠したかった性癖を暴露させるとかプライバシーの侵害ですよ‼︎)

 

「こっちは恋人におっぱいを揉まれたいマゾまぞくだし」

 

 

 つるちゃんは意図しないダジャレを呟きながら、Y談おじさんへの文句をY談に変えられたシャミ子を見て思わず苦笑する。マゾの魔族、マゾまぞく……ンフフフッwwwwww

 

 

「ハッ⁉︎ 服の下からおっぱいとアソコをチラつかせて、今夜はOKだよと誘うアピールをしていくのもいいのでは……⁉︎」(訳:ハッ⁉︎ もしやその魔法に掛かった人に呪いを与えて、身体に異常を起こしたり死なせたりさせる気では……⁉︎)

 

「なんか新しい性癖まで暴露し始めてるぞ───」

 

「身体にそんな影響など与えるわけないさ」

 

「……ん?」

 

「私の催眠術は、ただ単に真面目な会話すらも持ちうる限りの下ネタ語彙を尽くしたY談語に変える……ただそれだけのものだ。呪いなどを付け加えたら、性癖を聞き尽くしたくても出来なくなるからね」

 

 

 シャミ子のY談に変えられた会話に対する、Y談おじさんによる実際の会話としては成り立たない返答。それに対して白哉は疑念を感じ、同時に謎の嫉妬心を持つようになる。

 

 シャミ子がY談を発しているのに、何故この男は今のY談とは関係のない言葉を投げかけたのだろうか。まさかとは思うが……白哉は恐る恐るY談おじさんに問いかける。

 

 

「………………えっと……分かるのか? 優子が実際に言おうとしていたことが?」

 

「その通りだよ少年。この催眠術の使い手である私だからこそ、Y談を話してる者の言葉を解読することができるのだ」

 

「羨ましいような、そうでもないような……」

 

 

 話せる言葉を制限されている者の言葉を解読できる。その特技を羨ましく感じた白哉だったが、Y談を解読するということに対して複雑な思いも持つようになった。Y談だから、ねェ……?

 

 

「……っていうかさ? 人の言語を制限させるだけの能力ってなんだよ? それで武闘派な奴相手の動きを封じたりできるって思ってんのか?」

 

「無論、思ってないさ」

 

 

 なら何故、せめて敵の動きを一時的に封じる能力ぐらいは追加しないのだろうか。白哉はそんな事を考えながら冷たい視線をY談おじさんに送っていると……

 

 

「ので逃げる」

 

「あっ⁉︎ この野郎待ちやがれー‼︎」

 

 

 隙をついて颯爽と逃げ出すY談おじさん。突発的な行動に思わず判断が遅れた白哉は叫ぶだけしか出来なかった。その間にY談おじさんがビルの裏道を抜けて右角を曲がろうとした、その時だった。

 

 

「見つけた‼︎ この男がさっきの騒動の原因だね⁉︎」

 

「……逃がさない」

 

 

 ダークネスピーチ姿の桃と戦闘スタイル姿の柘榴が、白哉とシャミ子がこの場に来る前に既に降りて調査をしていたところ、先程の白哉の叫び声でも聞こえたのかこちらへと来たようだ。

 

 

「‼︎ 桃‼︎ 柘榴さん‼︎」

 

 

 当然、今この場に来た桃と柘榴はY談おじさんの催眠術を全く把握していない。そのためシャミ子がY談おじさんの放つ催眠術を警戒するよう叫ぶが……

 

 

「白哉さんにピーチクを触られたいです‼︎」(訳:その人のビームに触れないでください‼︎)

 

「えっ急に何?」

 

 

 案の定、その催眠術のせいでY談しか話せずにいた。そして桃をその発言で動揺させてしまう。本来ならこのまま切迫する場面になるというのに、突然性癖を暴露してきたという解釈になったのだ。桃のこの反応は当たり前である。

 

 

「桃‼︎ 柘榴さん‼︎ そいつから離れ───」

 

 

 その隙を見逃さなかったのか、白哉が代わりに二人に呼びかける前に、Y談おじさんがY談波を桃に向けて放とうとした。

 

 

「……‼︎ 桃、危ない‼︎」

 

「キャッ⁉︎」

 

 

 しかし、それに気づいた柘榴が桃を横に押し飛ばし、Y談波が彼女に当たることを防ぎ代わりに自らが受けることに。

 

 

「⁉︎ ざ、柘榴、大丈夫⁉︎」

 

 

 光線には当たらずよろける程度で済まされた桃。その場で踏みとどまり柘榴に呼びかける。

 

 

「……ウゥッ……ちんちん。ちちんちんちん?」(訳:……ウゥッ……大丈夫。桃の方はどう?)

