プロセカの世界に転生したので皆を救いたいと思います(制限時間付き)   作:蛮族さん

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みなさんあけましておめでとうございます、蛮族さんです。
いや本当に更新が遅くなってしまった申し訳ない...
ちょっと現実の方で忙しくなってきまして、なかなか執筆活動にたどり着けない日が連続して訪れたので...
しかも、他の趣味が出来たりと色々あるんですよね...(でも、そろそろ飽きが来てます)
ちなみに書き溜めが底を尽きたので、週一更新は厳しいかもです。
更新は遅いですが、応援してくれると幸いです。

ちなみに長くなってしまった理由としましては...
愛が爆発しました。
(品質は、数週間ぶりに書いたので落ちているかもしれません...)


第十三話 【心酔】後編

「瑞希って男だったの?...」

ボクの好きな男の子が、顔を歪めて遠のく。

さっきまで普通に話せていたはずなのに、今ではボクを拒絶している。

小学校の時の、クラスメイトと同じように。

 

「違うんだ!ボクは...ボクは体は男の子かもしれないけど!____」

ボクのことを受け入れてくれると思った。

いつもみたいに、優しく笑ってくれると思った。

 

でも、それはボクの思い込みだった。

 

ボクのことを受け入れてくれる人なんて誰もいない。

 

結局は一人ぼっちなんだ。

 

「かもしれないけどってなんだよ」

 

「え?...」

彼が、ボクのことを冷酷な視線で見下す。

 

「瑞希は男ってことには変わりないし、女の子が好きなようなものが好きって...普通に考えておかしいよ」

 

「あぁ...や、やめて...お願いだから...」

小学校の頃に、何度も何度も何度も言われたことを、一番言われたくなかった人に言われる。

あのクラスメイト達に言われても、ボクは耐えることができた。

だって、彼が支えてくれたから。

それなのに、彼自身にそんなことを言われたら、ボクが耐えられるはずなんてない。

 

 

「もういいよ、二度と顔見せんな」

 

「待って!!!行かないで!!!ボクを一人にしないでよ!!!!!」

 

彼がボクの元から離れていく。

ずっとボクの心を暖めてくれていたものが、消えていく。

彼と出会う前の時のように、冷めきった物に戻っていく。

 

ボクはただひたすらに、彼の元まで走った。

 

体中が鉛のように重かった。

 

でも、そんなことは関係ない。

 

今、ボクが彼を失ってしまえば、確実に空っぽの【何か】になってしまうから。

 

彼のことを追っている最中に、何度も何度も転んで、今ではまとも走ることだってできない。

 

それでも、ボクは諦めない。

 

ボクは這いつくばってでも、彼を追いかける。

 

「お願い...だからっ!!!捨て...ないで...」

 

最後の力を振り絞って、ボクは彼に縋りつく。

 

でも、こんなボクを見ても、彼は動じなかった。

 

それどころか、ボクに対する嫌悪を深めた上に、こう言った。

 

 

 

 

【気持ち悪い】

 

 

 

 

 

「いやぁぁぁ!!!!!」

 

「ハァ...ハァ...っ!...また...この夢だ...」

周りを見渡しても、響の姿はどこにもない。

 

「よかった...」

さっきまでのことが夢だと確信して、そっと胸を撫でおろす。

 

最近は、響に嫌われる夢を見ることが多い。

そしてどの夢も現実的で、それが現実に起こらないかが不安で...

 

「もうこんな時間...」

今の時間は七時三十分。

今から急いで支度したとしても、遅刻する可能性があるギリギリのライン。

 

ボクはベットから出て、服を脱いでいく。

 

もちろん、寝る時に着ている服はかわいい服にしている。

学校では着れない分、家で着ないと服がもったいない。

 

クローゼットを開けて、学校の制服を取る。

 

正直、制服は着たくない。

 

だけど、制服を着ないと、ただですら悪いボクの噂がさらに悪化する。

 

そうなってしまえば、一緒にいてくれる響にも迷惑がかかる。

 

だから...我慢しないといけない...

