偶に愛が重くなるまぞくと、愛されてる男のまちカド物語   作:名無しのモンスター

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突然オリキャラを沸かしたくなってきたってことで初投稿です。

次回のとあるパロ回をやるのに必要なオリキャラ追加だけど、そのせいで一話分伸びた……テヘッ(*´ω`*)


唐突なオリキャラが出て、しかも桃に何やら因果がありそうです。だが宿敵ってわけではない ♦︎

 

 多魔市せいいき桜ヶ丘は、今日もぽかぽか日和であった。そんな街の河川敷を、一人の少女が静かに歩く。

 

 

「着いたァァァァァァッ‼︎ まぞくのための聖天地・多摩市に到着よー‼︎」

 

 

 前言撤回。この町に着いたばかりの時まで静かだったってだけであった。多摩市に着いた途端、ずっと期待していたからなのか歓喜の感情を表に思いっきり出し、その場でピョンピョンと飛び跳ねた。

 

 その少女は、薄い青色のゴスロリ衣装を着込んでおり、髪型は肩の少し下まで長く伸ばしているサイドテール・両側のメッシュ、ハートの形のアホ毛、側頭部に白いリボンでまとめた結構短いツインテールとなっていた。

 

 ここまで見れば髪型が少々独特な可愛らしい何処ぞの令嬢に見えるだろう。だがしかし、彼女には人間ではないと判断されるものが存在している。

 

 見えている額には菱形の青い宝玉が埋め込まれており、さらには人魚のような耳、そして長いウサ耳までもが付いている。

 

 そう、彼女は何かしらの魔族なのだ。海の架空の生物の身体の一部とウサ耳からすると、彼女は海に住んでいる兎の魔族なのだろうか。

 

 

「この町に来たからには、この二つの耳の事とかバトラーの事とかをコスプレしてるだけだとか言ったりして、もう誤魔化そうとしなくていい‼︎ もう『なんだコイツら』的な変な目で見られなくて済む‼︎ 引っ越してよかったわー‼︎ もうあの町には戻りたくなーい‼︎」

 

 

 多摩市みたいな魔族全肯定の町には住んでいなかったからなのか、さらに歓喜の感情を顕にして腕を上下にブンブンと振り回す。

 

 

「はしたないですよお嬢様。……それとお言葉ですが、我々はまだこの町に着いたばかりであって、まだそうなると決まったわけではございません。ある程度の警戒はしておくべきかと」

 

 

 そんな彼女に、隣で冷徹で無愛想な反応で指摘を入れる赤紫色の男性が。

 

 赤いラインの黒い唐装のような服装をしているその男性は、古代にありそうな赤い模様のある黒い口元装飾を付けており、その奥で眼鏡を掛けている。

 

 だが最も注目すべきところは服装や顔の装飾ではない。ピアスを付けている耳は尖っており、細くて赤い二本角が側頭部から生えている。そして骨のラインが見える程に細長くて黒い手には紅い爪を異常な程に伸ばしていた。

 

 そんな彼が見せている薄い反応に対し、少女は頬を膨らませながら男性を睨みつけ、溜息をついた。

 

 

「……ハァ。バトラー、貴方は堅すぎよ。お父様もそこは注意してたじゃないの、『少しは楽にならないと後がキツくなって仕事に支障が出るぞ』って」

 

「それは……返す言葉もございません」

 

 

 男性──バトラーは自分の性格の悪さを自覚しているためか、少女に指摘されたことで罰の悪そうな表情で謝罪の言葉を述べた。そんな彼に少女は『よろしい』と言いながら頭を撫でた。

 

 

「それにしても……これでここに来るの二回目だけど、まだ着いたばかりだというのに、この町は結構いいってのが伝わってくるわね。この河川敷からして衛生面の良さが出ているし、何より……」

 

 

 そう呟きながら少女は河川敷を見渡し、その次に河川敷の向こうから見える、一本の巨大な桜の木を見つめる。

 

 

「あの季節外れに咲いてる桜、結構美しいしね」

 

「それはそうですね」

 

 

