桜満集無双   作:らんの

7 / 10
三ヶ月以上ですか⋯
何故こんなことに⋯
さすがにこれは最長だと思います。これからも⋯
多分⋯

p.s.
前回は原作だと綾瀬がメインヒロインみたいでしたね。


#7檻 leukocytes

ツグミ「大変よ!皆!」

 

集が出て行ってから数分たった。

上からツグミが呼びかける。

 

大雲「どうしましたか?」

 

アルゴ「どうした?」

 

そこにいた者たちがツグミの様子に戸惑いを見せた。

 

ツグミ「ルーカサイトが今、ポイントデルタ付近に発射されたわ!どうにか沖の方に外れたけどこのままじゃ!」

 

「ええっ!」

 

ザワザワ

 

辺りがざわつき始める。それは決して涯達が狙われていることに対してではない。

 

四分儀「集、一体あなたはどこまで見越して⋯」

 

四分儀は誰にも聞こえないほどの声でそう呟いた。

 

集が急いで出て行ったタイミングでのルーカサイトの発射。これらは決して偶然ではないと思う者は少なくない。それに、

 

綾瀬「⋯ルーカサイトって、外れることあるの?」

 

綾瀬が訝しげに呟く。そう、既に集は行動を始めているのではないか、そんな予感すらしていた。

 

ツグミ「あれ、集は⁉︎」

 

緊迫した中で、ツグミは集の不在に気付いた。

 

アルゴ「安心しろ。さっき涯のところへ向かった!」

 

アルゴは親指を立てる。集がポイントデルタへと向かって行ったという確信が、彼らには既にあったのだった。

 

 

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茎道「⋯何故だ、」

 

ディスプレイを見ながら怪訝な顔で言った。

 

「外部からの操作によりルーカサイトが制御不能です!」

 

ルーカサイトはあろうことかポイントデルタから遠く離れた沖へと発射されていた。

 

茎道「一体どういう⋯」

 

いずれ日本を完全に支配できるであろう秘密兵器、それが制御不能となればこちらの強力な手札が無くなることと同意。困惑と焦りが茎道の中で渦巻いているのであった。

 

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涯「なんだあれは⋯」

 

沖の方へとルーカサイトと思わしきものが発射され、大爆発が起こる状況が見えた。無論、異常事態であることは涯達にもすぐに分かった。

 

OAUの者達の間でも不穏な空気が流れる。

 

梟「⋯⁉︎あれは!」

 

上空から何ががこちらへと向かってきた。猛スピードで接近してくるそれは、突如叫んだ。

 

集『御機嫌よう!OAUの諸君!』

 

集が英語で話しながら両手を広げる。足には綾瀬のヴォイドがはめてあった。

 

梟「集さん!」

 

涯「集!」

 

葬儀社の者達は集の登場に驚きを隠せない。

 

涯「一体どういう事だ!」

 

集「説明は後だ、さっさと受け取るもん受け取ってずらかるぞ!」

 

ビューン

 

そう言い残し、集は再び沖へと飛んで行った。しばらくすると、またそちらへとルーカサイトが発射されたのだった。

 

 

 

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一仕事終えた俺は、トリトン達と帰っている途中だった。

 

涯「で、なぜお前がここにいる。」

 

こちらへと鋭い眼差しを向けてきた。そう怖い顔するなって。

 

集「そうだな、テスト後の事だ、」

 

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集「篠宮、悪いが一つ頼みがある。」

 

綾瀬「え?」

 

集「ちょっとお前のヴォイド貸してくれ、」

 

言うと同時に綾瀬の右手を取る。

 

綾瀬「ちょっ、ちょっと待ってよ!」

 

突然手を取られ顔が紅潮する。

そんなことは御構い無しに集はヴォイドを引き抜いた。

 

綾瀬「うっ⋯ああっ⁉︎」

 

苦しそうに喘ぐ。

 

集「そう、これだよ!」

 

エアスケーターを持ちながら愉快な様子で集が言った。

 

いのり「いつ、知ったの?」

 

いのりが横から疑問をぶつけた。

 

集「痛いところ突いてきたな⋯。普通に手を取らずにヴォイド引き抜いて知った。ほら、篠宮。廊下で一回気を失った覚えはないか?」

 

ヴォイド引き抜き大会(参加者一人)をして遊んでいたことは集だけの秘密だ。

 

綾瀬「そういえばあの時⋯⋯、ってあんた!気を失ってる間に変なことしてないでしょうねぇ⁉︎」

 

