尊敬してますアクア様!   作:天道詩音

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【閑話】
朝、女神様のいる日常


 

「アクア様おはようございます。朝ですよー。そろそろ朝ご飯も出来上がりますよ」

 

 布団に包まれて、ぐっすりと眠っているアクア様に声を掛ける。幸せそうに寝ているアクア様を毎朝見るのが最近の楽しみになっている。

 

「いや〜……あと一時間は寝ないと……すぅ……」

「一時間も寝たらご飯が冷めちゃいますよ。ふふっ、また起こしに来ますね」

 

 アクア様が寝泊まりしてる部屋から出て、めぐみんとゆんゆんの様子を見に行く。アクア様はしばらく起きないだろうし、また後で来よう。めぐみんとゆんゆんはまだ寝てるかな?

 

「すとれ、おはようございます」

「めぐみんおはよー! 早起き出来て偉いねー」

 

 私達の部屋に入ると、めぐみんはもう起きていて、ベッドの上に座って、寝間着から普段着のローブに着替えているところだった。

 

 ローブを下から被るように着ためぐみんの髪がボサボサになっていたから、後ろに座って髪を手櫛で整えていく。はい、これで何時もの可愛いめぐみんに戻ったね!

 

「もう、子供扱いしないでください! 早起きなんて誰にでも出来ますから!」

「ごめんごめん。でもいつもより起きるの早いよね、何かあったっけ?」

「お腹が空いたので目が覚めてしまいました。すとれが昨日の寝る前に、朝に食べる白米とお味噌汁はどうして美味しいのかを熱く語っていたせいです。責任取ってください」

「めぐみんもご飯が大好きだもんね。もう少ししたら美味しい朝ご飯が出来るからそれで許してくれるかな? 取りあえずゆんゆんを起こすね」

 

 布団に包まってすやすや寝てるゆんゆんの顔を覗き込むと、めぐみんも後ろから覗き込んできた。

 

「良い笑顔で寝てますね。夢の中で友達百人に囲まれているんじゃないですか」

「可愛い寝顔だよねー。でも、現実では親友二人に囲まれてるんだし夢の中よりも幸せでしょ? だから、起こしちゃうねー! ゆんゆん、おはよう。朝ですよー」

「んぅ……お母さんまだ早いよ……」

「くふふっ……すとれ、お母さんって呼ばれてますよ……あははっ!」

 

 もう……寝ぼけてるだけなんだからそんなに笑っちゃダメだよー。ゆんゆんはまだ起きたくないみたいで、掛け布団を全身で抱き締めて、起きたくないってアピールしている。

 

「ゆんゆんの大好きなリンゴもウサギさんの形に切ってあげるから起きて欲しいなー」

 

 ゆんゆんの肩を優しく揺らして語り掛けたけど、顔を小さく左右に動かすばかりで起きてくれない。

 

 仕方ないから、あるえの小説に書いてあった起こし方を試してみようか。寝ているゆんゆんのおなかの下あたりに座ってから、肩を両手で掴んで揺らそうとしたら。

 

「す、すとれ!? なんで、そんな羨まし――じゃなくて、ゆんゆんに乗って顔を近付けて何をするつもりなんですか!?」

「えっ? 起こそうとしてるだけだよ……? あるえの小説に書いていた起こし方でね、幼馴染の女の子が主人公の男の子を起こす時に言っていたんだけど――」

「ま、まさか、目覚ましのちゅーですか!? そんなのダメですよ!」

 

 目覚ましのちゅーなんて、そんな事恥ずかしくて出来ないよって、慌てて止めようとしてくるめぐみんにそう言おうとしたところで、ゆんゆんの目がパッと開いた。あっ、起きたのかな?

 

「んぁ……まだ、ねむいよ……んぇ? ……えっ、あれ!? な、なんですとれが私のお腹の上に!?」

「えへへ、早く起きないとちゅーしちゃうよ!」

 

 昨日、小説を読んだ時に出てきたシチュエーションだったからその通りに真似したかったんだよね。幼馴染に起きないとちゅーするって言われて、焦って主人公が起きるシーンがあったけど、ちゅーするって言うだけのシーンだったから実際にする訳じゃないからね。

 

「ええっ、すとれがちゅーしてくれるの!? 待って、こんな幸せなシチュエーションは夢だよね……。夢の中なら、目の前のすとれに何をしてもいいんだよね……! なら、私がすとれにちゅーしてあげる」

「えっ? 夢じゃない――きゃっ!?」

 

 ゆんゆんに抱き締められたと思った時には、気づいたらベッドの上に仰向けになっていて、その上にゆんゆんが覆い被さるように乗っかっていた。

 

 あっ、あれ? なんでゆんゆんが私の上に? なんで、顔を近づけてくるの……?

