尊敬してますアクア様!   作:天道詩音

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道の果てには?

 

「ロ、ロリっ子……!?」

「ロリっ子が三人もだと……!?」

「ロリっ子だ……。しかも三人とも美少女……!」

「――ロリっ子だ……。我が教団に、ロリっ子枠ができた!」

 

 アクシズ教団の本部である大教会。そこに連れてこられた私達は、ロリっ子ロリっ子ともてはやされた事で、めぐみんは怒った。

 

「それ以上ロリっ子呼ばわりするなら受けて立ちますよ! 紅魔族の本気を見せてやります!」

「教会で騒いだらめっだよ。めぐみんは大人なんだから我慢できるよね!」

「む、子供扱いされた気もしますが、まあいいでしょう。私は大人ですからね!」

 

 私は大人だって胸を張っているめぐみんを微笑ましく見ちゃう。大人だと言われて喜んじゃうのは子供の証だと思うけど、そこで喜んじゃうめぐみんが可愛いよね。

 

 それにしても、昨日入れなかった大教会を中から見る事ができたのはよかったなぁ。大教会の内側も荘厳な雰囲気をしていて、ステンドグラスが光を通す事で、様々な色の光が降り注ぎ、より美しさを引き立てている。

 

 そして、大聖堂の最奥にある、大きなステンドグラスの中央にはアクア様が描かれていて、実際に見たアクア様の美しさが表現されている。

 

 流水のような美しい水色の髪も、あの白い空間で初めてアクア様を目にした時に見た、慈しむような表情も再現されていた。

 

 こんな綺麗にアクア様を再現しているなんて、本当にアクア様は慕われているんだなって思い、嬉しくなった。

 

「まあまあめぐみんさん。我が教団の男性信者は、この街の子供に近づく事を条例で禁止されてしまいまして。そんな彼らの気持ちも分かってあげてください」

「子供に近づく事を禁止されるとは、いったい何をやらかしたのですか?」

「す、すとれ……。やっぱり帰った方がいいんじゃ……?」

 

 私がアクア様の事を想っていると、ゆんゆんに袖を摘ままれた事で意識を取り戻したら、ゆんゆんはもうここから帰りたくなっていた。

 

 話は聞いてなかったけど、来たばかりなのに帰りたくなるなんて、何があったの……?

 

 辺りを見回すと、アクシズ教徒がいそいそとご飯を持ってきてくれた。めぐみんが席についたので、私もその隣に座った。

 

「大丈夫だよゆんゆん。何かあったら私が守ってあげるからね」

「う、うん! それなら……」

 

 ゆんゆんも座ったところで三人でいただきますをした。早速食べようと思い、パンに手を伸ばしたところ、めぐみんに遮られた。どうしたのかとめぐみんに顔を向けると。

 

「……これを食べたら、その瞬間からアクシズ教徒ですとか言い出しませんよね?」

「ええ!? 私もう食べちゃったよ!?」

 

 ゆんゆんはもう食べちゃったみたい……さよなら、アクシズ教徒じゃなかったゆんゆん……。

 

「い、言いませんとも。ええ、アクア様に誓って、そんなケチな事はもちろん言いません」

 

 アクシズ教徒の人からは何かを言おうとしてた雰囲気がありありと見て取れた。何となく警戒しながらご飯を食べていると、奥から白髪の混ざったおじさんが、隣に秘書みたいな女性を連れてやって来た。

 

 ニコニコと、人の良さそうな顔をした男性。その人は、どことなく只者ではない雰囲気を漂わせている。

 

「おお、これは可愛らしいお客さん達ですね。当教会にようこそ! 私は、この教団のアークプリーストを務めております、ゼスタと申します」

 

 ゼスタと名乗ったその人は、そう言って私達に笑い掛けた。

 

「アークプリーストって凄いですね! 私、今はアークウィザードになってますけど、元々、アークプリーストを目指していたんです!」

「いえいえ、アークウィザードも十分に凄いと思いますよ。それにしても……あなたは、アクア様から強力な祝福を施されていますね」

 

 アクア様から貰った祝福の事まで分かるなんて……ゼスタさんって本当に凄い人なのかも知れない。

 

「はっ、はい! アクア様には祝福をいただきました。なんで分かったんですか!?」

「えっ? すとれのその設定本当だったんですか!?」

「えぇ!? めぐみんひどいよー……! めぐみんだけは信じてくれてたと思ってたのに-!」

「す、すみません! つい本音が!?」

 

 めぐみんには小さな頃に、アクア様から魔法の才能と祝福を貰った事を話してて、その時に信じてくれたと思っていたのに……。

 

 あの時、優しい顔をして、すとれの事を信じますって言ってくれた言葉は嘘だったんだね……

 

 あの時の優しい顔は、あなたも紅魔族だったんですねって表情だったって事!?