 

「やっぱり...微妙...」

鏡に映る制服姿の自分。

中学校に入学してから、嫌という程見てきた姿。

どこも女の子っぽくない、完全に男の子の服。

 

「こんな服で...響に会うんだ...」

こんな姿を、ボクは響に見せたくない。

響には、可愛いボクを見て欲しかった。

 

 

 

 

---

 

 

 

 

「校庭の木々の蕾も____」

小学校の卒業式。

小学校生活の中で、最後の日。

六年間の全てが詰まっているはずの行事なのに、ボクにとっては苦痛でしかなかった。

 

ボクはこの六年間、この学校ではずっと一人ぼっちだった。

 

入学してから、すぐに友達になれた人も、ボクの噂を聞いて離れていった。

 

最初の頃は大丈夫だと思ってた。

 

きっとボクのことをわかってくれる、受け入れてくれるって。

 

でも、そんな人は、この学校には一人もいなかった。

 

みんながボクに、【おかしい】と言いながら指をさす。

 

誰かは笑い、誰かは罵倒し、誰かはボクを否定した。

 

ボクがおかしいの?ボクが間違ってるの?

 

そんなことを言っても、誰からも返事は来ない。

 

「はぁ...」

ボクは、できるだけこの時間が早く終わって欲しいと思った。

時間が経てば経つほど、ボクの寂しさは大きくなっていく。

 

ボクの周りに座っている人は、ボクと関わりたくないのか、席をボクから遠ざける。

 

そんな事実が、ボクをさらに傷つけていく。

 

ボクが君たちに何をした?

 

君たちに対して悪口でも言った?

それとも暴力でも振るった?

君たちの物でも盗んだ?

気にくわないことでもした?

 

そんなことはボクは一切やってない。

 

ただボクは、この学校にいるだけなのに、どうした君たちはボクのことを迫害したがる?

 

意味がわからない。

 

何もしてないのに、まるで大罪でも犯したかのような扱いをされる。

 

理不尽で、勝手に起こったイジメ。

 

ボクの視界が真っ暗になった。

 

もう何も見たくないし、何も感じたくない。

 

ボクはこれ以上傷つかないために、自分自身を殻に閉じ込めようとした。

 

でもそれは、やっぱり彼によって止められた。

 

「瑞希!!!」

体育館の入り口が、勢いよく開けられる。

 

「ちょっと誰あの子...」

 

「なんだあいつ!?」

 

「あの子は...」

 

さっきまで真っ暗だったはずの視界が、眩しいくらいに輝いていく。

 

「響!?」

さっきまで、静かだったこの空間が、どんどん騒がしくなってくる。

 

「ったく!何一人で抱え込んでるんだっつ~の!」

響はレッドカーペットの上をズシズシと歩いて、ボクの元にゆっくりと近づいてくる。

 

「ほら、こんなとこいねーで、もっと楽しいとこ行こーぜ!」

響が、ボクに手を差し出す。

 

「うん!!!」

ボクは、迷わずにその手を取った。

 

「よっしゃぁ!行くぞ!」

響がボクの手を引っ張って、走り出す。

体育館を出る時に、校長先生に向けてアイコンタクトをしてたのが不思議だったけど、この異常事態のせいか、まったく気にならなかった。

 

「それよりも響!ボクの卒業証書とかって大丈夫なのかな!」

 

「あぁそれなら大丈夫!もう瑞希の分ならもらってるから!」

響は服の中から、二枚の賞状を出す。

 

「なんでボクの分まで持ってるの!?」

 

「そこは秘密だ!まぁ、なかなか黒い話だから聞かない方が身のためだよ!」

 

「わかった!じゃあ聞かない!」

 

こんな感じで、ボクの初めての卒業式は色々あった。

 

 

 

 

---

 

 

 

 

卒業式が終わってから、春休みになった。

春休みの間は、ほぼ毎日響と会ってた。

 

というか、ボクが一方的に響に会いに行ってたんだと思う。

 

響に会えば会う程、ボクは響のことが好きになっていった。

 

でも、ふと、こんなことが頭に浮かんだ。

 

響が、ボクに色んなことをしてくれる理由として、無条件の愛のようなもの、と言った。

 

そして、その愛は、ボクが響に向けているものと似ている。

 

ボクは、体は男の子だけど、精神は女の子。

 

そして、好きになる性別は男の子。

 

だったら、響はボクに、ボクが響に抱いているような、愛を向けている?...

 

でも、響がみんなと同じように、好きになる性別が女の子だった時、その愛の理由はどうなるの?

