「我が名はめぐみん! 紅魔族随一の才能の持ち主にして、爆裂魔法を操りし者! フッ、この私が来たからには、見過ごす訳には行きませんよ!」
「我が名はすとれ! 紅魔族随一の支援魔法の使い手にして、女神の加護を受けし者! 悪者は大人しくお縄につきましょう!」
「わ、我が名はゆ、ゆんゆん! アークウィザードにして…………えっと、この後はなんて言えばいいの!?」
温泉でリフレッシュした次の日。
三人でアルカンレティアを散策していると、突如甲高い悲鳴が路地裏から聞こえてきた。悲鳴を聞き駆けつけると、そこには若い男達に手を掴まれた綺麗なお姉さんが居た。
私達は割って入るように飛び出すと、めぐみんがバサッとマントを翻し、男達の前に立ち塞がった。私はその横に立ち、『そこまでです!』と男達に向かって言い放った。
ゆんゆんは私の後ろでオロオロとしていた。
突然の乱入者である私達に驚き、男達の動きが一瞬止まる。と、我に返るのが一番早かったのは絡まれていたお姉さんだった。
「助けてください! この人達が、『まったく、可愛い顔しやがって誘ってんのか? こんな魅惑的な体で街中をウロウロしてたら何されたって文句は言わせねえぜ!』とか言って無理やりどこかへ連れ去ろうと!」
「「い、言ってない!」」
即座に男達がツッコむが、この状況でどちらかを信じるかと言われれば、お姉さんの方だと思い、お姉さんを男達から守るように名乗りを上げたのだった。
「おいあんたら、紅魔族か!? ちょ、ちょっと待ってくれ、何か勘違いしているぞ! こっちは被害者なんだよ!」
「は、早まるな、まずは話をしよう!」
男達は泡を食ったように慌てて言い訳をしている。
「残念でしたね! そこらのボンクラ相手ならともかく、この私の紅い瞳の前には、そんなごまかしなど通じませんよ!」
男達の言い訳を無駄だと言わんばかりに、めぐみんはそう言い放った。そう、めぐみんは紅魔族随一の知力の持ち主なんだから、悪は見逃さないよ!
「いや、あんたのその紅い瞳は節穴だよ!」
「そう、俺達はこの街のエリス教徒で……ああっ!? し、しまった!」
私達のやり取りの隙をつき、絡まれていたお姉さんが走って逃げた。……というか、エリス教徒?
「おいあんたら、どうしてくれるんだよ! あの女はアクシズ教徒だぞ! ウチの教会の、エリス様の肖像画に落書きしていきやがった!」
ど、どうしよう!? あのお姉さんがアクシズ教徒だとしたら、この人達が言ってる事は本当なのかも……。お姉さんは逃げて行っちゃったし、本当にどうしよう……。
「こないだは、ウチの教団が毎日行っている、恵まれない人向けに配っていたパンを全部強奪していったんだ!」
確かに、この街はアクシズ教団の総本山で、アクシズ教徒には変わり者が多いのは、私達も見てきたけど、まさかここまでフリーダムに生きているとは思わなかったよ……。
「す、すみませんでした! あんなに綺麗なお姉さんがそんな人だと思わなくて……!」
「ご、ごめんなさい!」
私達がペコペコと頭を下げていた、その時だった。
「お巡りさん、あそこです!」
突然の声に振り向くと、そこには、先程逃げだしたアクシズ教徒のお姉さんがいた。しかも……。
「ああっ!? どうせアクシズ教徒の言う事だからと話半分で来てみれば、ほ、本当にエリス教徒が幼い少女達に絡んで……!?」
警察の人とおぼしき男性を引き連れていた。
「ちょっ!? そこのアクシズ教徒が何を言ったのか知りませんが、俺達は別に何も!」
「そ、そうですよ! 俺達はただ、ウチの教会に落書きしていったそこのアクシズ教徒を捕まえようと……!」
口々に言う二人に、アクシズ教徒のお姉さんが警察官に耳打ちした。
「聞きました? あんないたいけない少女達だけでなく、私まで捕まえて何かするつもりなんですよ」
「おいそこのエリス教徒二人! ちょっと話を聞こうか!」
「「ええっ!」」
警察官が男達の下に行くのと同時に、お姉さんが私達の所へとやって来る。
「もう大丈夫よ! 怖かったでしょう、さあ今のうちに!」
「えっ! いや、あのエリス教徒達は……!?」
