今回はみんな大好きなあの子が登場です。
「わっ……我が名は……ゆんゆ……あぅ」
今日は待ちに待った学校に入学する日。アクア様みたいに魔法を使えるようになる為にも、学校に入学する事は何よりの楽しみだった。
入学式は無かったので、そのまま教室に行くと、新入生っぽい子達が座って、楽しそうに話していた。教室の皆に挨拶をしつつ空いている席に座る。
空いていたのは教壇の目の前の席で、左隣りには一緒に初登校しためぐみんが座った。
右隣りには赤いリボンを付けた髪の長い女の子が座っていた。おはようって挨拶をしてみたけど気づかなかったのか、下を向いたまま固まっている。知らない人ばかりだから緊張しているのかもね。
しばらくめぐみんと話していたら先生が教室に入ってきたので、自己紹介を皆で行なう事になった。先生の名前が『ぷっちん』だったので、プリンが食べたくなっちゃった。帰りにめぐみんと一緒にプリンを食べに行こうかな。
後ろの端から順に自己紹介をしていくのを聞いていたけど、半分の子たちとは知り合いだった。
ねりまきちゃんは宿屋兼酒場の『サキュバス・ランジェリー』の娘さんで、めぐみんとご飯を食べに通っている内に仲良くなった。ふにふらちゃんとどどんこちゃんとは、めぐみんと遊んでいる時に出会って、一緒に遊んだらすぐ仲良くなった。
他の子たちは見かけた事はあるかもだけど、話した事は無かったから、これから仲良くなれたらいいな。
「我が名はめぐみん! 紅魔族随一の天才にして、やがて紅魔族最強へと至る者!」
めぐみんの完璧な自己紹介を聞いたら次は私の番。よし、めぐみんから沢山学んだのだから。私も完璧な名乗りが出来るようにがんばろう!
「我が名はすとれ! 紅魔族随一の支援魔法の遣い手を目指す者にして、神聖なる女神の加護を受けし者!」
「ぐすっ……。あのすとれがこんなに成長するなんて……! 感動しました!」
名乗りの師匠が、なぜか涙目になっているのは放っておいて、周りを見渡すとみんな拍手してくれていたのは素直に嬉しかった。上手くやれてよかったよ。恥ずかしいけどね!
それで次は、私の隣で俯いて座っていた女の子の番になったんだけど……名乗りを失敗して頭が真っ白になっちゃったのか、立ち上がったまま固まっていた女の子の代わりに、先生が彼女はゆんゆんで族長の一人娘だと伝えた事でその子……ゆんゆんちゃんの自己紹介が終わった。
とりあえず私だけでもって、拍手をしたけど……私の拍手だけが教室に響いただけで、お通夜みたいな空気になっていた。その空気に耐えかねてか、先生が今日はこれで終わりだから気を付けて帰るようにと言い残してそそくさと帰ってしまった。
この空気どうするの……。ゆんゆんちゃんは机に倒れこんで、小声でぼそぼそと呟いていて怖い。
「終わった……。私の学校デビュー終わっちゃった……。みんなが仲良くなっていくのに私だけはずっと一人なんだ……。さよなら私の学園生活……」
ぶつぶつと小声で喋り続けるゆんゆんちゃんに恐怖を覚えたせいなのか、クラスメイトの皆は一瞬で帰って行っちゃったけど……ゆんゆんちゃんだけは机に突っ伏して動いていない。
気付かない内にめぐみんまで帰っちゃったせいで、教室には私とゆんゆんちゃんだけになっていた。こ、これ私がどうにかしないといけないんだよね……。
「えーっと……ゆんゆんちゃん、だいじょうぶ……?」
声を掛けた瞬間、ゆんゆんちゃんは勢い良く顔を上げて、こちらを凝視してきた。目が真っ赤に光っていてちょっと怖い。しばらく目が合ったままお互いに固まっていたけど、気を取り直して話し掛けてみる。
「ゆんゆんちゃん。挨拶してすぐに机に突っ伏しちゃったから、だいじょうぶかなって思ったんだけど……だいじょうぶかな?」
「え、えっと……ご、ごめんなさい!」
なぜかいきなり謝られて、ゆんゆんちゃんは教室を出て行ってしまった。なんだったんだろう?