 

響がボクに愛を向けてくれる理由、それは、ボクの行動とか顔とか、色々あるかもしれない。

 

けど、前提条件として、ボクが女の子だということがあるかもしれない。

 

ボクは、自分自身を学校で見せた結果、みんなから軽蔑された。

 

だから、響たちと遊ぶ時だって、自分の性別を隠し続けた。

 

その末路が、今みたいな、

 

響に本当の性別を知られると、あのクラスメイト達と同じように、ボクを軽蔑してしまうかもしれない、

 

という状況を作り出してしまった。

 

だったら、ボクは、響に自分の性別がバレてはならない?...

 

本当に今更だった。

 

もしボクの性別が、既に響にバレていたら、ボクの傍に響はいなかったかもしれない。

 

そんな可能性を考えるだけでも、ボクは狂ってしまいそうだった。

 

だから...ボクは響に自分の性別だけはバレたくなかったのに...

 

「よっ!まさか同じ中学だとは思わなかったわ!これからよろしくな!瑞希!」

 

ボクは、自分の性別が、隠せるはずのない状況に陥った。

 

 

 

---

 

 

 

 

「あの人って...」

 

「そうそう、噂の...」

 

「【寄生虫】ねぇ...」

 

通学路に入った途端に、周りの反応がおかしくなる。

 

これが、ボクの日常。

 

言われ慣れた、ボクに対する陰口。

 

結局小学校を卒業しても、ボクを取り巻く状況は変わらなかった。

 

どこからかはわからないけれど、小学校の頃の情報が、この中学校にも出回ったらしい。

 

「......」

ボクは、その陰口が聞こえてないフリをする。

一度でも反応してしまえば、ああいう人達の行動は悪化していく。

 

ボクには、響がいる。だから大丈夫。

 

そんな魔法の言葉も、最近ではその力が弱まって来てる。

 

響も、ボクのことを見捨てる可能性が出てきたからだ。

 

春休みの時からずっと考えている、愛の理由。

 

その理由が、今では欠けてきている。

 

だって、ボクが男だってことが、響にバレてしまったから...

 

バレるも何も、一緒の学校にいるのだから、わからないはずがない。

 

でも、響から、ボクが男であるということには一切触れられていない。

 

ボクは、そのことに触れて欲しいけれど、触れて欲しくもない。

 

そんな矛盾した理由のせいで、ボクは頭がおかしくなりそうだった。

 

今のボクは、たった一つのキッカケで簡単に壊れてしまう。

 

それこそ、響に突き放されたりなんかされたら、ボクは生きていけない。

 

「やっと着いた...」

ボクは扉に手をかけて、ゆっくりと開けていく。

 

「「......」」

 

ボクが扉を開けた瞬間、さっきまで騒がしかった教室が静かになった。

 

「でさ!俺のこの画像____」

 

「あのドラマ見た!ちょーおもしろくない?」

 

「え?課題?____」

 

でも、静かになったのはほんの一瞬で、すぐに騒がしい教室に戻った。

 

普通に見れば、この空間は異常に見えるかもしれないけど、これでもまだマシなほうだ。

 

最初の頃は、静かになった後には、わざと聞こえるようにしている陰口をずっと言われ続けた。

 

それを見かねた響が、クラスメイトに呼びかけ、少し改善された。

 

それでも、相変わらずクラスメイトはボクに視線を向けないけど、そんなことはどうでもよかった。

 

 

「あ、瑞希じゃん。おはよ」

 

「うん!おはよ!!」

 

さっきまであった不安が、一気に消えていったような気がした。

 

あぁ...やっぱり、ボクには響がいないとダメなんだ...

 

ボクはこんな風に、響と一緒にいる時は、元気でいられる。

 

でも、響と一緒にいなければ元気でいられないということは、ボクは既に、戻れないところまで来ている。

 

最初の頃は、言葉だけで耐えることができた。

 

でも、今では響がいないと耐えることができない。

 

いつか、今の状態じゃ耐えることが出来なくなっちゃうのかな?...

 

そんなことを思いながら、響の隣の席に座る。

 

「ひ~びき!」

 

「どうした?」

 

「呼んでみただけ~♪」

 

「なんだそりゃ」

 

響と同じ学校になってしまったことは、あまり好都合なことではなかった。

 

さらには、同じクラスかつ、隣の席。

 

普通に行っていれば、響はボクの傍から離れていたかもしれない。

 

でも、響がボクが男であるということに触れていないおかげで、ボクはこのままでいられる。

 

友達のままでいられる。

 

それだけでも、ボクは満足するべきなんだ...

