ミュウツーとミュウ   作:イグのん

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心の隙間とライバル

 

「ふう…」

 

 

一息着きながら光り輝く太陽を含む空を見上げるのは先程まで激戦を繰り広げていた一人のポケモントレーナー。

私の名前はシロナ。

今はシンオウリーグチャンピオンをやっていると共にシンオウ時空伝説を調べている学者の一人でもある。

 

 

そんな私の前に現れた一人のポケモントレーナー。

それは唐突と言えば唐突な出会いだった。

私がポケモン神話について興味を持ち始めた切欠となったポケモンである『ミュウ』を連れていた。

しかもそのトレーナーはポケモンだった。

ポケモンがトレーナーを兼任するという前代未聞の異例の事態。

けれど私は不思議と疑問を抱かなかった。

ミュウを連れるそのトレーナーは私を納得させるだけの力を兼ね備えていたから。

 

 

彼の名前はミュウツー。

ミュウの睫毛の化石を元にどんなポケモンよりも強いという理想が人間の手によって具現された結果この世界に生を受けたポケモン。

彼についての噂は各地の学者や研究員の間で広まっていた様で私もカンナギタウンで博士をしているおばあちゃんからその資料を見せてもらった事がある。

 

 

思えばその時からだったろうか。

私がポケモンとの絆について深く理解を示す様になったのは。

嘗ては私もただ只管強さを求めていた。

ポケモンバトルに勝ちたかったから。

チャンピオンになりたかったから等理由は色々あった。

けれどシンオウリーグチャンピオンになってからそれは次第に変わっていった。

チャンピオンという名の下に敗北は許されない日々。

勿論ポケモンバトルが楽しくなくなった訳ではない。

けれど次第にただ純粋にポケモンバトルを楽しんでいたあの頃が懐かしく思えてきて。

そう思い始めるという事はリーグ挑戦を業務の様にこなしている今の日々に私は不満足なのかも知れない。

 

 

当然そんな内心を表には出さない。

私はポケモンが好きだから。

ポケモンを自分と同様に好きになってくれる沢山の挑戦者がポケモンバトルをしてくれる事が嬉しかったから。

 

 

それでも心の奥底で私は求めていたのかもしれない。

チャンピオンに長い年月をついて何処か虚しくなってしまった私の心を満たしてくれるそんな強いポケモントレーナーが現れるのを。

 

 

そんな私の願いが叶えられたのか、ミュウツーは私の前に現れた。

彼にポケモンバトルを申し込まれた時は心の中で私は歓喜していた。

嘗てカントー地方最強のポケモントレーナーと噂された者の強さがどれ程なのか。

そしてミュウツーが連れていたポケモンであるミュウがどの様な戦い方をするのか。

彼との戦いの全てに興味が沸き、バトルの最中も楽しくて無我夢中だった。

まるでタイムスリップした感覚に陥った。

ポケモンという友達を手に入れて一喜一憂し、そんな相棒とも呼べるポケモンとただ只管ポケモンバトルを楽しんでいたあの頃に。

 

 

「ライバル…か」

 

 

ミュウツーの事を考えながらポツリと私は呟く。

先程のバトルで気付けば私は彼の事をそう認識していた。

バトルの結果は私の圧勝だったが、そんな事は問題ではなかった。

あのバトルでミュウツーはミュウに『へんしん』を使わせていたのだ。

ポケモンとの絆の強さによってチャンピオンになった私の強さを理解したいが為に。

他に戦い方など山の様にあった筈、それこそ戦術次第では私は負けていたかもしれない。

 

 

ミュウは全てのポケモンの始まりとも呼ばれているポケモンである。

あらゆるポケモンの遺伝子を含み更に持ち前の高い知性からあらゆるポケモンに姿を変える事もあらゆる技を使用する事も出来る。

そんなミュウの無限の可能性を最大限に引き出すのがミュウツーである。

ミュウの事を誰よりも理解している彼だからこそそれは可能となる芸当なのだろう。

 

 

けれどそんな山の様にある勝利の可能性をミュウツーは先のバトルで全て破棄したのだから私も内心驚愕していた。

ポケモンとの絆の強さを明確にするが為の同じステータス、同じ技を持つ同じポケモン同士のバトル。

ミュウは私のガブリアスに変身し、最後は私のガブリアスのドラゴンダイブが直撃し私の勝利。

 

 

きっとこのバトルを見ていた周りは私の圧勝だと感じていたのだろうか。

ミュウツーと戦っていた私は断じて違う答えを出していた。

圧勝? それはとんでもない勘違いという事を誰も理解していない。

近い将来ミュウツーはシンオウリーグを勝ち抜いて私の元までやってくる程の力を有している事に。

 