 

「ざ、柘榴⁉︎」

 

 

 当然、柘榴の話す内容も強制的に変換されてしまった。だがシャミ子とは異なり、ただ単に普通レベルとなる単語の下ネタを連呼する程度だった。とはいえ、直接その言葉で話しかけられたので桃は思わず顔を真っ赤にしたが。

 

 

「……⁉︎ ……⁉︎」

 

「どうしたの⁉︎ 急に男子小学生みたいになって⁉︎」

 

「わはははははは」

 

 

 自分の話したい内容が強制的に変わった事に動揺する柘榴。桃もそんな彼に困惑する中、Y談おじさんはその隙を見計らい、二人を避けながら颯爽と逃げ去っていった。

 

 

「……ち………………ちんちーん‼︎」(訳:……あっ………………待てー‼︎)

 

「柘榴ォォォォォォッ⁉︎」

 

 

 必死の制止もただの子供の無邪気な叫びと化してしまった。哀れ。

 

 

 

 

 

 

 まさかこんな事になるとは思わなかった……別に命に関わる事ではないが、あのY談おじさんとやらのせいで被害者の人生を狂わしかねない羽目になるなんてな……

 

 

「今のは吸血鬼Y談おじさんの催眠術だよ‼︎ かかるとY談しか話せなくなるんだ」

 

「えっ。何その可笑し……恐ろしい能力は」

 

「クッ……‼︎ 実はV字な形のビキニにも興味を持っちゃってました……」(訳:クッ……‼︎ 隙を狙ってまんまと逃げられてしまいました……)

 

「それでシャミ子は歩く性癖拡散機になったわけだね」

 

「……ちんちちん……」(訳:……恥ずかしい……)

 

「柘榴に至ってはY談語彙無さすぎて鳴き声と化している……どうしよう、可愛い」

 

 

 現在、桃はおっちにY談おじさんの催眠術について教えてもらい、シャミ子の特殊っぽい性癖と柘榴さんの語彙力の無いY談を聞いているところだ。

 

 なんかY談おじさんの催眠術が『可笑しな能力』と言いかけてたり、今の柘榴さんに対するギャップを良く思うようなことを呟いたりしてるけど……あれでも内心困ってるよな。仲の良い人達が大変な目に遭っているんだし、困らない方がおかしい。

 

 というか……柘榴さんって二十代なのにY談の語彙力が無さすぎるとか、どんだけピュアッピュアなんだよ。逆に凄すぎるわ。

 

 

「ともかく今はあの頭のおかしい吸血鬼を探すぞ。こうしてる間にもさらに被害が増えていってしまうはずだ」

 

「そうだね。早く退治しないと多摩市が下ネタワンダーランドになっちゃう」

 

「い、急ぎましょう‼︎ 裸エプロンも着たい‼︎」

 

 

 また優子が性癖を……どうにかして普通の言葉を話せたとしても、無理矢理性癖を暴露させるのかアイツの催眠術って……マジで迷惑でしかねェよ。会話に支障をきたすから。

 

 ってか裸エプロンも着たいって……優子、お前って奴は……

 

 

「でもその前にちょっとシャミ子の性癖を録音しても「パ○○リ最高ッ‼︎」あぶなっ」

 

 

 マントから盗聴器を出してきやがったよこの桃色魔法少女。そんな彼女に優子が怒りの勢いに任せてマッハパンチを仕掛け、桃には当たらずとも盗聴器の方は標準良く一発K.O.させた。

 

 優子、正しく強いパンチを打ち付けられるようになったのか。成長したな……(ホロリ)。ただ、普通なら規制音が掛けられてもおかしくない性癖ワードを出してきたのはアレだったぞ。お前が言いたいわけではないとはいえ。