 

下手をすれば、友達...いや、知り合い以下になってたかもしれないんだ。

 

だから...これ以上求めちゃいけない。

 

「今日も部活行っちゃうの?...」

 

「いや行っちゃうってなんだよ...基本的に毎日行かないと顧問がねぇ...」

響は気まずそうな顔をする。

 

響が所属している部活はバスケ部。

 

...うん、別におかしいことじゃない。

至って普通の部活...だと思う。

...男女比が偏っているという点を除いては。

 

そう、この学校のバスケ部は、2:8の割合で、圧倒的に女子の方が多い。

 

響も思春期の男の子。

 

だから...必然的に、バスケ部の女の子をそうゆう目で見たっておかしくない...おか

しくはないんだ...

 

ということは、響が女子バスケ部の子と付き合う可能性もあるわけで...

 

「絶対に駄目...」

響が女子バスケ部の子と付き合ったなんてこと聞いた瞬間、ボクは発狂する自信がある。

 

「えぇ?そんなに部活行っちゃだめか?...」

 

「...大丈夫、行っていい」

 

「そ、そうか...」

 

一時間目のチャイムが鳴る。

 

「えっと~、確か今日は数学だっけ?」

 

「...忘れてきちゃったから、見せてもらっていい?」

 

「これで何回目だよ...」

 

「えへへ~、わっかんない!」

 

「はぁ...」

 

 

 

---

 

 

 

 

 

「ほら瑞希!早くしないと遅れるぞ!」

ジャージ姿の響が、ボクにそう言ってくる。

 

「もう少し時間かかりそうだから、先に行って!」

 

「分かった!遅れんなよ!」

響は早歩きで、教室を出ていく。

 

「早くしないと...」

ボクは制服を脱いで、急いでジャージを着ていく。

 

「......」

ボクは、ジャージを着終わった時、ゆっくりと髪飾りを机に置いた。

今日やる体育の内容は、マット運動。

普通に髪飾りをつけたままだと危ないっていうのは分かるんだけども、この髪飾りを外すのには抵抗がある。

 

この髪飾りは、ボクと響の繋がりの象徴にも思えるぐらいには、大切なものだから。

 

「あと一分!?やばい!」

ボクは全力疾走で体育館に向かった。

 

 

 

 

---

 

 

 

 

「...ない、ない、ない...なんで、確かにここに置いたはずなのに!」

体育館から教室に戻ってみると、机に置いたはずの髪飾りが消えていた。

 

「はぁ...うるせぇな」

 

「黙ってろよ...」

 

「っ...」

刺さるような視線が至るところから飛んでくる。

でも、今はそんな視線に怖気づいている場合じゃない。

あの髪飾りがなくなった、それ即ち、僕と響の関係を明確に示すものがなくなったということ。

 

残っているのは、いつ切れてしまってもおかしくない友情だけ。

 

しかも、その友情は響の善意で作られているというのに、僕は下心を抱いている。

 

控えめに言っても、やっていることは最低だ。

 

「どう...しよう...」

動悸を抑える手が、弱々しく震える。

僕は動揺を誤魔化すかのように、目を瞑った。

 

こうやって何もかも見なければ、傷つくことはない。

こうして待っていれば、きっと響が助けに来てくれるから...

 

でも、そんな期待とは裏腹に、助けが来るなんてことはなかった。

 

「...ッチ...」

近くから、舌打ちのような音が聞こえる。

そうして、僕の机にはノートを千切ったものが置いてあった。

 

【放課後、倉庫裏に来い】

 

「何...これ...」

いつもは陰口とか無視といった行為しかないから、

こんなふうに呼び出されるなんてことは初めてだった。

 

いつもの僕ならこんなものは無視しているだろう。

でも、僕にはこの紙を置いた人間が、髪飾りを奪ったとしか思えなかった。

だったら、取り返すにはこの話に乗るしかない。

 

「あれ、どうしたんだ瑞希?顔色すっごく悪いけど?」

 

「ひ、響...」

不安そうな顔をしながら、僕に目線を合わせる響。

あぁ...やっぱり響は優しいなぁ...

いつだって響は僕の心を癒してくれるんだ。

 

「ったく、どれどれ、見せてみろ」

 

「えっ!?」

ピタリ、と僕の額に暖かい何かが触れる。

 

「う~ん、ちょいと熱いな、保健室行くか?」

 

「い、いや!大丈夫だから!...うん...」

急におでこを触られたから、少し驚いてしまった。

でも、ちょっと安心する暖かさだったなぁ...

