「いらっしゃいませー! お仕事案内なら奥のカウンターへ、お食事なら空いてるお席へどうぞー!」
今日は、ギルドでバイトをしてる日で、朝から酒場の方を担当して働いていた。酒場のお仕事はねりまきちゃんの家の酒場で働いていた経験があるから、気軽に仕事が出来ている。紅魔の里では、もっと癖の強い酔っ払いを相手していたからね。
この冒険者ギルドには、アクセルに来てすぐの頃からバイトに来ていて、今で四ヶ月目くらいだから受付の仕事も、酒場の仕事も慣れてきたところだ。
私には養う子が二人も……最近、四人になったから、モンスターがあまり出没しなくなる冬でも収入が入るように、ギルドでバイトをしている。
私はアルバイトを入れていたからお仕事だけど、他の四人は家でゆっくりしてるみたい。昨日はカエル討伐のクエストにめぐみんとゆんゆん、カズマ君の三人で向かって、怪我無く倒して戻ってこれた。
カズマ君は久しぶりに外に出たからか、筋肉痛で朝から痛そうにしていた。筋肉痛にはヒールってあまり効かないみたいだったから、カズマ君には筋トレをしてみたらって提案してみた。ベッドの上でも出来る筋トレがあるって話をしたら、ぜひとも教えて欲しいって言われたから、家に帰ったら教える予定だ。
「すみませーん、注文よろしく!」
「はーい! 今伺います!」
ギルドの入り口付近でお客さんが来るのを待っていたら、注文に呼ばれたので、取りに向かう。今日は沢山の冒険者達が酒場でお酒を飲んでいて、朝から注文が多かった。
「すとれちゃーん、しゅわしゅわ四つと唐揚げよろしく!」
「しゅわしゅわ四つと唐揚げですね! 伝えてきまーす!」
「よろしく頼むよ」
「はーい!」
今の注文をした冒険者の皆さんは、朝から飲んでいるから、まだ昼ごろなのに泥酔していて、テーブルに突っ伏している人も居る。なんでも昨日、一撃うさぎを沢山討伐したらしくて、そのお金をパーッと使う予定らしい。でも、飲み過ぎだと思うから、次に注文を持って行く時に水も一緒に持っていってあげよう。
受け取った注文を厨房のスタッフに伝えてから、ギルドの入り口に戻ると、ちょうどギルドの扉が開いた。
『来客には、笑顔で元気に!』という、冒険者ギルドスタッフのスローガン通りに笑顔で元気良く接客しないとね。入ってきたお客さんに向けて、笑顔で挨拶する。
「いらっしゃいませ!」
「すとれ、おはよー! 今日はギルドでアルバイトなのね」
「あ、リーンさんおはようございます! 今日は一日ギルド職員の日ですよー! リーンさんはどうしたんですか?」
一人で入ってきたお客さんは、私のお友達のリーンさんだった。私と同じ魔法使い職で冒険者をしていて、長いポニーテールとキュートな尻尾が特徴のクールで可愛いお姉さんだ。
「昼食を食べに来たのよ。後でテイラーも来るわね」
「分かりました。では、こちらの席にどうぞー!」
リーンさんは、アクセルで何年も冒険者として活動していて、同じ魔法使い職だったから、一度リーンさんのパーティーに参加させて貰い、魔法使い職の戦い方を学ばせて貰った事がある。
あの時は、ルナさんにパーティー戦での魔法使いの戦い方を学びたいって相談した際に紹介して貰った冒険者がリーンさんで、そこから仲良くなってから時々二人で出掛けたりする仲になっていた。リーンさんの話は、もっぱらダストさんへの愚痴ばかりだけど、何だかんだ二人は仲が良いみたい。
「ありがと、料理は後で頼むね。それにしても……ギルドの制服、似合い過ぎじゃないの? 冒険者をしてる時に着てるローブよりも似合ってると思う」
「ふふふ、そうですか?」
制服が似合ってるって言われて嬉しくて、制服を見て貰うためにその場でクルリと回った。