 

 ま、そんな事はどうでもいいさ。それよりも。

 

 

「白龍様。勝弥達を守るためにも、申し訳ありませんが彼等の側にいてやってください。その巨体ならY談おじさんの催眠術からみんなを守れますので……」

 

【任せときんしゃい ってなわけでいってらー】

 

 

 この人こういう時でもノリが軽いな。もうちょっと緊迫感というものをな……いやでも、周囲の緊張を解せるって点を考えればこれもまともか。

 

 というわけで、勝弥達の身の安全の確保を白龍様に任せたところで、俺達は町の中からY談おじさんがいないかどうか探し回ることに。

 

 

「向こうが結構騒がしいね……」

 

「あぁ、どうやら早くも被害が出てしまったみたいだ」

 

 

 ビルの裏道を出れば、もう既に騒動の声が聞こえてきており、市民達が被害に遭っているようだ。あの野郎が俺達から逃げてからまあまあ時間が経つんだ。それに一回の催眠術だけでも範囲が広いらしいし、大人数が被害に遭うのも無理はない───

 

 

「タイトスカートよりパンツスーツの尻の方がエロい」

 

「待て、スカートの魅力は」

 

「ああっ分かる、スーツ最高……」

 

「リクスーとか最高‼︎」

 

 

 ………………………………ん? アレ?

 

 

「なんか……Y談だけで会話が結構成り立ってる気がするんだが」

 

「う、うん……一見楽しそうだね」

 

「絶頂大歓迎⁉︎」(訳:楽しんでる場合ですか⁉︎)

 

 

 あ、これは顔を見るだけで分かる。安心してる場合じゃない、優子のムカーッとしている表情ではっきりとそう伝えようとしているのかが分かったわ。楽しんでる場合じゃないよな、あれでも市民の人達はみんな普通の会話が出来なくて困ってることだし……

 

 ん? あそこに見えるのは……

 

 

「拓海‼︎ 蓮子‼︎」

 

「平地さん‼︎ 丁度良いところに‼︎」

 

 

 拓海とその式神・蓮子が、コンビニ『ゴーソン』の隣で佇んでいた。いや、拓海の方は佇んでないな。狩衣を着たまま両手と膝をついて『オワタ\(^o^)/orz』って言ってるような絶望を表すポーズをしているし……

 

 まさか、拓海の奴……ね?

 

 

「えっと……拓海の奴、絶対何かあったよな? 大体予想つくけど」

 

「あ、はい。そうなんです。何かを咥えている人を見ていると愛おしく思います……あっ」

 

「うん。蓮子、お前もやられたんだな」

 

 

 大方予想がついたけど、どうやら二人とも催眠術を喰らってしまったようだな。んで、拓海が性癖を口にしてしまって現在に至るってわけか。

 

 というか蓮子、お前中々の性癖を持ってるんだな。なにかを咥えている人が好きだとか、なんだかなぁ……

 

 

「これは……拓海のプライバシー云々を守るためにも、今は喋らせない方がいいかもしんないな。Y談おじさんの居場所を突き止めたいけど」

 

「でも、あの男の行方が分からないことには……」

 

 

 それもそうだけど。早く見つけないと被害が大きくなるばかりだけど。だからといって、拓海に性癖を暴露させながら教えてもらうってのは酷な話じゃないか? さすがに拓海が可哀想───

 

 ん? なんか拓海がそのままの態勢で指差したぞ? あの方角は……ばんだ荘のある方角じゃ?

 

 

「ばんだ荘……に……響く喘ぎ声、は……色気と可愛さが混ざり合ってたから、良かったと思う……」

 

「「「ッ⁉︎」」」

 

 

 思わず顔が火照っているかのような感覚を覚えてしまった。

 

 今の言葉からして、偶々防音結界を貼り忘れた日のあの時間に、優子とのあの行為を聞かれてしまったのかと感じたから……ほら、優子が我慢出来ずに襲ってきて搾られた日も何回あって、その内の何日かは結界貼られる前に……って感じだったから。

 

 んで、それを察したかのように目を見開いた優子はともかく、まさかの桃も顔を真っ赤にさせていた。これは……アレだな、柘榴さんの事を想って○○ニーした時を聞かれたと思ってるのだろうな。その可能性の方が充分高い。

