プロセカの世界に転生したので皆を救いたいと思います(制限時間付き)   作:蛮族さん

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第十一話 【予兆】

部屋中に、ジリリ!と、高い金属音が鳴り響く。

この時代には珍しいアナログ時計が指し示している時間は、午前7時30分。

ほとんどの人間は既に起きていて、仕事や学校に行く用意をしているところだろう。

しかし、金属音をものともせず、男は眠っていた。

いや...眠っているのではなく、動けないのだ。

 

「はぁ...はぁ...今日に限って風邪かよ...」

起きてみると、全身が火照って暑い。

寝る時にいつも着ているジャージは汗でびしょびしょになっており、シーツには汗の跡がついていた。

 

「ごほっ!ごほっ!」

俺はティッシュを数枚取り、口元を覆う。

 

「あぁ...まじかよ」

ティッシュを見てみると、全体の六割ぐらいが真っ赤に染まっていた。

 

これは、紛れもなく俺の血だ。

 

最近はこんな感じで、風邪を引くと体のどこかしらの部分に異常が出てくる。

 

しかし、その異常は風邪が治るのと同時に出てこなくなる。

 

最初の頃は眩暈とか数秒間呼吸ができなくなるとかだったから対処が簡単だったからよかったけど、今では血反吐とか、失神とか、対処が難しいものばかりだから、隠すのにも一苦労だ。

 

「これ、どうしよっか」

俺は真っ赤に染まったティッシュの処理に頭を悩ませる。

普通にゴミ箱に捨ててしまえば両親にバレるし、かといって部屋のどこかに隠したところで、掃除のときに見つかるだろうし。

 

う~ん...あ、そうだ。

 

俺はジャージのポケットにティッシュを突っ込んだ。

 

別に今すぐに処理をしなければならないってことではないんだ。

 

症状が回復したら、外にあるゴミ箱にでも捨てよう。

 

俺は布団を自分の体にかけ、もう一度寝ようとしたときに、ドアの奥から声が聞こえてくる。

 

「響~?まだ寝てるの~?」

俺の母親が、不安そうな表情で部屋に入ってくる。

 

「お、おはよう...ちょっと今日風邪気味だから、学校休んでいい?」

 

「風邪!?大変じゃない!今すぐ病院にっ___」

 

「だ、大丈夫だから!そこまでじゃないから!」

俺はスマホを取り出した母親を制止する。

 

「ただの風邪だって。今日中に治らなかったら病院ってことでいいから」

病院に行ってしまえば、もう入院は確実だ。

今ここで自由に行動できなくなってしまうのは、非常にまずい。

もし入院中に警告が出てきたとしても、すぐに行動できなくなってしまえば、彼らの命が危ない。

 

「そ、そう...響がそう言うなら...」

少し落ち着いたのか、ほっとした表情をする母親。

...少し、嘘をついたに罪悪感を感じる。

俺のことを心配してくれたというのに、俺はその善意を私情で否定した。

 

「じゃあ響?くれぐれも安静にね?」

俺のことを気遣ってなのか、ゆっくりとドアを閉めて部屋から出ていく。

 

「...どうしよ、暇だな」

最近は色々なことがありすぎて、こんな風に何もすることがない状態なんて久しぶりかもしれない。

 

「ふわぁ~...寝るか」

何かしようにも、体が重くて動かない。

幸運なことに、眠気は少しあるから、二度寝でもするか。

 

 

 

---

 

 

 

 

「んぅ?...」

近くから、物音が聞こえてくる。

母親がおかゆでも持ってきてくれたのだろうか?

 

俺は重いまぶたを開けてみると、目の前には、母親ではなく、

「あ、ごめん、起こしちゃった?」

満面の笑みのこはねがいた。

 

「あ、いや全然大丈夫...っていうか、なんでこはねが俺の家に?」

今日は平日だから、普通に学校はある。

そして、今の時間帯は...給食の配膳をしているころだろうか?

だったら...何故こはねはここにいる?

 

「だって、学校に響くんがいなかったんだもん。先生に聞いてみたら、風邪だって言うから、看病しに来たの!」

こはねは、えっへんと胸を張って言った。

 

「いや別に放課後でも...」

 

「放課後まで待てなかったから...」

こはねは両手の人差し指をくっつけながら、気まずそうに言った。

 

「いや看病するのってそんな楽しいもんか?...」

 

「うん!」

 

「よくわからん...」

看病が楽しいってどういうことだ?...

あれか?庇護欲ってやつなのか?

