尊敬してますアクア様!   作:天道詩音

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アルカンレティア!

 

 紅魔の里から旅立ち、最初に目に映ったのは――水と温泉の都アルカンレティア。澄んだ湖と、温泉が湧き出る大きな山に隣接するこの街は、到る所に水路が張り巡らされていた。

 

 建物は青を基調とした色で統一され、その街並みは美しく、そして誰もが活気に満ち溢れている。魔王軍が活発なこの世界にも拘わらず、ここは平穏だった。

 

 一度だけ魔王の手先と戦闘になった事があったらしいけど、それ以降、魔王の魔の字も見受けられないほど、ここには近づいてこないらしい。

 

 曰く。プリーストを数多く抱えるこの街は、魔王軍にとって戦い辛いから。

 

 曰く。この街は、水の女神、アクア様の加護に守られているから。

 

 ――曰く。

 

「ようこそいらっしゃいましたアルカンレティアへ! 観光ですか? 入信ですか? 冒険ですか? 洗礼ですか? ああ、仕事を探しに来たならぜひアクシズ教団へ! 今なら、他の街でアクシズ教の素晴らしさを説くだけでお金がもらえる仕事があります。その仕事に就きますと、もれなくアクシズ教徒を名乗れる特典が付いてくる! さあ、どうぞ!」

 

 この街には大量のアクシズ教徒がいるから、それに関わりたくないから、など。

 

 私達は街に着いた途端、いきなりアクシズ教徒と思われる集団に声を掛けられた。私の尊敬しているアクア様を崇拝しているのがアクシズ教徒だ。

 

 それなら私のやる事は一つだけ!

 

「私、入信しま――」

「ちょっと待ってください!!」

「だ、だめえええ!!」

 

 私がアクシズ教に入信しようとした瞬間、必死な二人に止められた。そんなに必死になってどうしちゃったの……?

 

「すとれは女神アクアが好きでしたけど、アクシズ教徒になるのだけはダメです!」

「すとれは騙されてるのよ! アクシズ教徒って世界中で嫌われてるんだから!」

「そうですよ! 魔王軍すら関わろうとしないくらいヤバい集団なんですから!」

 

 必死な表情で、私の肩を揺さぶりながら、どれだけアクシズ教徒がヤバい集団なのかを説明される。確かに、パパとママからもアクシズ教徒には近づいちゃいけませんって言われてたけど、そんな怖い人達だったの……?

 

「えっ、そうなの……? 私と同じようにアクア様の事が大好きな人達の集まりじゃないの?」

 

 『全然違うから!』って強く二人に否定されてから、道路の端に連れられて、アクシズ教徒について説明された。

 

 アクシズ教徒には奇人変人、乱暴者、独善かつ自己中心的な人が多く、周囲からは煙たがられるらしい。たしかに、テレポート屋から出てきた人達全員がすぐにアクシズ教に勧誘されていたけど、皆逃げていってた。客観的に見たら、本当に煙たがられる事が分かった。

 

「じゃあ、入信するのは止めておこうかな……。入信しなくてもアクア様を大好きな気持ちは変わらないからね!」

「相変わらず、すとれは女神アクアの事が大好きなんですね。ですが、アクシズ教徒にならないなら問題ありません」

「わ、私も女神になれば、すとれに大好きって言ってもらえるのかな……?」

 

 めぐみんには小さい頃からアクア様の事を話してたから、納得してくれたみたい。

 

 ゆんゆんは私に大好きって言われたいからって、女神になろうとしているんだけど……。私の大好きってそんなハードル高くないよ……。

 

 それにしても綺麗な街だよね。この街を見て、本当に異世界に来たんだなって改めて実感した。

 

 紅魔の里って『混浴温泉』とか『猫耳神社』とか日本っぽい建物が幾つかあって、住民の皆も黒髪だし、何処となく日本を感じてたんだよね。

 

 でも、アルカンレティアの街並みはテレビで見た、ヨーロッパの街のようで、この世界って本当に異世界だったんだね。他の街の景色はどうなんだろう。まだまだ見たことの無いところは沢山あるんだから、いつかは私達で世界の色々な街を巡ってみたいね。

 

 よし、世界を三人で見て回るためにも、もっと頑張らないと!