 その言葉の通り、桜は既に咲いていた。それも満開であり、花びらも淡い光を放っているかのような美しさを感じさせていた。否。放っているかのような、ではない。実際に放っているのだ。

 

 

「しかし……今の季節は冬近くだというのに、何故桜が咲いているのでしょうか? それも光っているとは……」

 

「さぁ? まぞくと魔法少女が共存する町だとかいうし、誰かがそうさせたからじゃないの? こういうのがあってもおかしくないわよ」

 

「な、なるほど……」

 

 

 バトラーが今咲いている桜に対する疑問を呟くも、少女が常識の事を考えるなと言っているかのような指摘を入れる。曖昧な考察をしてはいるものの、魔族が当たり前のように滞在できる町だからという理由もあるからか、バトラーは納得せざるを得なかった。

 

 さてと、と言っているかのように少女は背伸びすると、フンスッと胸を張ってこの後の事についてバトラーに話し始めた。

 

 

「それよりも……せっかくこの町にまた来れたことだし、早速行くわよ。あいつのところへ」

 

「もう向かわれるのですか? 我々はこの町に久しぶりに来たのですから、まずは今のこの町の状況についての把握をしておく必要があるのではないのでしょうか?」

 

「あぁ、いいのよ別に。それは別の使用人達にやってもらって、何か変わっているところがあったら電話で伝えてもらうことにしてるから。とはいっても、あいつが護ってきている町の事だから、ヤバい変化というものは起きて来なさそうだけどね」

 

「ヤバい変化、ですか……確かにそれは無さそうですけどね……」

 

 

 少女がこれから会おうとしている人物に対する、その謎の信頼度は何なのだろうか。そんな事を考えながらも、バトラーは使用人として彼女の言う通りに動くしかないとも思っているのか、肯定せざるを得なかった。

 

 

「というわけで、思い立ったが吉日‼︎ 早速向かうわよグウゥゥゥ~………………」

 

 

 いざ行動に移そうとしたところで、大きな腹の虫の音が鳴った。しかし、それは少女の腹から鳴ったものではなく……

 

 

「……バトラー。貴方、お昼ご飯を食べてなかったの?」

 

「………………はい。お恥ずかしながら、単純に忘れておりました……」

 

 

 まさかの冷徹そうなバトラーの腹から聞こえてきたものだった。しかも時間云々を忘れてしまっていたとのこと。

 

 

「ハァ……適当に済ましといてと言っといて、使用人の食事管理を怠った二時間前のアタシがバカだったわ……」

 

 

 部下への対応を誤った自分の無責任さに、思わず額を押さえ溜息をついた少女。これは上司として見過ごすわけにはいかないと感じたのか。

 

 

「腹が減っては戦はできぬ。まずはショッピングセンターに行って食事を済ませましょ。アタシも軽いものならまだ食べられるから」

 

「お気遣い、感謝致します……」

 

 

 予定変更。町の施設へ繰り出すことにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 今も尚、大いに人気で健在している商店街・ショッピングセンターマルマ。人々が様々な店に訪れている中で、二人の男女が仲睦まじく歩いていた。

 

 

「……今日も多摩町は平和だね」

 

「う、うん。そ、そうだね……」

 

 

 魔法少女(ポジションにいる)である桃と柘榴である。

 

 二人は別に交際しているわけではないが、何度かデートを行っている。白哉とシャミ子が何回かデートしていたのと同じく、作者がそのデートの描写を書かなかっただけであって、これが二回目のデートではないのだ。

 

 柘榴は幼馴染と二人きりで出掛けられることに毎回喜ばしく感じている模様。しかし、桃の方は幼い頃から好意を寄せてきた好きな人と二人きりだからなのか、今回も毎回の如く緊張などで顔を真っ赤にしながらガチガチとした様子である。

 

 

「……? どうしたの桃、ガチガチに緊張で震えているワンちゃんみたいになって」

 

「だ、大丈夫……ど、どっかでシャミ子やしおんが尾行してないかなぁって思ってただけだから……」

 

「……それ、大丈夫なの……?」

 

 

