「ではお二人とも、こちらのカードに触れてください。それであなた方のステータスが分かりますので、その数値に応じてなりたい職業を選んでくださいね。経験を積む事により、選んだ職業によって様々な専用スキルを取得できるようになりますので、その辺りも踏まえて職業を選んでください」
ルナさんがアクア様とカズマ君に向けて、冒険者カードについて丁寧に説明していく。やっぱりルナさんって説明が上手いなぁ。私も分かりやすく説明出来るように参考にさせて貰おう。
カードには先にカズマ君が登録するみたい。ステータスがどうなっているのか、すごく気になっているみたいで、『いくぞ!』って声を上げてからカードに手を置いた。
カズマ君のステータスはどうなるのかな、高ければステータスに助けられる事もあるだろうし、高いといいね。
「……はい、ありがとうございます。サトウカズマさん、ですね。……ええと。筋力に生命力、魔力に器用度、敏捷性……、どれも普通ですね。知力がそこそこ高い以外は……、あれ? 幸運が非常に高いですね。まあ、冒険者に幸運ってあんまり必要ない数値なんですが……。でもどうしましょう、これだと選択できる職業は基本職である『冒険者』しかないですよ? これだけの幸運があるなら、冒険者家業はやめて、商業人になる事をオススメしますが……。よろしいのですか?」
私もカズマ君の冒険者カードを覗き込むと、ステータスは幸運を除いては普通だった。でも……これだけ幸運が高いなら狙撃スキルを覚えたら、百発百中になるかも知れない。狙撃スキルの命中率は幸運ステータスに依存しているって、学校で習った事を思い出した。
「え、ええと、その、冒険者でお願いします……」
「ぷ、ぷふっ」
あ、アクア様そんな笑わなくても……。カズマ君を見て、ニマニマと笑ってたアクア様はカズマ君に頭を
「ま、まあレベルを上げてステータスを上昇させたら転職可能ですし! それにこの冒険者という職業は、冒険者という総称が指すように、あらゆる職業をまとめたと言いますか……。ええ、初期の職業だからって悪い事は無いですよ? なにせ、全ての職業のスキルを習得し、使う事ができますから!」
「その代わり、スキル修得には大量にポイントが必要になるし、職業の補正も無いから同じスキルを使っても本職には及ばないんだけどね。器用貧乏みたいな」
ルナさんの的確なフォローが一瞬で台無しになっちゃったよ……。カズマ君が鬼のような表情でアクア様を見てる事に早く気付かないとまた叩かれちゃいますよ。と、とにかく私がフォローして何とかしなきゃ!
「か、カズマ君! カズマ君って幸運のステータスがすごい高いから、『狙撃』を覚えたらいいと思うよ! 狙撃の命中率は幸運のステータス依存だから、弓を使ったら百発百中で当てれるかも! 私、狙撃を使える人も紹介できるから、アクア様の事は許して欲しいなーって……」
「お、教えてくれてありがとう。だ、だから手は離して貰えると……」
「あ、ごめんなさい! つい……」
アクア様に手が向かっていきそうだったから、カズマ君の手を両手で押さえちゃっていたからなのか、気づけば、耳まで紅くなってるカズマ君の手を離した。も、もしかして怒らせちゃったかな。
「そ、そうだ。参考までにすとれの冒険者カードを見せてくれないか?」
「いいですよ。あ、覚えたいスキルがあったら見せますね。職業の冒険者は、覚えたいスキルを見て、そしてスキルの使用方法を教えて貰うと、カードに習得可能スキルという項目が現れるので、ポイントを使ってそれを選べば習得できるんです」
「なるほど。ん? アークウィザードってゲームで言えば攻撃系の魔法職だよな? なのにヒーラーっぽいスキルも取れるのか?」
「あ、それは特典でアクア様から貰ったんですよ! なので、アークプリーストの全魔法スキルが使えているんです。あと、アクア様の専用スキルっぽい魔法スキルも使えますね」
カズマ君に冒険者カードを見せて、スキルについて説明をしていると、ルナさんの驚く声が聞こえたので、そちらを向くと。
「はっ!? はあああっ!? 何です、この数値!? 知力が平均より低いのと、幸運の値が最低レベルな事以外は、残り全てのステータスが大幅に平均値を超えてますよ!? 特に魔力が尋常じゃないんですが、あなた何者なんですか……!?」
「え、そ、そう? なになに、私が凄いって事? いやー、まあ私くらいになればそりゃあね? ね、ねえ、すとれ! 私って凄いのよ!」
「さすがアクア様です!」
余程褒められて嬉しかったのか、私に抱きついてきてまでアピールしてきたアクア様がとっても可愛かった。私の胸に顔を埋める形で抱きついていたので、ちょうどいいところにあったアクア様の頭を優しく撫でていると。
「す、凄いなんてものじゃないですよ!? 高い知力が要求される魔法使い職は無理ですが……。それ以外だったらなんだってなれますよ? 最高の防御力を誇る聖騎士『クルセイダー』。最高の攻撃力を誇る剣士『ソードマスター』。プリーストの上級職である『アークプリースト』など……、最初からほとんどの上級職に……!」
ルナさんの質問にアクア様は少し悩み。
「そうね、女神って職業が無いのは残念だけれど……。私の場合はアークプリーストかしら」
