とりっく おあ とりーと!前編
今日は紅魔の里でハロウィンと言う行事があって、里が賑わう日だ。
ハロウィンって前の世界でもあったけど、里に伝わっているハロウィンは日本風のハロウィンで、ようは仮装して楽しみましょう、って感じの緩いイベントだ。
ハロウィンの日には好きなコスプレをして、知り合いの家に行って、『お菓子をくれなきゃイタズラするぞ!』って言うと、お菓子を貰えるので、めぐみんは毎年沢山の家を回って、数日分のお菓子を――ご飯も調達しているらしい。
私も毎年参加してたけど、去年まではお菓子をあげる側だったから、今年は貰う側で参加してみようと思う。一応、マフィンを作ってきたから渡す事も出来るけどね。
ハロウィンは夕方から参加者が増えていく。本来は夜から始まるイベントだったけど、子供を夜に歩かせるのは不安と言う親の意見が取り入れられて、夕方から始まるようになった。
そろそろ夕方も近くなってきたし、皆に会いに行っちゃおうか!
私ってこう言う行事に参加するのって大好きなんだよね! コスプレして参加するのは始めてだし、いつもよりテンションが上がっちゃってるかも!
せっかく可愛くコスプレしたから皆にも見て貰いたいし、じゃあ行ってきまーす!
パパとママに行ってきますと挨拶をして、扉を勢い良く開けた。
扉の前には、突然扉が開いた事に驚いた表情をしてる女の子が居た。
めぐみんだった。
あれ、なんかこの光景前にも……。突然の事に驚いたのか、私を見ながら固まっているめぐみんに声を掛ける。
「お菓子をくれないとイタズラしちゃうよー! ねっ、めぐみん! 今年はコスプレしたんだけど、似合っているかな?」
「…………」
反応が無いけど、どうしちゃったんだろう?
「もしもーし。めぐみん大丈夫? このコスプレ似合ってなかったかな?」
「…………はっ!? 何なんですかその衣装は!? 似合いすぎです!」
この服装はめぐみんには好評みたいで、似合いすぎだなんて言われちゃった。めぐみんに褒めて貰えたの嬉しいな。
「そうかな? えへへ、ありがとうね!」
「髪型は普段と違ってツインテールにしていて、小さな角の生えたヘアバンドを着けていて小悪魔らしさが出ていますし、服装も何ですか!? メイド服なのに! 清楚さの欠片も無い、そのミニミニなスカートは何なんですか! しかも、肩出ししちゃってるじゃないですか! すとれはサキュバスだったんですか!? 胸元はキチンと隠されてるので、そこはよしとしましょう。ですが、ピンクのリボンを外したら、胸元が完全に開いてしまいますよね!? 外されたいんですか? いや、外しますので近くに寄ってきてください!」
凄い勢いで捲し立てられたけど、多分このコスプレを褒めているんだよね?
「えっと、私のコスプレの描写説明ありがとうね!」
「メタい事言うの禁止です!」
メタい事ってなんだろうねー? 私、分からないなー。
「ふふっ、とにかく今日の私は小悪魔メイドだよ! ねえ、私の服……似合ってますか? ご主人さま?」
「わ、私がご主人さまですか!?」
驚くばかりで返事をしてくれないご主人さまの手を包むように握って、もう一度問いかける。
「似合ってるかな?」
「にゃ、似合ってます……」
「ご主人さまのコスプレも可愛いよ」
「あ、ありがとうございます……」
顔を真っ赤にして、俯くめぐみんが可愛らしい。下を向いているから頭にある黒い猫耳が良く見えている。
めぐみんのコスプレは黒猫だよね。黒い猫耳を付けている以外は普通で、学校の制服を着てるだけだとしても、猫耳を付けてるめぐみんって可愛すぎだと思うの!
「今年は猫ちゃんなんだね!」
「ええ、すとれが猫を好きって言ってましたので……」
「覚えててくれたんだね、嬉しいよ! それにしても、ほんとに似合っているね!」
めぐみんって動物で例えるなら、絶対猫だと思う。自由気ままな性格だし、普段はツンツンしてるのに、たまーに甘えてくる事があったりで、猫っぽいなって思ってた。
「あ、可愛いご主人さまにはこれをあげるねー」
「マフィンですか。ありがとうございます」
めぐみんの小さな手にマフィンを乗せると、両手で抱え込んで嬉しそうに笑ってくれた。めぐみんは私のお菓子を楽しみにしててくれたから、扉の前に居たのかな?