集「確かにデカイ方が好みだが断じて何もしていないぞ⁉︎あの格好は理性保つの大変だったけれども!」

 

露出の高かった綾瀬の様子が思い出される。

 

綾瀬「不安要素あり過ぎよ!」

 

いのり「大きい方が好みなのね⋯」

 

などとしばらくややこしいことにもなった。

 

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集「ってことがあってさ。」

 

全く、篠宮の奴もなかなか酷いな。気を失った女に悪戯するほど俺は溜め込んでなどいない。もっと言えば気を失ってなくても何もしない。

 

涯「随分と好き勝手やってくれてるな⋯」

 

集「あとはアンチボディズの方の通信を盗聴してたらさ、今日ポイントデルタにルーカサイト撃ち込むとか聞いたんだよ。だから急遽テストを前倒しにして助けに来たってわけよ。」

 

ちなみにこれまでのことは全て梟君のためである。

 

涯「平気で盗聴とか言ってくれるな⋯。だがどうやってルーカサイトの弾道をずらしたんだ?」

 

集「これだよ、」

 

俺はスタイリッシュにペン回しをしながら嘘界さんから貰ったペン型のルーカサイト発射装置(named by 俺)を見せた。自分でスタイリッシュ言っちゃったよ。

 

集「隔離施設で見せたことあるだろ?青青赤の順に押すとルーカサイトに発信されて、発射することが可能ってわけよ。」

 

涯「まさかそれを沖で起動して?」

 

集「飛び回ってたわけだ。」

 

涯「はぁ⋯」

 

額に手を当て呆れた様子だ。

 

涯「そこまで滅茶苦茶なことをするとはな⋯」

 

梟「凄いです!集さん!」

 

集「そう褒めるなって、」

 

涯「ドヤるな、」

 

こんな素直に褒められたらニヤついても仕方ないだろ⁉︎

だが今はこんな無駄な事をしてる場合では無い。

 

集「恙神、」

 

涯「何だ、」

 

俺は声のトーンを下げトリトンに呼び掛けた。

真剣であることが伝わったのかトリトンの目つきも真剣な物に変わる。

 

集「ルーカサイト攻略は今すぐにでも始めるべきだと俺は思う。はっきり言ってこのままではこちらが危ない。」

 

既に一度狙われたんだ。このままでは日本国内では落ち落ち眠ることもできないんじゃないか?

 

涯「ああ、俺もそう思っていたところだ。」

 

集「そうか。なら良かった。すぐにでも月ヶ瀬ダムに向かうぞー!」

 

梟「おー!」

 

こうして俺たちのルーカサイト攻略が始まったのである。

 

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四分儀「涯、よろしいですか?」

 

涯「ああ、」

 

四分儀君がトリトンに尋ねる。場所はコントロール施設近辺の臨時作戦室、トリトンが前に立ち、作戦の説明を始めた。

 

涯「揃ったようだな。今回の作戦目標は月ヶ瀬ダムの底、ルーカサイトのコントロール施設だ。俺たちはその最深部へ潜入し、コントロールコア停止させる。」

 

アルゴ「ぶっ壊すんすか?」

 

月島、今俺はお前に心底呆れたぞ。

 

集「お前アホなのか?月島。」

 

アルゴ「は?」

 

集「ルーカサイトのコントロールコアは物理刺激受けたら自閉モードに切り替わるんだよ。そしたらもう外部からの操作を一切受け付けなくなる。だから停止信号を送るには、コントロールコアに触れずに操作するしかない。」

 

辺りがざわつき始める。

 

アルゴ「マジかよ⁉︎じゃあ集、どうすりゃいいんだ?」

 

集「だからあの犯罪者を連れてきたんだろ?」

 

俺は城戸を指差して言い放った。

 

城戸「犯罪者って⋯」

 

集「奴の重力制御のヴォイドで俺が操作するって事。それが今回の作戦だろ?」

 

操作はトリトンに任すつもりだけど。

 

アルゴ「そういうことか!」

 

「なるほどー!」

 

辺りの奴らが納得し始めた。

 

涯「⋯ああ、今集が言ったことがこの作戦の概要だ。というかなぜそこまで詳しい⋯⋯、」

 

一般に知ることのできる情報ではないのは確かだがそれを聞くのは野暮だろ。

 

集「ただ恙神、提案がある。」

 

一つだけ気がかりな点があった。

 

涯「何だ、」

 

集「作戦実行時間は早めろ。日没よりも前だ。」

 

涯「何故だ?」

 

