ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい 作:えにぃ
ハロー、もうかれこれ20分近くユリマの頭を撫でさせられている道化師ドルマゲスです。無事に一人の被害も出さずベルガラックを守り抜くことができたのは素直に素晴らしい結果と見ていいでしょう。住民のケガどころか建物の被害すらなかったのは流石にちょっと私の仲間たちが優秀すぎる気もしますけど。やっぱりサヴェッラ大聖堂に行くのは私たちの方がよかったような気がしないでも…。
…
ラプソーン配下の魔物たちの襲撃は完全に鎮圧されたという報告をキラちゃんから受け、俺と師匠は軽く安堵のため息をついた。被害という被害もほとんどなく、事後処理も軽いものだけで済みそうだという。強いて言うならギャリング邸の庭が穴ぼこだらけになってしまったのだが、ギャリングがこんなものは被害のうちにも入らないと笑い飛ばしてくれたので、防衛は完璧にやり遂げたと言い切ってもいいだろう。持てる全てを尽くしてなお数十人規模の死傷者を出してしまった闇ドニの防衛戦を振り返ると今回はかなり上手くいったと思う。
「もういいですか?そろそろ……」
「えー…まだ23分と42秒しか撫でてもらってないのに…」
測ってたんだ。
俺は単純に腕が疲れたからもういいかなと思ってそう言ったのだが、ユリマにはどうやら「この程度の成果ならこれ以上撫でることはできない」と受け取られたらしく、次はもっと上手くやります!と意気込んでいた。
いや実際、今回のユリマの活躍は素晴らしいものだった。この戦闘では俺は彼女と背中を預け合うことはなかったが、ユリマと一緒に活動していたサーベルトの言い分ではまさに彼女は一騎当千の大活躍だったという。極められた重力魔法によって尋常ならざる機動力と攻撃力を誇るユリマはまさに『デビルパピヨンのように舞い、ヘルホーネットのように刺す』ようだったといい(それは褒め言葉でいいんだよな?)、町を守る姿を見ていたベルガラック住民から歓声を浴び、彼女は天女だか天使だかと崇められているような状態らしい。ここまで人気が出ているならアイドル事業で資金繰り…なんてのもできるかもしれない。本人がやるかどうかは別として。
「ずっと飛び回って戦ってましたけど、スカートの中は見えないようにしてたので大丈夫ですよ!」
という謎の報告をするユリマ。…そこまで活躍しておいてさらにスカートを気にする余裕まであったとは。俺もそうだが、皆まだまだ余力は残っているようだ。…やはりベルガラック防衛に俺たちを寄越したのはオーバースペックだったかもしれない。
「天使さまー!」「天女様!ありがとー!」「あんたは恩人だー!」
「あ、えと…はは、よ、よきにはからえー?」
だが、住民から感謝されドギマギしながらも嬉しそうにしているユリマを見ていると、これはこれで正しい選択だったような気がしてきた。光の世界のドニで「半魔」と呼ばれ腫物のように扱われていた彼女の過去を知って見ると、今の彼女の笑顔はなんとも眩しい。
「天使様ー!おれと結婚してくれー!」
「消えてください」
……そう、眩しいのだ。…少なくとも笑顔は。
「あ、あの!…大変お疲れ様でした、ドルマゲス様…」
「キラさん」
ユリマが突然ブチギレて聴衆を静まりかえらせている間に、家屋を一軒ずつ回って被害状況を調べていたキラちゃんが戻って来た。緊張しているのか俺の顔が怖いのか、俺と喋る時はいつでもびくびくしているキラちゃんだが、今日はその態度を崩さないまま俺の左腕が触れるか触れないかのところまでおずおずと近づいてきた。ユリマ同様、この子も本格的に距離感がおかしくなってきたらしい。
キラちゃんと一緒に調査をしていたサーベルトは住民と世間話をしながらも既に今回の戦闘で摩耗した装備品の点検やアイテムの補充を始めている。
「どうかしましたか?」
「あの…ドランゴさんの件は…私の独断で勝手なことを…本当に申し訳ございませんでした!」
「…!はは」
キラちゃんの口から出た予想外の言葉に俺はちょっと笑ってしまった。いや、誰がどう見たってドランゴの参戦は間違いなく最適解だったろうよ。実際ドランゴは暴れることも無く事が終わるとすぐに帰っていったわけだし、少々言い方は悪いが「呼び得」だった。戦闘中、俺はドランゴのことはすっかり頭から抜けていたし、そういう意味ではキラちゃんの方がより大局を見られている。そんな彼女に感謝こそすれ、どうして責めることができようか?