 適当な言い訳をして緊張を誤魔化す桃。だが、柘榴は彼女の分かりやすい反応を見ても嘘ではないと思い込んでいるようだ。実際に知り合い達が見ている可能性がある判断したからだ。

 

 するとふと、何か思うところがあったのか、柘榴が顎に手を当て考え事をしている素振りを見せてきた。そして『あっ』という声を出したと思えば。

 

 

「……だったら」

 

「え?」

 

 

 何をする気なのだと首を傾げる桃の手を、柘榴は唐突に握りしめた。それも指と指を絡め、恋人繋ぎするように。

 

 

「うえぇっ!? ざ、柘榴ッ⁉」

 

「……逆に見せつけようよ。尾行した方が恥ずかしい、向こうがそう思ってしまうように」

 

「そ、そそそそそ、その分こっちにも……‼︎」

 

 

 柘榴が言うにはこうだ。尾行しているであろうシャミ子達が見たいであろう、イチャイチャしている行動を敢えて多く執り行うことで、それによって得られる栄養の摂り過ぎで退散させようという算段だ。

 

 敢えて言わせてもらう……アホであると☆

 

 素早く移動して撒くとか、人混みに紛れて見失わせるとか……もっと他にすべき対処法があるはずだというのに、何故柘榴はこの作戦に賭けるのだろうか。ただ桃の事を揶揄いたいorくっつきたいだけではなかろうか……

 

 

「や、やめて……これ、ホントにやめて柘榴……こ、こんなのを、もしシャミ子に見られたら……と、というか、実際に見られ………………って、ん?」

 

 

 羞恥心に耐えられるわけもなく、桃は柘榴に手を離すよう訴えようとしたところ、何かに気づいたのか前方にあるスポーツ店の方に視線を送った。

 

 

「……桃、どうかした?」

 

「今、あっちの方から視線を感じたような気が……それも感じたことのないようなそうでもないようなって感じの」

 

「………………?」

 

 

 桃が感じていることに対するその意見に、柘榴は理解できなかったのか首を傾げた。一体彼女は何に違和感を覚えたのだろうか、という疑問を持ちながら。

 

 ちなみにだが、桃が視線を送っていた方向には……

 

 

「嘘でしょ⁉︎ ねェ嘘でしょ⁉︎ あの女、男と仲睦まじくしてるんだけど⁉︎」

 

「どうやらそのようですね」

 

 

 商品の棚にコソコソと身を潜めていた、少女とバトラーの姿が。桃を見かけた途端にこの場に身を潜め、商品を探している素振りを周囲に見せながら彼女の様子を窺っていた……否、窺うしかなかったようだ。

 

 

「それはそうと、話しかけに行かないのですか? 見つけたら真っ先に呼びかける、とか仰っていたのでは?」

 

「多分あれはデート中よ⁉︎ 無理無理無理無理、人のお楽しみを邪魔する勇気なんてアタシにはないわよ⁉︎ 邪魔したら地獄に落とされるって‼︎ 後にするか日を改めるしかないでしょ⁉︎」

 

「そ、そうですか……」

 

 

 少女は他人の都合などお構いなしの行動をする程の勇気がない模様。そのようなことをするのは人として良くないと自覚しているためか、今のような行動に移しているようだ。

 

 逆にこのような事をしては怪しまれるのでは? バトラーがそんな事を考えながら自分達の存在を危惧していると。

 

 

 

「……こんにちは」

 

 

 

「うえぇっ⁉︎」

 

「ッ⁉︎」

 

 

 予想半分的中。桃ではなく柘榴に自分達の事を発見され、気付かぬ内に二人の背後に回って声を掛けてきた。これには少女は大きなビックリアクションを、バトラーは警戒して戦うための構えをせざるを得なかった。

 

 

「……ごめん、驚かすつもりはなかった。ただ、なんか僕らの事を気にして、見てるような気がしたから……覗き見?」

 

「のぞっ⁉︎ あ、いや……す、する気はなかったのだけど、色々と訳あって、せざるを得なかった? というか……」

 

 

 やはり覗き見していたのがバレていた。柘榴の勘の鋭さから誤魔化しが効かないと悟ったのか、少女はオドオドとしながらも嘘をつかずに自白する羽目になった。可哀想。

 