集「もうバレてるからだ。」

 

再び周りはざわつき始めた。

 

涯「一体どこの情報だ。」

 

俺は自らの額を指差して言った。

 

集「勘、かな?」

 

あくまで勘の域を出ないことは確かだが、あのおっさんなら読んでる可能性だって十分あるからな。

 

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茎道はあと四時間で三つ目のルーカサイトが軌道に乗る旨を、嘘界にモニターを介し伝えた。

 

嘘界「では残念ながら間に合いませんね。葬儀社の攻撃は2時間17分後です。」

 

茎道「それは独自の情報源かね。」

 

唐突の発言に怪訝な様子を見せる。

 

嘘界「ただの勘、と言うより、希望ですかね。」

 

相変わらずの不敵な笑みはそのままに、嘘界は言った。

 

茎道「今回ばかりは、君の読みが外れることを願うよ。嘘界君。」

 

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ローワン「2時間17分後?」

 

ダリル「日没の時間では?」

 

ローワン「そ、そうか。奴らは日没の時間に来る。」

 

エンドレイヴのコントロール施設で、ローワンとダリルが話す。

 

ローワン「退院後初の復帰戦になるが⋯ん?」

 

大尉、アンドレイ・ローワンはダリルの異変に気付くいた。

 

ダリル「桜満集、お前だけは絶対に許さない。僕の顔に傷をつけるなんて。泣いて謝ったって撃ち続けてやる。」

 

かつて六本木でダリルは集に殴られたことがある。後に集の正体を知ったダリルは、ひたすら集を恨み続けるのであった。それはローワンの声が届かぬ程に、

 

 

 

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降りしきる雨の中、俺は木陰でペン回しをしながらボーッとしていた。

学校の奴らはどうしてるかなぁ、

祭は俺のこと心配してないかなぁ、

思うことはいろいろあるが今は目の前のことに集中しなければならない。ただ早く日常に戻りたい。葬儀社での生活も快適ではあるけれども。

 

 

いのり「集、」

 

集「なんだ?」

 

楪が話しかけてきた。振り返って返事をした俺に楪は続けた。

 

楪「お願い、涯を助けて。」

 

 

 

 

 

 

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楪によればトレーラーの中にトリトンがいるらしい。でも何故⋯

 

俺は入り、トリトンから見えない位置に腰掛ける。

 

涯「俺は怖いんだ⋯」

 

トリトンは話し始めた。俺のことを楪と勘違いして話しているらしい。

 

涯「俺は10年前のあの日から、憧れだった集に近づくために強くなろうとした。」

 

淡々と一人で話し続ける。しかしそこには、『恙神 涯』と思えるような覇気が無かった。

 

涯「しかしあいつは俺を遥かに上回る強さになって目の前に現れた。今日だってあいつが居なければ、今頃⋯」

 

恐らくルーカサイトに撃たれたことを話しているのだろう。しかしそのような仮定の話をしても仕方がない。

 

涯「俺は…『恙神涯』とはあいつらに報いるほどの存在なのか?正直俺は…リーダーの顔をしているだけで手一杯だった。本当は集こそが、葬儀社を導いていくべきではないのか⁉︎俺は……」

 

シャーッ!

 

これ以上聞いていられなくなった俺はカーテンを思い切り開けた。俺の姿に一瞬トリトンは戸惑うも、すぐに何かを悟ったのか、力が抜けたかのようにうな垂れた。

 

涯「盗み聞きとは良い趣味をしているな。どうだ?失望したか?」

 

不敵な笑みを浮かべ尋ねてくる。一応GHQを盗聴したり葬儀社をハッキングしたりしてるのだから、それ系の趣味はあるのかもしれねえが、

 

集「いや、所詮そんなもんだろうと思った。」

 

涯「⋯。」

 

俺は顔色を変えずに吐き捨てる。これにはトリトンも面白くなさそうな反応を見せるが、俺は続ける。

 

集「俺は『恙神涯』という人間がそこまで大した人間だとは思っていない。所詮その程度かってくらいの認識でしかねえよ。お前みたいな奴が上にいるようじゃ、葬儀社も、そこにいる奴らもたかが知れてるだろうしな。」

 

集は毒を吐きながら苦笑した。

 

ガタッ

 

涯「集!黙って聞いてれば!」

 

唐突に立ち上がった涯は右手に握られた拳で集の顔面に重い一撃を入れた。

 

沈黙が訪れる。

 

涯「…っ⁉︎」

 