「ふふっ、とっても可愛い猫ちゃんなご主人さまには、特別食べさせてあげちゃおうかなー?」
「だ、だ、大丈夫です! 失礼しましたー!?」
あ、逃げちゃった。構いすぎると逃げちゃうのも猫っぽいよねー。あー、可愛かった。
じゃあ、里を散策しに行こうか。次は誰に会えるかなー?
商店街に向かって歩いていると、話をしている二人の女の子が居た。ふにふらちゃんとどどんこちゃんを発見!
早速、トリックオアトリートしに行っちゃおう!
「ふにふらちゃんとどどんこちゃん見っけ! お菓子をくれてもいたずらしちゃうよー!」
「いやいやいや!? せめてお菓子を渡したら、いたずらは止めてよね!?」
「すとれじゃんおはよ。ってあれ……? ふにふらと衣装被ってない?」
あ、ほんとだ。ふにふらちゃんは私と同じ小悪魔メイドの衣装を着ていた。同じ服屋で買ったのかな?
「ふにふらちゃんお揃いだね! いえーい!」
「い、いえーい! って、何で同じ服着ちゃってるのよ!? えっ、待って! 同じ服だよね? なんでそんなに可愛くなっちゃてるの!?」
ふにふらちゃんにハイタッチの構えをすると、ノリよく返してくれた。その後、すぐにノリツッコミをしてきたのは流石だね。どどんこちゃんに、紅魔族随一の弄られ芸人って言われているだけはある。
「着てる人の可愛さが違うんだよ」
「どどんこうっさいわよ! えぇ……ほんとに同じ服なのよね? へこむわ……」
「胸もふにふらの方がへこんで――」
「どどんこ、そろそろ本気で怒るわよ?」
普通にふにふらちゃんの小悪魔メイド姿も可愛いと思うけどねー。どどんこちゃんは執事服を着ていて男装姿になっている。どどんこちゃんって身長が高いから男装が凄い似合っている。
「二人はメイドと執事さんなんだね! 良い組み合わせだね。どどんこちゃんの執事服姿格好良いよ!」
「ありがとう。他のクラスメイトにも好評だったんだよね。このかませメイドも好評みたいで、意外と褒められていたよ」
「ふふ、結構可愛いって言ってもらえたのよね! ……って誰がかませメイドよ!?」
メイドが執事の胸元をポコポコと叩いているけど、執事の方は全く気にしないでされるがままになっている。二人は相変わらず仲良しだね!
「そだ。今年もマフィンを焼いたからあげるね。はいどうぞ!」
「ありがと! これが、毎年の楽しみなのよねー!」
「ありがとう」
二人にポシェットから取り出したマフィンを渡す。
「すとれのツインテールって珍しいわよね。始めて見たかも」
「私も似合ってると思う。ふにふらよりも」
「どどんこあんたね! で、でも今日だけよね? すとれが毎日、ツインテールになったら、私って完全にキャラ負けしちゃうんだけど……」
「既に下位互換じゃな――」
「こらー!」
またポコポコと叩いているふにふらちゃんに、どどんこちゃんは『まあまあ、落ち着いて』と大人な対応をしてる。
「あんたが余計な事を言いまくるからキレてるのよ! 落ち着けるか-!」
「二人とも仲良しだねー。そろそろ私は他のところに行こうかな? じゃあ二人とも、ハッピーハロウィン!」
ハロウィンを楽しんでいる二人に挨拶をして、他の友人を探して歩いていく。
しばらく歩いていくと、『サキュバス・ランジェリー』の目の前に着いた。中を覗くとテーブルを拭いているねりまきちゃんの姿を発見した。
「お邪魔しまーす! ねりまきちゃん! お菓子をくれないとご主人さまにしちゃうよー!」
「えっ!? それだと、作ったお菓子はあげれないじゃん! ご主人さまになりたいんだけど! てか、めっちゃ可愛いね!?」
「ありがとう! ねりまきちゃんもシスター服似合っているよ! ……でも、なんで修道女の格好なの?」
体全体を隠すような大きいサイズの修道服に身を包んでいて、普段よりも大人っぽく感じる。首元には金のロザリオが掛かっていて、本物のシスターみたい!
