クレイジーサイコレズ系主人公が錦木千束の心臓を死ぬほど欲しがる話 作:靉靆
あ、赤バーMAX……ウレシスギル!
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抑え続けていた殺意の奔流が止まらない。
このまま衝動に身を任せ、今にもこの牙に血を滴らせたいと本能がどうしようもなく囁いている。
今日この日今宵に、リリベルが千束が狙ったことは偶然なのだろう。
偶然私が東京へ訪れたその日に、偶然千束と出逢い、偶然その晩にリリベルが作戦を練っていた──あぁ、此処まで偶然が巡り合えば、運命とは私のために存在するのだと思わずにいられない。
「……答えろリコリス。何故俺たちの前に立ちはだかる」
部隊の
黙れよ屑が、話しかけるな塵め。
理由など、千束への一目惚れについてから夜が明けてしまうほど語ることになるぞ。
嗚呼、殺しの走狗よ。ただ飼い主の命に従うことを受け入れ思考を停滞させた貴様らには到底理解など出来ないだろう──だが、敢えて一言で語るとするなら。
「──愛、故に」
「……何言ってんだお前」
五月蝿い黙れ。
理解など求めていない。
今の私は独善的で、身勝手で、我儘なのだから。
「
錦木千束との関係性は知らねえが、このまま立ち去るならまだ軽い処分で済むぞ」
「知るかよ蛆虫が。私の千束に群がる塵屑め。貴様らに大それた使命感などある筈もないだろう──結局はただの
そもそも誰が飼い犬だ。
私に首輪を着けていい存在など……いや、千束になら飼い殺されて良いかもしれない。
電波塔事件の時と同じように無様に敗けて、身も心も千束のモノになる自分の姿を想像する。
あっ、良い。
千束の全てを陵辱するのも心躍りますが、千束に人としての尊厳を奪われて殺されるのもすっごく良いですね……。
……はぁ、どうしたら千束は純粋な
──思考がぶれた。
感情を切り替え、殺人鬼としての己を喚び起こせ。
兎にも角にも無意味な時間だ。
ファーストの男はまず戦闘を回避する手段を模索しているのでしょうが、対話も融和も調律もこの場には不要──ただ殺意を抱き鉄火を携えるのみ。
中近接両者に即座な対応ができるように
六年以上前に切り裂き魔として駆けた
正体を隠しリコリスとしての任務を遂行するために編み出した仮初のスタイルだが、身体に染み付けさせた動作故に澱みはない。
「……はぁ、気張れよテメェら。生き残ったらメシ奢ってやるからよ」
「マジすか、じゃあ寿司頼みますよ。回らないやつ」
「俺は焼肉が良いです隊長。もちろん高い店で」
「少しは遠慮しろボケども」
眼前のリリベルたちも説得の失敗と戦闘の不可避を察したのだろう。
気怠げにため息を吐き軽い会話を交わしているが、その照準は一切ぶれることなく私を捕捉している。
身体が熱い。
塵屑に対して憤怒と憎悪の入り混じる胸中ではあるが、久方ぶりに感じる熟達者と相対する闘争の空気にこそ己の生を実感する。
「散れ、
「吠えてろ、
殺し合いの幕が上がると共に、己に向けられた五つの銃口から無数の弾丸が発射される。
装着された消音器故に銃声は殆どしないが、急所を的確に狙う“線”を認識できる私にとっては関係のないことだ。
反射神経の覚醒──六年前。千束との闘争により会得した第六感以外の可能性により、私の神経伝達速度は煩わしい
「──なっ!?」
男の驚愕が静寂を破壊する。
都合十二発。
空気の壁を抉る音を聞きながら、その全てを回避し放たれた弾丸は闇に消えゆく。
回避の次は攻撃への予備動作。
狙いを定めると言った工程は不要。
ただこの脳が弾き出す絶死の線を辿るようにして発砲すれば、私の弾丸が外れることはない。
