プロセカの世界に転生したので皆を救いたいと思います(制限時間付き) 作:蛮族さん
「ほら、出来たよ」
俺は、珍しく食卓テーブルに座っている奏の前に皿を置いていく。
「待ってた」
奏は足をプランプランと揺らしながらそう言った。
俺が今回作ったのは、ツナ入りのサラダに野菜炒め。
そして味噌汁といった、栄養バランスが出来るだけ偏っていないものをチョイスした。
「それじゃあ...」
「「いただきます」」
数十分後
「ごちそうさま、美味しかった」
奏は、少し微笑みながら俺にそういうと、台所へ向かい食器を洗っていった。
「え?...」
普通の人なら当然とも思える光景が俺の前に広がっているのだろうが、俺にとってはこれは異常事態と言っても過言ではなかった。
「...?どうしたの響?そんな変な顔して?」
愕然としている俺に対して、奏はいつもの澄ました表情をしている。
え?これって俺がおかしいのか?
奏の身の回りの雑務をするようになってから、奏が自分からこのような行動をしてくれることなんて一切なかったというのに、突拍子もなく奏はそれをやってのけた。
「ああいや...なんというか、珍しいな~と思ってな、奏から家事をするなんてさ」
俺は、頭を掻きながらそう言った。
俺はこのことを喜ぶべきなのか、それとも、奏がこのような行動をした理由を疑うべきなのかわからなかった。
「私でも...こうゆうこと...するよ...」
奏は俯きながら、その場に立ち止まる。
彼女の瞳が、少しずつ潤んでいくのが俺には見えた。
「ち、違うんだ!決してネガティブな気持ちで言ったわけじゃないんだ!」
俺は慌てて奏の手を取った。
食器を洗ってそんなに経っていないせいか、彼女の手はとても冷たく感じた。
「...私、傷ついた」
奏は、俺の手を握り、自分の胸に持っていき、こう言った。
「響には、償いをしてもらう」
さっきまで潤んでいた瞳が、キリっとしたものに変わる。
「...おい奏、今の嘘泣きか?」
俺は奏の表情を伺うために、姿勢を低くするが、
「償い」
とだけ言って、奏はそっぽ向いた。
「いや、人の話を...」
「おっぱい」
「ん!?!?」
突如として、奏から女性の胸の意味を冠する単語が出てくる。
待てよ、それってもしや...
「変態」
「おいまふゆ!!あいつやりやがったな!!」
おっぱい...いや胸を凝視していたことは本人にもバレているのは知っているが、変態という単語に関しては、まふゆ以外に思いつくものがない。
即ち、まふゆは学校の人間には何も言わないで、俺に何も被害はないと錯覚させ、安心しきっているときに、本人に【変態】という、俺がもっともダメージを受ける単語を教え、俺が傷つくように仕向けたというわけだ。
「まふゆ、怒ってたよ、響に穢されたって」
奏は俺のことをジトーっとした目で見つめてくる。
「いや言い方!?全然そんなことしてないから!」
ここまでまふゆが反撃をしてくるとは...
もしかして、俺が思っている以上に、まふゆは俺にあの状態を見られるのが嫌だったのかな?...今度会ったら謝っておくか...
俺は、少し頭を抱えると、袖の部分をクイっと引っ張られる。
「それじゃあ響、償い、してくれる?...」
俺が見上げた先には、完全に獲物を仕留めたと確信している奏がいた。
「...はい、なんでもします」
俺は、奏相手に完全敗北を喫した。
---
「じゃあ、久しぶりに、アレやろ」
奏は、作曲用のPCを指す。
「あぁ~、アレか」
アレというのは、奏が作った曲の微調整を、一緒にするというものだ。
奏が作る曲は、前世にも存在している。
だからこそ、俺は作曲途中の曲を微調整することができる。
既に完成されている曲をそのままマネすればいいのだから。
---
「ふぅ...こんなもんか?奏」
俺は調整し終えたデータを奏に見せる。
「うん、大丈夫だと思う」
奏は安心しきったような表情で頷く。
「あれ、聞かなくてもいいのか?」
「聞かなくてもどんな音なのかわかるし、響がやってくれたものに文句なんてない」
「お、おう...でも、そこまで信頼されてもなぁ...」
俺は音楽に関しては全くの素人である。
既に完成された曲を聞いているからこそ、奏の役に立てているんだと思う。
「響の調整はいつだって最適だった、だから大丈夫、自信を持ってもいいと思う」
「期待に応えられるよう頑張るわ...」
---
「あ、やっべ、もうこんな時間か」
ふと時計を見てみると、今は夜の8時だった。
俺はこのままでは鬼の形相をした母親に怒られると思い、帰る準備を始めた。
「......」
そんな忙しそうにしている俺を、奏は無言で見つめていた。
「そ、それじゃあ俺は帰るから、夜更かししすぎるなよ!」
俺は、玄関の扉を開けようとした瞬間、
弱い力で後ろに引っ張られているように感じた。
「.....」
振り向いてみると、そこには、俺の袖をまたもや掴んでいる奏がいた。
「どうしたんだ?まだ償いが必要なのか?」
俺は冗談っぽくさっきまでのことを言ってみる。
「...今日は、一緒にいたい」
奏は、顔を真っ赤にしながら、そう言った。
「っ!!!!??」
え、やばい!この世界で生まれてきて初めてグッと来たかもしてない。
そもそも、奏は俺の推しの一人だぞ!?
