型月知識持ち転生者の記憶をうっかり受け取ってしまったカルデアスタッフくんの話。

プロットとはじまりだけがずーっと執筆中で腐っていたので供養します。
始まりだけ。

書いたのはまだ2部が始まる前ぐらいで、ガバガバですが、供養なので多めに見てください。


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※続きません


テセウスの船

 __大地が燃えていた。

 肥大化した生き物が暴走し自壊していった。

 黒く壊れた破壊の軍勢。

 文明を食らいつくす破壊の巨人。

 

 わたし(・・・)はそれをぼんやりと眺めていた。

 

 わたしがまだ砕けてないのはただの幸運に過ぎなくて、いずれその破壊の手に押しつぶされるのだろう。

 文明も知性も全て奪われて更地になっていく。

 生き物は汚染されて致命的に壊れていく。

 何も残りはしない。何一つとして。

 そう、神様だって例外じゃない。

 それほどまでに理不尽な存在なのだ、あれは。

 

 わたしは知っている。

 巨人が一体なんであるか。

 

 わたしは知っている。

 巨人は星の息吹によって斃されると。

 

 わたしは知っている。

 残された脅威もはるか遠い未来で取り除かれると。

 

 知っていても、今の自分の窮地はどうしようもなく。こんな使えない知識もいずれ奪われ消えていくのだろう。

 

 それでも、そう。

 何かを残したいと思うのは可笑しいことだろうか?

 

 

 ──どうだい、好奇心旺盛な魔術師(きみ)

 

 

 ***

 

 ピシリと、何かが割れた音がした。

 脳が軋むように痛み、赤く明滅する視界はぐらぐらと揺れる。

 割れたのは自分の頭なのだろうか。

 いや、割れていなければこんなに痛い訳がないからそうに違いないだろう。

 では何故割れた?

 巨人に潰されたのであれば痛みも感じず、わたしという存在はもう奪われている筈だ。

 では、わたしは……。

 

 待て。自分の一人称は俺だった筈だ。

 白い巨人にあったことなんてないし、こんな知識も持っていない。

 壊されていった生き物も文明も俺が知っているものではない。

 俺は、わたしじゃない。

 

 ──頭が急にクリアになった。

 いつの間にか倒れていた自分の手の中に、音の原因はいた。

 今朝友人から送られてきた宝石。

 三角柱の青紫色の美しいそれは、見るも無残に砕けてしまっていた。

 今の現象はこの宝石によるものなのだろうから、砕けてしまってよかったと思う。

 

 しかし今の現象はなんだったのか。

 思考を分割させ、高速で分析する。

おそらくこの宝石に記録されていたある人物の記憶が俺の脳に流し込まれた。

あんなものはいままでの俺の常識には存在しないが、その人物の記憶によるとアレは確かに俺たちの世界で起こった事実であるらしい。

正気か?どこぞのとち狂った魔術師がお遊びで作ったジョークグッズと言われた方がまだ信用出来る。

しかし、ジョークグッズだと割り切るにはあまりにも生々しく重要な情報が混じっている。

この記憶にはフィニスカルデアの情報があった。

 そして、この先で起こるであろう地獄が。

 恐ろしい爆弾が。

なんということだ。

これがもしジョークでなければ、世界は。

 

 

 自室を出て、暫く歩く。

 目的地はただ一つ。

 駆け出したいほど焦っていて、止まってしまいたいほど怖くて、それでも足は前へ進む。

 そうして、その部屋の扉が目の前に来てしまった。

 

 入るか、入らないか。

 迷う意味は、ない。

 

「はーい、入ってます……て、なんだキミか」

 

 ふわふわしたオレンジの髪の青年がいた。

 彼は、彼は医療部門のトップで、どことなく頼りないしサボり癖のある自分の知り合いで。

 ……元、英霊だったかもしれない人。

いや、ないだろう、このだらーっとした男が?ないない……やっぱあれはジョークグッズだったに違いない。

こちらの情報を読み取って勝手に不安の種を撒き散らすタイプなんだろう。

そう安心したくて。

でも、そう。

 

「もうすぐレイシフト実験が始まるけど、キミはなんでこんなところに?」

 

 あんたこそここで何やってんだ、とか。

 さっきまで気を失ってたんだ、とか。

 話を繋げる言葉が、何故か喉から出なくて。

 頭の中の知識がひたひたと囁いてくる。

 だって、そうだ。

 記憶が、その情報が正しいのならば。

 もうすぐ事が起きるはずなのだから。

 

「なぁ、」

 

 掠れて出た声は、後ろの扉が開く音に消された。

 青年のオーバーリアクションを無視して振り向く。

 ああ、その姿を知っている。

 もふもふしたリスのような獣を乗せた見慣れぬ黒髪の少年。

 そう、この出会いが運命ならば。

 俺は全て知っている。

 

 

 ***

 

 少年、藤丸立香は新しい友人(?)の話をぼんやりと聞いていた。

 カルデアの構造の話は確かに興味深かったが、先ほどのような睡魔が時折襲ってくる。所長の平手では足りなかったらしい。

 ぼっちであるDr.ロマンは久しく人と話していないのだろうか、近所のおばちゃんぐらいのマシンガントークだ。

 いやいや、新人の自分を気遣ってるのかもしれないし失礼な想像はやめておこう。

 

 ふと、隣を見た。

 真面目そう、というかお堅そうなイケメンが半目になっていた。

 怖いとは思うが、先ほどうっかり部屋で寝過ごしたという話を聞いているとまだ眠いのだろうかという親近感がわいてくる。こうみえて天然なのかもしれない。

 セルゲイと名乗った彼はマスター候補ではなくスタッフらしいが、これからも仲良くなっていきたい。

 