「謝る必要など微塵もありませんね。貴方は私の指示通り動き、そして指示を超えて想像以上の結果を出してくれました。これをどう叱責すれば良いのか、私にはちょっと思い浮かびませんが?」
俺は目を潤ませてこちらを見上げているキラちゃんの頭に手を置き、髪の流れに沿ってゆっくりと撫でる。驚いたのか一瞬目をきゅっと閉じるのが子犬のようで実に可愛らしい。
「あ…」
「謝罪というなら、むしろ私がするべきですかね。忙しさという言い訳でキラさんの提言していた『防衛戦力としてのモンスターの起用』を後回しにしてしまっていました。起案された時点でしっかり取り組んでいればキラさんも引け目なくドランゴを呼べていたでしょうに」
「そんな…でも…ああ…」
「とにかく、お疲れさまでした。今回のMVPは間違いなくキラさんですよ」
「え、えむ…?」
「最も活躍した功労者、一番頑張った人という意味です」
「そんな!み、身に余る光栄です…!」
……かつて俺たちがベルガラックに訪れた時、キラちゃんはラプソーン操るユリマの唱えた
「…?」
…いや、今のキラちゃんがあの頃の臆病な彼女のままであったならばトラウマも抱えたままだったかもしれない。そうなっていないのは単純に彼女が強く成長したからだ。アスカンタ王国領から一歩も出たことのない王室小間使いだったかつての彼女と、千にも及ぶ魔物がひしめく伏魔殿を実質的に統括している今の彼女を同列に考えるのは失礼だろう。
そう思うと、無限に彼女を褒め続けたくなってきた。
「あの、ドルマゲス様…?い、いえ!嫌ではないのですけど……!!」
「ああ、失礼。ちょっとこれまでとこれからのキラさんのことを考えていましてね」
「へぇっ!?!?!?!?」
まあ、残念ながら時間は無限ではない。俺がキラちゃんの頭から手を放すと、彼女はあからさまにユリマを撫でていた時間より短い(ユリマが長すぎるだけ)ことに残念そうな表情を見せたが、5秒も経たずに切り替えて元の仕事モードに戻った。プロだね。
「さて、キラさんとサーベルトも戻ってきたことですし、次の行き先についての話をしましょうか。キラさん。師匠を連れ、ギャリング氏の屋敷まで来ていただけますか?私はユリマとサーベルトに声をかけてから向かいますので」
「は…はいっ、承知いたしました!」
キラちゃんは恭しくお辞儀をし、足早に去っていった。彼女にしては珍しく、途中で二回ほど足をもつれさせていて危なっかしい。
まあ、そんなことよりも今は次にどうするかだな。うーむ。俺は色々なパターンを脳内でシミュレートしながらサーベルトとユリマを回収して屋敷へと向かった。…余談だが、サーベルトとユリマにはいつの間にかベルガラック住民によるファンクラブが結成されており、俺が迎えに行った時は二人とも突然できたそれぞれのファンに困惑していた。俺はマダムに魔物呼ばわりされてたのに……やっぱり顔?顔なのか~?
あとユリマさん、貴方…アイドルに興味はありませんか?