 

 つまりアレだ。拓海がY談おじさんの早急な退治に協力するために、羞恥心に耐えながら同時に発した性癖は、かえって俺達までも辱めたってわけだ。解せぬ……

 

 

「………………ばんだ荘方面に行ったんだね……じゃあ拓海くん、私達と一緒に来てもらうよ」

 

「ッ⁉︎」

 

「大勢で行った方が、Y談おじさんを見つけた時に早めに倒せるから……」(怒)

 

「白哉さんに求められた時の方が興奮しますしね……‼︎」(訳:性癖を暴露して恥をかいてるのはお互い様ですしね……‼︎)

 

「連行すな」

 

 

 喘ぎ声を聞かれた腹いせなのか、優子と桃が拓海に同行を強制してきた。まぁ、アレは盗み聞きしていいものではないから、怒られるのも無理はないけどさ……

 

 

 

 

 

 

 結局拓海は優子達に連行されました。人の夜の営みや自慰を聞くことは罪みたいなものだからな、仕方ないよね。ってかよく考えたら、それらを聞いた日っていつ? そして何故聞けた? 分からねェ……

 

 そんな事を考えていたら、いつの間にかばんだ荘に到着していた。ここにY談おじさんが訪れて無ければいいのだが……ん? 一階のドア前にミカンがいるな? しかも魔法少女の姿で。戦闘服を着てるってことは……

 

 

「ミカン‼︎ 黄色いスーツを着た中年っぽい男性を見なかった⁉︎」

 

「あっ、も……ウッ………………………………‼︎」

 

「うん、やられたんだね」

 

 

 案の定でした。さすが敵が目の前に出てない時に魔法少女になるなんて機会、そんなにないもんな。あるとしたら特訓の時だけど、ばんだ荘で特訓なんかできるとは到底思えないし……

 

 

「けど今は緊急事態なんだ‼︎ 教えて、彼は今どこに行ったの⁉︎」

 

「うっあぁ……」

 

「どうしたの⁉︎ 早く‼︎ 町の人達のためだよ‼︎」

 

 

 いや確かに早々に退治しないといけないけど、焦らせるのはよくないんじゃないのか? ミカンにだって心の準備とか色々あるのだし……

 

 

「あっちの方……では……私は、リード……されたい派です……‼︎」

 

「なるほど、つまりミカンは受けの方がいいってことだね」

 

「いじめんなァァァァァァッ‼︎」

 

 

 ただ単にミカンの性癖を聞きたいだけじゃねェかァァァッ‼︎ 妙に急かしてるなと思ったら、それが狙いだったのかこの桃色魔法少女がァッ‼︎

 

 

「強気にグイグイ攻めてきて、バシッと決めてくれる人が好き……」(訳:急にばんだ荘に入ってきて、ピカッとやって逃げてったのよ……)

 

「なるほど。分からないけどなんか分かった」

 

 

 どっちだよ。

 

 というか……今のミカンの発言からして、もう既に奴はここに来てみんなに催眠術を当てやがったのか。んでミカンが魔法少女の姿なのは、その光に気づいて変身したけど間に合わなかったからなのか。

 

 ってことは……

 

 

「男はデカくてナンボやろ」

 

「おデブ体型を気にしてる殿方は厭らしいですわ‼︎」

 

「腰のくびれのラインが重要だよ」

 

 

 ワー大惨事。『あすら』のメンバーがもう奴から催眠術を受けちゃってるやんけ。白澤さんまで……南無三。

 

 ってことはリコさんも……?