真島曰く、多対一の戦闘においてはまず最初に狙うのは一番強い者か弱い者の二択だと言う。
頭を潰せば手足はただ痙攣するしかない役立たずと化し、最速で弱者を潰せばそこから
「──っあ゛、っ!」
震えるサードリリベル。この中で最も経験も能力も劣っている弱者の
そしてその意識と身体が崩れ落ちるよりも素早く接近。
次は首根っこを掴みながら銃を持った利き腕を真逆の方向に曲げ、顔を地面に打ち付けると同時に肘の関節を外す。
──まず、一人。
「……っ、この野郎…ッ!」
間近への接敵を許した焦りから私に最も近いセカンドが頭に銃口を突きつけるが、殺意の伝達が鈍間だ。
此方はとっくに拳銃を捨てて片腕が空いてるぞ。
引き金を引く前に銃身を掴み、スライドを外し一瞬で分解。
ナイフのみで戦場を闊歩した頃に身につけた
「吠えるな、駄犬」
「が…っ……!」
まずは貫手で喉を穿ち、動きを止める。
更に残りの三人から放たれる弾丸を避けながら追撃。
動脈や臓器と言った急所を正確に
グリップ越しに伝わる肉の感触が気持ち良い。
──二人目。
「……ひゅ」
「
人体理解。殺人鬼としての
しかし……それにしても難しいものですね。殺意を抱きながらも
「なんだよ…何なんだよコイツは…っ!」
良い声だ。恐怖に震えた生者の声。
その無様な怯声が私の歪んだ魂を満たして仕方がない。
部隊の一角を無力化した事で生じた隙に付け入り、次に狙うのは二人のセカンドリリベル。
イメージするのは地を這う蛇。予備のナイフを取り出して身を低く屈めしなやかに、そして素速く、すれ違いざまに脚の腱を切り刻む。
僅かに己の長い白髪に付着する血の色に興奮を覚えながら、最初に無力化したリリベルから奪ったグロック17で両者の肩を撃ち抜き四肢の動きを封じる。
「あ、ぁ███████──ッ!」
「黙れ」
──痛みに悲鳴をあげる惰弱者どもの顎を頭上から踏み砕き、横顔に蹴りを入れこれで四人。
「……化け者が」
残るは、ファーストただ一人。
動きの練度を見るに他四人より強者であることは間違いない。口では驚愕を言葉にしているが、その佇まいは冷静沈着。
殺し合いに於ける一手ごとの重要性を理解し尽くした者の慎重さを感じるが──私にとっては等しく喋る肉塊にすぎない。
懲りずに放たれる弾丸を全て避ける。
やがて17+1の弾倉が弾切れを起こし、カチカチと滑稽に引き金を引く音が鳴った。
「チッ──」
弾倉を装填する刹那すら致命のひと時。
それを察したリリベルはナイフを引き抜き、長い間積み重ねてきた練度を思わせる素早さで刃を振るう。
「だけど、まだ遅い」
「──っ、!」
銃弾よりも鈍いその軌跡を躱すなど容易いこと。
振るわれたナイフは空を切るのみに終わり、逆に私は手元の拳銃で正確に四肢を撃つ。
これで、お仕舞い。
この場に満ちる闘争の空気に僅かな歓喜を覚える。
辺りを見ればリリベルどもが痛みに喘ぎながらまるで虫のようにもぞもぞと蠢いていた。
全くもって無駄な行動だ。自力で立ち上がることすら出来ない様に念入りに壊した。もうこの塵に出来ることなど何もない。
「……な、ぜ。俺たちを、生かす?」
奪った銃を分解し捨てれば、ファーストリリベルが四肢を撃たれた激痛を堪えながら頓珍漢なことを言い出す。
生かす? 何を言っているのでしょうかこの男は。
「殺せる機会は、いつでも、あったはずだろ……」
……あぁ、そう言うことですか。
つまりは、命を奪わずこの闘争を制した私の行動に博愛主義的な
「生かす?誰が誰を?
もしや私がお前たちを生かして帰すと?」
だとすれば滑稽な勘違いだ。
千束の不殺主義に腑抜けたのか?
