――再び馬車の中。私達は、冒険者達と共に巨大ミミズを撃退したのだけど……。
「いやー、流石は紅魔族だな! 本当に大したもんだよ! まさか、あれだけのジャイアント・アースウォームを殆ど二人で屠るだなんて!」
「まったくだぜ。紅魔族は優秀な魔法使いばかりだとは聞いていたけどよ、ここまでだとは思わなかった!」
「しかも、俺なんかヒールを掛けて貰ったら傷が一瞬で治っちまったぞ。あれだけの攻撃魔法を使えるのに、回復魔法まで使えるなんて、本当にすごいな!」
私とゆんゆんは馬車の真ん中の席に座らせられて、一般客や冒険者達から褒めちぎられていた。褒められすぎてゆんゆんは真っ赤になって俯いている。
私とゆんゆんで戦場を駆け回って、大量のミミズ達を片っ端から倒して回ってたら、気付けば殆どミミズ達を私達で倒していたらしい。こんな大人数での戦いは初めてで、必死に頑張っていたからそんなに倒していたなんて、言われてから気付いたくらいだ。
あのまま居続けると、ミミズの死骸を狙って他の小型モンスターが寄ってくるらしくて、休憩もそこそこに再出発していた。
そして現在、一番の活躍を見せた私達は、旅の目的やその他諸々など、質問攻めにあっていた。
「でも、あなた方が乗り合わせていてくれて本当に助かりましたよ。アクセルに着いたら、ぜひお礼をさせてください。本来なら護衛の依頼も請けていないのですから、せめて規程の護衛料だけでも払わせてください!」
「い……いえそんな、大した事はしてないので」
「ふふっ、ゆんゆんにとってはさっきの戦闘なんて、大した事じゃなかったんだねー!」
「あれだけ攻撃魔法を放っても余裕なんて、本当に凄い魔法使いなのですね! やはり護衛料を払わせてください!」
私の言葉で、またゆんゆんが褒めちぎられている。恥ずかしそうにしてるゆんゆんが可愛くて、つい冗談を言っちゃった。
「えっ、すとれ待って!? 私はそんな大層な者じゃありませんって意味で言ったの! ねえ、なんで笑っているの? 意味分かってて言ったんでしょ! ねえ!」
私がゆんゆんに肩を掴まれて揺さぶられているのを、周囲の乗客達は微笑ましそうに見ている。それに気が付いたゆんゆんはまた顔を赤くして俯いちゃった。ちょうどいいところに頭が来たし撫でておこう。
「お姉ちゃんは、二人のお姉ちゃん達よりも、もっと凄いんでしょう? ならもっともっと強いモンスターが来ても安心だね!」
「……そうですね、もっと強いモンスターが出てきた時こそが私の出番ですから、その時はお姉ちゃんの必殺魔法を見せてあげますよ」
「楽しみにしてるね!」
めぐみんの方を見ると、窓際に座っていて、その隣に座った女の子に励まされていた。
あの場で爆裂魔法を使ったら馬車や一般客を巻き込んじゃう可能性もあったからね。活躍出来なかったのは仕方ない事だから、落ち込まなくて大丈夫だよ。めぐみんの爆裂魔法が必要になる場面は必ず出てくるからね!
「しかし、紅魔族は目立ちたがりで派手好き、好戦的でぶっ飛んでるって聞いたが。あんた達は普通の人みたいだな!」
「ほんとだよ。謙虚で、真面目そうで。俺、紅魔族のイメージが変わったよ!」
「そそ、そんな事……。私なんて里では変わり者扱いでしたし……」
「ゆんゆんって大人しいからねー。でも、ゆんゆんがそんな性格でいてくれたから私とも気があったし、仲良くなれたんじゃないかな?」
「す、すとれ……!」
私は元日本人だから、厨二病全開な紅魔族の性格と比べたらずれていたと思う。でも、ゆんゆんは目立ち屋な紅魔族とは真逆な性格だったから受け入れやすかったのかな?
