尊敬してますアクア様!   作:天道詩音

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旅立つまでは何マイル?

 

「昨日の卒業パーティーは楽しかったね!」

「にへへ、いっぱいプレゼントを貰っちゃった!」

 

 昨日は、私とゆんゆんの卒業パーティーをクラスの皆が開催してくれて、楽しい思い出が沢山できた。

 

 全員からプレゼントを貰ったり、一緒にご飯を食べたり、一発芸大会とかもあったりで、ずっと楽しかった。まあ、一発芸大会ではゆんゆんだけ滑って、落ち込んでいたけど……。それがゆんゆんの芸風だよね!

 

 私は料理を作って欲しいって頼まれてたから、得意料理の唐揚げとかハンバーグ、ポテトサラダを持っていった。皆美味しいって食べてくれたから作った甲斐があったよ。

 

「よかったね。私のプレゼントは色々貰えたけど、ゆんゆんはなにを貰ったの?」

「えっと、どどんこさんとふにふらさんからは可愛い髪ゴムを貰って、あるえからは小説を貰ったの! 私に似たキャラが主人公なんだって! 他にもね――」

 

 クラスメイトからプレゼントを貰えたことが凄く嬉しいみたいで、目をキラキラさせながら、貰ったプレゼントの事を紹介してくれるゆんゆんが可愛かったので、頭を撫でつつ話を聞いている。

 

「えへへ、でも一番嬉しかったのは、すとれのプレゼントしてくれたお揃いの紅い髪飾りだよ……! 永遠に保管するために、今度、王都の術師に封印魔法を掛けて貰うの!」

「いやいやいや!? ね、せっかく私とお揃いの髪飾りを買ったんだからさ、一緒に付けようよ!」

 

 お、重たいよ……。お揃いの髪飾りだったのに、片方が封印されちゃったら、お揃いじゃ無くなっちゃうじゃん。まあ、ゆんゆんだから仕方ないけどね。

 

「今度一緒に出掛ける時はお揃いの髪飾りをつけて出掛けようね?」

 

 一緒に出掛ける日の予定を組んだ事を喜んでる、ゆんゆんの手を引いてめぐみんの家へ歩いていく。今日は私達の今後について三人で話す予定だ。

 

 私達全員が学校を卒業した今、いつでも里を出られるようになった。めぐみんのお金が貯まっていればだけど……。

 

 私はねりまきちゃんの酒場でアルバイトしていたから、お金に余裕はあるし、ゆんゆんも族長の娘だからね。旅立ちの資金は出してくれるらしい。

 

 でも、めぐみんの家はそれほど裕福じゃないから、里を出るための資金は自分で稼がないといけなかったんだけど……最近はずっと引きこもってこめっこちゃんと遊んでいたみたいだからなぁ。

 

 お金が足らなかったら私が出して、出世払いで返してもらえばいいか。めぐみんも冒険者としてなら働けるよね? たぶん……。

 

「あー! ごはんのお姉ちゃんだ! おはよー!」

「ふふっ、こめっこちゃんおはよう! 今日も元気だね」

 

 道の反対方向から歩いてきたこめっこちゃんが私を見つけた瞬間駆け出して、抱き着いてきた。ほんとにこめっこちゃんって可愛いよね!

 

「今日もお弁当を持ってきたからね。あ、今日はこめっこちゃんの家でめぐみんとお話してるから、後で一緒に食べよっか?」

「うん! じゃあ、わたしも帰る!」

 

 そう言ってゆんゆんと反対側の手を握って、私に笑いかけてきたこめっこちゃんは天使に見えた。

 

「こ、こめっこちゃんおはよう!」

「…………だれ?」

 

 あっ……またゆんゆんがこめっこちゃんに忘れられてる……。影が薄すぎて記憶に残らないのかな……。ドンマイゆんゆん!