 

最強と呼ばれる力。

多くの技を使いこなし数多くの戦術を生み出す高い知性。

勝利する為に更なる力を求める飽く無き向上心。

 

 

彼が今後更なる成長を遂げる要因は十分にある。

そんな事実を前に不思議と喜びを隠せない私がいた。

遂に私も見つける事が出来たのだろう。

真のポケモントレーナーにとって必要不可欠な存在を。

切磋琢磨する事で互いの力を高め合う事が出来るライバルという友を。

 

 

「あー、チャンピオンがいるぞっ!」

「本当だ。こんな所でなにやってるんだろう」

「すごい、私初めて見た」

 

 

一体何時までそんな物思いに耽っていたのだろうか。

気付けば周りには私がいる噂を耳にした沢山のトレーナーで溢れ返っていた。

 

 

「一体どうしたんですかチャンピオン。こんな場所で」

「シロナさん何か物思いに耽ってたみたいですけど」

「もしかして彼氏ですかっ!? シロナさんにも気になる人が出来たとかっ!?」

 

 

思わず目を細める程の太陽の光が照りつけるこの晴天で物思いに耽る私を見て周りのトレーナーは有らぬ誤解を招く話題で捲くし立て始める。

私がそういった恋愛関係に対してあまり興味を示していないのは既に周知の事実となってしまっているのが原因か。

隙有らばと言わんばかりにこういった恋話に話題を降ってくる者が最近は後を絶えなくなってしまっていた。

まぁ今回ばかりは誤解されても仕方ない事を考えていたのかもしれないのだけれど。

 

 

「フフッ、違うわよ。ただちょっと次のシンオウリーグ挑戦者について考えていただけだから」

 

 

「もうチャンピオンは次の挑戦者に目星がついてるんですか?」

「やっぱ四天王のゴヨウさんじゃないか?」

「いや、オーバさんの方が強いって」

 

 

現在のシンオウリーグ四天王であるエスパー使いのゴヨウと炎使いのオーバ

どちらも次のシンオウリーグチャンピオン挑戦者の筆頭と言われている。

だが、シロナが考えている挑戦者は全く別だった。

 

 

『お前には礼を言わなければならない。

お前のお陰で新たな一歩を踏み出す事が出来そうだ』

 

 

私とはまた別の強さで頂点へと辿り着いたミュウツー。

私の中の予想では彼以外の挑戦者は既に考えられなかった。

 

 

「チャンピオン何か嬉しそうですね」

「やっぱり気になる人の事を考えてるんじゃないんですか?」

「くっそー、チャンピオンに想い人が遂に出来ちゃったー!!」

 

 

私の表情を終始伺っているトレーナー達は再び恋話を振ろうとする。

何故年頃の子というのは此処まで恋愛話に興味を持つのだろうか。

私の事を周囲はよく才色兼備のチャンピオン、戦う女神などと呼称している。

そう呼ばれること事態は別に悪い気分ではない。

唯私自身そういった地位を余り鼻にかけたくなかった。

私も嘗ては唯の一人のポケモントレーナー。

それこそ何処にでもいるポケモンが好きな一人の少女に過ぎなかったのだから。

何時かは君達にも同じ高みに来ることが出来る。

人はそういった可能性を無限に秘めているのだ。

その当たり前を決して忘れずにポケモンとの絆を個性を大事にして欲しい。

それこそが私がチャンピオンとして貴方達ポケモントレーナーに唯一望んでいる事なのだから。

 

 

「っ!?」

 

 

そんな事を考えている時に数刻遮られる太陽の光。

今まで差し込まれていた太陽の光を遮ったのは一つの大きな影だった。

 

 

「何あれっ!? あれポケモンなのかっ!?」

「カッコいいー。何あのおっきなポケモン?」

「あのポケモン見た事ある。えっと確か――」

 

 

「―――ボーマンダ―――」

 

 

上空を見上げながら影の正体であるポケモンを見て私はその名前を口にした。

 

 

”ボーマンダ ”

タツベイの最終進化形態であり翼が欲しいと思い続けた結果体の細胞が突然を起こしたのだ。

その結果、見事な翼が生えたと言われるドラゴンポケモン。

その巨体から繰り出される桁外れのパワーはドラゴンタイプの中でも屈指の強さを誇っている程のポケモンである。

そして上空を飛ぶボーマンダの背中には一人のトレーナーが乗っていた。

果たしてその者をトレーナーとして認めてもよいのだろうか。

 

