この小説は個人Vtuber「園屋敷てん様」(@Ten_Sonoyashiki)のファン小説です。
園屋敷てんに血を吸われたいがために書きましたありがとうございます。

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2022/10/20
園屋敷てん様本人から素敵な挿絵を頂いております!!!!
本当に本当にありがとうございます~! 妖艶…! 
文中に入れたのでみんな見て…


わたしの完璧な監禁計画が失敗する訳がない(成功例)

 

 ──こんな所にお屋敷なんてあったかな?

 

 休日昼下がり。買い物帰りにその家は現れていた。

 見慣れた道で発見があるのは珍しい事ではない。

 けれども、これ程まで目立つ場所を見過ごす事なんてありえるだろうか?

 

 それは小ぢんまりとした西洋風の館だった。

 

 色あせた屋根。伽藍堂のテラス。木枠に嵌った窓ガラス。ツタでびっしりと覆われた煉瓦作りの壁。アールヌーヴォー建築と言えばいいのだろうか? かなり年季が入っている家だ。

 鉄柵に覆われた敷地は庭師がいないのか草木が自由奔放にくつろいでおり、一見すれば廃墟のようにも見えるが……実際はどうなのか。少なくとも人の気配は感じ取れない。

 

 偏屈な老人でも住んでいるのだろうか? あるいは世を儚む訳あり家族とか。果ては生きとし生けるものを羨やむ幽霊が住んでいたりして。

 浮かんでは消える他愛も無い想像。物珍しさからつい、侵入を阻む門に触れていた。

 

 両手を広げるほどしかない小さな門。

 扉は鎖でがんじがらめになっており、無骨な鉄で出来たそれは外気を吸ってかんかんに熱くなっている。

 小さいナリでも役割はきっちり果たすようで、触れればがぢゃり、と錆びた音を立ててこちらを威嚇してくる。

 

 ……何をやってるんだ、人様の家に。用事もないのに失礼な事この上ない。

 家主に睨まれるか、祟られる前に早く退散しなければ。

 踵を返そうとしたその時だった。腹まで響く雷鳴が響き渡ったのは。

 

 咎められたかのようにびくりと肩を鳴らせば、先程までの晴れ模様が嘘のようにバケツをひっくり返したような大雨が始まっていた。

 

 ──ひどい夕立だ。ツイてない。

 

 傘とするには心細い鞄で頭を庇う。

 家までは未だ遠く。雨宿り場所は都合よく見つからない。

 このままずぶ濡れで帰るしかないのか……げんなりとした矢先に、背後で物音を聞いた。

 

 ──え?

 

 声が漏れていた。だって、仕方ない事だろう。

 さっきまで硬く閉ざしていた門が開いていたのだから。

 誰が開けたのでもなく。唐突に。

 それはそれは大袈裟に開放されている。

 

 ──さっきまで閉まっていた……よな? 見間違いか?

 

 土砂降りの中、自分の疑問に答えてくれる人などいない。

 先に目を向ければ鬱蒼と生い茂った庭の中、玄関までひと一人分の隙間が伸びて居るのが見えた。

 

 まるで誘われているようだ。知らず喉を鳴らしてしまう。

 ずぶ濡れになるのは嫌だ。けれどもそれとは別に悪い想像も頭を過ぎってしまう。

 秤にかけられた恐怖と好奇心。しかして天秤は僅差で傾いていた。

 

 ──軒先を少し借りるだけだ。雨が止んだらすぐに帰ろう。

 

 気付けば言い訳をしながら石畳を歩んでいた。

 

 水のカーテンをかき分けて、一歩、また一歩。

 左右を挟んでさざめく草木がコチラを茶化し、風は早く進めと背中を押してくる。

 

 ノコノコとやってきた新しい餌が待ちきれないってか? 馬鹿馬鹿しい。

 内心の不安をよそに笑ってやる。何をびくびくする必要があるんだ。全く。

 