戸惑いを隠しきれぬ様子で涯は拳を引っ込める。柄にもなく感情を抑えきれずに行動してしまったこと、そして何より、

 

涯(全く手応えが無い⁉︎)

 

集「どうだ?気は済んだか?」

 

変わらぬ様子で真顔で尋ねてくる。

 

涯「⋯。」

 

腑に落ちない様子を涯は見せる。これは八つ当たりであることを理解できない涯ではない。しかし集に対する劣等感、そして集を超えることのできない自らへの怒りは、完全にやり場を無くしているのだ。

 

険しい顔をした涯に、言うことなど無いと判断した集は外へと向かい歩いていく。

 

集「くだらねえ事考えてねえで今日の作戦に集中しろ!」

 

捨て台詞を吐いた集はそそくさとトレーラーから出て行ってしまった。

 

いのり「集!」

 

涯を慰める、そのような意図で集を送り込んだいのりは、集の辛辣な言葉に戸惑っていた。

 

いのり「集、どうしてあんな事を…」

 

歩いていく集に追いついたいのりは問う。

 

集「こんな時にくだらねえ事で落ち込んでる奴になんて言えばいいんだよ?それも俺に嫉妬してる奴に、」

 

いのり「…っ⁉︎」

 

振り返った集が見せたどこまでも冷徹な目つきに、いのりは思わず身じろぎする。

 

集「気休めを言ってやりたいならお前がやれ。俺はそこまで甘くは無い。」

 

雨の中、かつての自分よりも無機物らしい言い方をされたいのりは立ち止まり、ただ茫然としていた。

 

 

厚い雲に覆われた空は、この雨が止まぬものだと示唆しているかのようにも思われた。

 

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四分儀「時間です。」

 

通信機より、四分儀からの合図が出される。

 

日没より30分前

作戦が開始される。警戒体制を取っていたGHQであったが、予想より早く乗り込んできた葬儀社に混乱が生じる。

 

茎道「どういう事だね嘘界君。君の勘よりも早く来たようだが、」

 

機嫌の悪そうな様子でモニターに映し出された茎道が言う。

 

嘘界「申し訳ありませんね。あちらにも私並み、いや、それ以上の切れ者がいた事を忘れていました。」

 

悪びれた様子を全く見せず、いつもの笑みは浮かべたまま言った。

 

「嘘界少佐!」

 

しかし外では戦闘が始まっている。そう悠長に話している場合ではなかった。

 

嘘界「おっと、それでは失礼します。」

 

茎道の返答を待たずに、嘘界は通信を切った。

 

嘘界「エンドレイヴを出してください。」

 

焦燥している隊員に対し、嘘界はそう指示した。

 

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月ヶ瀬ダム内部

集、いのり、涯、研二の四人はコアまで向かっていた。一応皆が武器を持っていたが、今のところ集のハンドガンしか使われていない。

それもそうだ。ここまで集が相手の銃を撃ち抜き、打撃で気絶させるか自身のヴォイドで意識を奪うかしかしていないのだから。

 

研二「驚いた、ここまで誰も殺さないで行くなんてね。凄いよ、桜満集君。でも早く慣れなよ。人殺しに。」

 

集「別にもう何人も殺してきてるさ。いずれお前も殺してやるから楽しみにしときな。⋯⋯うりゃあ!」

 

集は扉に蹴りを入れた。するとそこら一面が吹っ飛び道が開けたのだった。

 

研二「この手榴弾も無駄か。にしても扱い酷くない?殺人予告されたんだけど。」

 

集「当たり前だ。スカイツリーを爆破した罪は重い。」

 

全く、俺がどれほどあそこが好きだったか。おしなりくんも泣いとるぞ。ソラカラ、お前みたいなでこぼこフレンズは認めん。例えお前が公式だろうと俺は認めん。船橋市非公認もあそこまで活躍するわけだしな。

 

研二「あれにそこまで執着してるなんてね。」

 

いのり「集、人を殺したって…」

 

集「ああ、何人⋯いや、何百人も殺したかな。もう10年ほど前にはなるが。」

 

思わず全てが始まったあの日の、教会での惨状がフラッシュバックする。狂い、叫びながらキャンサーに侵されていった姉のことも。

 

いのり「集?集っ!」

 

集「えっ、」

 

楪の呼びかけに反応が遅れる。どうやら柄にもなくボーッとしてしまっていたらしい。

 

集「悪い、少し考え事をしていた。コアはこの奥だろ?行くぞ!」

 

足を踏み入れようとした刹那、集は左からの気配を感じる。

 

パヒューンッ!