「アークプリーストですね! あらゆる回復魔法と支援魔法を使いこなし、前衛に出ても問題ない万能職ですよ! では、アークプリーストっと……。冒険者ギルドへようこそアクア様。スタッフ一同、今後の活躍を期待しています」
ルナさんが一礼すると、アクア様はにんまりとした笑みを浮かべると、カズマ君の方を向いた。
「ねえカズマさん、どう、私のステータスは! カズマさんと違って、私って最強なんじゃない? 私がパーティーに居る事を感謝した方がいいんじゃないかしら? ねえねえ、カズマさんどうなのよ?」
「うぜぇ……」
ステータスが高かった事がよほど嬉しかったのか、カズマ君に絡んでいる。カズマ君がイライラしてる事にも気付かずに、カズマ君の周囲をグルグルと回りながら、『ねえねえ、どうなの?』って聞き続けるのは流石に止めた方が……。
カズマ君だってステータスが低くて残念に思っているはずだから、いくら嬉しいとは言っても、やりすぎなのかなって思っちゃった。
「ここって初心者の街でしょ? このステータスならこの街で最強じゃないの? ね、すとれもそう思うわよね!」
「ど、どうでしょう……」
アクア様のステータスはまだ見ていないけど、冒険者になってすぐの人が、この街で一番凄いステータスだって、冒険者ギルドで言うのは心苦しい。だって、ここは冒険者が集まる場所で、私に親身にしてくれる先輩が沢山居るんだから。
でもアクア様は女神様だから仕方ないのかも知れない。人に敬われて当然の立場だから、周りからの心証なんて気にする必要が無かったのかも。だから、自分が嬉しい事と思ったら、他の人にもそれを喜んで欲しいってだけで、行動に移しちゃうんだろうね。
でも、私はアクア様のそんな天真爛漫な性格が好きだから、それが曇らないために頑張ってフォローしてあげないと。だって、私はアクア様の聖女らしいからね!
「おいアクア……」
「んー? カズマさんも私の偉大さが分かったのかしら? そうよね。だって、私は女神なんだから!」
アクア様にヘイトが集まってしまう前に、ギルドから連れ出そうかと思ったところで、カズマ君が私の冒険者カードを手に取って。
「アクア、いいからこれを見ろ」
「ん? 何かしら……。これ、すとれの冒険者カードじゃない? それがどうかしたの……? えっ!?」
「くははははは! すとれのカードを見たか? 見たよな! 全てのステータスがアクアを超えてんぞ! しかも、アークプリーストの魔法スキルは全て取得済み。それもアークウィザードなのにだ。これがどう言う事か分かるか?」
アクア様は手渡された私の冒険者カードと、自分のカードを何度も交互に見ていくと、その度に顔が青ざめていった。
「え……なに? どういう事なの……? 全然、分からないよ……?」
「アクア……お前はいらん、チェンジだ!!」
「なんでよおおおおお!?」
「当然だろ。すとれの方がステータスが高くて、同じ魔法が使えるんだ。それに、お前と違って性格もまともだ! 完全に上位互換じゃないか! 行こうぜ、すとれ! 俺達の冒険はここからだ!」
アクア様を放置されたままなのに、私はカズマ君に後ろから両肩を押されて、冒険者ギルドの出口まで連れていかれる。あ、あのアクア様は置いていっちゃうんですか……?
「えっ? 待って、待ってよ……。私女神だよ……? ねえ、置いてかないでえええ!」
「お、おい! 抱き付いてくるなよ! お前は性格はともかく、ステータスが優秀なんだから、どこのパーティーでも入れてくれるって。俺達が魔王を倒したら帰れるんだし、俺達に任せてゆっくりしてたらいいじゃないか」
アクア様はカズマ君に置いていかれたく無くて、カズマ君を強く抱き締めた。それこそ、骨からミシミシって軋む音がするくらいに……。ま、待ってください、このままだとカズマ君の冒険が終わっちゃいますから! 骨から出ちゃダメな音が鳴ってますからね!?
「イヤよ! 絶対に離さないんだから!!」
「ま、待て! い、痛いから! 骨が軋んだ音がなってる痛ええええ!? わ、分かったから! お前もメンバーでいいから、早く止めてくれえええ!!」
カズマ君がアクア様もメンバーでいいって言ったおかげでアクア様もやっと離れてくれた。アクア様とカズマ君のステータス差が大きいから、強く抱き締められたらかなりの痛さだよね……。でもアクア様が捨てられなかったのは良かったなぁ。何だかんだ優しいカズマ君には後でヒールを掛けてあげよう。
「当然よ。女神は捨てられないんだから!」
カズマ
アクアの上位互換を見つけて、アクアを捨てようとした。
結果、骨にヒビが入りかける。(すとれのヒールで全快)
すとれから幸運ステータスの使い道を教わった。
アクア様
調子に乗って捨てられかけた。
女神は捨てられない呪いのアイテム。
すとれ
アクア様を守護らねばと決意してた。
読んでいただきありがとうございます!
アクア様を可愛く書けたのか心配な回でした。アクア様って女神な訳なので対等なコミュニケーションってあまりした事が無さそうなので、空気読めないのも仕方ないのかもとフォローしてみたり。
ここから人間社会を学んでいくはずなので、成長していってくれるはずです。アクア様は出来る女神様なんですから!