 ざざざざ、ざざざざざざざざざ。

 

 軒下に慌てて飛び込んだ矢先に、ますます強くなる風雨。

 振り向きまみえる景色は台風のよう。敷地の外は朧気に歪み、まるで外界と遮断された気分を味わえた。

 

 ──こんなに激しい雨なら、きっとすぐに止むさ。

 

 天の気紛れを願ってしばし庭を眺めるが、願えば願うほど雨量は増し、途切れる様子は皆目見えない。あまつさえ雷まで鳴り響く始末だ。

 ぺたりと張り付いた髪。背中を伝う水滴。変色したバッグ。退屈のお供(スマホ)は元気がない。そのどれもが鬱陶しく感じ、ここでしばらく立ち往生しないといけないのかと途方にくれた。その時だった。

 

「ねえ」

 

 文字通り飛び跳ねた。

 振り返れば玄関扉から赤い『何か』が顔を覗かせていた。

 

 『何か』というのは不適切かもしれない。

 けれど、自分にはそう表現する他無かった。

 

「雨宿りしてるの?」

 

 扉を掴む白磁の指先。しゃらりと伸びた赤い髪。純白のヘッドドレス。

 覗き込む真紅の瞳は吸い込まれそうに深く。

 そして何よりも目を惹く……異形の耳。

 

 はっと正気を取り戻し、答える。

 するとその『何か』はふぅん、と呟いた。

 

「そんな所にいたら風邪引いちゃうよ。良かったら家の中に来ない?」

 

 名残惜しげに離れた指先。きぃ、と空いていく扉。 

 たったそれだけの行為に見惚れてしまえば、雷が大音量で自分を急かし、反射的に足を動かしてしまった。

 

 そして一歩屋敷に踏み入れれば、世界から現実味が薄れていくのを感じた。

 

 吹き抜けのホールにシャンデリア、カーペット、年季の入った調度品。

 日本には似つかわしくない、それこそ映画の中でしか見ないようなTHE・洋館。しかしそれよりも目を奪われるものが目の前にあった。

 

 『何か』だ。それはゴシックロリータに包まれた少女の形をしていた。

 

 背中まで伸びたウェーブした紅い髪。

 人ならざる耳に、腰から生えるコウモリの羽。

 しゃなりと揺れる長い尻尾と、見目を引く破れたタイツ。

 どれもが特異なくせに不自然さがなく、コスプレで片付けられない不思議な違和感があった。

 

「こっちへ」

 

 呆然と立ち尽くす自分を置いて『何か』が奥に進んでいく。

 呆気に取られる間もなく追いかけた自分は……気付けば湯船に入っていた。

 狭い個室に洋風のバスタブ。仄かに香るラベンダーの香り。

 いつ着替えたのかすらも分からないが、温湯の中で見上げたパターン調の天井は自分には不釣り合いだと感じた。

 

「適当に使っていいよ」

 

 ただただ高級そうな質感の真っ白なタオル。

 使うのも(はばか)られるそれで恐る恐る体を拭えば、部屋の隅に置かれた部屋着。

 貴族然としたそのシャツは、ほんのりと木目タンスの匂いがした。

 

「体、冷えちゃったでしょ? 一杯いかが?」

 

 部屋を出て招かれた広間。有無を言わさず手渡されたお茶を口に運ぶ。

 鼻孔をくすぐる清涼な香り。カモミールだろうか。熱が喉元を過ぎれば、知らずため息が漏れた。

 

 至れり尽くせりとはまさにこの事だろう。

 この調子だと次に出るのは夕飯か? まさか、そんな都合の良い事もないだろう。  

 

「よく分かったね~。魚でいいかな?」

 

 まさか、嘘から出た誠になろうとは。

 

 ──既に黄昏時といえど、流石に夕飯まで甘えるわけには……!