…
「ギャリング様。お忙しい所、我々の為に時間を設けていただき誠にありがとうございます。」
「いいってことよ!あんたらはこの町の英雄だからな!英雄を無下にしたとあっちゃあ町長の名が廃るぜ!」
ギャリング邸、大広間。長いテーブルにはギャリングとその養子であるフォーグとユッケ、そして俺たち5人が向かい合う形で着席していた。
「…で、ドルマゲス。あんたらが総出で、しかも関係者以外を締め出したってことは…町の被害の報告だとか、事後処理だとか、そういうのじゃあねぇな?」
「ご賢察の通りです」
「…いいだろう、本題はなんだ」
ギャリングは声のトーンを落とし、椅子にもたれかかる。彼は豪快な男だが、同時に緻密で慎重な商売人でもある。町の英雄であっても、ビジネスの話ならまた別と言う事だろう。実際彼の商才には少し前に一人でベルガラックを訪れた際にかなり辛酸を舐めさせられた。…だがまあ今回はビジネスの話ではないので多少は気楽だ。
「話が早くて大変助かります。…では前置きは無しにして。ベルガラックの時限的な移転についての提案。私は、可及的速やかにベルガラックの人々をこの町から移動させたいと考えています。」
「えー!?」「ドルマゲス氏は我々にこの町を見捨てろというのか!?」「…おめェら――」
「しーーー………。ドルマゲスさんが話してる途中…ですよ?」「「ヒッ…」」
わかりやすく騒ぐフォーグとユッケをギャリングが一喝しようとした瞬間、ユリマが二人の背後に回ってその首筋に杖を這わせた。すぐにやめるように言って彼女を隣に座らせたがもう遅く、二人はすっかり怯えてしまっていた。キラちゃんたちと過ごすうちに随分丸くなったユリマだが、こういうところは変わらない。…いらない警戒を招いてしまうので普通に困る。
俺はすぐにギャリングに謝罪し、続けて住民の命がかかっていることだからこちらも慎重に話さなければならないのだと弁明した。するとギャリングはこちらを非難するどころかフォーグとユッケに追加で一発ずつ拳骨を食らわせ、こっちこそ人の話も最後まで聞けないウチのガキが迷惑をかけたと謝ってきた。ギャリングは懐の深い人で実に助かる。サザンビークの王族親子だったならばこうはいくまい。
「先ほども少し触れましたが、ベルガラックの移転は『時限的』なものです。この町を棄てるわけではありません。」
「続けな」
「つまるところ、暗黒神の脅威が去るまでの間、都市機能及び住民を我々U.S.A.の区画の一つに移動させるという案を私は提唱したいと思っています。キラさん、資料を」「こちらです」
簡単に言えば、暗黒神を討伐するまでの間、ベルガラックの町の建物だけを残して中身をそっくりそのままU.S.A.に移動させるという計画だ。今や光の世界において、U.S.A.よりも安全な場所はないということは自負している。地下に広がる巨大迷路、ひしめく魔物たち、その先にある空間ならば、さしもの暗黒神といえど一瞬で辿り着くことは不可能だ。
キラちゃんにもらった資料には移転に関する計画や、移転先の空間についての情報がびっしりと書いてあり、ギャリングはその厳つい外見に似合わない小さな眼鏡をかけると素晴らしいスピードで資料を読み込み始めた。ギャリングの資料を隣から覗き込もうとしていたフォーグとユッケには代わりに移転先の町の広告チラシを渡してあげる。ベルガラックの移転については前々から考えていた計画だったので準備に抜かりはない。区画の開発や建築はリブルアーチの建築家とモグラたちによって既に完了している。
「移転に必要な諸経費はこちらで全額負担いたします。どうでしょう、悪い提案ではないと思いますが」
「ふむ…」
そもそも何故移転しなければならないのか、という至極当然な疑問はギャリングたちからは飛んでこない。あの襲撃の後なのだ。仮に俺たちやセキュサがいなければどうなっていたかなど想像に難くないだろう。それほどまでに暗黒神は脅威なのだという事は既にギャリングも兄妹も承知の上だった。
「……確かに、さっきの襲撃じゃおれの私兵部隊も傭兵たちも大して活躍できちゃいなかった。次に襲撃があったときだってそれは変わらんだろうな。加えて暗黒神の実力。本体がここから遠く離れた場所にいてなおレッドオーガとブルファングを操れる強大な力があるってんなら、どちらにしろあんたたちの助けなくしては何もできんまま滅亡だろうよ。」
「パパ…」「父上…」
「だからベルガラックの移転には賛成だ。というより断る理由がねェか。ウチの住民たちにはおれから説明しておく。なに、おれもこの町ではまあまあ顔が効くんでな。全員まとめて説得してやらぁ」
「なら決まりで―――」
「だが、一つ。…あんたらの町…U.S.A.に移り住むのは……おれ“以外”だ。おれは残る。それが受け入れの条件だ」
「!」
えぇ…。
「父上!それは一体どういう了見ですか!?」「そうよパパ!」
「おれはベルガラックの町長だ。親父もジジイも、おれの先祖…それこそドルマゲスの言う『賢者ギャリング』から代々そうだった。こんななりでもおれはこの町を愛している。一時とはいえこの町を棄ておくことはできねえ。」
「…」
なーんかややこしいことになりそうな…そう思いながら俺がふと横を見ると師匠がうんざりした顔をしている。いや、師匠もまあまあな頑固者ですからね?あんま偉そうにはできないっすよ?