 

「ええええ!? 私、めぐみんのライバルのゆんゆんよ! 何度も会っていたよね……!?」

「ニートの姉ちゃんのライバル? じゃあ、ゆんゆんもニートなの?」

「違うからねーーー!? それより、めぐみんって妹にニートの姉ちゃんって呼ばれちゃってるの!?」

 

 残念ながら、めぐみんはニートなんだよ。数日前にも、『私を働かせない世界が悪い』って騒いでたけど、その日から一度も家からも出なくなっちゃったんだよね……。今まではこめっこちゃんと外で遊んでたりもしたのに……。

 

 昨日なんか『すとれの子供になるので、一生お世話して欲しいです』なんて、おかしな事を言い始めてたから、そろそろ冒険者にさせないと本気でダメになっちゃうかもしれない。同い年の娘ができるのはさすがに嫌かなぁ。

 

「ふーん。あ、ごはんのお姉ちゃんはニートじゃないよね?」

「うん。学校は卒業したけど、ねりまきちゃんの酒場でアルバイトしてるからねー」

「ニートの姉ちゃんがクビになったとこ?」

「う、うん。初日で辞めさせられちゃってたね……」

 

 めぐみんとも一緒に働けるの楽しみって、笑い合ってから一時間後にはめぐみんはクビになっていた。ちょっと身長が小さい事を指摘されたからって、しゅわしゅわを顔面に投げつけるのはダメだと思うよ……。

 

「ゆんゆんは働いてないの?」

「えっ……!? 卒業したばかりだし働いて無いけど……」

「じゃあニートだ」

「えええっ!? 今は働いてないけど、すとれとこれから冒険者になるんだし……。あれっ? でも今の私はニートだった……?」

 

 た、確かに今は働いてないけど、もうすぐ旅立って冒険者になるんだから、気にしなくていいと思うよ。

 

「ねえニートはなんで私の家に来るの?」

「えっ、こめっこちゃん待って! 私の事をニートって呼ぶのだけは止めて欲しいなぁ! ちゃんとゆんゆんって名前があるからね……!」

 

 ゆんゆんが必死に説得しようとしてるけど、こめっこちゃんはお腹を押さえて私を見るだけで、ゆんゆんの話を全然聞いていない。

 

「おなかへった」

「あ、じゃあおやつに食べる用に持ってきたクッキー食べる? 焼きたてだぞー!」

「たべる! ごはんのお姉ちゃん大好き!」

「あれ? 私の対応がすとれの時と全然違うんだけど……。私もお菓子を毎回あげてるのに……」

 

 おいしそうに笑顔でクッキーを食べているこめっこちゃんを見てると癒やされるんだけど……反対側には、絶望した表情のゆんゆんが居て悲しくなってくるので、ゆんゆんの口にもクッキーを押し付けた。むぐむぐとクッキーを食べると、ゆんゆんも幸せそうな顔をしたからよかったよ。

 

「こめっこちゃんのお家に到着だね!」

「とーちゃく!」

 

 ゆいゆいさんに挨拶しようと思ったら居なかったので、早速、めぐみんの部屋のある二階に向かった。

 

「ニートの姉ちゃん! ごはんのお姉ちゃんとニートをつれてきた!」

「私をニートのお姉ちゃんと言うのは止めて欲しいと何度も……って、今ゆんゆんの事もニートと呼びましたか!」

「わ、わたしはニートじゃ……」

「なにを言ってるんですか! 学校を卒業してからあなたは無職でしょう! よくできましたね、こめっこ! ゆんゆんの事はニートって呼んでいいですからね!」

「ねぇ、めぐみん。すっごいブーメランが刺さってるよ……」

 

 うわぁ。めぐみんが自分の事を棚に上げて、ゆんゆんの事をニートって連呼しちゃっているよ……。

 

 最近、引きこもってたからゆんゆんと会えてなかったし、久々に会えて嬉しかったからって、からかいたくなっちゃったんだよね。でも、半年くらいニートしてるめぐみんの台詞じゃないと思うよ……。

 

「こらっ! ダメだよめぐみん! ゆんゆんの事が好きだからってからかいすぎたら嫌われちゃうよ?」

「にへへ、めぐみんったら、私のこと好きだからからかってたんだ!」

「ちょ、ちょっとすとれ! 私がゆんゆんの事を好きだなんて、おかしな事を言うのは止めてくださいよ!」

 

 めぐみんに服を掴まれて揺らされる。照れなくていいのにねー。とりあえず素直になれないめぐみんを撫でておこう。

 