 

 

「マスターが痛い目に遭っとる場面を、ウチ自身に置き換えると興奮するんよ……」

 

「リコさんって意外とドM気質でもあるのか?」

 

 

 まさかの酷いことされてる人を自分と置き換えるという性癖をお持ちという。どんなSMな性癖なんだよ。一応、自分がサディスト行為をしていた事を少しは理解してるみたいだけどな……

 

 

「ハッ⁉︎ ここまでいくとウガルルも催眠術を受けて、とんでもない性癖を暴露してしまっているんじゃ⁉︎ ミカンも受けてるってことは、あいつも……」

 

「い、いやウガルルちゃんなら性知識に乏しいと思うから、彼女ならそんなに支障は出ないかと───」

 

「綺麗じゃなイ臭いヲ近くでクンカクンカと嗅いでいルト、身体ガ熱くなってしまウ……」

 

「ウガルルちゃァァァァァァんッ⁉︎」

 

 

 いつの間にか俺達のところに来ていたウガルル、実はまさかの臭いフェチだという。まぁ犬みたいな獣の耳とデカい手があるから、臭いに関する何かしらの特徴はあるかとは思うけどさ……

 

 

「ピンチな状況になっても絶対に諦めない意志を見せる人の表情は、かなり燃えるしすごく唆る……」

 

「良⁉︎ 童貞を殺すセーターからおっぱいを出すという性癖を流行らせたいです⁉︎」(訳:良⁉︎ 無理に喋らないでください性癖が出るから⁉︎)

 

「姉妹揃って特殊性癖を暴露し合ってることになってるぞ」

 

 

 っていうか……小学生なりの普通のじゃない性癖を暴露されると、それはそれで虚しいんだが……やめてくれ良子ちゃん、君が落魄れる可能性が増えてほしくないんだ……

 

 

「ヌーディストビーチの色んなところで性行為してる奴は、開放感が凄すぎて賞賛できる……」

 

「全裸関連は大体予想出来てたけど、これは予想外だった……」

 

 

 案の定、リリスさんも催眠術を喰らってしまった上、ヌーディストビーチとかいう珍しそうなワードを出しながらの性癖暴露とか……ある意味リリスさんの性癖のレベルも高いな。

 

 ちなみにですが、本来のヌーディストビーチは如何わしい事を許さない法律があるので、そこに行けば十八禁みたいなことができるとは思わないでください。

 

 

「私は()()()()()()ですが特に()()()()()()()()()()()()

 

「清子さん⁉︎」

 

 

 オイィィィィィィッ⁉ 清子さんのに至っては何故か何処からか規制音がかけられてるんだけどォッ⁉ 逆に何言ってるのか全然分からねェんですけどォッ!? 逆にめっちゃ気になるんですが⁉

 

 

「伏字になるほどのY談なんて、さすが夢魔である大まぞくの奥さん。他の人達とは大違いだね」

 

「比較しなくて結構です‼︎ 白哉さんに厭らしいことされたい‼︎」

 

「……ちんちん」

 

 

 桃から賞賛を受け、頭を掻きながら照れる様子を見せる清子さん……いや、今のは褒められることじゃないですよ?

 

 

「とにかく、あの男は近くにいるんだ。調教されるシチュエーションの中で優しくされるとかなりムラムラする………………ッ⁉」

 

「「ファッ!?」」

 

 

 うっそだろお前!? 一瞬の内に催眠術を当てられたっていうのか⁉ しかもお前のも結構特殊だなオイ!? ……ヤバい、この瞬間だけでツッコミ過多になりそう。

 

 

「あっ……ウッ……こ、これはっ……そのっ……」

 

 ポンッ

「………………」ニコッ

 

「……‼︎」パァッ

 

「………………なんだこれ」

 

 

 いやどんな意思疎通してんだお前ら。優子、お前は何『これでお前も我々と同志だ』みたいな感じの笑顔を向けてるねん。桃はその事で喜ぶな。喜んでる場合じゃねェんだぞ。

 

 

「いや、そんな事を悠長に気にしてる場合じゃねェか。奴はすぐ近くにいるだろうし、みんな迎撃体制に───」

 

 

 ん? 今一瞬、何かが俺の視界……リコさんの背後から現れたような気がするのだが……

 

 って、奇妙な杖の水晶がチラリと見えたァッ⁉︎ そして釣られるように黄色いスーツも見えたァッ⁉︎ あの野郎、長身を活かしてリコさんの背後に隠れてたのか⁉︎ ヤバい、技を出そうにもこれは間に合わな───

 

 

「隙あり、Y談波‼︎」

 

『白哉(さん)(くん)ッ‼︎』

 

「う、うわああああああっ⁉︎」

 

 

 まずい、逃げる事すら……

 

 

【──────‼︎】

 

 