 

「ね、ねぇ響...」

 

「ん~どした?」

 

「僕の頭撫でてくれない?...」

 

「「......」」

 

「やっぱり保健室に...」

 

「違うから!!!」

 

 

やっぱり、こんなに優しい響を、僕のいざこざに巻き込んじゃダメだ。

 

 

 

 

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「ここだよね...」

紙に書かれている通りに、僕は放課後に倉庫裏に来た。

でも、僕以外には人影が一切見えない。

あの紙を置いて行った人は、まだ来ていないのかな?...

 

僕がそわそわしていると、前の方から足音が聞こえてくる。

 

「へぇ、もう来てたんだ」

 

「......」

僕の前に姿を現したのは、同じクラスの女子だった。

単純に言ってしまえば一軍女子、そして僕のことを頻繁にいじめてくる人だ。

 

「あなたとは出来るだけ話したくないから、単刀直入に言うけど」

 

「響君にひっつくの、やめてもらえないかな?」

 

「う...」

何を言われるかなんて大抵予想はできていた。

でも、その予想が完全に自分が悪いと僕はわかっていた。

僕はそのことから目を逸らし続けていたんだ。

 

響と関わっている学校の人間は、ほぼ全員がこう思っているに違いない。

 

【響の周りに、寄生虫がいる】と。

 

彼らから見て、僕という存在は、響と干渉する際に邪魔でしかないんだろう。

 

響と関わるためには、僕という存在を許容しなければならないのだから。

 

「あんただって心の中では分かってるんでしょ?自分は響君にとってはお荷物でしかないって」

 

「で、でも!響は...」

 

「あんたの味方だって、断言できるの?」

 

「それは...」

僕は響が僕の味方だと思う、いや、そう思いたいんだ。

 

「そうやって断言できない時点で、あんたは響君と関わる資格なんてないんじゃないの?」

 

「そんな勝手に言わないでよ!!僕は!僕は...」

 

「はぁ...本当に面倒ね、あんた」

彼女はバックの中から、僕の髪飾りを取り出す。

 

「やっぱり持ってたんだ...」

自然と拳に力が入っていく。

 

「いつもいつも大事そうにしてるからね~、あんたの心をへし折るにはぴったりよ」

 

「...え?...」

 

バキ!という、プラスチックが折れる音が聞こえる。

それはつまり...僕の一番大事なものが壊されたということ。

 

「ほら、返してあげる」

折った髪飾りを、雑に僕の方に投げ捨てる。

 

「うそ...こんなのって...あんまりだよ...」

ゆっくりと、これ以上壊れないように髪飾りを拾う。

 

響にプレゼントされてから、一日も手入れを欠かさなかった、あの綺麗な髪飾りは、今ではボロボロになってしまった。

 

「今後響君に近づかないでね?瑞希ちゃん?」

 

 

 

 

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「ははは...もう何もしたくないや...」

ベットに倒れこみながら、そんな言葉が口から出ていた。

でも、何もしたくないというのは事実。

 

響との関係も良好とはいえないし、髪飾りは壊される。

 

これ以上事態を悪化させてしまえば、何をされるかわからない。

 

そして、僕から響に接触しにくくなった。

 

僕の心の支えだったものが、どんどん壊されていく。

 

目を閉じると、笑顔の響が目に浮かぶんだ。

 

優しく微笑みかけて、僕の手を引っ張って、楽しい場所へ連れて行ってくれるんだ。

 

「っ...なんでなんだろうなぁ...僕が,,,何をしたって言うんだ...」

僕が、震えた声で、そうつぶやいた。

今までクラスメイトにされたことが、フラッシュバックする。

 

体に画鋲が刺さった痛み。

みんなに無視をされる寂しさ。

いろんな人に何をされるかわからない怖さ。

 

「怖い...怖いよ、響...助けて...」

自分の震える肩を抱きしめる。

かつて、響がしてくれたように。

 

「ホント、最低だなぁ...僕って...」

 

こんな状況だというのに、僕の欲望は抑えられることはなくて...

 

僕は、何回目かはわからない、欲望を発散する行為をした。

 

 

 

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「あ、瑞希、おはよ。

なんか顔色悪いけど大丈夫か?