 

「響くんのお母さんと一緒に作ったんだけど、食べる?」

こはねは頭を抱えている俺の目の前に、トレーを置く。

トレーに乗っているのは、我が家では恒例の、ねぎ入りのおかゆ。

毎回家族の誰かが風邪などで寝こんだ場合は、このねぎ入りのおかゆが出てくる。

 

母親曰く、

「このおかゆに、少し刺激的なねぎが合うの!味が良ければ風邪もすぐ直るだろうし!」

とのこと。

 

...味が良ければ、風邪もすぐに治るのかは疑問だが、味がいいことは確かだ。

 

俺がおかゆを見ながらぼ~っとしていると、何かを閃いたのか、こはねが目を見開く。

 

「もしかして、食べさせたほうがよかった?」

こはねはトレーの上に置いてあったスプーンを手に取り、おかゆをすくう。

 

「ふぅ~、ふぅ~、はい、あ~ん」

 

「いや自分でできるよ!?」

俺は流れるよう手際に驚いて、反応が遅れた。

 

「でも、風邪を引いて、体がだるい人にはこうした方が負担は少ないよね?」

 

「はぁ...あむ...うまい...」

俺は諦めて、こはねがあ~んすることを許容した。

 

...やはりおかゆにはねぎがあったほうが美味いな...

おかゆ単体だと、味の主張が弱くてイマイチだが、そこにねぎのパンチが加わることにより、ちょうどいい具合に仕上がる。

 

...病人が食べるようなものにパンチが加わるのはどうかと思うが、美味いものは美味いのでなんでもいい。

 

...というか、なんか血の味がするな?

もしかして、口の中に、まだ血があったのか?

 

「うぅ...」

味覚のほとんどが血の味で支配される。

しかし、こはねがいる前で、血まみれのおかゆを吐き出すわけにはいかないので、無理やり口の中にあるものを飲み込んでいく。

 

「響くん大丈夫?...苦しそうな顔してるけど...もしかしておかゆ美味しくなかった?...」

こはねは泣き出しそうな顔でそう言った。

 

「いや、ただ単に調子が悪くなってきただけだから...」

 

「そ、そうなんだ...もし辛かったら、ずっといるから...」

 

「さすがに昼休みが終わるころには学校にいてくれ...申し訳なさで死ねる」

 

「...わかったよ、でも、放課後にまた来るから!」

 

「お、おう...別にそこまでして看病はしなくてもいいんだよ?...」

 

という感じで、放課後もこはねが来るということになったんだが...

 

「響くんの看病は私がやるから大丈夫ですよ?」

 

「結構です、私が看病するので」

 

目の前で、こはねと一歌がバチバチに口論する地獄が発生した。

 

 

どうして?

 

 

 

---

 

 

 

 

「大丈夫かな?...」

不安で胸がいっぱいになっていくのがわかる。

いつも元気で、私たちに笑顔をくれる響君が、風邪を引いてしまったそうだ。

 

言われてみれば、響君が風邪を引いて学校を休むなんて、一回も聞いたことがなかった。

 

学校では、咲希や穂波、志歩も響君の看病に行くと言っていたけれど、さすがに全員で行くと迷惑だろうから、じゃんけんで私が行くことになった。

 

「ここかな...」

私はゆっくりとインターホンを押す。

ピンポーンと、聞きなれた音が聞こえてくる。

 

「は~い」

インターホンから、優しい声が聞こえてくる。

 

「響君の看病をしにきました、星乃一歌です」

 

「あら、また女の子...鍵は開いてるから上がって~」

また女の子?...どいうことなんだろう?

胸の奥がもやもやしたまま、私は玄関のドアを開けた。

 

「ん?...この靴...」

玄関を開けると、前に来た時と同じような靴があったけど、一つだけ見慣れないものがあった。

その靴は、最近CMで有名になっている、女子に人気のあるキャラクターのデザインが施されている靴だった。

 

...この靴、響君の家にあったかな?...

 

私は小さな疑問を抱きながら、響君の部屋に向かった。

 

(きっと辛いんだろうなぁ...)