 

「動いちゃダメだよ……、じゃあ、するね……!」

「あ、あのだから夢じゃな――」

「エクスプロージョン!!」

「きゃああぁ!? めぐみん、いきなりなにするのよ!?」

 

 私に顔を近づけてきていたゆんゆんは、めぐみんのエクスプロージョンって声と共に、壁の方に倒れ込んでいった。突然の出来事に目を回しつつも、めぐみんへ抗議の声を上げていた。

 

「夢ではないのですから、ちゅーなんてさせませんよ!」

「う、嘘でしょ……!? 夢じゃなかったの!? だって、目を開けたらすとれが私のお腹の上に乗っていて、起きないとちゅーするって言ってたんだよ! こんなの絶対夢だよね!?」

「気持ちは凄く分かりますけど……すとれが小説の真似をしようとする、いつものアレでした」

 

 だって、小説の一幕を真似したくなっちゃったんだもん。あるえの小説って面白いから、気に入った登場人物の行動を真似しちゃうのも仕方ないよね。

 

「と、取りあえずゆんゆんおはよう! なんか混乱させちゃったみたいでごめんね」

「私も寝ぼけてて、ごめんなさい」

 

 二人で布団の上で正座して、ペコペコと頭を下げていたら、突然めぐみんが笑い出した。

 

「そう言えば、さっきゆんゆんがすとれの事をお母さんって呼んでましたよ」

「ふふっ、起きたくないってごねてて可愛かったよ」

「は、恥ずかしいんだけど……!? 確かに、さっき夢の中でお母さんに起こされたけど、それも夢であって欲しかったなぁ……」

 

 顔を手で覆いながら俯くゆんゆんを見て、まためぐみんが笑い出す。朝寝ぼけるなんてよくある事だし、そんな笑わないであげて。

 

 だって、めぐみんだって昨日、私が早朝に起きた時に『すとれ、行かないでください……』って寝ぼけて抱き着いてきたんだよ。もう一度めぐみんが眠るまで頭を撫でていたら、朝食の準備が遅れちゃったんだから。どっちもどっちだと思うなぁ。

 

「取りあえずもう少しで朝食が出来るから、準備ができたら下においでねー」

 

 次はカズマ君を起こさないとね。その後は朝ご飯の仕上げをしてから、アクア様をもう一回起こしに行く流れかな。

 

 カズマ君が泊っている部屋の前に行って、扉をノックするけど返事がない。いつも通り寝てるのかもね。

 

「お邪魔しまーす。起きてるかなー?」

 

 ベッドに近づいてみると、カズマ君はやっぱり寝てるみたいだ。起こすためにベッドに両手を置いて、顔まで布団で覆っているカズマ君に声を掛ける。

 

「カズマ君、おはよう。朝だから起きて欲しいな」

 

 声を掛けると、布団が一瞬動いた気がするけど、起きる様子は無い。カズマ君って眠りが深いみたいで、声を掛けるだけだと中々起きてくれないんだよね。だから、布団の中に居るカズマ君の肩あたりに手を置いて、ゆさゆさと揺らしながらもう一度声を掛ける。

 

「朝ご飯も作ったから、一緒に食べようよ。ねえ、起きてー」

「お、おう。おはよう」

 

 目が覚めたのか、布団からおずおずと顔を出してくれた。カズマ君は布団を被っていたせいで暑かったのか顔が少し赤くなっている。

 

「おはよう、カズマ君。今日朝ご飯はね、ご飯とお味噌汁とキャベツの漬物って献立なの! もし足らなそうだったら目玉焼きも作るけど、食べる?」

「だ、大丈夫だ! それにしても、日本の朝食っぽくて良いチョイスだな」

「そうなの! 昨日寝る前にね、めぐみんにご飯とかお味噌汁の事を話してたら食べたくなっちゃったんだー! もうすぐ出来るから、準備が出来たら下に降りてきてね!」

「ああ、また後でな」

 

 さて、そろそろご飯が美味しくなる頃かな。ご飯って炊けてから二十分くらい蒸す事で、更に美味しくなってくれるんだよね。その間に皆を起こしに行く事が最近のモーニングルーティンになっているんだよね。

 

 私が作る料理って和食な事が多くて、めぐみんとゆんゆんもすっかり和食好きになっていた。ふふ、やっぱりお米って美味しいからね!