保健室までおぶっていくか?」

 

僕の体調を心配してくれたのか、そんな提案をしてくれる。

 

「......」

僕は、ズボンを握りしめて考える。

 

あの子の命令道理にするのであれば、無視をしなければならない。

 

僕は歯を食いしばって、こらえる。

 

こうしないと、響に巻き込まれるかもしれないから...仕方ないんだ...

 

僕が響から目を逸らす。

 

「本当に大丈夫か?」

 

「え?...」

 

響は僕の手を引っ張る。

 

「ほら、行くぞ。万が一があったら大変だろ?」

 

「......うん」

 

僕は、響に手を引っ張られながら、保健室に行った。

 

 

 

 

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「調子は良くなったか?」

 

「大丈夫だと思う...」

 

「いや思うって...まぁいっか、んじゃ帰るか」

 

響は、僕の隣に立ちながら、僕に合わせてゆっくりと歩いていく。

 

夕日の赤い光に照らされた響は、僕にとってとても魅力的に見えて...

 

「えい!」

 

「なんだ!?」

 

気づいたら、響の首に腕を回していた。

 

「ど、どうしたんだ瑞希、こんな急に...」

 

「き、気にしなくていいだろう!お、男同士なんだし!!」

 

僕は、自分自身を否定することを言ってしまった。

 

響がずっと触れないようにしていたことを、僕は言ってしまったんだ。

 

「...そっか、そうだね」

響は、どこか寂し気な表情でそういった。

 

その表情を見て、さっきの発言が、どれほどまでに影響を与えるかを理解した。

 

つまり、僕がトランスジェンダーであることを認めてくれる人は誰もいない、

 

僕は、完全に一人になったんだ。

 

ずっと助けてくれた人に、僕は最低の嘘をついてしまったんだ。

 

自分でも呆れてくる。

 

なんだ、結局は僕だけのせいでこうなってるんじゃないか。

 

自分で自分の傷つけて、悲劇のヒロインを気取ってる時点で、僕は助けられる資格なんてないんだ。

 

はは...ホント、何してんだろ...

 

本当に...僕は...何を...

 

「瑞希」

 

「何かな?響」

 

「どうして、泣いてるんだ?」

 

「え?...」

 

僕は、自分の顔を触る。

 

ホントだ、バカみたいに泣いてる...

 

「ごめん、すぐに終わる...か...ら...」

 

気づいたときには、僕は響に抱きしめられていた。

 

「悲しいときは、泣いて発散するのが一番だよ。

この体勢なら、僕以外には見られないし」

 

響は、僕の頭を撫でながら、優しくそう言った。

 

「うっ...うぅぅ...」

 

僕は、声を押し殺して、響の腕の中で泣いた。

 

一人の時に、枯れるほど泣いていたっていうのに、僕はずっと泣いていた。

 

「悩んでることがあるなら、俺は瑞希の助けになりたいよ。だから、もっと頼ってもいいからね」

 

「で、でも、本当にいいの?僕、本当になんでも頼っちゃうよ...」

 

「大丈夫だ、どんと来い!」

 

響は、自分の胸をたたく。

 

「あ、あともう一回抱き着いてくれ、意外と抱き心地がよかったもんでな」

 

「なんかすごく抱き着きにくくなるようなこと言わないでよ...」

 

 

 

 

「抱き着くけどさ...」

 

 

 

 

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この後、僕は今までのことをすべて話した。

 

未だに続いているいじめのことだったり、髪飾りを壊されたことだって。

 

そして、僕がトランスジェンダーであることも。

 

でも、響の反応は僕が思っていたものとは全然違って、

 

「言ってくれて、ありがとう」

 

拒絶されるどころか、感謝の言葉すら言われた。

 

それを聞いて、僕はまた泣き出してしまった。

 

「響...す...っ!?」

響に抱き着きながら、自分の気持ちを伝えようとしたが、すぐに踏みとどまった。

響は僕がトランスジェンダーであることを受け入れてくれたが、僕のことが好きだと決まったわけじゃない。

 

危うく、告白を断られて気まづい雰囲気を作るところだった。

 

「す?...」

 

「す、好きな食べ物って何かな!?」

 

「唐突だなぁ...う~ん、あえていうなら...かつ丼かな?」

 

「へ、へぇ~」

 

...なんだろう、どちらにせよ気まづい雰囲気になってしまった。

 

「あぁ~、こんな状況で言うのも難だけど...来週に夏祭りがあるから、一緒に行かない?」

 