 

「ははは、仲がよろしいのですね。あなたに施された祝福は、普通の人には分からないものですから、冗談だと思われるのも仕方無いですよ。私はこれでもアクシズ教団の最高責任者ですから、その祝福が本物だと判断するくらいはできるのですよ」

「ゼスタさんって凄いんですね! あの、私、アクア様に憧れていて……どうしたらアクア様みたいになれるんでしょうか?」

 

 アクア様みたいになりたい。誰かを慈しむ事ができる優しさ。女神然とした美しさに隠していた、素の時に見せてくれた可愛らしさ。傷ついた誰かを癒せる力。私の知っている誰よりも素敵な女性だった。*1そんなアクア様のように私もなりたいって思っている。

 

「アクア様のようになりたいですか……。アクシズ教団の中には、あなたと同じように、アクア様になろうとしている者も居ます。例えば、髪を青色に染める。例えば、古くから伝わっているアクア様の性格を模倣する。例えば――アクア様が定めた、教義を守って生きていく。アクア様を目指すのでしたら……まずはアクシズ教の教義を守って生きていくのが、よろしいかと思います」

「アクシズ教の教義ですか……?」

 

 ゼスタさんが周りのアクシズ教徒達に目を向けると、教徒達は一斉に立ち上がり、私の方を向いて大きく息を吸って。

 

「『アクシズ教徒はやればできる。できる子たちなのだから、上手くいかなくてもそれはあなたのせいじゃない。上手くいかないのは世間が悪い』

 

『自分を抑えて真面目に生きても頑張らないまま生きても明日は何が起こるか分らない。なら、分からない明日の事より、確かな今を楽に行きなさい』

 

『汝、何かの事で悩むなら、今を楽しくいきなさい。楽な方へと流されなさい。自分を抑えず、本能のおもむくままに進みなさい』

 

『汝、我慢することなかれ。飲みたい気分の時に飲み、食べたい気分の時に食べるがよい。明日もそれが食べられるとは限らないのだから……』

 

『犯罪でなければ何をやったって良い』

 

『悪魔殺すべし』

 

『魔王しばくべし』」

 

 アクシズ教の教義が、大教会全体に響き渡った。

 

「心の赴くままに生きれば良いのです。アクア様らしくなるのは、そこから始まるのですよ」

「わ、私……。アクア様から、好きな事をして、人生を楽しみなさいって言われていたんです。心の赴くままに生きれば良いって、アクア様が言ってくれた言葉と似てますね……!」

 

 アクア様に言われた通り、人生を楽しんで生きている。大好きな友達はできたし、沢山のお友達も作れた。今も大切な仲間と一緒に冒険ができている。こんなに楽しく生きていけて、本当に幸せだ。

 

「ほう……。既にアクア様から御言葉を賜っておりましたか。好きな事をして、人生を楽しみなさいですか。素晴らしい言葉です。……ところで、あなたのお名前を伺ってもよろしいですか」

「はい、私の名前はすとれです」

 

 名前を伝えると、ゼスタさんは目を瞑って、深く頷いた。

 

「良い名前ですね。では、すとれさん。もう一つ、アクア様を目指すあなたの手助けをいたしましょう」

「手助けですか……?」

 

 手助けとは一体何だろう? 

 

 ゼスタさんは私の願い事に真摯に向き合ってくれた。これだけでも嬉しかったのに、更にどんなお手伝いをしてくれるんだろう。

 

「では、アクシズ教徒の諸君。彼女――すとれをアクシズ教の聖女に任命する事をここに宣言する!」

「えっ……? ええっ!? 私が聖女ですか!? それもアクシズ教の!?」

 

 私の驚く声が掻き消えるくらいの歓声が、教会に響き渡った。

 

「だ、ダメに決まってるでしょう! すとれがアクシズ教の聖女になんて、認めませんよ!」

「すとれは、私の聖女なんだから……アクシズ教の聖女なんて絶対ダメ……!」

 

 私がアクシズ教の聖女になる事を拒否する二人とは対照的に。

 

「ロリっ子聖女様が我がアクシズ教に……!」

「うおおおお! 聖女様きたああああ!」

「あんな美少女を合法的に崇めていいって事だろ。最高だな!」

「くっ、困惑してるお姿も可愛らしい……!」

 

 アクシズ教徒達は熱狂的な程、私が聖女になる事を喜んでいる。

 

「すとれさん」

「えっ? えっ?」

「貴女は既にアクア様から御言葉を賜る事ができ、そして過去に類を見ないほどの強力な祝福が施されています。聖女の資質としては十分あります。そして、アクア様は敬われる存在です。聖女となる事で、あなたはアクア様の次に敬われる存在となるのです。つまり、すとれさんが聖女になる事は、アクア様へ近づく一助となるでしょう」

 

 アクア様みたいになりたいとは言ったけど、アクア様のように敬われたいとは言って無いですから!?

 

 アクア様みたいな素敵な女性になりたいだけなの!