 

 考え事をしながら配膳を進めていると、リビングに皆が降りてきて、テーブルを囲んで席に着いた。

 

「あ、めぐみんごめんね。私の分の配膳がまだだから、お願いしてもいいかな? 私は、アクア様がまだ降りてきてないから起こしてくるね!」

「分かりました。でも早くしてくださいね。ゆんゆんが空腹でお腹を鳴らしてますので」

「私は鳴らしてないわよ! 部屋で何度もお腹が鳴ってたのはめぐみんでしょ!」

「私が気にしてた事を言うなんてひどいですよ!」

「めぐみんだって――」

「二人とも仲良しないとダメだよー。じゃあ行ってくるね」

「毎朝アクアが悪いな、よろしく」

 

 カズマ君に気にしないでね、と伝えてから二階に上がって、アクア様の部屋をノックするけど、返事はない。部屋の中に入ると先程と同じ体勢で寝ていた。ほんとぐっすり眠ってますね。でも、暑くて布団を蹴ったのか、掛け布団がベッドの下の方に追いやられている。この部屋って朝に日差しが入るのに、カーテンを閉めてなかったみたいだから、日光で暑くなっちゃったのかも。

 

「アクア様おはようございます。もう、ご飯が出来て皆が待ってますよー」

「んん……ごはん?」

 

 寝ぼけながら薄っすらと目を開けたけど、日光が眩しかったみたいで目を瞑って掛け布団を探そうと両手両足でもぞもぞしてるけど、ベッドの端にあるから見つからないみたい。

 

 見つけたらまた寝ちゃうかもだし、今の内に起こしちゃおう。

 

「今日の献立は美味しい炊き立てのご飯と、温かいお味噌汁と、新鮮なキャベツの浅漬けですよ。起きないと冷めて美味しくなくなっちゃうかもです」

「起きるわ!」

 

 勢い良く起き出したと思ったら、気付けば部屋の入り口に立っていて……、さっきまで寝てたのが噓みたいな速さだった。

 

「ご飯は温かい内にで食べたいから早く行きましょ! ごっはん、ごっはん!」

「ふふっ、はい、ついていきますね」

 

 ご機嫌な様子で、ご飯の歌を歌っているアクア様についていき、リビングに戻った。

 

「皆おはよー。さあ、美味しいごはんを食べるわよ!」

「なんで、最後に起きたあなたが仕切るのですか……まあ、いいです。もう空腹が限界なので」

「私もご飯の前で待ってたからお腹減っちゃった……」

「遅いぞアクア。早く座れよ」

 

 皆揃って席に着いたところで、全員で掌を顔の前で合わせて。

 

「「「「「いただきます!」」」」」

 

 皆が美味しそうに食べているし、今回も美味しく作れたみたいだね。皆の美味しく食べる姿も見れたし私も食べようか。うん、お味噌汁も良い感じに出来てるね。

 

「ところで、カズマとアクアはお金を稼ぐ宛てはあるのですか?」

 

 黙々とご飯を食べている中、めぐみんが口を開いた。

 

「私は今日もこの家を守る大事な仕事があるし、お金を稼ぐのはカズマに任せるわ!」

「おい、駄女神。お前こそ働けよ。俺はこの後、朝食を食べた後の二度寝って言う、崇高な時間を過ごすんだ」

「二人とも最低ですね!? 特にカズマの理由は何ですか、働く気が全く無いですよね!?」

 

 まあ、アクア様とカズマ君が家に居てくれたら、私達は安心してクエストに向かえるから、そんな感じでメリットはあると思うよー。

 

「いいですか、あなた達はすとれの好意で泊っているだけなんです。お金を貯めたら出ていくって話でしたよね……? なんで二人してニートになってるんですか!?」

「だってなあ」

「だってねえ」

 

 カズマ君とアクア様は二人して私を見つめてきた。え、えっと、なんだろう……?