 

 固辞しようとする前に、既に料理は配膳されていた。

 テーブルに並べられた二人分の料理。

 アクアパッツァだ。彩色豊かな野菜で飾られた鯛が、いまかいまかと自分に食べられたがっている。

 

 まだ何一つ返答もしていないが、二人でテーブルを挟むことは既定路線らしい。

 まるで無駄のない、手慣れた調子で二人分のグラスに水が注がれていく。

 芸の細かいことにクールな表情とは裏腹に、尻尾だけ浮ついているのがよく分かった。

 

 この『何か』が自分を招いたのは単なる優しさ? あるいはソレ以外?

 得体が知れない。しかし、好奇心をくすぐられる。

 

 記憶の奥底でホコリを被っていたマナーで食事と格闘する。

 注文の多い料理店のよう(バッドエンド)になったりしないのか? そう考えながら、伺うような食べ方をする自分に、『何か』……いや、『園屋敷てん』はよく話しかけてくれた。

 

「門、いや軒先に誰かいるものだから驚いちゃった。家は近いの? 一人暮らし? 家族は……近くにいないんだ。ふぅん……なら私と一緒だね」

 

 彼女の手元で、カトラリーが踊っている。

 

「美味しい? 良かった。いつも自分にしか作ってないから、味付け薄かったらごめんね。お礼は気にしなくていいよ。ほら、私はここでずっと一人だから暇で暇で。こうして一緒に話せるだけでも十分」

 

 優美な所作で、すくり。

 哀れな白身が磔刑(たっけい)に処されている。

 

「そうそう、一緒にワインはいかが? このワインとっても美味しくて……あ、お酒苦手? そっか」

 

 獲物が口に納まる。紅く、艶めかしい咥内。

 数瞬見えた八重歯は、まるで吸血鬼のよう。

 

「……なぁに? 私の顔に何かついてる?」

 

 血のように赤いワインを啜り、妖艶に微笑む少女に慌てて目を背ける。

 こんな事言えやしない。まるで自分が食べられているような気分だった……なんて。

 

 反らした先に見えた外界。雨量は増して、止む気配はなさそうだ。そんなあり触れた、誤魔化しにもならない話題を降れば嬉々として彼女は乗ってくれた。

 

「そうだね。雨はまだ止まないんじゃないかな? 私の見立てだと……うん、()()()()()()()()()。ねぇ、いっそ泊まったら? この家、部屋だけはいっぱいあるからさ。遠慮はいらないよ」

 

 絡みつく視線。それは正面にいるはずの彼女に背後から抱きすくめられていると錯覚してしまう。降りしきる雨は別の選択肢を阻み続け、断るという言葉はついぞ出てこなかった。

 

「ん。良かった、なら我が家だと思ってくつろいでいって」

 

 情けないことに……気が付けば首肯していた。いや、頷かされていた。

 まずいと思う。頷いた事も。そして今の自分にとって、その選択肢が悪くないと思えてしまう事も。

 

 せめてもの仕返しと言う訳じゃないが、そこからは彼女の手厚いサービスを拒み続ける事にした。心配しているような事はないのだろうが、尽くされ続けた結果これ以上拒めなくなるのは流石にまずい気がしたから。

 

 しかし不安をよそに『園屋敷てん』はどこまでも楽しそうだった。

 普段なんて知るよしもないが、淡泊な返答を繰り返してしまう自分に、軽快に、それこそ長年の親友のように接してくれる。音符が跳ねているのが見える。まさしくそんな感じだ。

 

 お茶を片手に『園屋敷てん』は語る。

 

 私生活。食事。映画。本。ゲームなどなど……彼女の話はウィットに富んでおり、盛り下がる事を知らない。

 真面目に語ることもあれば「実はわたしはコウモリなんだよ」とおどける事もある。

 話をすればするほど、まずいと思ってしまう。彼女は……隙間に入るのがうますぎる。

 波長を探られている。意図したものかはわからないが、心に立てていた障壁が一つ一つと剥がされていくような……そっけなく返してもするすると、気が付けば内側に居るのだ。

 お陰様で防戦一方。こちらの引き出しは開け放たれてスカスカ。このままでは何の気なしに口座番号すら教えてしまいそうだ。

 