 

二人の兵は四人に向け発砲した。その弾たちは四人の心臓部を貫くはずだった。だが、

 

カキーンッ

 

金属のぶつかる音がした。

 

集「危ねえな。まさか俺の神の左腕<ディバイン・レフト>を出すときが来るとはな。」

 

涯「お前はお兄様かよ、」

 

トリトンよ、久々に口を開いたと思ったらそれか。とりあえずネタを拾ってくれたことには感謝する。

 

俺は急いで敵二人の銃を撃ち抜く。

 

「何っ⁉︎」

 

銃が手元から離れ、動揺した隙に俺は一気に距離を詰め二人の鳩尾に一撃をかました。

 

「グフッ!」

 

ドサッ

 

しかしどうやらどんどん来るようだな。

 

いのり「ここは私が、」

 

集「俺もここに残る。」

 

涯「ダメだ。それでは!」

 

集「コアの操作はお前がやれ。お前にだって王の右腕があるんだろ?」

 

涯「ああ、だがしかし…」

 

集「ずっと俺の力に頼ってていいのか?」

 

涯「⋯。」

 

俺の問いに答えあぐねている。

 

兵と闘いながらなんだ。早くしてくれ。

 

涯「…来い。研二、」

 

研二「⋯はいはい。じゃあせいぜい頑張ってくれよ。」

 

二人はコアへと向かって行った。

 

集「さて、始めるか!」

 

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研二が横たわっている中、涯は一人コアルームに立っていた。

 

そうだ。俺は集に頼り過ぎていた。俺の力でこの作戦を成功させる。それこそが『恙神涯』に期待を寄せるあいつらに報いる術なんだ。

 

涯「ふゅーねる、頼むぞ。」

 

コアの回転が止まると同時にふゅーねるが停止信号を書き込む算段となっている。先程研二から引き抜いたヴォイドを、コアの真ん中へと撃つ。

 

 

 

コアの回転が止まる。その直後ふゅーねるは停止信号を書き込み始めた。やったか⁉︎

 

バババババーンッ!

 

後ろからの銃声

振り向くとそこにはゴーチェが立っていた。

こんな時にっ…!

 

ダリル「何だ、恙神涯か。どうでもいいや。」

 

涯「ダリルか…」

 

不味い。ここには手の離せない俺と気を失った研二、そしてふゅーねるしかいない。一体どうすれば…

 

集「やあダリル。久しぶりではないか!」

 

場に合わないトーンの声で聞き覚えのある声がする。悔しいがその存在に安堵した。

 

ダリル「どこだ!どこにいる⁉︎」

 

ゴーチェがあちこちを見渡す。しかし声の主がダリルには見えない。

 

集「上だよ、上」

 

ダリル「何っ!」

 

集はいつ上ったのかゴーチェの上に立っていた。

 

集「うりゃ!」

 

ダリル「ぐっ⁉︎」

 

集がゴーチェを思い切り踏みつける。痛みがダリルに伝わり声を上げた。

 

スタッ

 

集はゴーチェから飛び降りてコアとの間に立つ。

 

涯「集!あっちはどうした!」

 

集「もう全て片付けた。トリトンはそのままコアの方をよろしく頼む!」

 

全く、驚きを通り越して呆れた。こいつはどれだけ仕事が早いんだ。

 

ダリル「桜満集!探したぞ!さっきはよくも!」

 

さっき?集はずっと俺と共に行動してたはずだが、

 

集「さっき?ああ、そうか。」

 

集は何かを悟った様子だ。

 

ダリル「殺す!生きたまま存分に苦しめてから殺してやる!僕の顔に傷つけた報いをっ!」

 

集「顔?ああ。ギロッポンでぶん殴ったのをまだ根に持ってんのかよ。しつこい男は嫌われるぞ?」

 

エンドレイヴ、それもダリルが操縦するものを目の前に全く動じる様子を見せない。

 

ダリル「黙れ⋯黙れ黙れ黙れーっ!!」

 

叫びながらダリルは銃を集へと乱射する。

 

集「無駄が多すぎる、」

 

呆れた様子を見せながら全て避けつつゴーチェへと走り込んで行く。

 

ダリル「グハッ!」

 

その勢いのままゴーチェへと飛び蹴りを食らわせた。

 

吹っ飛ばされたゴーチェは後ろの床に倒れる。

 

集「おいおい、そんなもんか?」

 

さらに挑発をかける。

 

ダリル「クソっ!クソがああっ!」

 