ゆんゆんちゃんも居なくなっちゃたし、私も帰ろうかな。教室を出て校門をくぐると、めぐみんが待っていてくれていた。一緒に教室に居てくれたらよかったのにー。
「あの……ゆんゆんって子にすとれは何をしたんですか? 名前を呼んでもらえちゃった! って喜びながら満面の笑みで走り去っていったんですけど……」
「えっ? みんな帰っちゃったのにゆんゆんちゃんが机に突っ伏したままだったから、だいじょうぶかなって声を掛けただけだよ。結局逃げられちゃったし……」
ま、まあ元気になったならいいのかな……? 教室では、ゆんゆんちゃんの周りだけ、どんよりとした空気になっていたから、笑って帰ったのなら良かったって思う事にしよう。
「なかなか変わった子のようですね……」
「あはは……ゆんゆんちゃんも紅魔族ってことだね! じゃあ帰ろっか」
めぐみんに『紅魔族を蔑称っぽく言うのはやめてください』なんて、怒られながら一緒に帰り道を歩いていく。めぐみんと一緒に居ると楽しくて時間が経つのはあっという間だ。気がつけば家の前に着いていたので、また明日学校でとめぐみんに挨拶して家に入った。
次の日、ママとパパに行ってきますの挨拶して家を出て学校に向かう。
里の人達に挨拶しながら学校に向かっているんだけど、家を出てからずっと誰かに見られている気がするんだよね。左右を見回してもそれっぽい人が居ないって事は後ろの方から見られているって事かな……?
振り返って変な人が居たら嫌だなって思いながらも、視線を感じているのは気のせいだって信じて、勢いよく後ろを振り向いた。
振り返ると後方10メートルくらいに、目を爛々と赤く光らせてこちらを見ている女の子が居た。
ゆんゆんちゃんだった。
何その目怖っ! って思いながらもクラスメイトなんだから、一緒に行けばいいのにって思ったので声を掛けることにした。
「えっと、ゆんゆんちゃんおはよう。一緒に学校行く……?」
「は、はい! 不束者ですが、よ、よろしくお願いします!!」
なんだか変わっているけど面白い子だなぁって思いながら、頭を下げたままのゆんゆんちゃんのところに行って手を引いて歩いていく。
また目を光らせているゆんゆんちゃんと手を繋いで歩いていく。紅魔族は感情が昂ると目を光らせる特性があるから、ゆんゆんちゃんはすごく喜んでいるって事でいいのかな?
「ねえ、ゆんゆんちゃんの事、ゆんゆんって呼んでもいい? そっちの方が友達っぽいでしょ」
「は、はい! だいじょうぶです! ってえええええぇっ!? と、友達ですか!?」
ゆんゆんの事を、もう友達だって思っている事ってそんなに驚く事かな?
「ん!? だって、名前で呼び合って一緒に登校してるんだからさ、もう友達でしょ? あ、まだゆんゆんから私の名前は呼ばれて無かったかも。ね、私の事はすとれって呼んで欲しいな」
「す、す、…………好きです!」
「ええっ!? そこは名前を呼ぶとこだよね! ふふっ、ゆんゆんって面白いね」
「あ、ちがっ、ちがうの」
わたわたと手を動かして、慌てているゆんゆんが可愛いなって思いながら一緒に歩いていく。ゆんゆんって話すのは苦手みたいだけど、話したら面白い子なんだなって思う。クラスメイトの子たちとも仲良くなれるといいね。
「あ、敬語使わないのは友達っぽいよ! これからは敬語使うの禁止だよ」
「わ、わかった! にへへ、ともだち……!」
また目を爛々に光らせちゃってるし……。まあ嬉しそうだからいっか。新しい友達もできたし、これからもっと楽しくなっていきそうだよね!
そのままゆんゆんと教室まで手を繋いでいったら、めぐみんに浮気者! って怒られちゃった……なんでなの?
すとれ
ゆんゆんとお友達になった。
この後、クラスメイト全員とも友達になった。
ゆんゆん
サボテン以外の友人が初めてできた。
なお、学校デビューは失敗した模様。
出会って次の日から、すとれをストーカーできたのは、族長である父にすとれの住所を聞いて、早朝から家から出てくるのを待っていたから。
声を掛けただけで、高感度がマックスになる女の子。それがゆんゆん。
めぐみん
私だけのすとれだったのに! と嫉妬の感情が芽生えた。
名乗りの師匠として、弟子の成長に涙を流した。
読んでいただきありがとうございます!
はい、ウチのゆんゆんはこんな女の子ですね!
初手、ストーカーしちゃう女の子ですけど、可愛いと思ってくれたら嬉しいですね!
次回も19時投稿なので、読んでくれたら嬉しいです!