 

「アレは、――ポケモンハンターJッ!?」

 

 

”ポケモンハンター ”

それはポケモンを闇取引の材料として狩りをするシンオウ地方に限らず各地に出没している犯罪集団である。

希少価値の高いポケモン、依頼の有ったポケモンを他のトレーナーから独自の方法で奪っては高い金で売り捌くと云われる。

その悪名高き名は今でもシンオウ全土のポケモン達を脅かし現在各地で指名手配をされている。

だがポケモンハンターの居住として使用されている飛行艇は独自の改造が加えられている。

離陸後はその姿が見えなくなる為に警察でも追跡が困難を極めていた。

故に今警察が掴んでいるポケモンハンターの情報も謎の部分が大半なのだ。

 

 

そんなポケモンハンターを統括する一人のリーダーの名はJ。

その正体や経歴はポケモンハンター同様で全くの不明。

そんな完全なUNKNOUWNな彼女が使役するポケモンは並みのポケモンでは相手にすらならない程の強さを持つ。

それがポケモンハンターJを逮捕する事の難しさに繋がる要因の一つになっているのだ。

 

 

彼女が乗るボーマンダも当然その一匹である。

 

 

「皆は此処に居る様に。それから付近の巡査の人にポケモンハンターが現れた事を伝えてきて」

 

 

「「「わかりましたっ!!」」」

 

 

周囲に集まるトレーナーに指示を伝えると共に私はポケモンハンターJが飛んでいった方へと駆け出した。

きっとこれからポケモンハンターの魔の手によってポケモンがトレーナーから強奪されてしまう。

そんな事態を私は決して看過しておく事が出来なかったから。

 

 

「天空に舞え、ガブリアスッ!!」

 

 

「ガアアアアーー!!」

 

 

このままでは間に合わないと判断した私はガブリアスを先に現場に向かわせることにした。

 

 

「ガブリアス。貴方は先にポケモンハンターJの行方を追ってっ!」

 

 

「ガアッ!」

 

 

指示を受けると同時に即座にガブリアスはJの後を追うように飛んでいった。

私も急がなければならない。

ポケモントレーナーが自分のポケモンという唯一無二の友達を失ってしまう。

そんな悲劇を私の前で繰り広げる訳にはいかないから

 

 

「お願い、間に合って―――」

 

 

私が辿り着くまでどうか無事でいて―――。

必死に走りながら私は襲われるであろうポケモンの無事を祈っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミュウツーとミュウ『座談会』

 

 

………読者の皆様おはこんばんちは。

………作者のイグのんです。

 

 

……えっ、何かテンション低くないかって?

前回の座談会からちょっと口篭るだけで催眠術喰らって寝不足なんですよっ!!

全く……それもこれも誰の所為でこうなったか――(チラッと横を見て)

 

 

「ミュウ~♪ミュウミュウッ。(訳)うん、間違いなく自業自得だね。」

 

 

……まぁ、気にしても仕方ないし進めていきますか。

では早速質問を読み上げたいと思います。

 

 

今回の話はシロナさんの視点で話が進んでおりますがもしかしてシロナさんはメインヒロインの一人なんですか?

 

 

うーん、重要なポジションを担っているのは事実なんだけど……。

メインヒロインという程出番が多いかと言われればそうでもないんだなこれが。

シロナさんファンの方は御免なさいです。

 

 

だけどメインヒロインは直ぐに登場するよ。

それは……次回のお楽しみという事でっ!

まぁこの話はアニメのキャラクターを多く出していくつもりだからDPのアニメを見ていた人はわかるかもね。

気になる人はググってみてね。

 

 

「……またメタ発言をしているな。あまりネタばれは読者にも不快感を与えてしまうぞ」

 

 

おっ、意外な所からツッコミが……。

まぁ必要最低限しか言ってないから大丈夫ですよ。

 

 

「……なら良いのだが」

 

 

うーん、ネタばれを防ぎつつ適度に質問に答えていくってのも中々に難しいですね。

少し早いですが今回はここでお別れです。

また次回にお会いしましょうねっ!

 

 

「また次回に会おう」

 

 

「ミュウ~♪(手をピコピコと振っている)」

 

 

 

 

 

 




あとがき


第4話投稿しました。
今回はシロナさんの話でした。
バトルが無いからか今回は短めでした。次こそは頑張ります!!
今作品では彼女中心の話があっても良いかなと思いまして。
次回はシロナとポケモンハンターJのご対面です。
今回ミュウツー&ミュウの出番を期待していた方はスミマセン。
それでは!!



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