「すとれは紅魔族なのですから、ちゃんと名乗りがでるようにならないとダメですよ」
「あはは、ごめんね。名乗るの初めてだったから、上手くできなかったよ。だからめぐみんに名乗り方を教えて欲しいなー」
家の扉を開けたら友達ができました。どういうことなの? って思うかもしれないけど、そうとしか言えない状況だった。
生まれ変わってから初めての友達の名前はめぐみん。紅魔族の名前の付け方は独特だから、前世から考えたらあだ名っぽい名前だなぁって思う。
私のパパは『わびすけ』で、ママは『はっかの』って名前だった。二人はわびすけさん、はっかのちゃんと呼び合っていて仲良しだ。
「いいでしょう。この私がすとれを紅魔族一の名乗りの名人にしてあげましょう!」
「えへへ、じゃあ一番になれるように色々教えてね!」
紅魔族一の名乗りの名人になるまで頑張らなくてもいいんじゃ……って思ったけど、『すとれが一番上手く名乗れるようにしてあげますね!』って、胸を張って言っていためぐみんが可愛かったから、つい頷いちゃった。
でもめぐみんって可愛いよね。私と同い年だけど、私より一回り小さくて、ちょこちょこと歩いている姿がすっごく可愛い!
「で、では早速、名乗りの練習をしましょうか?」
「あ、とりあえず今は里を案内して欲しいかな。ママもパパも過保護だったから、家から出るの初めてなんだもん」
他の子達が外で遊んでいるのを、窓から覗いてみているだけだったからね。家には本が沢山あったから、家から出なくても時間は潰せていた。でも、今日からは外で遊べるんだ。せっかくだから色々な所に行ってみたい!
「分かりました! じゃあ行きましょう! 付いてきてください」
「ま、待って! せっかくだから一緒に行こうよ」
そう言ってめぐみんの横に行って手を握る。わっ、めぐみんの手すごく柔らかい。思わずにぎにぎと何度も感触を試していたら手を引かれたので付いていく。前を歩くめぐみんの耳が赤くなっているのに気づいたけど、どうかしたのかな?
「とりあえじゅ……ゴホン! とりあえずお店から見ていきますよ!」
「うん! めぐみんのおすすめのお店を教えて欲しいな」
窓から見ていた景色の中に居る。そう思うと、すごい嬉しくなる。紅魔の里の街並みは昔見たファンタジー映画のワンシーンみたいで、改めて異世界に来た事を再認識した。
「ではまずこちらの石像は『グリフォン像』です。グリフォンを石化魔法で石にしてますが、いつか魔法が解けて復活します」
「復活しちゃうの!? 危ないじゃん!」
紅魔の里、最初の名所はいつか復活するらしいグリフォンの像でした。こんな大きなモンスターが里の中で暴れたら危ないよね!?
「紅魔族は皆、魔法使いの上位職であるアークウィザードになれるくらいの魔法の才能があるので、暴れたとしてもすぐ倒せるので問題無いんです。それに立派な像が里の入り口にあったらかっこいいじゃないですか!」
「絶対、後半だけが理由だよね! ま、まあ簡単に倒せるならいいのかな?」
それにしてもグリフォンって大きいなぁ。頭から尻尾までで3メートルくらいはありそう……。私もいつか倒せるようになるのかな?
魔法は両親が日常的に使っているおかげで、既に何度も目にしてる。ママがかまどに火を付ける為に、魔法を使っているところを見て、私も使えないかって聞いたら、冒険者登録して魔法スキルを覚えてからじゃなきゃ使えないらしくて、自分では魔法をまだ使えていない。
まだまだ魔王討伐までの道のりは遠いけど、いつか倒せるようなるために強くならなきゃね。魔法は学校に通ってから覚えるみたいだから、早く学校に行けるようになりたいなぁ。
「この辺りはお店が集まってますね。そしてこちらが紅魔の里唯一の喫茶店『デッドリーポイズン』です! 私は食べた事無いですけど、美味しいと評判ですね」
「食事を出すお店の名前に毒って入れちゃダメだよね!?」
料理の味は美味しいです、ただし毒入り! みたいな事はさすがに無いよね!? お店の名前がただ、デットリーポイズンなだけだよね!?
きっと名前はカッコいいからそう付けただけで、普通の喫茶店なんだろうね……。きっと料理の名前もカッコよさだけの名前にしてる気がする。だんだん紅魔族のことが分かってきた気がするよ……。
「こちら大衆浴場の『混浴温泉』です。私は利用したことが無いですが、浴場の中は男女で別れています。女性側の浴場にはサウナ室があって、美容に良いって聞きました」
「混浴温泉なのにしっかり男女で別れてるんだね! そっちの方がいいけど、モヤってしちゃうよ!?」
サウナは結構好きだったから、今度ママにお願いして連れて行ってもらおうかな?