 時折垣間見るぞっとするほど隔絶した感覚を除けば、『園屋敷てん』はどこにでもいる少女に違いなかった。

 

「……話し込んだらもうこんな時間。ごめんね、久々に人と話したから楽しくって」

 

 時刻は彼女の言う通り、23時を回っていた。

 ペースは常に相手にあり、時間すら奪われていたようにも思える。

 

 情けないことにここまでの攻勢でだいぶ(ほだ)されてしまっているのは事実だ。

 今も仄暗い廊下をランプ片手に先導する彼女の後ろ姿に釣られ、寝室まで誘われているのだから。

 

「暗いのはお嫌い? 大丈夫、私が付いているから……なんてね」

 

 内心の不安すら当てられて立つ瀬もない。

 妙な物言いをする彼女に誘われた先は、これまたホテルのような客室。

 自分には分不相応な天蓋つきの大きなベッド。いざ目の前にすると寝転がっていいのかさえわからない。

 

「王様のベッドみたいって……ふふ、面白いことを言うねキミ。なら王様気分でど~んと眠っちゃおうよ」

 

 これじゃ眠れそうにない、そんな返答は結局闇に霧散してしまった。

 脇机でぽつんと光る、頼りないランプ。部屋の中はその周囲以外は黒で塗りたくられており、ベッドから先は断崖絶壁になってるような気分だった。

 

 窓の外は相変わらずの雨模様。今すぐ帰るという選択肢はないし、布団まで被ってしまえば流石に気力も失せた。

 スマホは職務放棄(電池切れ)となれば今の自分に出来る事と言えば、ひたすらに目をつむり、朝が来るのを待つことだった。

 

 あぁ願わくば、早く家に帰れますように。

 

 

…………………………。

 

……………………。

 

 ………………。

 

 …………。

 

 ……。

 

 

 

 ──────ぎぃぃぃぃ。

 

 

 

 雨が窓を叩く音だけだった部屋の中に、雑音が混ざった。

 扉が開いた? 廊下の明かりがスポットライトとなって部屋を切り裂き、微睡(まどろみ)は弾け飛ぶ。

 建付けが悪いだけ? そう信じたかったが、続く足音が希望を踏みにじった。

 

 誰かが、ベッドに近付いている──。

 

 軋む床。衣擦れの音。そして、確かに聞こえる息遣い。

 背中を向けて横たわる自分に、振り向く程の勇気なんてない。そんな勇気があったら、そもそも家に帰っていただろう。

 そして自分はホラー映画の犠牲者よろしく、よせばいいのに寝たふりを続けてしまった。

 

 

 立ち止まった。ベッドのすぐ傍。

 

「……ねぇ、起きてる? それとももう寝ちゃった?」

 

 息遣いが近い。覗き込んでいる?

 

「ふぅん……じゃあ、そのまま聞いてて」

 

 ベッドが軋んだ。体重をかけている。

 

「今日は来てくれてありがとう。楽しかった」

 

 シーツがめくられた、何かが入り込もうとしている。

 

「このお屋敷に気付いてくれる人は中々いないから……ついはしゃぎ過ぎちゃった。戸惑わせちゃったかな? ごめんね」

 

 背中に何かがくっついた。苦みを含んだ柑橘の香りがふわりと漂う。

 

「キミは、いいコだね。雨が止んだら行ってしまうのかな? ここに来る用事はなくなっちゃうのかな?」

 

 首筋にかかる熱い吐息。柔らかく、それでいて()()()()()。人のぬくもりとは異なる何か。

 

「……それはすごく悲しいな。折角知り合ったのに、これで私達の縁が終わりになっちゃうなんて」

 