「それよりもさ、めぐみんは紅魔の里を出たらどこに向かうの?」

「アクセルに向かう予定ですね。お金が貯まったらですけど……」

 

 引きこもってたら、一生お金は貯まらないと思うよ……。

 

「それなら、私とゆんゆんも一緒に行くからよろしくね。いつ行こうか?」

「ちょっと待ってください! 私は自立して、一人で旅をする予定なんです!」

「えっ? ニートのめぐみんがなに言ってるの?」

「そこ! ニートのゆんゆんは黙っててください!」

 

 めぐみんが自立して一人旅かぁ。炊事洗濯を一切できないのに、無理じゃないかな……?

 

「ねえ、めぐみんは自分でご飯も作れないし、洗濯もしたこと無いでしょ? お金の管理もゆいゆいさんに任せてたよね?」

「や、やればできますから!」

 

「私、めぐみんが傍に居てくれないと寂しいと思うの。だから、一緒に来て欲しいな。お願い!」

「し、仕方ないですね! 親友にそこまでお願いされたら、一緒に行くしかないですよね」

 

 めぐみんが一緒に来てくれる事になってよかったよ……。正直、めぐみんって他人を頼るのが苦手だし、一人で旅してたら誰も頼れないまま、大変な目に遭うんじゃないかって不安だったんだよね。

 

 私とゆんゆんには心を開いてるし、なんでも言い合える私達が傍に居れば、知らない場所だとしてもめぐみんも気兼ねなく過ごしていけると思う。

 

「ありがとう! これからも一緒に居てね!」

「もう、私と一緒に居れるのが嬉しいからって、そんなに強く抱き締めないでくださいよ。ふふっ」

 

 私達三人が一緒ならどこでも楽しく生きていけそうだよね。どうやってアクセルに行くのかとか、日程は決める必要はあるけど、今はめぐみんも一緒に来てくれる事がとにかく嬉しかった。

 

「ねぇ、ごはんのお姉ちゃんはニートのお姉ちゃんとどこかに行っちゃうの……?」

「私も学校を卒業したからね。里を出て冒険者になるから、めぐみんと一緒に行こうとしてるんだけど」

「えっ……。ごはんのお姉ちゃん居なくなっちゃうの……。やだぁ!」

 

 こめっこちゃんに涙目で強く抱き締められて、旅立つ気持ちが消え去りそうになる……。こんなに引き留めてくれるなんて思わなかったよ……。わ、私里に残らなきゃ!?

 

「ごはんがなくなっちゃう……」

「そ、そうだよね。ご飯の心配だよね……」

「大丈夫ですよこめっこ。私が旅立ったら、私の食い扶持が減るので、お昼も家のご飯が食べられるようになりますよ」

 

 こめっこちゃんの今後も心配だったけど、それなら大丈夫だね。ずっとこめっこちゃんにお昼ご飯を作っていた身としては、どうしようかと悩んでいたんだよね。私がお金を出して、ねりまきちゃんにお昼ご飯を作って貰おうかって本気で考えてたからなぁ。

 

「でも、お家のごはんおいしくないよ?」

「い、いえ……。すとれのお弁当と比べたらあれですけど、普通の味ですよ?」

「味ないもん」

「塩分は足らないですけど、栄養は足りてますから……。す、すとれどうしましょう!?」

 

 ゆいゆいさんって料理は上手いんだけど……調味料を買うお金が無くて、素材の味しかしないから、こめっこちゃんには美味しく感じないよね……。

 

「大丈夫だよこめっこちゃん! 当面の塩は私が買うから、たくさん使っていいよ!? 私達がお金を稼げるようになったら、ご飯も送ってあげるから安心してね!」

「ごはんのお姉ちゃん大好き!」

 

 あはは……。ほんとに現金な子だなぁ。可愛いけどね!




ゆんゆん
卒業パーティーでクラスの皆からプレゼントを貰えてニコニコ笑顔。
なお次の日、こめっこにニート呼ばわりされて落ち込んだ。

めぐみん
特大ブーメランを装備した引きニート。
ニートを卒業する日は近い。

こめっこ
花より姉より団子な女の子。

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