 そしてさらに、追い討ちがかかってきた。

 

 

「柘榴、急にどうし……ん? あっ、マリン。久しぶりだね」

 

「んげげェッ⁉︎」

 

 

 少女──マリンが会いたいと言っていた魔法少女・桃にも自分の存在に気づいてしまったのだ。

 

 気まずい。会おうとはしてたけど、向こうはデート中だから非常に気まずい。マリンはプレッシャーと罪悪感によって胃を締め付けられる感覚に襲われていく。

 

 

「ひ、ひ、久しぶりね桃……い、今すぐ消えるから、どうぞ二人だけの時間をお過ごしください……」

 

 

 このまま今の桃の目の前にいてはいけない、そんな危機感を持ったマリンがその場から立ち去ろうとするも……

 

 

「え? なんで逃げようとするの? なんか私に用がありそうな感じだったけど」

 

「んぐっ‼︎ い、いや……なんか、お取り込み中みたいだし……」

 

「六年ぶりに再会したんだし、せっかく来てくれたんだから話し合おうよ。ここは魔族にとっての安全地帯だし」

 

 

 桃本人はそうさせようとしなかった。寧ろ久々の再会の時を喜び、その時間を楽しもうとしている様子だ。

 

 

「(ふ、ふざけるんじゃないわよ‼︎ アンタは今デート中でしょうが‼︎ そのプランを破綻させるような真似、アタシは絶対したくないし嫌なんですけど⁉︎)」

 

 

 無論、マリンは他人の用事に横槍を入れたくない派であるため、その場からどうしても立ち去る気満々のようだが。

 

 

「け、けど、カレシさんとのデートの方は……」

 

「か、カレッ⁉︎」

 

「(よっしゃ効果アリ‼︎)」

 

 

 この状況からどうしても脱したいと考えるマリン、柘榴をダシにする作戦でいこうとした。その結果、桃が顔を真っ赤にして動揺したため成功する可能性は高くなった……が。

 

 

「……僕は構わない。彼女と出会った事とか、いっぱい聞きたいし。何より彼女とも、みんなで仲良くなりたいから」

 

「ゑ」

 

 

 玉砕。柘榴はデートプランがどうのこうのなど気にしておらず、寧ろ桃とマリンの関係について興味津々で聞きたいと言う始末であった。しかも逆に他の友人達をもダシにして期待値を高くしてくるという。

 

 

「ほ、ほら。柘榴もそう言ってるし……せっかくだからみんなにも、マリンの事を紹介してもいいかな?」

 

「………………ドウゾゴジユウニ」

 

 

 頼みの綱である『彼氏のデート中断されたくない主張誘導作戦』も破綻し、打つ手無く桃のデートを中断しての邂逅をせざるを得なくなったマリン。その表情は虚な様子を見せており、燃え尽きて真っ白になったかのようだ。

 

 

「(嫌ァァァァァァッ‼︎ アタシのバカァァァッ‼︎ 何断るのを諦めてんのよォッ‼︎ どうして流れに身を任せて、人のデートを中止にして台無しにしちゃうのよォォォォォォッ‼︎)」

 

 

 その反面、内心ではこのような葛藤が彼女の脳内で木霊していたが。

 

 

「(お労しや、お嬢様……)」

 

 

 そしてそれに察したバトラー、心の中で合掌した。南無。っていうか今のセリフ、どっかで聞いたことあるな?

 

 

 

 

 

 

 数分後、柘榴の家(旧桃宅)にて。

 

 

「紹介するね。彼女はマリン・フォールズ。私が施設で暮らしていた時に知り合ったまぞくだよ」

 

「ヨロシクオネガイシマス……」

 

 

 桃が親友達(白哉・シャミ子・ミカン・拓海)を呼んでマリンの事を紹介した。ちなみに当の本人は罰の悪そうな表情でそっぽを向き、罪悪感のある声で挨拶した。

 

 

「マリンさん、何やらぎこちない感じでいますけど大丈夫ですか?」

 

「あれ、ホントだ。マリンどうしたの? 大丈夫?」

 