 

「皆さん! 聖女すとれを見てください! このロリロリしい美少女がアクシズ教団の聖女となる姿を想像してください! この腰まで伸びた艶やかな黒髪も、宝石のように美しい紅い瞳も、私が謁見した際に覗き見た、この国の姫君である、アイリス様に勝るとも劣らない美しい顔立ち! これから私達は合法的に、この素晴らしい美少女を崇める事ができるのです。私の決定に(いな)はありますか!」

「「「「「(いな)! (いな)! (いな)!!」」」」」

 

「めめめ、めぐみん! どうしよう!?」

「に、に、逃げましょう!」

「否! 否! 否!!」

「ちょっと!? ゆんゆん、否ってあなた、アクシズ教徒だったんですか!? 早く逃げますよ!」

 

 と、とにかく大教会から逃げ出そうと、めぐみんとゆんゆんの手を取って、入り口に走っていく。アクシズ教徒達は私が目の前に来ると、道を空けてくれた。

 

「わ、私には聖女なんて無理ですからー!?」

「聖女すとれさん。行かれるのですね。その旅路に幸があらんことを……。私達、アクシズ教徒がいつまでも祈っております。さあ、皆さん、聖女すとれの旅立ちです! 祝いの言葉を送りましょう!」

「いりませんからー!?」

 

 後ろから聞こえてくる、祝いの言葉の大合唱から逃げるように大教会の外に出た。

 

「おお、あれが聖女すとれ様ですか。確かに美しい……!」

「聖女様がいらっしゃったぞ!」

「すとれ様! なんと可憐なんだ……」

 

 大教会から外に出た私達を待っていたのは、教会前の広場を埋め尽くさんばかりの人の群れだった。

 

「えっ? なんで!?」

 

『アルカンレティアに居るアクシズ教徒の皆さん! これから旅立つ、聖女すとれに祝福を与えてください! この美しき聖女に祝福を!』

 

 大教会の上層に取り付けられたスピーカーから、流れたゼスタさんの声が街中に響き渡る。

 

『追加の情報です。敬虔な信者から、すとれ様のお姿を撮影した写真の提供がありましたので、後日、聖女すとれの生写真や絵画を販売します!』

 

「それ盗撮ですから!? 肖像権どこに行っちゃったの!?」

「えっ? それは普通に欲しいんですけど……」

「全財産突っ込まなきゃ……!」

「ちょっと二人とも!?」

 

 裏切り者の二人を連れて、街の入り口に向かって走っていく。街中のアクシズ教徒が私達に向けて、祝福の言葉を掛けてきたり、手を振ってくる事から、目をそらして走り続けた。

 

 街の入り口には、アクセル行きの商隊が乗客を呼び込んでいたので、急いでアクセル行きの料金の支払いを済ませて馬車に乗った。馬車の外から聞こえる私を応援する声は、気のせいだろう。

 

 その声も馬車が走り始めたら聞こえなくなった。

 

「……ど、どうしよう!?」

「噂は75日で収まるって言うじゃないですか。大丈夫ですよ!」

「75日もあったら世界中に広まっちゃいそうなんですけど!? アクシズ教徒が広めた噂が本当に収まってくれるのかな!? めぐみん待って、なんで目をそらすの……?」

 

 ねえ、アクセルとか紅魔の里にまで私がアクシズ教の聖女になっちゃった事が広まらないよね……? 絶対大丈夫だよね?

 

「私はたとえ、すとれが魔王になったとしても受け入れられるよ……! だから、アクシズ教の聖女でも、だいじょうぶだから!」

「アクシズ教の聖女と、魔王を同列にしないでよ……。でも、ありがとね!」

 

 とんでもない事になっちゃったけど、温泉に入れた事だけは良かったと思う。窓の外に見えるアルカンレティアは青く輝いていて、綺麗だけど、もう行きたくない。

 

 少なくとも、忘れ去られるまでは!

 

「アクセルでは絶対に平穏に暮らしてみせるからね!」

*1
そのアクア様って本当に女神アクアの事ですか……?




アクシズ教団聖女すとれ
(不)名誉な称号を手に入れた。これもアクア様の加護のおかげ!
ラストにフラグを立ててしまったのでは……。

めぐみん
すとれが聖女になる事を止められなかったけど、ブロマイドは欲しいみたい。

ゆんゆん
アクシズ教聖女と魔王を同列に扱った。でもすとれだったら受け入れられるらしい。

ゼスタ
すとれを聖女に認定した。もちろん善意で!
変態ムーブは所々しか顔を出してない。

アクシズ教徒達
すとれのブロマイドを大量に買った。


読んでいただきありがとうございます!

アクア様の加護のおかげですとれちゃんはアクシズ教団の聖女様になれました!
おめでとーすとれちゃん(棒読み)
1話でアクア様から貰った加護が初めて役に立ちましたねー。これにはアクア様もにっこりしてる事でしょう。
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