情けも容赦も──
「言っただろう、殺すと。言ったよな?嗚呼そうだ言ったんだよ、私は確かに殺すと断言したぞ」
元来、
命を奪うことに悦楽を覚え己の性を受け入れ生きる怪物。
己の歪さに恥など覚えるものか、無慙無愧に恣に生きるのが私だ──そして今、お前たちを殺す理由はあれど、殺さない理由など一つたりともありはしない。
「だけどダメなんだよ。殺すだけじゃ、ただ無意味にお前たちを」
無意味な死で、人は動かない。
ただ衝動に身を任せて首を掻き切るのみでは、千束を
故に、出来るだけ残虐に殺す。
死体を一目見るだけで吐き気を催し、恐怖に震え、己の間違いを骨の髄まで理解させる様な殺し方をしよう。
錦木千束という美しい存在を害することの愚かさを、この
「眼球を抉り、骨を砕き、皮を剥ぎ、筋繊維を裂き、肉を削ぎながら内臓を引き摺り出してやる。つまりは解体、拷問だ」
「……おー、こっわ」
飄々とした態度を見せてはいるが、その額には脂汗が浮かんでいる。
増援の有無を考えれば拷問にかけることができるのは多くて二人、だがそれで良い。
残りの有象無象も生かしたのは、私の刻む恐怖を伝播させるためなのだから。
「たい、ちょうっ!」
「先輩……ッ!」
激痛により枯れた声で男を呼ぶ塵の声がする。
実感しろ、無力さと愚かさを。
目の前で竹馬の友が人としての尊厳を奪い尽くされる様を嫌と言うほど直視しろ。目を背こうとも無駄だ。仲間の悲鳴がお前の耳を震わせる。
必死に悲鳴を無視しようとも血と臓物の匂いが鼻腔を犯すだろう──あぁ。夜を迎える度に思い出せ、霧霞響奏という殺人鬼が刻んだ恐怖を。
「哭いて歓べ、お前の死に“意味”をくれてやる」
「はっ、そりゃお優しいこって」
10分で良い。幸いこの周辺は組織の手回しにより無人で、千束も地下の
外観から確認できる一軒家は
千束が私の存在に気づく前に、お前の存在そのものを陵辱してやる。
恐怖には、鮮度がある。
長すぎる痛みは諦めを生み感情を枯渇させ、結果それはただの腐った肉塊と成り果ててしまうのだ。
故に時間をかけずより早く、より苦しめる様に嬲り、奪い尽くす。
そして哭き叫べ──お前たちの悲鳴を聞き届けるのは、夜空に浮かぶ月だけだ。
「“あの時”と全く同じだ──やはり
「何を、言って……?」
ナイフを握る。
まずは眼球、その次に顔の皮を剥ぎましょう。
歯をへし折り、声帯を切り取り、腹を裂き、肋骨を広げて内臓を一つずつ引き摺りだして、そして、そして──。
「なに、してるの響奏さん……?」
────は?
思考が止まる。
感情が抑制される。
衝動が加速する。
呻き声だけが響いていたはずの夜の闇にて、想い人の美声が空気を震わせた。
振り向けば、千束がその尊顔に困惑の表情を貼り付けていた。可愛い。
「ちさ、と?」
振り下ろそうとしたナイフが、行き場を失う。
何故、どうして。私たちの騒動に気付き此処まできたのか……いや、それにしても速すぎる。
私がリリベルと接敵し制圧までに掛かった時間は一分にも満たなかった筈だ。
真島でもあるまいし地下から
「……楠木さんから連絡があった。響奏さんがリリベルと戦ってるって」
楠木……アイツか。
抜かったな。リリベルの指揮を取る別形態の組織にもこの男の死に様を
制服の
落としていた電源を入れ直せば夥しいほどの通信履歴……はぁ、興が冷めた。闘争の空気が解けて失せる。
本来ならこんなものは無視して千束との時間に当てるべきなのでしょう、けれども状況が状況故に仕方がない。
「──千束、少し外します」
千束の瞳に浮かんだ警戒の色にぞくりと興奮を覚えながら、眼下で這いつくばるリリベルを一瞥する。
部隊は全滅、案山子の役割すら果たせぬほど破壊尽くした人体では立ち上がることすら困難であるのは一目瞭然であるため、千束を一人にして離れることに心配はない……心配はないが、普通に嫌だ。
もっと
揺れる自我を抑えつけながら庭先まで離れ、先ほどから振動し続けてる端末に出る。
『……何故このような凶行に及んだ』