あまりの急展開についていけず戸惑っている私に、お姉さんが手を差し伸べた。
「あっ!? そこのアクシズ教徒とお嬢ちゃん達、待ちなさい! あなた達にも詳しい事情を聞かないと……!」
私の手を取り逃げようとするお姉さんに向け、警察官が言ってくる。
「ほら走って! 君達も逃げるわよっ!」
「え? えぇ!? 私は別に、逃げる必要は……!」
後ろで何か喚いている警察官を尻目に、私はお姉さんに引っ張られていった。めぐみんとゆんゆんも私達を追いかけて、ついてきてくれている。
「ーーみんな大丈夫? 怪我はない? ……ふう、間一髪で間に合ったみたいね。危ないところだったわ」
「何言ってるんですか、どうして私達が助けられたみたいな感じになってるのですか! というか、私達は何もしていないのですから逃げる必要もなかったのに! それよりも、今すぐにすとれから手を離してください!!」
お姉さんに無理やり連れさられた後。なぜか私達は、仲良く路地裏に隠れていた。
「何を言っているの、あのままあそこにいたら、邪悪なエリス教徒によって酷い目に遭わされていたに違いないわ。だって、あなた達ってロリロリしくて可愛いもの! しかも、こんなに可愛いロリっ子が三人もいたら絶対に襲われていたわ! それから助けてあげたんだから、お礼を言っても罰は当たらないわよ? あ、ちなみに、お礼がしたいと言うならこの入信書にサインを……」
そう言って、懐から何かの紙を取り出そうとしたお姉さんの手をめぐみんが掴んだ。
「いえ、あの人達そんな悪い人には見えませんでしたよ!? それに、アクシズ教には入りませんから! というか本当に、なぜ私達がお礼を言わねば……」
と、反論していためぐみんのお腹がキューと鳴った。
「食べ盛りだし、お腹すいちゃったよね。宿に帰ってご飯を食べよっか?」
「めぐみん、恥ずかしいよ……」
「二人ともうるさいです! お腹が空くのは仕方ないじゃないですか!」
「ふふっ、三人とも仲良しね。お腹が空いてるなら、そうね……。まあ、お姉さんについてきなさいな、悪いようにはしないから!」
そう言って、お姉さんはめぐみんの肩に手を置いた。すぐに振り払われた事は気にしないで。
「私はアクシズ教団のプリースト、セシリーよ。私の事は、遠慮なくセシリーお姉ちゃんって呼んでくれていいからね? まずは美味しい物でも食べながらお姉ちゃんとお話ししましょうか!」
……胡散臭い笑顔を向けてくるセシリーさんの、美味しい物を食べさせてくれるって言葉に釣られて、ついていきそうなめぐみんの手を取った。
「食べ物に釣られて、知らない人についていったらダメってママが言ってたから行っちゃダメだよ!」
「はっ!? そうですね。こんな怪しいお姉さんについていったら何されるか分からないですし……!」
「めぐみん……ご飯に釣られるとか、今時子供でも……痛っ、ご、ごめんね!?」
めぐみんを守るように私とゆんゆんで抱きしめていると、セシリーさんはキラキラした目で私達を見ていた。
「あっ……尊い。可愛いロリっ子達が抱きしめ合ってるこの光景……! なんて尊いの。アクア様の思し召しでこの光景を見せてくれたのですね……! つまり、本能のおもむくままに進みなさいって事ですよね! お、お姉さんも混ぜてー!!」
「ひゃあ!?」
飛びかかるように抱きついてきたお姉さんの重さで私達は倒れる事になった。気にせず、私達の色々なところを触ってくるお姉さんに驚いて固まっていると。
「黒より黒く闇より暗き漆黒に我が深紅の混淆を望みたもう。覚醒のとき来たれり――」
「わ、わぁ!? め、めぐみん、爆裂魔法を撃つのは待ってえええ!?」
お姉さんに撃つために、爆裂魔法の詠唱を始めためぐみんを、私とゆんゆんで必死に止めるよう説得した。
も、もうこの街嫌い!
めぐみん
街中で爆裂魔法を撃とうとする。頭爆裂魔法。
ゆんゆん
名乗りは学校に入学した時よりは上手くなった。
でもまだまだ恥ずかしいみたい。
すとれ
セシリーに抱きつかれ色々さわられる。
セシリー
事案お姉さん。
読んでいただきありがとうございました!
明日と明後日は番外編でハロウィン編を投稿します!