そんな俺たちの雰囲気を何となく察したか、兄妹の心配そうな顔を見たか、ギャリングは慌てて付け加えた。
「なにもおれがこの町と心中するつもりだってんじゃねェぞ?おれが死んだら世界がヤバいってことは耳にタコができるほど聞かされたからよ。むしろその逆だ。この町をガチガチに固めて、ここで暗黒神を迎え撃つ。…打ち取れるとは当然考えちゃない。要は時間稼ぎだ。あんたらの売ってるセキュリティサービス、全て購入しよう。マジックアイテムや装備の類も、最上のものを言い値で買う。外敵を検知するとドルマゲスか…キラの嬢ちゃんか?に連絡がいくセキュリティサービスがあったろ?あれを置いときゃあ今回みたいにあんたらが来てくれる。」
ふむ。まあ多少強引な物言いとも取れるが、元々の俺たちの目的とも合致しているので彼の言い分に文句はない。俺が頷きで返すと、ギャリングはそのまま続ける。
「おれが住民と一緒にU.S.A.に移っても、結局住民が危険に晒されるのは同じだ。であればおれがこの町に残ることで少なくとも住民が戦いに巻き込まれる可能性は低くならぁな。それに、『この町を愛してる』ってのは文化やそこに住まう人間の事であって、資本そのものじゃねえ。言っちまえば何度でも作りなおせる建物なんかはいくら壊れたっていいんだ。あんたらもその方が色々とやりやすいだろ?」
ふむ…。範囲攻撃魔法に秀でた師匠やMAP兵器の如き制圧力を誇るユリマが町に被害の出ないよう出力を調整して戦っていた…という事実は既にギャリングたちも知るところか。
言い訳にはなるが、リブルアーチで俺がゲモンに敗れたのも元を辿れば守るべきものが多すぎたから、というのが原因のひとつであることは否めない。チェルスはハワードを庇って命を落としたし、メディばあさんも原作ではグラッドを人質に取られたから殺されてしまった。こういった先例から戦場における非戦闘員の存在の大きさを考えれば、ギャリング一人を残してこの町をガチガチに固め、ゲモンを誘き出して叩くという作戦はそこまで悪いものではないような気もしてきた。
勇者を信用していないわけではないが、彼らがゲモンを取り逃がす可能性がないとは言えない。そうなればゲモンは神鳥の杖の導きに従ってU.S.A.を強襲するだろう。機動力の高いゲモンに有効な対空砲などの類の兵器は地下では使えない。さらにその上、激戦になればギャリングの言う通り被害は甚大なものになり、ベルガラック住民どころか避難生活中のリブルアーチ住民、文化交流でU.S.A.を訪れているアスカンタ王国民にも被害が及びかねない。
初めに聞いた時はまた面倒なことを…と思ったが、総合的に考えてみればかなり合理的な考え方である。
「どうだ、ドルマゲス?」
「…。」
俺と同じ考えに至ったのであろうサーベルトと師匠は頷く。一方、俺が闇の世界に放逐されている間U.S.A.代表代理として兵法について熱心に勉強していたというキラちゃんは少し首を捻っていたが、現時点では他に方法が無いと判断したか、最終的には小さく頷いた。ユリマについては俺が首を縦に振れば、ゼロコンマ1秒後に首を縦に振るような子なので問題ない。
「ギャリング様がそう望まれるのであれば、我々もご協力は惜しみません。」
「恩に着る。我がベルガラックはU.S.A.と恒久的な協力関係にあることを約束するぜ」
というわけで、ギャリングの案は全会一致で採用された。