 

「よーし、がんばるぞー!!」

「うわっ、いきなり大声出してどうしたんですか!?」

「なにをがんばるのか分からないけど、私もがんばるね!!」

 

 私と同じようにがんばると大声で言ったゆんゆんと、驚いてためぐみんの手を握って街の中央に向かっていく。

 

「ここから私達の冒険は始まるんだよ! まずは街を散策だー!」

「テンションが高いのはそう言う事ですか。いいでしょう、ついに爆裂魔法を放つ時が来ましたね!」

「街の中では止めてよね……!」

 

 街のメインストリートと思われる、大通りを真っ直ぐに歩いていく。左右には出店が広がっていて、フランクフルトやチョコバナナなど、よくお祭りの出店で並んでいた食べ物以外にも、『ところてんスライム』とか石鹸も売られていた……って、出店で石鹸ってなんで!?

 

 確かにその二つはアルカンレティアの名産品だけどさ……。変わった街だなぁ。

 

「めぐみんもゆんゆんも食べたいものがあったら言ってね! 特にめぐみんは食べ盛りなんだから!」

「私たち同い年なんですけど!? まあ、家族と朝食を食べたばかりですし、今は大丈夫です」

「いっぱい食べないと大きく……って、痛っ!? めぐみん痛いから!?」

 

 じゃれ合いながら進んでいると、道の横に冒険者ギルドの文字が見えた。おぉ、これがちゃんとしたギルドかー。紅魔の里にはギルドって無かったから初めて見た。ある意味ここが私達の職場だよね!

 

「よーし、ギルドに突撃だー!」

「ふっ、いいでしょう! 爆裂魔法を世に広める時が来ましたね!」

「つ、ついていきます!」

 

 建物に近づくと、中からは食べ物の匂いが漂ってきた。正面の大扉を開くと、中は広々としていて、冒険者と思われる人達で溢れていた。

 

「あ、いらっしゃいませー。お仕事案内なら奥のカウンターへ、お食事なら空いてるお席へどうぞー! それと、アクシズ教徒でしたら勧誘はお断りしてますので!」

 

 ショートヘアのウェイトレスのお姉さんが、愛想よく出迎えてくれた。ギルドの中を見渡すと、酒場が併設されていて、多くの人達が楽しそうに食事をしていた。奥にはカウンターがあって、その横にはボードがあり、討伐依頼や採取依頼などのクエスト依頼が沢山貼られている。

 

「すとれ、一番難易度の高いクエストを請けてやりましょうよ!」

「めぐみんには早いんじゃ……。だ、だから痛いよ!?」

 

 ボードの近くまでいってクエスト依頼を見てみると、一撃熊やグリフォンのような、紅魔の里の近くにも居るモンスターの討伐依頼や、悪魔や悪霊系モンスターの討伐クエストが多かった。他にも、ゴブリン退治のような、初心者向けのクエストも少ないけど見つける事ができた。

 

 めぐみんは難しいクエストを請けたいみたいだけど、初めてのクエストは簡単な方がいいんじゃないかなぁ。って思ってたら、めぐみんがゆんゆんを振り切って、受付のお姉さんのところに向かって行った。

 

「ここで一番難しい依頼をください!」

「こ、こんにちは……。お嬢ちゃんのレベルはいくつかな?」

「私はアークウィザードで、レベルは4です!」

 

 ふふん、と胸を張って、アークウィザードだと誇らしげに言っててかわいい。でも、可愛いんだけど、勝手に難しいクエストを受けられちゃうのは危ないよねぇ……。どんな依頼になるのかも分からないし、もし爆裂魔法が使えないような、閉所でのクエストとかだったらどうするつもりだったんだろう……?