「半分アタシのせいだけど、残りの半分はアンタのせいでこうなったんだからね……!!」

 

「えっ?」

 

 

 偽りなく何故マリンが罪悪感を持っているのかを理解できていなかった桃。そんな彼女の天然っぷりにキレたのか、マリンは虚ろな瞳のまま睨みつけた。

 

 そんな二人をマリンの側で見つめながら溜息をつくバトラー。マリンの心境が心境だからと思ったのか、呼びかけもせずに白哉達に名乗り出ることにした。

 

 

「皆様はじめまして。私はバトラー、マリンお嬢様の執事です。鬼の魔族ではございますが何卒よろしくお願いいたします」

 

「あ、ご丁寧にどうも。桃の親友の一人、白哉です。こちらこそよろしくお願いします」

 

 

 執事の礼儀作法による挨拶に反応してか、白哉が緊張気味に挨拶を交わす。その様子を察したバトラーは含み笑いを浮かべ、白哉の元へと近づいた。

 

 

「無理して敬語で話さなくて構いませんよ」

 

「えっ。無理してはいませんよ? そちらが歳上だからであって……」

 

「年齢など気にせず、皆さんで話してる時の言葉で接していただけると幸いです。自然体の方が私も接しやすいので」

 

 

 笑顔でそう伝えてきたバトラー、突然白哉の頭を撫で始めた。それも小さい子供に対しての慣れた手つきで。

 

 

「な、なんで頭撫でてくるんスか……」

 

「おっと失礼。施設の子供達や保育士の手伝い中での園児によくやっていた癖が……初対面で私よりも身長の低く、元気そうではない歳下にもよくやってしまうもので……」

 

「じゃあ何か? 俺が小学生に見えるってか?」

 

 

 バトラーが自分よりも身長の低い者=ナデナデしたくなる子供という認識してしまう性分だと知ったからか、それを聞いた白哉は思わず言葉を崩して青筋を浮かべた。うわ怖っ。

 

 

「中々の高身長な白哉が頭を撫でられるって、結構レアな光景ね……」

 

「………………そうですね」

 

「えっシャミ子?」

 

 

 ふと……ミカンの隣で重みのあるような声が聞こえてきたと思えば、シャミ子が目と顔色のハイライトを落とし、バトラーの方を強く睨みつけていた。ヤンデレまぞくモード、発動である。

 

 

 

「確かに白哉さんが頭を撫でられるなんて結構レアですよね。私なんか身長の問題で十の位にいく程の回数やれてませんし。でもなんか腹立たしいですね。初対面の人が無意識に白哉さんを上から、しかも男の人が撫でるとか、一体何様だって思いますよ? まさかホモ? 彼はホモか何かですか? 白哉さんを一時的にとはいえ恥ずかしがらせて、もしかして可愛いからとかで狙ってるんでしょうかね? 同性愛がNLより幸せになるはずないのに、彼は一体何を考えて───」

 

 

 

「ちょっシャミ子ストップストップッ‼︎ そこまでにしてッ‼︎ あまりナデナデしてあげれてないからって被害妄想が激しいわよッ⁉︎ 後なんか一部の人に対して争いの種を撒いてるような発言をしてきてないかしらッ⁉︎」

 

「ハッ⁉︎」

 

 

 瞳だけが笑っていない微笑みを浮かべながら嫉妬の言葉をスラスラと発していくシャミ子に、ミカンは思わず呼び止める他なかった。そんな彼女の呼び掛けで我を取り戻したのか、シャミ子はハッと目を見開くとすぐに罰の悪そうな表情になった。

 

 

「す、すみません。また白哉さんへの愛が重くなってました……しかも今回のは久々にヤバめ………………私、最近欲求不満気味でしょうか……?」

 

「あぁ……シャミ子君、今度白哉君の頭をナデナデしてあげなよ」

 

 

 シャミ子が先程のように暴走しかけた原因が何かを察した拓海、彼女にバトラーがしたのと同じ事を白哉にするようにと促す。ある程度の欲求は発散させた方が本人のため周囲のためだもんね、仕方ないね。

 

 

「と、ところで……マリン? 質問していいか?」

 

