「ここがアクセル……私達の冒険が始まる場所だね!」
「ええ、私達の伝説の始まりですよ!」
「すとれと一緒に住めるとこだね……えへへ」
皆で冒険者として活動出来る事を喜んでいる。一人だけ、別の事に喜んでいる気がするけど……。
とにかく、やっとアクセルに到着したんだ。道中は結構な頻度でモンスターに襲われて大変だったけど、無事にここまで辿り着けて良かった。
最後なんか悪魔まで現れちゃったし、驚いたよ。
めぐみんが爆裂魔法で倒そうと詠唱を始めた時に、先に悪魔を弱体化させておこうと思って使った、『セイクリッド・ハイネス・エクソシズム』の一撃で悪魔を倒しちゃったんだよね。『ここが私の見せ場です!』って意気込んでいたのに邪魔しちゃってごめん……。
「最初はどこに行こうかなー。三人で住める物件を探しに行くとか?」
「絶対行く!!」
「あ、はい……。ゆんゆんは目を光らせるくらい行きたいみたいなので、まず物件探しに行きましょうか」
三人で手を繋いで、アクセルの入り口にある門をくぐり抜ける。そこにはレンガの家々が立ち並んだ、中世ヨーロッパみたいな街並みだった。
アルカンレティアの大教会のような立派な建物は無いけど、活気の溢れる商店や、家の前で楽しそうに話す女性達、可愛らしい女の子が元気に呼び込みをしている定食屋――温かさを感じる良い街並みだと思った。
「すとれ、資金は大丈夫ですか……? 私の分のテレポート代や、馬車代も払ってくれたお陰で、お金稼ぎをしないで済んだ分、予定よりも早くアクセルには着けましたけど……」
「全然、気にしないで大丈夫だよー。私もまだ五十万エリスは残っているし、ゆんゆんもまだ余裕あるよね?」
「うん。お小遣いも沢山貰ったから大丈夫!」
何年もバイトをしてたから、まだお金には余裕があった。と言っても、家を借りたり、家具とか寝具等を買ったりしたらすぐに無くなっちゃうかもだけど。そしたら、冒険者としてクエストを受けてお金稼ぎをすればいいよね。だって、もう私達は冒険者なんだから!
商店街を進みながらしばらく歩いていると、探していた不動産屋を見つけた。中には店主と思われる人も居たので、早速中に入った。
「いらっしゃいませ。住まいをお探しでしょうか」
店内に入ってすぐに声を掛けてもらえた。店の中を見渡すと、私達以外にお客さんは居ないみたいだった。
「はい! 三人で住める物件を探しているんですけど、ありますか?」
「ございますよ。お客様は冒険者でしょうか?」
「そうです!」
ふふっ、もう私達は冒険者だもんね! まだクエストを受けた事は無いけど!
「それでしたら賃貸の物件をおすすめしているのですが、如何でしょうか」
「では賃貸でお願いします!」
「かしこまりました。それでは物件の資料を探しますので、そちらのソファーに掛けてお待ちください」
三人でソファーに座りながら店主さんが物件の書類探しを待つ。ただ待っているだけでは暇だったのか、めぐみんが私の手を握ってきた。私も手を握り返してめぐみんに笑い掛ける。めぐみんも暇だったのかな?
めぐみんの手って小さくて柔らかいなぁ。手を撫でられて、少し顔を赤くしているめぐみんを見つめていたら、ゆんゆんに見つかっちゃって、手をゆんゆんの頭の上に持っていかれた。仕方ないなぁって思いながら、ゆんゆんの頭を撫でていたら、店主さんが戻ってきた。
「お待たせしました。まず、こちらの物件はいかがでしょうか。街の中央通りにある一軒家です。冒険者ギルドからも近く、周辺には商店も多いので、買い物もし安いため、一番おすすめの物件ですね。ペットも可でして、賃貸料は毎月十二万エリスです。」
目の前に置かれた物件資料には、家の写真と平面図、物件情報が記載されていた。
物件資料を見ると、そこそこの広さの二階建てで、一階には、リビング、キッチン、バスルームがあるんだけど、お風呂が凄く大きい気がする! 二階は寝室が四部屋あるから部屋数に余裕もあるし、余った部屋は物置に使えるかな? あとはトイレは各階に一つずつあるみたい。
「ありがとうございます。……部屋も四部屋あるし、キッチンとお風呂付きだよ! 結構良いんじゃないかな? 二人はどう思う?」
「悪く無いと思います。他の物件も確認してから決めた方が良いとは思いますが、候補に入れましょう」
「えへへ、すとれと一緒ならどこでもいいよ……?」
ゆんゆんの意見は参考にならないから置いておくとして、めぐみんからも高評価だった。私達の住む家の第一候補はここだね!