 と思った矢先、何かが俺を庇うように飛び出し、実質的な盾となって今の光を遮った。このちっちゃくて可愛いフォルムの白黒動物は……

 

 

「クラック‼︎ お前、俺を庇ってくれたのか……⁉︎」

 

 

 実験大好き召喚獣・クラックが、俺を催眠術の魔の手から救ってくれたようだ。お前、命懸けで俺を助けてくれたんだな。助かったよ、ありが───

 

 

【ピー、ピー、ピー、ピー、ピー、ピー、ピー、ピー】

 

「ってクラックゥゥゥゥゥゥッ⁉︎」

 

 

 アレを受けて何事もなかった……なんてことになることはなく。人間の言葉を話さずいつも無口なクラックが、鳴き声代わりに規制音を発するようになってしまった。ウッソだろオイ、人間の言葉を話せない奴は全部規制音になるのかよ……

 

 ……もう、ブチギレた。絶対ボコボコにしてやる……‼︎

 

 

「お前、いい加減に──って逃げ足早っ⁉︎」

 

 

 いつの間にか、あの男は俺達の視界で一瞬豆粒として見える程の遠い距離まで颯爽と走り去っていっていた。あいつ、あんなにも足が早かったのか⁉︎

 

 

「桃、今からでもフレッシュピーチセカンドフォームになって追いつけるか⁉︎ あいつのあのスピードだと俺が自分に身体能力を身につけても追いつけねェんだ、お前のあのフォームによるスピードだけが頼り……って、なんだそんな渋い顔して」

 

 

 桃にフレッシュピーチセカンドフォームになるように頼み込んでみたら、彼女は何か言いたげな様子を見せてきた。い、一体何が言いたいんだ? ま、まぁなんとなく予想はついているけどさ……

 

 と思ったら、桃はバッテン印を作るように腕を交差させた。これは、もしや……

 

 

「あのスピードと今いる距離的に追いつけない……っていうジェスチャーか?」

 

「………………」コクッ

 

 

 あ、うん。そうなんだな。さすがのフレッシュピーチセカンドフォームでも追いつけない速さで走ってるのかあの男……いや、ローラーや魔法云々無しでフレッシュピーチセカンドフォームよりも速く走れるとか、一体どんな奴なんだよ……

 

 

「クソッ……桃のスピードでも追いつけないとなると、一体どうすればいいのだろうか………………ん?」

 

 

 いや待てよ? もしかすると、あいつの考えている事……というかアイデア次第で、まだなんとかなるんじゃないのか? 追いついたりその後の事とかもなんとかなるんじゃないのか?

 

 

「よし……やらないよりはどうにかなるはずだ‼︎ みんな、早速アイツのところへ行って一緒に作戦を立てるぞ‼︎」

 

「……ちん?」

 

 

 疑問に感じているかのように『ちん?』って言う柘榴さん、思ったよりも可愛いな。桃が可愛いって言うのも分かるぜ。

 

 

 

 

 

 

 その頃、多摩川公園のある街路。向こう側の多摩町中の市民達がY談で騒ぎ立てている中、Y談おじさんは悠々と走り続けていた。

 

 

「あっはははは、すっかり大混乱で愉快愉快。この騒ぎに乗じて食事(きゅうけつ)というのも一興だな……」

 

 

 吸血鬼としての習性を忘れてはおらず、隙を狙って市民の血を吸うことも狙っているようだ。悪趣味と同時に吸血とはタチが悪いものである。彼にとっては悪趣味の方を本命としてはいるが……

 

 

「おっとそこまでだよ、人の性癖大好きな吸血鬼さん」

 

「‼︎」

 

 

 突如、Y談おじさんの前に立ち塞がる者が。眼鏡を掛けた黒い長髪に、ドレスっぽい真っ黒な衣装の少女……

 

 

「今宵、貴方の計画を攻略するために平地くんからお呼ばれしました……Y談おじさんキラーの小倉しおん、見参‼︎」

 

「何故ジョ○ョ三部のポーズを取ってるんだお前は」

 

 

 みんな(?)のマッドサイエンティスト・小倉しおんである。それも何故か左手をポケットに突っ込んでカッコよく指差してる仁王立ちのポーズをしながらの登場である。カッコいいと思ってしているのかそのポーズは。