この制服ってちょっと露出は多いかもだけど、可愛くて好きなんだよね。私の制服はルナさんの制服よりは露出が減っていて、肩出ししてるのはそのままだけど、胸元は隠れている。ルナさんみたいにスタイルは良くないから胸元が隠れてて良かった。下のショートパンツは三分丈になっているから短くて脚がほぼ出ちゃうけど、動きやすいのが良い点だ。
ギルド職員って意外とよく動くお仕事だから助かっている。お客さんが増えてくると走り回る事もあるからね。
「リーンさんも着てみます? せっかくですし、一緒にギルド職員しちゃいましょうよー」
「流石に私には似合わないんじゃない? てか、ギルド職員ってそんな簡単に誘っちゃっていいの?」
「年中人手不足なので、誘っちゃって大丈夫ですよー! 私も、シフトを増やせないか打診されてますし……、でも本職は冒険者ですからお断りしちゃいましたけどねー。それより、この制服ってリーンさんにこそ似合うと思いますよ! リーンさんってアクセル随一の美脚の持ち主ですし、この脚を引き立てる制服デビューしませんか?」
「しないわよ……って、私がアクセル随一の美脚の持ち主って何よ!?」
「ダストさんとキースさんがこの前話してましたよ? 私は二番らしいです。えへへ、負けちゃいましたね!」
この前、ギルドの酒場で朝から飲んでいたダストさんとキースさんがベロベロになりながら話してたんだよね。ダストさんとキースさん、あとはテイラーさんの三人はリーンさんとパーティーを組んでいる冒険者達で、前にリーンさんから魔法を教わった時にパーティーを組んで、そこから仲良くさせて貰っているんだよね。まあ、ギルドで酔っ払っている時の話し相手をする程度の仲だけど。
「あのバカ共は……。すとれも何かされたら私に言いなさいよ?」
「皆さん優しいので心配無いですよー。あっ、リーンさんの一番良いところを言ってませんでしたねー」
「…………、尻尾は禁止よ」
「えーっ!? だって、そんなに可愛い尻尾なんですよ? モフりたくなっちゃいますよ!」
「そんなのすとれだけよ」
リーンさんの尻尾って手触りが凄く良くてモフモフしてて最高なんだよね! 丸々としてて柔らかくて、タヌキさんの尻尾みたいで本当に可愛いの! だから、会う毎に触らせて貰っちゃってるんだけど、その一時が本当に幸せなんだよね! 恥ずかしがりながら尻尾を差し出してくれるリーンさんは可愛いし、触り心地も最高でずっと触っていたくなる。けど、触られているリーンさんはくすぐったいみたいで、ちょっと触ったところで、もうダメって止められちゃうんだよね。叶うならずっと触っていたいのに……!
「誰だって触りたくなっちゃいますってー。てことで、今日も触っていいですか? 毎日、触らないと元気が無くなっちゃうんですよー!」
「嘘言わないの」
「わわっ」
えへへ、ぺちりとおでこを指で軽く叩かれちゃった。その後にリーンさんは少しため息を吐いてから、少し恥ずかしそうな顔をして。
「はあ、少しだけよ」
「ほんとですか! ありがとうございます!」
リーンさんは椅子に座ったまま後ろを向くと、モフモフな尻尾が私の前に来た。いつ見てもキュートな尻尾だよね!
まずは、感謝を込めて手を合わせる。そして、根本の方からさーっと一撫ですると、指に当たるサラサラとした毛の感触が心地良い。それから何度か丁寧に撫でていると、尻尾を触られるのはくすぐったいみたいで、時折尻尾がビクッと揺れる。
「そろそろ満足した?」
「あ、あと一時間くらい……」
「長いわよ! はい、おしまいね。全く、尻尾を触らせる相手なんて、すとれくらいなんだから」
「ふふっ、ありがとうございます! これで今日も頑張れますよー!」
ほんとに良い手触りだったなぁ。また今度も触らせて貰わなきゃね!