…はずなのだが、その後の手続きなどの話もまとまり、まさに俺たちが退出しようとした時になってフォーグとユッケが自分たちもこの町に残りたいとゴネ始める一幕があった。
「父よ!この町を愛する気持ちというならば私も同じです!」「お兄ちゃんの言う通りよパパ!私もこの町にいたい!」「父の息子として、父と共にあることは当然のことだと思うのですが!」「パパにだけいいかっこはさせないんだから!」
実年齢の不明なフォーグとユッケとはいえ、子どもは子ども。突然親が町で一人残り、お前らは疎開しろなんてことを言い出そうものならこうなるのも仕方のないことだろう。ギャリングは困惑しつつも、住民と同じように二人のことも説得するから気にするなとは言っていた。
が、剛毅なギャリングのことだ。何があるかは分からないし、もしもに備えてキラちゃんには移転先では毎日点呼を行い、人数に過不足がないか確認するように管理者に指示しておいてほしいと耳打ちしておいた。
…
「やれやれ、これでベルガラックは落着か」
「ギャリング氏の話では今夜中には荷物をまとめて移動させると息巻いていましたし、大丈夫でしょう。そこらへんは私の分身とキラさんに上手く指揮してもらいます。」
同時に、セキュリティサービスも大量に運び込まねば。この戦いに使用したセキュサも、その全てが廃棄しなければならないほどの損傷を受けたわけではない。U.S.A.からエンジニアを連れてきて修理させれば稼動は問題ないだろう。一般向けの在庫を動員すれば、数は十分足りる。
「それにしても、あの魔物どもが防衛に意欲を見せたのは嬉しい誤算だったな。奴らのタフさにはわしもドルマゲスも手を焼いていたことだ。暗黒神への時間稼ぎにも一役買ってくれよう。」
そう。なんと俺たちが倒したと思っていたレッドオーガとブルファングはあれからしばらくするとむくりと起き上がり、大した後遺症の兆候も無く活動し始めたのだ。流石に焦ったが、既に二体から暗黒の力は抜けており、戦意も無かったので試しに魔獣語で会話を試みると、自分たちの正気を取り戻させてくれたことに大いに感謝された。ゼシカやユリマ同様、ラプソーンに操られていた時のことは何となく覚えているようで、ヤツに復讐したいと憤慨していたため、この町にいれば必ずラプソーンは現れるはずだと伝えるとこの町に残ることを決めたようだった。
ギャリングにも起きたことをそのまま伝えると、住民が避難した後なら町の中に進入させても構わないと受け入れてくれた。先程まで自分を襲おうとしていた魔物だったとしても、味方になってくれるなら心強いと笑い飛ばせるギャリングはやはり器の大きい人間だ。許可が出たことを二体に伝え、ついでに戦闘に支障が出ないレベルの呪いを予めかけておいた。これでラプソーンに再度呪われることはないだろう。
「なら、次は予定通りゼシカの加勢に向かうか?」
サーベルトが両の拳を突き合わせる。鎧の汚れも剣の錆も落とされ、既に準備は万端なようで実に頼もしい。
「先に……いえ、そうですね。サヴェッラ大聖堂に向かいましょう」
俺が少し含みを持たせた言い方をしたからか、サーベルトが少し心配そうな表情になる。
「どうしたドリィ…?他に何か用事があったか?何かあるならぜひ言ってほしい」
「うーん…実を言うと、本当は先に『三角谷』にいく案を考えていたのですよ。」
「三角谷」
聞き馴染みのない言葉に仲間たちは一様に首を傾げる。まあ、地図にも名前の載ってない町だからな。