「ウチってサキュバス・ランジェリーでしょ? 今日くらいはサキュバスの反対側っぽいシスターになっちゃおうかなってね!」
「そう言う事だったんだね! でも、今日の私は小悪魔メイドなんだよね! だから、今の私はサキュバスなのかもよ?」
「すとれはいつでも小悪魔でしょ。よし、シスターの私が浄化しちゃうよー!」
「わっ!?」
突然正面から抱き着いてきたねりまきちゃんを両手で受け止める。受け止めた後に、膝裏と背中に手を回して抱きかかえて、お姫様抱っこの体制になったところで、ねりまきちゃんに顔を近付けて問いかける。
ノリとテンションと勢いのままに、お姫様抱っこしちゃってた!
でも、今日の私は小悪魔メイドなんだから、小悪魔らしく演技をしてみようか!
「ふふっ、どうやって私を浄化するの……?」
「ヤダこの子、本物のサキュバスじゃん……。私シスターなのに堕落しちゃうかも……」
「ねっ……一緒に堕落しちゃおう」
「は、はい……」
ねりまきちゃんを抱きかかえながら近くの椅子に座って、ポシェットから一口サイズのマフィンを取り出して。
「じゃあ、目を閉じてね。あと口も開けて」
「わ、わかった……」
ねりまきちゃんが雛鳥のように口を開けていて可愛らしい。その可愛い口にマフィンを入れて、指で軽く押し込んだ。
ねりまきちゃんは突然の甘い味に目を見開いた。それから、むぐむぐと咀嚼し、飲み込んだ。
「マフィンは美味しかったけど……。えっ、キスは……?」
「えっ、キス!? ねりまきちゃんはキスをして欲しかったの……?」
お姫様抱っこしたり、抱き着いたりは普通に出来るけど、キスは流石に恥ずかしいかな……。
「わっ、わああ!? 冗談! 冗談だからね!?」
「そ、そうだよね! 女の子同士でも流石にキスは恥ずかしいよね!」
キスするところを想像しちゃったのか、お互いに顔が赤くなっている。少し見つめ合った後に、ねりまきちゃんは私の膝上から降りて、顔をパタパタと手で仰いでいる。
「そ、そうだ! これから夜に向けて仕込みをしないといけないんだった! す、すとれへのお菓子はこの箱に入っているから持って行ってね! それじゃ!」
「私も手伝おうか――あ、もう裏に行っちゃった」
手伝いは要らないみたいだし、それなら次のところに向かおうかな?
あ、ねりまきちゃんがくれたお菓子ってなんだろう?
受け取った黒い小さな箱は紅色のリボンで包まれていた。リボンをほどいて蓋を開くと、中にはショートケーキが一切れ入っていた。その上には、メレンゲ細工で作られた精巧な人形が二体、手を繋いで座っていた。人形は紅魔族の女の子かな? よく見ると、髪型や表情から、私とねりまきちゃんの人形だと分かった。
これは食べるのがもったいなくなっちゃうなぁ。メレンゲ人形って作るのが結構大変なんだよね。それを知っているから、こんなに可愛く作ってくれた事が余計に嬉しい。
「ねりまきちゃんありがとうねー!」
調理場に居ると思われるねりまきちゃんに大声で感謝を伝えてから店を出た。
次は誰に会いにいこうかな?
すとれ
小悪魔メイドにジョブチェンジした。
ハロウィンでテンションが上がっている。
メタい事言うの禁止!
めぐみん
黒猫カチューシャを装備した完全体めぐみん。かわいい。
ふにふら
小悪魔メイドにジョブチェンジしたけど、すとれと被った。
かませメイドって言われて涙目。
どどんこ
執事にジョブチェンジ。
ふにふらをからかいながらハロウィンを楽しんだ。
ねりまき
即堕ちシスターにジョブチェンジ。
心を込めてケーキを作ってた。
読んでいただきありがとうございます!
残りの子達は後半で登場します!
本編だとメタは禁止にしてるんですけど、番外編なのでお許しください!
ハロウィン編が一万字を超えちゃったので、前編後編にしちゃいました、すみません!
明日の19時に後半を投稿しますので、また読んでくれたら嬉しいです!