いつも五分も経たない内に暑くて出ちゃうんだけど、あの暑さがいいのか、なぜか入りたくなっちゃうんだよねぇ。
それにしてもめぐみんに色々案内してもらっているけど、めぐみんは喫茶店も大衆浴場にも行ったことが無いみたいだし、あまり人気のあるお店じゃないのかな? それとも家が遠いとか?
「あ、めぐみんの家ってどこにあるの? ここから遠いのかな?」
「近いので案内しますよ。こっちです!」
大衆浴場の裏から進んで、お店の多い通りから離れるように進んでいくと、ポツンと小さな家が建っていた。近くで見ると、なぜか玄関の扉が無かった。壁に大きな穴が開いていて家の中が見えている。ずいぶんと開放的な家だなぁ……。
「冬は凍えるくらい寒いですが、夏は涼しくていい家なんですよ! ほ、ほんとにいい家ですから!?」
「住んでるめぐみんがそう言うならそうなんだろうね! よーし次の場所へ出発だー!」
見なかったことにして次の場所に行こうと、めぐみんの手を引っ張って、遠くに見える大きな建物の方へ進んでいく。めぐみんが喫茶店と大衆浴場行ったことが無かったのってもしかして貧乏……いやいや、忘れよう!
しばらく歩いていたら工場のような建物の近くに来た。こんな近代的な建物もあるんだ。中で機械でも組み立てているとか? 何を作っているのかな?
「これは謎の巨大施設です」
「……え、それだけ!?」
私、分かっちゃった……。謎は謎のままの方がカッコいいってことなんだよね! もう紅魔族のことは完璧に理解しちゃったよ!
「謎は謎のままの方がカッコいいんだよね、めぐみん……!」
「当然です! すとれもちゃんと分かってるじゃないですか!」
初めて外に出て分かった事は紅魔族はみーんな厨二病って事。それに上手く合わせていければ、この里で上手くやっていけそう。やっていけるか凄い心配だけどね!
正直なところ厨二病ってどんなものか分かっていないけど、難しい言葉とかカッコいい言葉を沢山使えばいいのかなってイメージ。あとはめぐみんを観察して勉強しよう。
「じー…………」
「な、なんですか!?」
無言で目を見続ける。
めぐみんも同じようにこちらを見ているから負けじと見返し続ける。めぐみんってまつ毛も長くてぱっちり二重だし将来は絶対美人さんだね。肌も真っ白できれい!
「えっと、あにょ……そろそろ何か言ってくれると……」
じーっと見続けていたらめぐみんが顔を真っ赤にして下を向いちゃった。可愛いくてつい見続けちゃったから恥ずかしくなっちゃったのかな?
「えへへ、ごめんね! めぐみんが可愛いからつい見ちゃった!」
「かわっ!? 変なこと言わないでください! ほ、ほらそろそろ暗くなってきたので帰りますよ!」
「はーい!」
それから家に帰るまでの間、楽しくお話をして帰っていった。
家の前でバイバイするまではずっと繋いでいた手を離した時の冷たさに、少し寂しさを覚えた。
「また明日も遊びに来ますよ! ではまた明日会いましょう!」
寂しさが顔に出てたのか、めぐみんは優しく笑って、また明日と言ってくれた。また明日もめぐみんに会えると思ったら寂しさなんてどこかに吹っ飛んでいった。
「うん! また明日ね、めぐみん!」
すとれちゃん
めぐみん可愛いなぁって思ってる。
ここから更に仲良くなっていくでしょう。
めぐみんの家のボロさは見なかった事にした。
現在の精神年齢は13歳+5 歳の筈なのに、実際の精神年齢は10歳くらいしかなさそう。
めぐみん
すとれが可愛すぎます! って思ってる。
めぐみんにとってもすとれは初のお友達。
頭爆裂じゃない頃の貴重なめぐみんでした。
読んでいただきありがとうございました!
めぐみん(5歳)と里の名所を巡る回でした。
めぐみんはいつから敬語で喋ってるんでしょうか。頭が良い子なので、周りの大人が敬語で話しているのを聞いて、真似ていったのかな?
すとれの両親の名前に意味は特にありません。
本編に全く関係ないですけど、すとれの父の『わびすけ』は、斬りつけた物の重さを2倍にする魔道具を持っているらしいです。母の『はっかの』は氷魔法が得意らしいですよ。
改めて、感想、評価、お気に入り登録ありがとうございました!
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次回も読んでくれたらうれしいです!