「すみませーん、ちゅうも――」
「おいバカ、女の子同士の絡みを邪魔すんな!」
「ぐはっ!?」
「アクセルじゃ貴重な百合だぞ! しかも美少女同士の!」
「ごはっ!?」
「男が入ってくんな!」
「ひでぶ!?」
「すとれちゃーん、何でも無いからごゆっくりどうぞ!」
「えっ? ええっ!?」
注文をしようとした人の顔にしゅわしゅわのジョッキが何度も飛んできて、意識を失ったように椅子から転げ落ちていったんだけど……。何でも無いって言われても心配になるくらいの音が鳴ってたよ……。だ、大丈夫なのかな?
「ほんとにバカばっか。あんなやつら気にしないでいいからね。でも、すとれもそろそろ仕事に戻った方がいいかもよ?」
「あ、確かに話し込んじゃいましたね。じゃあ、リーンさんもゆっくりしていってくださいねー!」
よく分からないけど気にしないでいいなら仕事に戻っちゃおうか。リーンさんの尻尾を触れたし、午後も頑張るよー!
「すとれさーん、ちょっといいですか?」
「はーい、今行きます!」
料理の配膳の手伝いをしようとしたところで、ルナさんに呼ばれたけどどうしたのかな?
「すとれさん、今大丈夫ですか?」
「大丈夫です。どうかしましたか?」
「早速ですが、すとれさんには出向して貰います!」
「ええっ!? 私、なんかしちゃいましたか!? 出向先はアルカンレティアになっちゃうんですか!?」
ど、どうしよう………? アルカンレティアに出向になんてなったら何が起きるか分からない。ただでさえ、アクセルのアクシズ教徒の人達には写真を撮られたり、拝まれたりしてるのに、アルカンレティアになんて行ったらどうなっちゃうんだろう? 私、帰って来れるのかな……?
「す、すみません……。冗談だったので、そんな深刻そうな顔はしないでください! 出向ではありませんが、こちらの書類をウィズ魔道具店のウィズさんに届けて欲しいんです。今日はスタッフの数に余裕があるので、書類を届けたらゆっくり昼休憩を取って構いませんよ」
「ウィズ魔道具店ですか……行った事が無いんですけど、どこにあるんですか?」
アクセルの魔道具店はリーンさんにおすすめされた店を何軒か回ったけど、ウィズ魔道具店には行った事が無かった。リーンさんも知らない、隠れた名店だったりするのかな?
「あ、地図は書類の一番下にありますのでそちらを見れば行けると思いますよ。ウィズさんは元凄腕のアークウィザードでしたから、お話を聞けたら勉強になるかと思ったので、すとれさんにお願いしたいんですが、よろしいですか?」
「はい、任せてください! では、ウィズさんに書類を届けてきますね!」
凄腕のアークウィザードなんて、凄い人なのかも。会ったら、戦い方とか、魔法の使い方について話を聞けたらいいなぁ。
「早速行ってきますね! お昼ご飯を食べたらすぐに戻ってきますので、行ってきまーす!」
「いってらっしゃい。戻るのはゆっくりでいいですからね」
「はーい!」
お弁当の入ったポーチを取ってから、ルナさんに見送られつつギルドを出る。地図を見ながら歩いて行くとウィズ魔道具店を見つけたので中に入ったんだけど。
「う、うぅ……」
店員さんが床に倒れ伏していた。
「だ、大丈夫ですか!? 『ヒール』『ヒール』」
「みゃあああああ!? 浄化されちゃううう!?」
「ええーっ!?」
ええっ、店員さんにヒールを掛けたら、何故か身体が薄くなってきて、地面が透けて見えた!?
しかも浄化されちゃうってどうしたらいいの!?
リーン
すとれに会う毎に尻尾を触られている。実は満更でも無い?
尻尾はすとれにしか触らしていないらしい。
ルナ
すとれにお使いを頼んだ。
店員さん
ヒールを掛けたら逆にダメージを受けていた。何ででしょうねー?(棒)
すとれ
リーンの尻尾が大好き。
リーンの事も好き。
アルカンレティアに出向だと思って涙目。
読んでいただきありがとうございます!
本当はギルドでもっとお仕事してる話だったんですけど、リーンの尻尾を触っていたら話が終わってましたね!
次回は20日に投稿予定です。