 

 まあ、そこまで考えて無いと思うけどね! 

 

 とりあえず私達も受付のところに行って、別のクエストを受けるようにしようかな。

 

「まだ、子供なのにアークウィザードなんて凄いわね。でもごめんね。アルカンレティアはクエスト依頼を請ける条件があって、レベルが10を超えていないといけないの。だから、残念だけどお嬢ちゃんがクエストを請ける事はできないわ」

「な、なんでですか!?」

 

 クエストを受けられないと知って落ち込んだめぐみんが受付に倒れ込んでる、横に私達も来たところで、お姉さんは私達を見回して、何故クエストを請けられないか説明をしてくれた。

 

「この街の付近に生息するモンスターは強いものばかりなんです。中にはゴブリンやコボルトのような弱いモンスターも居るんですけど、初心者殺しと呼ばれる強力なモンスターと一緒に居るため、この街の冒険者ギルドでは、低レベルの冒険者へのクエスト受注を制限しているんです」

 

 それならめぐみんとゆんゆんは、まだレベル10に届いていないからクエストは受けられないかぁ。そうなるとクエストに挑戦するのは、アクセルに向かってからかな? 

 

 でも、私が居たら受けれたりしないかな?

 

「あの! 私のレベルって23なんですけど、私が一緒に居たら三人でクエストを請けられませんか?」

 

 私は冒険者カードをお姉さんに見せながら聞いてみた。私って、紅魔の里付近に出てくる悪魔や悪霊系モンスターを結構倒していたから、二人と比べたらレベルが高いんだよね。

 

「この歳で高レベルのアークウィザードに……。すごいですね……。ですが、申し訳ありません。すとれさんお一人ならクエストを受注可能ですが、他の方は同様に受ける事はできません」

「わかりました。丁寧にありがとうございます!」

「いえいえー。また何かあったら言ってくださいね」

 

 とりあえず二人を連れて、酒場の方に向かう。クエストを三人で受けられないなら仕方ないよね。

 

「あ、あの。私のテレポート代も払ってくれてますし、お金が足らないですよね……? すとれだけでもどこかのパーティーに混ざってクエストに行きますか……?」

 

 もう……。そうな寂しそうにそんな事言わなくてもいいのに。お金もアクセルに三人で行けるくらいには、まだ余裕があるし大丈夫だよ。悲しそうな目でこちらを見ているめぐみんの頭に手をポンと置いた。

 

「三人でクエストを請けられないなら、私はいいかな。アクセルに着いたら皆でクエストを受けよう。だって私達三人の初めてのクエストなんだから、一緒に受けたいな」

「あ……。そ、そうですね! まあ、すとれは私が居ないと不安なんでしょう! 初クエストは一緒に請けてあげましょう!」

「わ、私も初めてはすとれと一緒がいいな……!」

 

 めぐみんも元気が出たみたいでよかったよ。せっかく、三人で旅に出たんだから、クエストも三人で受けたいよね。

 

「よーし、アルカンレティアを観光し尽くしたら、アクセルに向かうよー! 私達の冒険はこれからだー!」




〜fin〜
ご愛読ありがとうございました。先生の次回作にご期待ください(嘘)

すとれ
初手、アクシズ教に入信しようとした。
実はレベル23と高レベル。

めぐみん
レベル4。
勝手に高ランクのクエストを受注しようとして、レベル制限に引っ掛かった。
すとれにテレポート代を払って貰ったらしい。


ゆんゆん
好きな子に大好きと言って貰うために女神を目指す。
相変わらず激重。
めぐみんとも何でも言い合えるくらいに仲良しになってる。
なお、余計な事も言うようになって、よく叩かれてる。


読んでいただきありがとうございました!
アルカンレティア編が始まりました。全5話予定です!
これから書いて増やさなければですけど!

あと、番外編で31日にハロウィン回を投稿します。今朝にハロウィンがあるって思い出したので、書いちゃいました! 
ハロウィンなんて馴染みがないので忘れてました……。
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