再び銃を乱射しながら、今度は集へと突っ込んでいった。

 

集「これ以上しても無駄か。」

 

諦めたように集はスライディングでゴーチェの股下を抜け、後ろへと回り込んだ。

 

集「やめにしよう。」

 

ゴーチェの上に飛び乗ると同時にハンドガンを右手で抜き取る。

 

ダリル「何だ⁉︎」

 

そのまま集は銃を撃ち始めた。

 

ダリル「グッ!」

 

苦しそうに声を上げる。

 

ダリル「このクソがああっ!!」

 

宛先不明の弾が乱射される。しかしその弾のいくつかがコアへと命中してしまった。

 

銃声が止まる。ダリルがベイルアウトした事が分かった集はゴーチェから飛び降りた。

 

集「ふぅ…終わったか、」

 

涯「おい集、不味い事になったぞ。」

 

 

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ダリルとの激闘(笑)を終えた俺はトリトンの元へと向かう。ちなみに俺に追いつけなかった楪は置いてきた。足手まといだ。

 

涯「おい集、不味い事になったぞ。」

 

集「え?どうかしたか?」

 

ツグミ『大変よ!涯!ルーカサイト1の様子がおかしいの!このままでは、ルーカサイト1は質量のほとんどを保持したまま東京に落ちるわ!』

 

猫耳が通信機で焦った様子で言う。

コアの破損で誤作動を起こしてしまったそうな。

 

集「そうか、」

 

ダリル坊ちゃんよ、また嬉しくもない置き土産をくれたな。

 

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扉を開けようと楪とふゅーねるが悪戦苦闘。その間俺はルーカサイト発射装置でペン回し中だ。

 

涯「それを俺に貸せ。」

 

どうやらトリトンも俺と同じ考えにたどり着いたらしい。だが、

 

集「⋯嫌だね。」

 

涯「どうしてだ!」

 

この緊急事態、俺の我儘に声を荒らげる。

 

嘘界「気付かれていましたか。散々それを悪用した挙句、未だに持っているとは。しかし、今はありがたい。」

 

コツコツと後ろから嘘界のおっさんが歩いてくる。

 

集「よっ、嘘界のおっさん。」

 

涯「貴様が嘘界か?」

 

嘘界「初めまして、恙神涯君。そして久しぶりですね。桜満君。」

 

未だに不気味な笑みは崩さない。あなたもブレない人だ。

 

集「取引しませんか?嘘界さん。」

 

嘘界「何ですか?桜満君。」

 

集「あなたに貰ったこれで衛星をどうにかしますよ。その代わり一連の事件で得た俺に関するデータを全て抹消してください。」

 

涯「いや、それは俺が!」

 

嘘界「それは、あなたが的になるという事じゃないですか?そこまでしてデータを消す必要があるのですかねぇ?」

 

ニヤつきながら尋ねる。

 

集「さぁ?ただ不名誉な情報というものは誰しも隠蔽したいものでしょう?」

 

嘘界「なるほど、」

 

嘘界は、集の言葉に妙に納得した様子を見せた。

 

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このペンと撃つ衛星、そして接近してくる衛星、この三つが一直線上になった時に発信すれば衛星を撃ち落とせるわけだ。しかしそうすると俺も無事では済まないんだよなぁ。

 

そして俺は発電所の屋上へと立った。

 

涯「おい、集!俺がやる!俺よりお前が生き残った方が葬儀社にとっても…」

 

集「なあ、『涯』?」

 

涯「…⁉︎」

 

初めて集から出た『涯』という呼び名。思わずそれを聞き戸惑いを見せる。

 

集「葬儀社を引っ張っていけるのはお前だけだよ。俺はそう思う。」

 

涯「…っ⁉︎」

 

あいつは初めから俺に嫉妬する必要なんてなかったんだ。間違いなく葬儀社を作ったのは俺ではなく恙神涯だ。そして俺にはそんな事はできない。あいつにだって、俺に勝るものはある。

 

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いのり「離して!集!集!」

 

必死に集の方へ行こうと叫ぶいのりを、戦場から抜けてきたアルゴは取り押さえる。

 

アルゴ「悪いな、あいつに頼まれてるんだ。」

 

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集が屋上へと上る数分前、戦っていたアルゴの元に集が来ていた。

 

集「なあ、月島。頼みがある。」

 

アルゴ「何だよ、急に畏まって。」

 

ルーカサイトが接近しているこの状況、アルゴにも緊迫した様子があった。

 