風邪になった時の寂しさはよくわかっている。

全身が暑くて、重くてダルくて、寂しい。

だからこそ、近くに誰かいた時は、どんなに心強いことか。

 

私は響君のために尽くすと決意して、響君の部屋のドアを開けたけど、

「響君大丈夫?汗すごいよ?...」

 

「それなら大丈夫...さすがに女の子に拭いてもらうわけには...」

 

「駄目だよ!すぐに拭かないと!」

響君が、知らない女の子に詰め寄られていた。

 

 

 

---

 

 

 

「響くんの看病は私がやるから大丈夫ですよ?」

 

「結構です、私が看病するので」

私が彼女....こはねさんのことを響君から引きはがしたあと、どちらが看病するかで話し合うことになった。

 

「最初に看病していたのは私なんです!あとから来た一歌さんが看病をする必要はありませんから、帰ってもいいんですよ?」

 

「私も看病する必要かあるかどうかを判断するのは響君です、こはねさんが決めるわけではありません」

この女の子は何なのだろうか?

さっきから響君へのスキンシップも激しいし、馴れ馴れしい。

正直、見ていて羨ま___いけないことだと思う。

 

「じゃあ響くん?私がいるのに、一歌さんの看病は必要なの?」

こはねさんは、響君の手を自分の胸に押し付け、上目遣いで響君を見る。

 

「っ!いや、まぁ...必要かな...こはねにばっかり負担をかけるのは、ちょっとアレかなって思うし...」

何かを我慢したのか、一瞬迷ったような表情を見せたけど、私のことを必要と言ってくれた。

 

「...そっか」

 

「それじゃあ私は響君の汗を拭くから、こはねさんは部屋から出て行ってくれない?」

 

「なっ!?」

こはねさんは目を見開き、私のことを見る。

 

「いやだから拭く必要なんて...」

 

「「必要ある!」」

 

「えぇ...」

 

「こはねさんは響君との付き合いは短いでしょう?私は響君と一緒にお風呂に入ったことだってあるし、添い寝をしたことだってあるの、これは私が適任でしょ?」

私はこはねさんが、響君の体を拭く必要はない理由を述べていく。

小学生とは言えど、年頃の男女。

昔からの付き合いがないよう男女同士が、そのようなことをするよりかは、ずっと昔から一緒にいる私のほうが適任なはず。

 

「っ!お、お風呂...でも、私だってプールで響くんの裸を見たことなんて何回もあります!だから問題はありません!」

 

「っく...」

こはねさんから、正論を言われて、口籠ってしまう。

確かに、プールで裸を見ているのなら、体を拭くぐらいなら、なんら問題はない。

 

「いやもうホントに...ヤメテクレ...はずいから...」

バチバチに火花を飛ばしている私達のそばで、両手で顔を隠す響君。

...一体どこが恥ずかしいのかな?...

 

「じゃあ、響くんはどっちに体を拭かれたいの?」

私が響君が恥ずかしがっている理由について考えていた時に、こはねさんからそんな提案が提唱される。

 

「...確かに、響君に選んでもらうのなら、文句はないね」

ここまでしても、こはねさんが折れないのなら、響君に選んでもらうしかない。

 

「「響君(くん)は...」」

 

 

「「どっちがいいの?」」

 

 

「...選べません...」

 

「「じゃあ両方ってことでいいね?」」

 

「いやなんで!?」

 

 

---

 

 

 

「どうかな響くん、かゆいところとかない?」

 

「響君はどこが気持ちいいの?教えて...」

 

「...大丈夫...そのままで十分だよ...」

俺が二人にそう言った時に、俺の部屋のドアが開かれる。

 

「あらあら!響って意外と肉食なのね!お父さん大変!響がモテモテよ!」

 

「ホントに違うから!!!!」

 




もう少しで一章終わります。
次回、皆さんお待ちかねの瑞希編ですよぉ〜...しかも合計で1万5000字は行きそうです...

幼少期の頃にこのキャラをもう少し深堀してほしいなぁ~という風に思っている人がいると思うので、 アンケートを取りたいと思います!ちなみに、現在公開されている話と書き溜めを合わせると、全キャラが登場済みです。 名前の右は登場回数です、書き溜めも含めています(男性キャラは除外させていただきます。正直男性キャラをメインにすると、私の文章力が一気に低下してしまいますので。すみません)

  • 星乃 一歌(2)
  • 天馬 咲希(1)
  • 望月 穂波(1)
  • 日野森 志歩(1)
  • 花里 みのり(1)
  • 桐谷 遥(1)
  • 桃井 愛莉(1)
  • 日野森 雫(1)
  • 小豆沢 こはね(1)
  • 白石 杏(1)
  • 鳳 えむ(1)
  • 草薙 寧々(1)
  • 宵崎 奏(3)
  • 朝比奈 まふゆ(2)
  • 東雲 絵名(1)
  • 暁山 瑞希(1)
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