「う、うん!行こう!!」

 

こうして、僕たちは解散した。

 

 

 

 

 

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「えへへ~、これでいいのかなぁ?」

鏡の前で、自分の姿を見てみる。

白を基調とした、花柄の浴衣。

 

浴衣を選ぶのには苦労したけど、響を振り向かせるためだ。

 

妥協をするところじゃない。

 

僕は、大きな決意を胸に、響との集合場所に向かった。

 

「よっ!瑞希!その浴衣似合ってんじゃん!」

 

集合場所に向かうと、すでに響がいた。

 

響の服装は、全体的に青く、白い模様がある浴衣だった。

 

傍から見れば、普通の浴衣かもしれない。

 

でも、僕にとって響の浴衣姿は、代用のない唯一無二のものだった。

 

「ありがと...響も似合ってるよ!」

 

「ありがと、んじゃ、回ろっか」

 

「うん...」

 

僕は、最初っからアプローチを取ることにした。

 

「人混みすごいから、手繋ごっか!」

 

そう、手を繋ぐことだ。

 

これなら、響との距離感も縮めることができるし、人混みがあるからという下心の見えない理由もある。

 

最初のアプローチとしては、最善の...はず...

 

「りょーかい」

 

響は、動じることのなく、僕の手を取った。

 

「はえ!?」

 

「なんだ!?」

 

 

 

 

「「.........」」

 

 

 

 

 

「ご、ごめん、急に大声出しちゃって...」

 

「俺こそ反応がでかすぎたわ...」

 

「取り合えず、行こっか!」

 

そのあとは、焼きそばを食べたり、射的をしたり、祭りならではのことをした。

 

焼きそばを食べるときは、

 

「あ...あ...」

 

「?、〇ナシの真似か?」

 

「違うよ!!!!」

 

あ~んをしようとして、とある映画のキャラの真似をしていると勘違いをされた。

 

射的の時は、

 

「当たんねぇ...手がブレブレだわ...」

 

「僕はそもそも、このコルクがどこに行くかわからないよ...」

 

何回か挑戦してみたけれど、結果的には十円ガムしかゲットすることができなかった。

 

「確かここらへんだったはず...」

 

ある程度露店を回ったあとに、僕たちは人気のない場所に来ていた。

 

「ど、どこに行ってるの?...」

 

「穴場だよ、穴場」

 

「穴場?...」

 

「そろそろ来るはずだよ」

 

響は、端末で時間を確認する。

 

それと同時に、あたり一面に輝く花が咲いていた。

 

「ここは花火を見るのに一番いいところでさ、瑞希にも見てもらいたかったんだ」

 

「すごい...」

 

僕は魅入っていたんだ、この光景に。

 

今まで家で見ていた光景を、僕は響と見ている。

 

それだけで、僕にとっては何もかもが特別になっていく。

 

「響!!」

 

僕は、隣にいた響の手を取る。

 

「来年もまた来ようね!!」

 

「もちろんだ!」

 

僕は、花火の音に負けない声量で、響にそう伝えた。

 

 

 

 




卒業式乱入って...なかなかないですよね(笑)
自分でも書いてて少し笑ってしまいました...
ちなみに、黒い話の部分は...まぁ説明が大変なので割愛します...

しっかしまぁ...響君...すごい行動力だなぁ...
それが悪い方向に進まなければいいね(o^―^o)ニヤニヤ

幼少期の頃にこのキャラをもう少し深堀してほしいなぁ~という風に思っている人がいると思うので、 アンケートを取りたいと思います!ちなみに、現在公開されている話と書き溜めを合わせると、全キャラが登場済みです。 名前の右は登場回数です、書き溜めも含めています(男性キャラは除外させていただきます。正直男性キャラをメインにすると、私の文章力が一気に低下してしまいますので。すみません)

  • 星乃 一歌(2)
  • 天馬 咲希(1)
  • 望月 穂波(1)
  • 日野森 志歩(1)
  • 花里 みのり(1)
  • 桐谷 遥(1)
  • 桃井 愛莉(1)
  • 日野森 雫(1)
  • 小豆沢 こはね(1)
  • 白石 杏(1)
  • 鳳 えむ(1)
  • 草薙 寧々(1)
  • 宵崎 奏(3)
  • 朝比奈 まふゆ(2)
  • 東雲 絵名(1)
  • 暁山 瑞希(1)
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