集「俺はこれからルーカサイトを撃ち落とす。そのとき多分、楪の奴は俺を死なせまいと駆け寄ってくると思うんだ。でもそれでは困る。だからあいつを押さえててくれないか?」

 

アルゴ「っ⁉︎⋯おい!死なせまいって、お前。」

 

アルゴは集が自らの身を危険にさらすつもりでいることを悟る。

 

集「気にするな。また元の葬儀社に戻るだけだ。」

 

集は笑みを浮かべながらそう答える。

 

アルゴ「んなわけに行くかよ!だったら俺がやる!」

 

思わず声が荒々しくなった。

 

集「いや、お前には無理だ。だから頼む!」

 

集はアルゴに頭を下げる。

集の覚悟が伝わったのか、思わずアルゴは言葉に詰まった。

 

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アルゴ(クソっ!なんでお前が犠牲になる必要があんだよ!なんなら俺が行くっつうのに!)

 

 

集『おい、発射まで後何秒だ?』

 

ツグミ『後三十秒よ。耐えて!』

 

通信機で話す。

 

集「そうか、じゃあもう少しだけ。」

 

ツグミ『えっ⁉︎』

 

集は両手でハンドガンを持つと、あたりに撃ち始めた。その一弾一弾がGHQの兵の武器を貫いていく。

 

「何っ!」

 

そこらにいた兵士のほとんどが戦闘能力を失った状態となった。

 

ガチャ!

 

ゴーチェが集に銃を向ける。

 

綾瀬「させない!」

 

シュタイナーの撃った弾がゴーチェを貫通する。

 

集「サンキュー、」

 

そうだな。なんだかんだ、葬儀社にいた時間も悪くなかったかもな。

 

ツグミ『今だよっ!』

 

その声を聞いた俺はペンの赤を押した。

 

 

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衛星は見事に撃ち落とされた。しかし、月ヶ瀬ダムへの被害は生半可なものではなかった。

 

綾瀬「集…どうしてこうなったの…?」

 

ツグミ「集…」

 

アルゴ「なんでだよ!なんであいつがこんな目に!」

 

梟「集さん……」

 

そこに居た葬儀社のメンバーは皆、悲しげな表情を見せる。

 

未だに降り続ける雨は、空まで泣いているかのように思わせた。

 

涯「⋯⋯⋯。」

 

涯はただ意味深な様子で、空を見上げていた。

 

いのり「集……集っ!」

 

そしていのりは、集の死を目の前に号哭するだけだった。

 

いのり「どうしてっ、どうしてこんなことするの⁉︎私は⋯私は集のことがっ⋯」

 

「おいおい、そんなに泣くなって。」

 

聞き覚えのある気の抜けた声と共に、いのりの頭にポンと手が置かれた。

 

一人を除いた皆が驚き、声のする方へ振り向く。

 

いのり「⋯集⋯どう⋯⋯して⋯⋯⋯?」

 

喜びと戸惑いとが入り混じった感情が、いのりの中に生まれる。

 

集「ほらこれ、篠宮のヴォイド。俺の力が加われば人の目では視認できないくらい速く動けるんだぜ?」

 

沈黙。急な展開に誰も理解が追いついていなかった。しかし理解し始めると共に辺りはざわつき始め、次第に歓声が上がった。

 

アルゴ「やっぱり生きてたか!そうだと思ってたんだよ!」

 

綾瀬「調子良いわねアンタ⋯。でも本当に良かった⋯」

 

葬儀社のメンバー達は皆、集の生存に安堵した。だが、

 

パーンッ!

 

甲高い音が辺り一面に響き渡る。

楪が集の頰を叩いたのだ。

 

 

 

 

突如頰に走る衝撃、俺は自らの左の頰に手を当てる。

 

集「おい痛えよ、何すんだ…っ⁉︎」

 

楪の顔を見た俺は思わず声を途切らせる。今にも溢れそうなほどの涙を溜めた楪が、こちらを見ていた。

 

いのり「ホントに⋯心配したんだからね⁉︎私、集が死んじゃったと思った時、どうすれば良いかわからなかった。だからもう⋯こんなことしないでよ⋯⋯。」

 

ボロボロと涙をこぼしていく。こんな楪を見たのは初めてだった。

 

いのり「え?」

 

俺は楪の頭に手を乗っけた。

 

集「少し配慮が足りてなかったな。悪い。今度からはもうしないからさ、泣き止んでくれよ。」

 

いのり「⋯⋯うん、」

 