 小さな手足が絡みつき、肌同士が密着すれば、体温が否応なく上がってしまう。

 脈打つ心臓の音が煩わしく感じるほどビートを刻む中、ただただ傾聴してしまう。

 

「だから、ね。考えたの」

 

 夢か現か、それすらも曖昧な暗い部屋の中。流されるままに聞いた話の結末は。

 

「これからさ、私とずっと一緒にいよう?」

 

 

 とっておきのバッドエンドだった。

 

 

 ────かりゅ。

 

 首筋に熱を感じ、直後声にならない悲鳴をあげて跳び起きていた。

 首に手をやればどろりと流れる赤。

 

 廊下から指す光だけが、彼女を照らしていた。

 黒いシースルーのネグリジェを身にまとい、口角を挙げて妖艶に微笑む少女。

 

 その鋭い犬歯と紅の眼が、闇の中で場違いに輝くのが印象的だった。

 

「ん、ふ。甘ぁぃ……ふふ、でもちゃんと運動してる? ちょっとだけドロっとしてるよ」

 

 もう少しだけいいよね。四つん這いでにじり寄る『園屋敷てん』。

 昼間はただの少女としか見れなかったのに、透けた肌着が、そしてその予想以上にふくよかな躰が少女を雌たらしめていた。

 恐怖と性欲が本能を両方向から板挟みにしてくる瞬間。このまま身を任せれば、きっと酷い事をする/されるのだろう。ソレはきっと味わった事がないほど気持ちがいいのだろう。けれども──

 

「っ!?」

 

 ──かろうじてまだ、恐怖が上回っていた。

 

 彼女がベッドから落ちた。なぜなら自分が置時計で殴ったからだ

 確かな感触。女の子を殴ったことも……ましてや、人を鈍器で殴った事もなんて一度もないが、気色の悪い感触だった。

 

 どうかしてる。けれど、そんな事よりも逃げなければ、と思った。

 

 ベッドを飛び出し、廊下に飛び出す。

 素足のままで走り抜け、脚をもつれさせながら階下を、玄関を目指す。

 彼女はきっと死んでない。確信があった。

 そしてあれが悪ふざけじゃない事にも確信があった。

 首に感じた痛みは今や甘い熱となって全身に回っている。

 早く逃げないと、自分はここで一生を過ごすことになる。

 

 代わり映えのしない廊下をひた走り、飛び跳ね、現れるであろう踊り場を探す。

 しかし走れども走れども長い道は続く、どこまでも続く。

 次の曲がり角をにあるのか? その次は? その次は……? 

 期待はことごとく裏切られ、やがて息が切れてくる。おかしい。この廊下はこんなに長い筈が……。

 

「酷いなぁ……どうして逃げるの?」

 

【挿絵表示】

 

 

 次の曲がり角の先に、彼女はいた。

 

 ネグリジェのまま、憮然とした表情で。

 殴られ赤らんだ口元の痣。それを撫でながら、少女が歩み寄る。

 ひ、と悲鳴を漏らしながらとっさに踵を返せば。その先にも。

 

 前にも彼女が。後ろにも彼女が。

 振り返るたびに視界に入る彼女に追い詰められ、あっという間に壁際に追い詰められてしまう。

 蛇のように伸びた手が震える自分に絡みつく。熱の籠もった目はオレ以外捉えていない。

 

「女のことを殴るなんて酷いと思わない? だからさ、お詫びにちょっとだけ吸わせてよ。ほんの少しの辛抱だからさ」

 

 ──何を、辛抱しろと? 大人しく首を噛まれて血を吸われろと? そんなの冗談じゃない!

 

「約束するよ。キミを寂しがらせたりしない。ずっと話し相手になってあげるし、遊び相手にもなってあげる。食事もいつも一緒。しかも添い寝付き……どう? 少しの我慢でこれだけ特典があるんだよ」

 

 ──どうもこうもない。飼い殺しにされるなんて聞いていない。兎にも角にも帰して欲しい。自分には仕事だってある、生活がある!