何故俺は今まで正気でいられたんだ!?
落ち着け...落ち着くんだ俺...
ずっと一緒にいたんだ、ちょっと知らない一面が見られたからって興奮するんじゃあない...ふう...もう大丈夫だ。
「...分かった、今日は泊っていこう」
あんな顔で頼まれてしまっては、断る意思なんてものは破壊しつくされてしまうよ...
俺は親に、
「今日は友達の家に泊まっていく」
とだけメッセージを飛ばして、電源を消した。
「ありがと」
---
「なぁ奏、久しぶりの泊りだからって、これまでする必要あるか?」
俺の声が何度も反響して、この空間に響き渡る。
「昔は毎日やってた、だから問題ない」
奏は、いとも当然かのような反応で答える。
「いや...あれは小さいころだからやってたことで...」
「あの時も今も変わらず小学生、だったら問題ないはず、じゃあシャンプーよろしく」
「そうですね...」
俺は筋の通っていることを言われ、口籠る。
俺が何故ここまで動揺しているかというと、
奏を推し...いや、女性として認識し始めた今日に限って、奏の俺への接触が激しいからだ。
しかも今は風呂場...よって、奏の素肌が丸見えなのだ。
俺はさすがに自重して服を着ているが、奏は遠慮無しに脱ぎやがった。
「というか、なんで響は服着てるの?お風呂入らないの?」
奏は心底不思議そうな声で俺に質問をする。
その時の奏は、俺の顔を直で見るために、目を上に向けていたので、その様子を鏡越しで見ていた俺は、奏が可愛すぎて悶えていた。
「っ、いや~、ここに来る前にもう入ってたからな~、必要ない思ってな~」
俺はめちゃくちゃ薄っぺらい嘘をついた。
そもそも自分の家で風呂は入ってないし、ここに来る途中はずっと走ってたので、服が汗でビチョビチョで気持ち悪い。
正直、今すぐにでも風呂に飛び込みたい。
「ほんと?」
奏はクルっとその場を回転して、俺の体の匂いを嗅いでくる。
「うわっ!?」
俺はあまりにも急な出来事だったため、その場で倒れこんでしまった。
「響?どうしたの?急にそんな大声だして」
奏はいつもの澄んだとは違い、少し色気のある声を出して、俺に覆いかぶさる。
まずいまずいまずい...
奏の色々な部分が鏡越しじゃなくて直で見えちゃってるし、シャンプーの良い匂いする...