開口一番に問いただす様な女傑の声が聞こえる。
それも仕方のないこと。今の私は独断で同じ組織の別部隊に命がけの戯れを仕掛けた問題児。
不名誉除隊どころか裏切りを疑われ、射殺命令すら有り得るほどに壊れかけの天秤にいるのだから。
『貴様にとって千束は一体なんだ?』
質問の内容からして、私の動機に対してはおおよその推測はできているのだろう。
錦木千束のため──そして何故、霧霞響奏はそこまで彼女に固執するのか。大方聞きたいのはそんな所でしょう。
「初恋です」
『……は?』
「一目惚れでした」
『お前は何を言っている?』
失敬な、正直に答えたのになんですかその反応は。
そもそも聞いてきたのはそちらでしょう。
『まぁいい。この暴走の理由が千束の暗殺ならば、これ以上貴様は動くな。先程上層部に対しての錦木千束抹殺に関する撤廃の要請が正式に受理された──もはや組織に、千束を狙う理由はない』
「……
『五分後に回収部隊が向かう。これ以上勝手な行動はするな』
……千束への殺害命令撤回の件。電話越しのため確実ではないが、声色とトーンからして嘘偽りを話す人間の
まぁ、もし偽りならまた今と同じ様に打ち倒せば良い──リリベルのファースト。その力量にも大凡の目安がつけられた。
『もし一人でもリリベルを殺めていたなら、組織の総力を挙げて貴様を討っていたぞ』
「それは良かった。
『……口の減らん奴だ。本部に転属した暁には徹底的に扱いてやる。覚悟しろ』
「おや、意外です。てっきり転属の取り消しどころか除名すら考慮していたのですが」
『能力だけ見れば貴様は千束をも凌ぎ得る唯一のリコリスであり、下手に野放しにするよりも此方で手綱を握る方が有効的だと判断したまでの事だ』
あ?巫山戯るなよ女郎。私より千束の方が確実に優れてるに決まってるでしょう。腐ってるのですかその眼は?
……なんて罵詈雑言を胸に押し込み連絡を切り上げる。
想定外のことばかりでしたが、結果として千束に刺客が差し向けられる可能性がなくなるのなら僥倖だ。
監視等はつくだろうが、この寛大な処置に関してもリリベルの存在がセカンド以下のリコリスに秘匿されている以上表立った処分を下すのは士気に関わると言うことでしょう。
それでも、討ち取ったリリベルを解体することが出来ないのは少しばかり残念ですね。
そんなことを思いながら再び踵を返し千束の許へと戻れば、其処にはリリベルたちの止血を行う彼女がいた。なんですかあれ、羨ましい。
六年前から何も変わっていない。戦場に咲く美しい一輪の
不殺の意志も、救いの手を差し伸ばすその傲慢さも相変わらずだった。
あぁ、何故だ。何故自分の“使命”を理解してくれないのですか千束。
堕ちろよ
その筈なのに何故、小綺麗な
少なからず積もる苛立ちを抱えながら、出血部分の四肢を包帯で巻かれたリリベルを一瞥する。
「殺害対象に止血される気分は如何ですか?」
「うっせぇイカれ女」
八つ当たり気味に皮肉を溢せば、リリベルが負傷者らしからぬ態度で憎まれ口を叩く。なんですか貴方、殺しますよ。
「──響奏さん」
千束が私の名前を呼んでくれた、嬉しい。
視線を向ければ、他のリリベルたちの止血を終えた千束が私に不審げな眼差しを向けている。
不機嫌な千束も可愛いらしいです。
「……どうして、こんな事をしたの?」
まるで母親が子供を叱る際に理由を問う様に、静かに怒りと困惑を織り交ぜた感情を言葉に乗せて千束が私に問う。
どうしましょう。殺し合いたい。
此処まではっきりと千束にマイナスの感情をぶつけられてしまえば、思わずナイフの柄に指を触れてしまう。
一体どのような言葉を返すのが、私と千束の
Name
Kyoka Kirigasumi
Affiliated post
Offensive Security Force Unit
Personal code
LC3044
total evaluation in operational action
A+ Unmeasurable