 

「養ってあげるし、家族にもなってあげてもいい。というかね、残念だけどキミはもう詰んでるんだ。この屋敷に入ったらもう、逃がしてあげないんだから」

 

 頬をなぞる手、白魚のように美しいそれが首筋に回され──そして力強く肩を掴んでいた。

 自分より一回り小さい少女。しかし、組み伏せるその力は、到底少女とは思えないほど。どうにか逃げようと暴れた矢先。再び痛みが走る。

 

「暴れちゃダメだよ……ん。じゅ……じゅる、ぢゅ、ぅぅ……んく、んっ……♪」

 

 首に突き立つ二本の牙。最初は抵抗しようとしたがより深く牙が食い込み、血潮が彼女の喉を通るたび力が抜けていく。

 不思議な事に首から感じるのは痛みではなく、腰が溶けそうなほどの快楽だった。

 

「んくぅ……ん❤ っぱ……ふふ、気持ちいい? うんうん、涎が止まらなくなるよね。私も、キミのを飲むと体がきゅーっと熱くなってくのが分かるよ。キミが、どんどん自分のものになっていくって実感が湧いてくる」

 

 だらんと垂れ下がる手。ガクガクと震える脚、視界は霞がかかり、抵抗の気概は霧散するばかり。

 蛇に食べられる鳥も、こういう気分なのだろうか。

 金縛りにあったかのように動けず、思うがままに貪られても諦念しか浮かばない。

 

 自分に出来るのは、気まぐれを願って懇願を繰り返すだけだった。

 

「あはっ、もう止めて? だぁめ……キミが美味しいのが悪いんだよ。まだやめてあげない。舐めて、飲んで、啜って、舐って……私がいいって言うまで飲んじゃうんだから」

 

 可愛らしい捕食者による無慈悲な裁定。

 快楽に身を任せていくうちに、何となく吸われるのは血じゃなくて、自分という存在だということに気付いた。

 記憶すらも上書きされるような深い深い陶酔の中。自分の意識は暗い闇の中に沈んでいくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう。よく眠れた?」

 

 ──あれ?

 

「すっかり晴れてるみたいだよ? 残念だなぁ……私はもっと泊まっていってほしかったのに」

 

 ──んん?

 

「それじゃまた……いつでも遊びに来てね。私はいつでもここに居るからさ」

 

 ──おや?

 

 気付けば朝を迎え、自分は屋敷の外へ出ていた。

 背後にあるのは相変わらず廃墟にしか見えないお屋敷。

 そのテラスの日陰で彼女が手を振るのが見えている。

 

 あれは夢だったのだろうか?

 朝は普通にベッドで目覚め、彼女の顔には傷ひとつなく。

 首をなぞれば痛みを覚えることもない。

 

 血を吸われ、身も心も彼女に吸われつくしたという実感は今もくすぶっている。

 あれだけ血を流せば不調がある筈なのに倦怠感はなく、むしろ晴れ晴れとした気分だ。

 

 ──お詫びも込めて遊びにいかないとだな。

 

 親切にしてくれたのに、勝手に忌避感を持って邪険にし続けたなんて申し訳ない事この上ない。

 オレは首を傾げながら帰路につくのだった。

 

 

 決して、首筋についた、2点の痣に、気付く事もなく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんちゃってヤンデレ監禁されてぇなぁ!(挨拶)
私イチ押しのVtuberさんを勝手に書かさせて頂きました。

見た目の可愛さも、声の可愛さも。
そしてサバサバした性格もどれもが個人的にツボ過ぎて推さざるを得ないのでみんなにもっと広まって欲しいと切に思います。(マジ)
読んで興味を持ってくださったかたは是非チャンネル登録してあげてくださいまし!!!!

これからも本当に応援しています~!!




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