その後も他の物件資料を説明してもらったけど、最初に見た物件が一番良かったので、このまま内見に行く事になった。さっき教えて貰ったけど、内見って言うのは物件の中を実際に見に行く事らしい。物件資料に書いてある情報としては良くても、実際の部屋がボロボロだったら嫌だし、これから確認しに行こう。
不動産屋の店主に連れられて、街を歩いていくと、そこそこ大きな建物があって、そこには冒険者ギルドの文字が書かれていた。
ここが私達の冒険が始まる場所なんだ。どんなクエストが待っているのか楽しみだなぁ。めぐみんとゆんゆんの方を向くと、私と同じようにキラキラした目でギルドを見ていた。
冒険者ギルドの前の通りに進み、少し歩いた所に写真にあった一軒家があった。店主さんが鍵を開けてくれたので、中に入る。
物件資料には築八年って書かれていたけど、思った以上に綺麗で古さを感じさせない内装だった。入って最初に見えるのはリビングでソファーとテーブルが暖炉の前に置かれていた。家具も備え付けで置かれているのは助かるよね。
リビングを見た後は、物件資料を見た時から一番気になっていたバスルームの方に向かう。
「わぁ! ねえねえ、お風呂が檜風呂みたいだよ! しかも大きい! もうここで決まりだよ!」
「お風呂が決め手ですか……。まあ、すとれらしいですね。」
「二人でお風呂……にへへ」
お風呂は3メートル四方の正方形で、檜のような木材で造られていた。家にこんなお風呂があるなんて最高だよね!
浴室自体も広くて、ゆんゆんは二人でお風呂って言っているけど、三人でも余裕を持って入れそうな広さだ。
「気に入っていただけて何よりです。こちらの浴槽は檜で造られています。ですが、難点がございまして……まず、浴槽が大きいので、備え付けの蛇口から出る水の量では、水を溜めるのに時間が掛かる事です。同様に温めるのにも時間が掛かります。以前入居していたお客様はそれが手間で、普段は殆ど使わずに、大衆浴場を利用していたと伺っております。如何なさいますか?」
「私が魔法でお湯張り出来るので大丈夫です! 私達の里にある大衆浴場だと、『クリエイトウォーター』で水を張って、『ファイアーボール』で温めていたんですよね。そこでアルバイトしてた事もあるので大丈夫です」
「お湯張りに魔法を使うなんて、奇抜な浴場ですね……。ですが、それなら良かったです。それでは、次は寝室に案内しますね」
この後も他の部屋を見て回ったけど、悪い点は見当たらなかったのでこの家に決める事にした。結局決め手はお風呂だったね!
運良くハウスクリーニングも先週行っていたみたいで、直ぐに入居できると言う事だったので、早速今日からこの家に住む事になった。布団や食器類など、足らないは結構あるし、この後買いに行かないと。
「こちらは契約書の控えになります。そして、これが当物件の鍵です。予備の鍵はありませんが、女性だけで暮らすので変更する事をおすすめします。鍵屋は冒険者ギルドの裏手にございます。他になにかありましたら、店の方にお越しください」
「親切にありがとうございました!」
一礼して去って行った店主さんを玄関見送り、室内に居るめぐみんとゆんゆんの方へ振り返った。
「これが私達の住む家だよ!」
「私が住むには少し狭いですが、まあいいでしょう」
「めぐみんの実家より倍くらい大きいけどね」
「ゆんゆんうるさいです!」
めぐみんは豪邸に住みたいんだろうけど、新人冒険者の私達には、この家でも立派なくらいだと思うけどね。ギルドでは、新人冒険者は馬小屋とか宿に住んで、最初はお金を溜める事を推奨しているらしいから、新人なのに一軒家に住んでいるんだから、十分だと思う。
でも、そんな事よりも、今はやる事がある。
「さあ、二人とも! 今日からここに住むんだから、これからやる事は分かっているよね」
「当然です」
「た、たぶん……」
「それじゃあ、皆一緒に言ってみようか! 私達の仲なら声は揃うよね!」
二人が自信のありそうな表情で頷いたのを見て。
「せーの! お風呂!」
「掃除!」
「お揃いのパジャマを買う!」
「「「…………あれ?」」」
全然揃わなかった……。
だって、あんなに大きなお風呂を見ちゃったら入るしかないよね!
めぐみんの掃除……は現実的だし、ゆんゆんのお揃いのパジャマを買う……まあ、買い物も必要だけどさ、やっぱりお風呂に入りたくなっちゃうよね。檜のお風呂だよ!
「掃除と買い物……まあ、お揃いのパジャマを買うのもいいでしょう。ですが、お風呂は夜に回しましょう。掃除も買い物も昼に済ませた方が効率的ですから」
「えー!? やだやだお風呂入りたいー! ね、めぐみん、お願い……!」
「あぅぅ……う、上目づかいで見てもダメですからね! ダメなものはダメですから!」
「うそだと言ってよ、めぐみん!」
この後も、もう少し粘ったけど、結局めぐみんに連れられて家の外に出る事になった。仕方ないかぁ。お風呂は夜まで我慢する代わりに、三人で入る事にしよう。
よーし、お風呂を目指して、掃除と買い物もがんばるよー!
めぐみん
すとれの上目遣いおねだりダウンしかける。致命傷で耐えた。
お金稼ぎをしなかった分、原作よりも早くアクセルに着いた。
ゆんゆん
三人お揃いのパジャマを買いたいらしい。これくらいなら可愛いものですね!
すとれ
物件の決め手はお風呂でした。
読んでいただきありがとうございました!
やっと、アクセルに着きましたね!
これから三人で暮らすことになりました!
不動産屋とのやり取りは、リアルだと経験した事が無いので、カバガバ賃貸契約かもです!