「ア ゙ッ ゙? って、ご、ごめんなさい……今の桃にだけ向けるつもりだった感情が……」

 

「あっ。い、いや、大丈夫だ……こ、怖っ……」

 

 

 何かを思った白哉がマリンに質問しようとしたところ、威嚇しているかのような声で返されてしまった。それに気づいたマリンが素直に謝罪したものの、その時の威圧に白哉はビビってしまった。可哀想。

 

 

「マリンは桃と施設で知り合ったって聞いたけど、どうして施設にいて、今はお嬢様になったんだ? 後、桃とはどんな関係なんだ?」

 

「あぁ、その事……わかったわ、教えてあげる」

 

 

 彼女はそう言って、足元に置いていた水色のトートバッグから……

 

 

「このスケッチブックでね」

 

「なんで?」

 

 

 スケッチブックを取り出し、それを使ってこれまでの経緯を話すことになった。

 

 

「お嬢様はスケッチブックで絵を書くのがお好きでしてね、それをよく人に見せたがるのです。ご両親もお嬢様の絵を気に入っております」

 

 

 バトラーがそう説明している間に、マリンはスケッチブックを一ページずつ捲り始めた。そのページに描かれてある絵の説明を忘れずにしながら。

 

 

 一枚目、客船が大津波に巻き込まれた絵。その右上には生前の両親の顔が書かれていたが、赤い×印が描かれているため、この事件で亡くしたらしい。

 

 二枚目、八年前に施設にいた頃の絵。最初は両親を亡くしたショックで他の子達と関わらなかったものの、時間が経つにつれてみんなと仲良くなった模様。

 

 三枚目、桃に好物のたけの○の里を渡されて仰天している絵。初めて施設に来た時から彼女が魔法少女である事を知り、魔族である自分を退治するのかと警戒していたものの、桃がそのような素振りは一切見せず寧ろ仲良くなろうと接してきたらしい。

 

 四枚目、心配している桃の目の前で四つん這いになって落胆している絵。本性を明かそうと桃に勝負を挑むも、この絵のように敗北したとのこと。そしてこの後、この闘いで何か企んでいるわけではないと知り恥ずか死したとか。

 

 五枚目、現在の両親と中学生だった頃の執事のバトラーに連れられながら施設の子達に手を振っている絵。施設に入って二年後に、彼女は養子として迎え入れられたのだ。

 

 六枚目、家族の団欒の様子の絵。新しい両親はちょっとした貴族だったため、最初は貴族としての礼儀作法を学ぼうとしたものの、その両親からは立場とか気にせず一般の家族の一人として過ごしてほしいと言われ、現在に至ったようだ。

 

 

「と……これでアタシの話は以上よ」

 

 

 話したいことを全部伝え終え、見せたい絵も全部見せ終え、マリンはフゥッと一息ついてスケッチブックをしまった。

 

 

「なるほど……つまりマリンは施設に入ってから桃と知り合って、一回戦ってみて過激派ではないことを知り、その二年後にバトラー達に迎え入れられたってことなんだな」

 

「そういうこと」

 

 

 ある程度マリンの伝えたいことを理解したのか、白哉が自分なりの考察を呟くとマリンがその考察を肯定する。伝えたい内容の通りの理解をしてくれたことで嬉しく思ったのか、フンスッと胸を張ってその感情を表向きにした。

 

 

「ちなみに私はDカップよ‼︎」

 

「いや急に何故自分のバストカップ教えてんの……?」

 

「今アタシ胸を張ってるから、それを機にボケをかまそうかと」

 

 

 何故己のバストカップの紹介するという、下ネタで自虐風自慢みたいな感じのことをするのだろうか。そんなマリンの独特なノリに、白哉は思わず苦い顔を浮かべた。

 

 

「ち、ちなみに私はGカップとIカップの間……だと思われます‼︎」

 

「ハァッ⁉︎ 思ったよりもデカいじゃないの⁉︎ お、追いつけそうにないわ……‼︎」

 

「なんでお前も自身のバストカップ公開すんだよ⁉︎」

 

 