涙をこぼしながらも楪は満面の笑みを見せた。

 

⋯⋯楪に気を取られていた俺は辺りを見回す。メンバー達はポカーンと口を開けている。月島や篠宮はニヤニヤしていた。こっち見るな、

 

いのり「⋯⋯⁉︎」

 

楪が周りの様子に気づいた。

次第に顔が紅潮していくのが分かる。

 

いのり「ぅぅ⋯⋯。その⋯ゴメンね。」

 

そう告げると急いで俺の元から去っていった。なんなんだ、

 

涯「集、少しいいか?」

 

声のする方へと顔を向けると、そこにはトリトンがいた。いろいろ言いたいことはあるのだろう。

 

 

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嘘界「死者0⋯ですか⋯。」

 

部下の報告を受け、嘘界は独り言ちた。

あれほどの戦いで犠牲者が0などとは、異例の事態であった。

 

嘘界(桜満君、君はどれくらい私を楽しませてくれるのでしょうかねぇ)

 

いつもの笑みを浮かべたまま、そう思うのであった。

 

 

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涯「俺は、この葬儀社のリーダーに相応しいのだろうか?」

 

あくまで硬い表情は崩さず、淡々と話す。

 

集「まだそんなこと言ってんのかよ。」

 

呆れた様子を見せる。

 

涯「お前だって分かっているだろう?あいつらはお前を必要としている。きっとお前が導く方が…」

 

集「なあ、」

 

涯の言葉を遮るように言った。

 

集「お前は正直俺を買い被りすぎだ。」

 

涯「⋯。」

 

集の言葉を黙って聞く。

 

集「俺がこうしてやってられるのは、あくまで誰の上にも立っていないからだ。正直上に立てば俺はあいつらに仕事を任せないだろう。」

 

涯「何故だ?」

 

怪訝そうな様子を見せる。

 

集「自分しか信用できないからな。それに俺がリーダーになっても信用はされるだろうが、信頼はされないだろうな。」

 

涯「⋯!」

 

涯は目を見開いた。

 

集「葬儀社はお前に魅せられて集まった集団なんだ。お前以外にリーダーは務まらない。それに⋯⋯、」

 

集は涯に近づき、涯の肩に手を置いた。

 

集「お前がいなきゃ、強くなろうともしなかったし、今も高校生として普通に生活してただろうな。」

 

涯「そうか、」

 

“強くなる。” そう言って去っていった幼少期を思い出す。

 

集「お前は俺に無いものを持っているんだ。自信を持て!『恙神涯』!」

 

非常に情けないことだ。力の差に絶望し、嫉妬し、そんな相手に励まされるなんて。しかし、俺は集の強さに憧れてここまで来た。ならばきっと俺は、またこいつを追いかけることになるのだろう。

 

涯「ああ!」

 

そんな奴の言うことなら信じられる。こいつを越えようと思うだけ、無謀だったのかもしれないな。

 

集「おっ!」

 

集は空を見上げる。雨は止み、雲は消えていく。その上には、満天の星空があった。

 

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帰り道のワゴンの中、俺の隣にトリトンは座っていた。

 

涯「なあ集、」

 

集「何だ、トリトン?」

 

涯「その呼び名を変えるつもりは無いんだな。」

 

集「ああ、お前はいつまで経っても俺にとってはトリトンだからな。」

 

涯「フン、そうか。」

 

トリトンの横顔からは笑みが浮かんでいることが分かる。

すると、何かを思い出した様子でこちらに顔を向ける。

 

涯「そういえばダリルが、「さっきは」と言っていたが、あれはどういうことだ?」

 

集「ああ、あれ。」

 

はぐらかしても仕方ないしトリトンには話しておいてもいいかもな。

 

集「猫耳ハッカーのヴォイドあるだろ?」

 

涯「猫耳ってツグミのことか?ってあいつのヴォイドと言えば、」

 

集「御察しの通り、俺の分身があいつのエンドレイヴをぶっ倒したんだろうな。」

 

猫耳には内密にしてもらっている。いちいち分身かどうか他の奴らに疑われても面倒だしな。

 

涯「待て。それどれくらい作ったんだ⁉︎」

 

集「うーん、一隊に一人ずつくらいかな?」

 

涯「また無茶苦茶な。」

 

集「自分しか信用できないって言ったろ?」

 

涯「確かにな。」

 

俺らの顔に笑顔が浮かぶ。

その時ふと大島での日々を思い出した。そして、少しだけあの頃に戻れた、そんな気がするのだった。




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