「…あっ!知ってますよ!昔ドルマゲスさんが一人で旅をしていた時に行ってたところですよね!ドルマゲスさんがいつも使ってる『ふぶきのつるぎ』もそこで手に入れたものだって!」
「ああ、三角谷。エルフと人間と魔物が共存するという奇妙な伝説に出てくる集落の名か。今思い出した。」
ユリマは彼女がまだユリマちゃんだったころに俺がした話を覚えていたらしい。私の方がドルマゲスさんに詳しい!とキラちゃんに絡み始め、キラちゃんはぐぬぬと悔しそうにしていた。一方の師匠は文献か何かで三角谷のことを知っていたようだ。なら三角谷については詳しく説明しなくても大丈夫だろう。
「それです。三角谷にはこの世界の『暗黒大樹の葉』がありまして。時間があれば回収できればと思っていたのですが…」
それに、三角谷には非常に珍しい「人語を話す温厚な魔物」が大量に棲息している。彼らをU.S.A.に招聘できれば魔物と人間の最後の架け橋になってくれるはずなのだ。そうすれば最早防衛力としての魔物の登用にも憂いがなくなる。
「成程。では行かないことに決めたのは何故なんだ?」
…正直、一番の理由は「なんか勇者のことが心配になってきた」である。レティシアで彼らと出会った時の微妙な違和感が、ベルガラックの余力を残したうえでの完全防衛と結びつき、だんだんと嫌な予感に変わっている。なにか選択を間違えたかのような言い得ぬ不安が背中から這い上がってくる感じ。
勇者はゲモンに勝つことができるのか…?
これはあくまで転生者…ゲームプレイヤーとしての倫理観、あるいは考え方であり、この世界で生きている存在の前では口が裂けても言えはしないが、勇者たちが死ぬこと自体は『大きな問題ではない』と俺は考えている。彼らは教会で復活することができるから。この前も「死ぬことにも慣れた」とゼシカは笑いながら言っていた。これは俺たちにはない、神の加護を受ける者の特権である。そして…賢者。法皇と院長。当然、死んでいいとはこれっぽっちも思ってはいない。だからククールの意見に反論せず彼らを最速で差し向けたわけだし。…だが、少々冷酷な言い方をすれば、彼らがもし命を命を落としたとしても、ラスト一人の賢者であるギャリングを確保している間はラプソーンも復活しない。
最悪のパターンは、賢者二人が殺された上で、ラプソーンが無限の復活能力を持つ勇者を俺のように煩わしい存在と認め、封印してしまうことだ。次も俺が封印された時のように上手く封印を解除できる保証はない。俺たち5人に次ぐ世界最大級の戦力を失うわけにはいかないのだ。
と、妹が勇者をやっているサーベルトを前に「実力不足が心配」とまでは言えないので、単純に「ゼシカさんたちの加勢に向かう方が重要だと判断したからですよ」と説明した。サーベルトは納得し、次の行き先はサヴェッラ大聖堂に決定した。
そうして、ベルガラック移転の準備を進めるために残ったキラちゃんと、『
ああ、こうして考えているうちにますます不安になってきた。さっさとサヴェッラ大聖堂に向かおう。ラミアがいてくれたら一瞬で着くんだけどなあ。
ドラクエの世界にアイドルが出てきたことは…おそらくないですよね。一応、称号としては「リトルアイドル」や「みんなのアイドル」、装備にも「アイドルスーツ」などがあったはずなので、概念としてはあるんだとは思いますが…。きっとドラクエ世界では「踊り子」がアイドル的な立ち位置にあるんでしょう。違ったらごめんなさい。
ならユリマ…なれるぞ!この世界の“アイドル”その先駆けに!激重アイドルとして!