 

「いや、ここの居心地が良すぎて絶対出ていきたくないから、お金を貯めたくないんだ! だって、すとれが炊事洗濯を全部してくれるし、ご飯も美味しくて、でかい風呂にも毎日入れて、温かい布団で眠れるし、環境が最高過ぎるんだよ! だから俺は悪くない!」

「私もすとれのご飯は美味しいから、出ていきたくないのよねぇ。だから、私は悪くないの!」

 

 二人がこの家に泊まるようになったのは、アクア様とアクセルで再会した日の事だった。カエル討伐のクエストを終えた帰り道に、アクア様に一軒家を借りている事を伝えた結果、『私もそこに泊まるんだから! 馬小屋なんて絶対いやっ!』って言われて、その日から泊る事になったんだよね。

 

 その時にお金が貯まったら出て行くって話していたけど、それから外に出掛けた様子は無いし、二人とも一度もお金稼ぎはしてないんじゃないかな……? まあ、私は困らないし、お世話するのが好きだからこのままでも気にならないけど、めぐみんは不満みたい。

 

「まあ、アクア様とカズマ君のペースもあるんだから、ゆっくりでいいんじゃないかな? 私は気にしないよ?」

「すとれは甘すぎます。全く、ニートになるなんて恥ですよ!」

「めぐみんが言っても、説得力無いよ……」

「ゆんゆんうるさいです! 私はもう卒業しましたから!」

 

 半年以上ニートしてたからねぇ。ニート期間はめぐみんの方が長いよ……。

 

「と、とにかくウチにニートは要りませんからね! せめて食費を稼ぐなりしてください!」

「討伐クエストで手伝えればいいんだけどなぁ……めぐみんはともかく、すとれとゆんゆんが強すぎて、俺とアクアはお荷物になるんだよな。アクアに至っては、すとれの下位互換だし」

「なんで私はともかくなんですか! 私には最強の爆裂魔法があるのですよ!」

「私がなんで、すとれの下位互換なのよ!? 私、女神なのよ!?」

 

 めぐみんにはめぐみんの、アクア様にはアクア様の良さがありますからね! 適材適所だと思うなぁ。

 

「とにかくお金を稼いでくださいね!」

「稼ぐぞ……いつか」

「未来の私が稼いでくれるはずよ」

「ね、めぐみん。二人もいつか稼いでくれるって言ってくれたんだから大丈夫だよ。今は準備期間なんだから、気長に待っててあげよっか!」

「本当にすとれは甘いんですから……まあいいです、分かりましたよ」

 

 めぐみんも二人が家に居てもいいって認めてくれて良かった。アクア様もカズマ君も、突然この世界に来ちゃって戸惑いもある訳だから、準備期間は必要だよね。落ち着いたら、一緒にクエストに行ってくれたりするのかもね。

 

「……お、俺今日はちょっと働きに行こうかな?」

「えっ、カズマさんどうしちゃったのよ? 頭おかしくなっちゃった?」

「二人とも、お金の事とか気にしないで大丈夫だよ? ゆっくりしてていいからね!」

 

 カズマ君とアクア様は二人で顔を近づけて話し合いをしようとしている。どうしたんだろうと思って少し近くに寄ってみる。

 

「い、いや、すとれは何も文句も言わないで、俺達の世話をして、お金まで出してくれてるだろ……? しかも、俺達がニートしてても変わらずに優しいし、罪悪感がな……」

「た、確かに……私もたまには働こうかしら」

 

 別に気にしなくていいと思うけどなぁ。

 

「お、俺達も久々にクエストに行きたくなったから、連れて行ってくれるか? 荷物持ちくらいは任せてくれ」

「回復役は任せてよね! ところで今日は何のクエストに行くの?」

「あ、ギルドでルナさんから足らない食材の採取クエストを依頼されたので、今日はジャイアント・トードの討伐です!」

「いやあああ!? カエルはいやよ!? 絶対むり!」

 

 結局、アクア様はお留守番係になったから、他のメンバーで討伐する事になった。夜ご飯のおかずに出したカエルの唐揚げは美味しそうに食べていたけどね。




すとれ
毎日炊事洗濯を楽しんでやっている。
人のお世話をするのが大好き。

めぐみん
エクスプロージョン(物理)を使用した。

ゆんゆん
夢の中ならすとれに何をしてもいいらしい。

カズマ
女の子に起こされたいからって、布団を被って寝たふりしてるのでは? そんな事ないよね?

アクア様
寝相が悪そう。
やっぱりカエルは無理みたいです。

読んでいただきありがとうございます!
アクア様と一緒に暮らす、こんな日常を見たかったんです!

次回の閑話は17日に予定しています。
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