思えば、最初に見たゆんゆんは、入学の日に自己紹介を失敗して机に倒れ伏した姿だったし、そんな紅魔族らしくないゆんゆんだからこそ、ここまで仲良くなれたのかもね。
嬉しそうにはにかんでいるゆんゆんを撫でていると、馬車全体が拍手喝采に溢れた。
それから、馬車は何事もなく進み、日が落ち、すっかり暗くなった頃。水場の近くに馬車を止め、私達は野営をしていた。キャンプファイアーのようにたき火を囲み、食事を取っていた。
私とゆんゆんは商隊のリーダーさんに捕まりそうになったけど断って、少し離れた所に居ためぐみんの隣に座って、一緒に食事を取っていた。
「ねえ……めぐみん。今日は、私、結構活躍出来たわよ」
「ほほう、ちっとも活躍出来なかった私への当てつけですか」
「ち、違うから! 別にそんなんじゃないから、顔をそんな近づけてこないでよ!」
めぐみんはゆんゆんの言葉を受けて、隣に座っていたゆんゆんに顔を近づけて睨み付けている。睨むと言っても冗談でやってるみたいだけどね
。
「……ほら、その、私ってさ。里じゃあまり目立ってなかったじゃない?」
「たまに、潜伏スキルでも使っているのかと疑った時もありましたけど、割と目立っていたと思いますよ。家の中で一日こめっこのお世話をしてた私にも、ゆんゆんの噂はよく流れてきてましたし」
私もゆんゆんの噂は、ねりまきちゃんとかふにふらちゃんから良く聞いてたなぁ。大体、私がゆんゆんに何かしてたとか、ゆんゆんが里の中で奇行に走っていたとか、そんな感じの噂だったなぁ……。
「ちょっと待って、噂って何!? ……ま、まあ今はいいわ。それでね、今日はほら、結構活躍できて、色んな人にも頼りにされたじゃない?」
今日の出来事を嬉しそうに語っているゆんゆん。結構頑張っていたもんね、嬉しそうで何よりだよ。
「でね、私、ちょっとだけ自信がついたんだ。それでね、めぐみん。私、めぐみんのライバルになりたいの」
「ゆんゆんは私のライバルではなかったのですか……? よく私をライバル視してたじゃないですか」
「でも、めぐみんは私の事をライバルだって思ってなかったよね……?」
二人で話し合うべき事だと思うから、私は黙って聞いておこうかな。二人とも青春してるなー。
「……、そんな事は無いと思いますよ?」
「あるのよ。私、上級魔法も覚えたし、卒業してからはすとれとモンスター退治だってしていたの。戦闘経験ならめぐみんよりもずっと多いよ」
ゆんゆんとは対魔王軍遊撃部隊に混ざって、一緒に戦っていたし、その経験があったから巨大ミミズの群れも余裕で倒せたのかもね。
「確かに見事な連携でしたね。ですが、私の爆裂魔法は戦場での戦術すら無に帰す魔法ですから、戦闘経験の豊富さだけでは私に届いたとは思えません。あの、この問答には何の意味が……?」
「意味はあるわ。めぐみんが学校を卒業してから、私、殆ど毎日すとれと一緒に居たのよ。すとれがバイトの日は店に客としてずっと居るし、休みの日はすとれが家を出てくるまでずっと外で待ってたの」
え、えっとゆんゆんさん……、突然、私の名前がライバル同士の会話の中に出てきたのには驚いたけど、それ以上にそのストーカー行為の告白は何なのでしょうか……? めぐみんもちょっと引きつつ、首を傾げていた。
「だから私は、めぐみんの知らないすとれを沢山知っているの。何時までも、めぐみんだけのすとれだなんて思わないで。そんな油断してたら、すとれは私が攫っちゃうんだから」
私、ゆんゆんに攫われちゃうんだ。どこに連れて行かれるんだろう。王都かな、それとも温泉街ドリスとかかも!
「……なるほど。すとれに関してのライバルになると宣言した訳ですか。ゆんゆんには、そんな度胸なんて無いと思ってましたが、本気なようですね」
「本気だよ。ねえ、すとれ。私、すとれを振り向かせられるように頑張るから。ちゃんと見ててね」
「えっ、う、うん……?」
正直なところ二人の会話の意味は理解できてない。私を取り合うライバルになるって、どうしてなの? 三人で仲良しな方が良いって思うのは、私がまだ子供だからかな。振り向かせるって恋愛的な意味って事? でも、女の子同士でそれは無いよね……? ダメだ、考えても分からないや。
「認めましょう。確かにゆんゆんの事はライバルだと思っていなかったようです。ですが、これからあなたは私のライバルです。でも私も譲る気はありませんからね。すとれとは小さな頃からずっと一緒だったのです。これからも私とずっと一緒に居るべきなのです。そうですよね、すとれ?」
「は、はい……」
私もめぐみんとは……ゆんゆんともだけど、ずっと一緒に居たいと思っているけど、同じ気持ちじゃないの……?
「私負けないからね!」
「ええ、ですが私も負けませんよ!」
二人は握手してて、なんだか前よりも仲良くなっているように見える。もう、全然意味が分からないよー! あるえの小説にあった恋愛のシーンとかでもっと勉強しておくべきだったのかな? そう言うのってなんだか苦手だったから、さらっと流し読みしちゃってたんだよね。
「では、私は早速すとれに仕掛けるとしますか」
「えぇ!? じ、じゃあ、私も頑張らなきゃ……!」
立ち上がった二人がじりじりと私に近づいてくる。えっと、どうしたらいいの!? よ、よく分からないけど、逃げた方がいい気がする!
「あ、ちょっと散歩に――」
「ジャイアント・バッドが! ジャイアント・バッドの群がーっ!」
「散歩するついでにジャイアント・バッドを倒してくるね!」
よーし、ジャイアント・バッドを全滅させるよー!
……逃げた訳じゃないからね!
「逃げましたね」
「逃げちゃったね」
逃げてないからね!?
すとれ
実は一番子供なのかも。
ゆんゆん
乗客に褒めちぎられて顔真っ赤。
めぐみんと正式にライバルになった。
めぐみん
ゆんゆんをライバルと認めた。
読んでいただきありがとうございます!
ゆんゆんとめぐみんが正式にライバルになりましたね!