 

 

「Y談おじさんキラー……なるほど、私を退治するために来たってわけか。だが残念ながら、私はここでやられるわけにはいかない。性癖をぶちまけて、それどころじゃなくなるがいい‼︎」

 

 

 当てればどうって事ない。Y談おじさんはそんな過信を持って、小倉に向けてY談波を放つ。しかし不思議な事だ。性癖を暴露せざるを得ない口になってしまったはずなのに、何故小倉は平然としていられるのだろうか……

 

 

「残念。私にはその催眠術を防ぐ勾玉を首に掛けてるからね、これがある限りは半径二百メートルから離れて放たれた催眠術だろうと受けないのだぁ‼︎ えっへんっ‼︎」

 

「何っ⁉︎ バ、バカなっ……そんなものを携えているとは……」

 

 

 Y談波が全く効かない、こんな事は初めてだ。予想だにしない出来事に遭遇したためか、Y談おじさんは堂々と普通の言葉を話す小倉にたじろいでしまった。

 

 

「しかも小倉さんはY談波とやらを探知するGPSも作ってくれたからな、どれだけ離れてようと俺達は必ずお前を見つけ出せるってわけだ。ってなわけで……観念しな、Y談野郎‼︎」

 

 

 しかも僅かな短時間でY談波を探知できるものも制作していた模様。それを駆使してこのように先回りすることだってできる、つまりお前はもう終わりだ。白哉がそう宣告した……その時だった。

 

 

「Y談おじさん……貴方のエロスは間違っているよ。性癖(エロス)の扉は自ら開いてこそ美しいというものだから。私だったらその欲望を隠さず明かしていくから」

 

「フッ……いいだろう。君の性癖(エロス)と私の性癖(エロス)、どちらが上か勝負といこう‼︎」

 

「………………は?」

 

 

 小倉、何故かY談おじさんとの性癖談義をすることに。突然の二人の行動に白哉は思わず呆けた声を発する。何故性癖について話し合う必要があるのか、そう訴えようとしているかのように。

 

 

「君の扉もそれが開いたきっかけは外からもたらされたはずだ」

 

「選択を自らすることが重要なんだよ」

 

「では問うが真の自由意義とは果たして───」

 

 

 最初に個人の性癖を他人に無理矢理促されるように語るべきかどうかの談義から始まり……

 

 

「つまり清楚系のY談もいいが、寧ろ世慣れした子の不意をつかれた時の動揺こそが一番───」

 

「酸いも甘いも噛み分けた熟女が、(ウブ)な瞬間を見せる瞬間が確かに───」

 

「そうつまり『ヤダ‼︎ アタシったら何を口走ってるの⁉︎ これがアタシの───」

 

 

 気がつけば徐々に、お互い無意識に性癖を暴露した人の良さ云々を語るようになっていき、そして……

 

 

「「意気投合‼︎」」

 

「ア、アホーーーッ‼︎」

 

 

 いつの間にかお互いの腕を組む程の仲となり、小倉がY談おじさん側へと寝返ってしまう。それを見た白哉、焦りながらの怒号を上げる。今回の事件の要となる味方に裏切られたのだ、致し方ない。

 

 

「さぁ我々で全人類をY談の渦に巻き込むのだ‼︎ あははははは‼︎」

 

「フフフフフ……」

 

「こ、この野郎が……変人と変人で仲良くなりやがって……‼︎」

 

 

 小倉に裏切られた事に憤慨しているのか、白哉はわなわなと震えながら拳を握りしめる。今にも小倉に殴りかかりそうである。裏切りは罪なのだ。

 

 そんな中、小倉がY談おじさんに向けて謝罪の念を込めた表情を見せてきた。

 

 

「……Y談おじさん、先に謝っておくよ。ごめんねェ?」

 

「む? 何に対して謝っているのだ? 最初に敵対してたことなら私は気にしな───」

 

「そうじゃなくて。私、半分嘘ついてたんだぁ」

 

「………………?」

 

 

 何故謝るのか。半分嘘をついたとはどういう事か。その言葉の意味を理解出来ず、Y談おじさんは首を傾げた。

 

 