 そしてまさかのシャミ子もバストカップの自白をするという、謎の張り合いをしてきた。彼女のその大きさにマリンは仰天しては悔しがるも、他の者達は呆れたり唖然としたりする他なかった。

 

 

「っていうか……マリンさんって、私よりも先に桃と戦ったことがあるのですか? それも自分から決闘を挑む形で……?」

 

「いやお前はまともに戦わせてくれなかっただろ」

 

「ウグッ!!」

 

 

 シャミ子がマリンに桃との絡みについて問いかけ、白哉に事実という名の横槍を入れられ図星した表情になる。

 

 

「ま、まぁそうね。さっきも言ったようにボロクソに負けたけど。……というか、貴方も桃と闘ったことあるの?」

 

「出来たとしても、今のこいつの力ではまだまともな闘いにはならなかったと思うけどな」

 

「びゃ、白哉さんッ!! 分かってはいますけど言わないでくださいよ!!」

 

 

 彼女は桃に挑んだ決闘を、ランニングで誤魔化されたりお出かけと勘違いされたりして、戦ったことは一切無い。だからこそ図星の表情を顕にしてしまうのだ。可哀想。

 

 んんっとわざとらしい咳き込みを入れ、シャミ子は改めて質問を続ける。

 

 

「そ、そんなことより……その時の決闘の内容って、一体どんなものだったんですか?」

 

「‼︎」

 

 

 ピクリ、マリンの身体が全身を伴って動いた。

 

 

「………………実際に見せた方が早いわ」

 

 

 そう言って、鋭く細めた目で桃の方に振り向き、指を突き立てながら高らかに発する。

 

 

「桃、私と『あの対決』で勝負なさい‼︎ そのために……あの頃のリベンジを果たすためにも、この町に来たのだからね‼︎」

 

「‼︎」

 

 

 宣戦布告であるその言葉に、桃は思わず目を見開いた。そしていつになく深刻そうな表情となり、フフンッと微笑みを浮かべているマリンを真っ直ぐ見つめる。

 

 

「マリン……もしかして、あの時からずっと……」

 

 

 桃の表情からするに、マリンは八年前に行ったという対決の事を忘れておらず、その時の敗北による屈辱を果たしに来たのだろう。少なくとも第三者達からはそう捉えられている。

 

 

「わかった。『あの対決』なら運次第で怪我しにくいし、いいよ」

 

「言ったわね? もしそれでどちらかが怪我することになったとしても、文句は一切言うんじゃないわよ‼︎」

 

「分かってる」

 

 

 お互いの合意が出たとのことで、二人はお互いに視線と視線をぶつけ合い、火花を散らし始めた。

 

 そんな桃を見て、ミカンは意外すぎると言わんばかりに驚きを隠せずにいた。

 

 

「あ、あの桃がまぞくを強く睨みつけるだなんて……しかも『あの対決』を了承する程に……これは、かなり荒れそうね……」

 

「な、なんだよ『あの対決』って?」

 

「魔力を使ったバトルとは違うのですか?」

 

 

 状況が追いついていない白哉とシャミ子が、『あの対決』とは何の事なのだと問いかける。そこに柘榴が二人の前に立ち、語る。

 

 

「……魔族と魔法少女。お互いの命の奪い合いが、起きないようにと制定された……魔力云々をほぼ使わない、運で勝負が決まる戦いなんだ」

 

「運で勝負が決まる……」

 

「命を取らない、魔族と魔法少女の戦い……」

 

 

 人が死ぬわけでも、失うものがあるわけでもない。それでも、魔族と魔法少女にとっては重要なことであり、熾烈な闘いとなるだろう。そう予知した白哉とシャミ子は、この後始まるその対決に期待と緊張が高まってきたのか唾を飲んだ。

 

 そんな緊迫しているかのような表情になっている二人を見て、柘榴は徐に呟く。

 

 

「……普通の人には理解出来ない闘いだから、そこのところは気をつけて」

 

「「えっ?」」

 

 

 その言葉に、二人は頭にクエスチョンマークを浮かべる他なかった。

 




次回、桃とマリンがとある闘いを行う⁉︎ 乞うご期待‼︎
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