 などと勘違いしつつ立香が話を聞き流していると、Dr.ロマンに通信が入った。

 どうやら、彼の力が必要らしい。

 しかし本来彼がいる医務室と比べてここは少し遠い。

 さっさと行けば良いのにまだまだ雑談したいのか、聞いてもいないことペラペラ話してくる。

 今話しているそのレフ某さんが大至急来て欲しいと言ってた気がするのは気のせいなのだろうか。

 半分意識を飛ばしながら聞いていたらケーキという言葉が聞こえた。

 え、ケーキ?と聞き返そうとして。

 いきなり周りが暗くなった。

 鳴り響くアラートは睡魔を吹っ飛ばし、立香はアナウンスをしっかり耳にした。

 ──中央管制室で火災が発生した、と。

 

 

 ***

 

「ああ、やっと繋がった! もしもし、こちらカルデア管制室だ、聞こえるかい!? 」

 

 そんな大声出さなくても聞こえるだろう、と思いつつ作業を続行する。

 

 記憶通りに事件は起きた。

 そして記憶通りコフィンなしで彼らはレイシフトした。

 知っているからと言って、今の自分の窮地はどうにもならない。

 まさに死にかねない作業量だ!

 こんなことを考えていないでこの思考も自分の仕事に回すべきなのだろうが、現実逃避したくなる。

 今まで使っていた機能の大半が使えなくなっている中、なんとか復旧できるものは復旧しつつ空間固定ついでにデータも取って……ああ、出力が安定しないから上手くいかない!

 今まさに猫の手も借りたい状況というやつだ。

 高速演算して意思疎通出来る猫とか存在しているならば素晴らしいと思う。まぁありえないが。

 ああ、言ってる端から色々足りない!

 

「ドクター、通信が乱れています。通信途絶まで、あと10秒。」

 

 藤丸立香に通信で説明しているドクターに報告する。

 予備電力では無理がある。

事態は刻一刻と悪化している。

というかまったく記憶の情報が役に立っていないんだが???なんの為に存在するんだ。

地獄のような未来が待ってることを告げているだけでは?

 

 

「シーキュー、シーキュー。もしもーし! 」

 

 いままさに地獄なう。

 心なしか同僚達もげっそりしている。

 藤丸立香が特異点という地獄で頑張っている裏でこんな別の地獄が展開されているとは……。

「わたし」も思ったことだが、この情報全く使えない。

人理焼却の実行犯だとか知っても何に使うんだ今。いや、将来的に使える情報もあるのは確かだがそんなことを考えている余裕は無い。

 

「レフは? レフはどこ? レフを出しなさい! 」

 

 所長の甲高い声が聞こえた。

 ──そいつ犯人です。

 なんて言っても信じられないだろうし、言う暇もない。

 元気そうな所長、しかしその実……いや、止めておこう。

 

 こちらの事情をドクターが説明していると思わぬ仕事が追加。コフィンで凍結保存するというものだ。所長発案である。

 丁度その部分の知識が欠けていたのもあるが、思いつかなかった。やはりこの知識使えない。

 同僚達で顔を合わせる。

 で、誰がやるよ、と。

 ドクターから指示があるだろうが、その作業をしている間こちらの作業をしている人員が減る。

 無駄な外部への通信を試みてる人手を回せればいいのだが、説明できないので仕方なく放置だ。

 

 ちなみにその時ドクターは所長をチキン呼ばわりしていた。そんなんだから管制室から追い出されるのでは。そのおかげで助かったわけだが。

 

 その時同僚の中で一番有能な奴(こいつが生き残ってて本当に良かった)がついにあるシステムの復旧に成功した。

 そう、英霊召喚システムだ。

 丁度一回分の聖晶石チャージ(命名そのままである)が済んでいるらしい。

 レイポイントで繋がることが出来ているので、喚び出したサーヴァントをすぐ送ることが出来る。

 

 藤丸立香は素人マスターだ。

 カルデアのサポートは勿論戦闘時以外は霊体化させたとしても魔力の消費は今と比べて段違いだろう。

 魔力枯渇などで窮地に陥っても、レイシフトの修理が済んでない今助けることも出来ない。

 しかし、戦闘力の不安がある。

 さてどうしたものか。

 

「俺、頑張ります」

 

 しかしそこはさすが型月特有主人公というのだろうか。

 男前に藤丸立香は言い切った。

 所長も文句言いたげだが、チキンな彼女のことだから戦力が増えることでより安全になることに異論はないようだ。

 彼女自身マスターの資格さえあれば十全な魔力供給が出来るほどの魔力量を備えているからだろう。

 マシュも先輩が言うなら、と賛成。

 召喚に踏み切るとこになった。

 

 さて。

 では彼らが召喚している間に自分の仕事も終わらせてしまおう。

 藤丸立香がどんな英霊を喚ぶか興味ない訳ではない。

 しかしこのシステムは復旧させなければならない。

 

 並行移動(スライド)システム。

 並行世界の自分達に限定的に助けて貰う、ようするにフレンドサポート機能だ。

 ムーンセル内ではないがある魔法使いの気紛れによって実装に至ったこれが使えれば、藤丸立香の負担なく戦力増強が出来る。

 復旧すれば当然こちらの仕事は増える。

 今日もカルデアは地獄だ。

 

 

 ***

 

 




この後、他の転生者の記憶とかドンドンつっこまれて元のセルゲイとしての記憶が薄れていき、カルデアスタッフセルゲイという皮を被ったオリ主転生者になっていく予定でした。
2部の白紙化の記憶も押し付けられてさぁ記憶を頼りに世界を救おうってされるだけのお話。

しかしまさかセファールの話が2部になって出てきたり、昔の型月作品のあれやこれやなのがどんどん出てきてびっくりですよね。
FGO完結したらちゃんとしたの書きたいです。

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