「性癖を不意として暴露させる事に賛成したのは事実だけど、協力することはできないんだ」

 

「……? どういう意味だ?」

 

「だって私……」

 

 

 何かを説明しかける小倉は、突然Y談おじさんの背後に指を差す。Y談おじさんは一体何事だと振り返ると……

 

 

「⁉︎」

 

「みんなのために時間稼ぎすることになってたんだから」

 

 

 気がついた時には、Y談おじさんの周囲には、シャミ子や桃を含めた、Y談おじさんの催眠術の被害に遭った者達が包囲していた。逃げられる隙間も作らせず、逃げようとしても誰かが捕えられるように。しかも全員臨戦態勢を整えており、今にも攻めてきそうだ。

 

 

「なっ……い、いつの間に⁉︎ まっまさか、私をY談に対する談義に誘ったのは……⁉︎」

 

「そ。全てはこのためにってわけ。私が長い話し合いで貴方の注意を引かせて、ちょうどいい頃合いで仲間になったフリをしてから貴方を囲むようにと指示したんだぁ……」

 

「……時間稼ぎという名目が無かったら、お前はさっきの言葉通りこいつの味方になってたのか?」

 

「うーん……状況次第?」

 

「状況次第って何だよ……」

 

 

 裏切る条件とやらがないためなのか、小倉がY談おじさん側になる事が作戦通りに見せかけで済まされた事に白哉は内心ホッとしたようだ。

 

 そんな事を考えている内に、小倉はそそくさと戦線離脱し、周囲はさらにY談おじさんを睨みつける。

 

 

「さぁ、楽しいプレイにしてあげるわ」

 

「痛くされるのもいいものだろう?」

 

【ピー‼︎ ピー‼︎ ピー‼︎ ピー‼︎】

 

 

 無論Y談おじさんはこの状況を打破する手段を備えておらず、この後の展開が大方予想できたのか大量の冷や汗を流した。

 

 

「………………お……おじさん死すとも、Y談は死せァアアアァァァーッ‼︎」

 

 

 こうしてY談おじさんは袋叩きにされ、人々の言語を限定的した上に卑猥な言葉を吐かせた罪で逮捕された。それと同時に、彼の催眠術に掛かった者の言語は元に戻った……のはよかったものの。

 

 

 

 

 

 

「シャミ子ちゃん、今日はどんな感じにおっぱい揉んでもらった?」

 

「コスプレする予定とかある?」

 

「ぬがー‼︎ もう忘れてくださいよチクショー‼︎ どいつもこいつもこれで勝ったと思うなよー‼︎」

 

 

 性癖を暴露してしまった者達は、このようにイジられたり興味津々に聞かれたり……となったようなそうでもないような、といったことが続いたとか……

 

 




おまけ:台本形式のほそく話その37

白哉「……ってなことがありました」
ブラム「なるほど、昨夜にそんな事があったのか。我は我が妹と共に朝までマイク○やってたものだから気が付かなかったぞ」
白哉「あ、朝まで義妹と一緒にゲームって……いや、別にいいんですけどね」
「そ、それよりも……ブラムさんはどうなんですか?」
ブラム「何がだ?」
白哉「Y談おじさんがブラムさんと同じ吸血鬼のまぞくであるということです」
「催眠術でみんなに無理矢理性癖を暴露させまくるという、ある種の迷惑行為をアイツはやってたんですよ? それも貴方と同じ吸血鬼のまぞくが」
「同種としてアレはどうなんですか? 吸血鬼の恥だとか、そういう感じのを考えてたり……」
ブラム「否、結構自由人だと思っておるぞ」
白哉「へっ?」
ブラム「我々は本来日光の下で動けないが故、行動するのに条件や限りというものがある。だがあの男はそれをものともせぬかのように、己の欲のままに動いた……」
「つまりだ。開放的な自由を求めていた我々にとって、あの男は吸血鬼の自由の象徴だと思っているのだ。行動は……まぁ、アレではあったが」
白哉「そ、そっすか……(他者による迷惑人の評価ってのは、意外性のあることもあるんだな……)」


話のリクエストは以下のリンクで受け付けてます。採用するかは分かりませんが、きちんと目を通しますので。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=313843&uid=379192
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