奏から落ちてくる水滴が、俺の服をどんどん濡らしていく。
まるで、俺の体に自分の匂いを植え付けるかのように。
俺は何をしようにも、頭がテンパって動かない。
俺と奏は何も言わずに見つめ合い、シャワーの音が、この空間を支配していく。
「あいた」
しかし、この何とも言えない雰囲気は、奏の素っ頓狂な声で破壊された。
「あぁすまん、まだシャンプーつけたままだったな...」
俺はそばに落ちていたヘッドを手に取り、奏の髪についている泡を流していく。
「響、一つ質問があるんだけど、いい?」
奏はさっきまでの雰囲気とは打って変わり、いつもどうりの雰囲気で言った。
「ああ、いいぞ」
「ここに来る前に、誰と会ってたの?」
「あぁ~、それなら...って、え?誰かと会ってたことわかるの?」
俺は奏の意外な発言に手が止まる。
「いいから」
しかし、止まった瞬間に、奏の手が俺の手を掴み、さっきまでと変わらないように動かせ、と誘導する。
「さっきまでは穂波っていう子に会ってたよ、多分奏は知らない子だよ」
「女の子?」
「そうだけど...毎回友達関係で性別を聞いてくるのはなんなんだ?」
奏は、俺が友達と関わった時、必ずその友達の性別を聞いてくる。
「別に、響の交友関係を知りたかっただけ。
それよりも、響の交友関係をまとまてみると、女の子ばっかりで、男の子が少ないのはなんで?」
「それは俺が聞きたいぐらいだ、何故かはわからんが、俺は男に嫌われやすいらしい」
これに関しては完全に謎である。
今のとこ、男友達は四人しかいない。
前世に比べると雲泥の差だ。
「...嫌ってる男子の気持ち、わかる気がする」
「なんでだよぉ...」
---
「それじゃ、一緒に寝よっか」
奏はいつものジャージに着替えてから、意気揚々とそういった。
「わかっ...は!?」
対する俺は、無理やり奏に風呂に入らされ、てんやわんやで疲労困憊状態である。
そのため、奏の突発的な発言にも反応が遅れた。
「ん?どうしたの響、はやく寝よ?」
慌てている俺を気にすることなく、奏はいつも使っているベットを指した。
「いやいや、さすがに一緒に寝るっていうのはな...」
「一緒に風呂入ったから、大して変わらない」
「まぁそうだけどさぁ...」
風呂と同じように、一緒に寝るという行為も、あの時はやっていた。
風呂を一緒に入るのは、奏を無理やりお風呂に入らせるという理由で、一緒に寝るのは、奏が自分を責めてしまった時に、すぐに落ち着かせるためだった。
しかし、それらが改善されてからは、めっきりそういった行為は減っていった。
なぜならば、そもそも俺が奏の家に泊まらないようになったからだ。
「ほら、こっち来て?」
奏はいつの間にか布団の中に入っていた。
そして、布団を片手で持ち上げ、俺のことを誘導する。
「お、おう...」
この時の俺は、判断力が極限まで鈍っていたのかはわからないが、奏の誘導に乗ってしまった。
「ふふ...つかまえた」
俺が入ると、奏は俺のことを抱き寄せ、体を密着させる。
「か、奏...こちょばしいって...」
奏は俺のことを抱き寄せると、全身をまさぐるように触りだしてきた。
「あれ、スマホ持ってないんだ」
奏はそういうと、全身をまさぐる手を止める。
「あぁなんだ、スマホ探してたのか...」
急に触ってくるからびっくりしたぞ...
「スマホならあそこに置いてあるよ」
そうして、俺は食卓テーブルを指した。
「それで、俺のスマホで何をしようとしたんだ?」
「そんな大したことじゃない、ただ響の両親の連絡先を入手したかっただけ」
「一体何をする気なのかな!?」
何を言い出すのかと思ったら、俺の両親の連絡先って...
「まぁ...一応俺から聞いておくから、それまで待っててくれ...」
「そう、わかった...」
奏は呟くようにそう言ってから、俺の胸に顔をうずめてくる。
「...ねぇ響」
「どうした?」
「定期的に...私の家に泊まってくれない?...」
「...まぁ、そうだな、月一ぐらいなら」
「...週一じゃ駄目?」
奏は、俺のことを強く抱きしめる。
添い寝という状況ですら気が気でないというのに、抱きしめられながら上目遣いなどされてしまえば、誘惑に耐えられるわけなどなかった。
「...二週間に一回ならできると思う、さすがに週一だと親が許すかわからないからね」
比較的自由が多い俺であっても、さすがに週一で女の子の家に泊まるということになってしまば、俺の両親は怪しむだろう。
「わかった」
奏は、俺のことを抱きしめている腕から、力を抜いていく。
「響...私は響にとってのどういう存在なの?」
奏の体が、少し震えているような気がした。
どこか、怯えているようにも。
「そりゃまた急だな...」
俺にとって奏とは、一体何なんだろう?
前世だけだったら、推しです!としか言いようがないが、今では小さい頃からずっと一緒にいる幼馴染のようなもの...
「......」
奏は、俺がどのようなことを言えばいいのか悩んでいるところを見ると、泣きそうな表情になった。
「っ...奏は...俺にとって命と同じぐらい大切だよ...」
俺のこの言葉は嘘ではない。
俺の命は、他の人間よりも半分以下ぐらいしか生きられない。
だったら、俺の命の価値は、客観的に見れば、小さなものだろう。
しかし、短いと言えど、命は命。
代用の効かない唯一無二のもの。
だからこそ、俺のこの言葉は事実なのだ。
「少し曖昧...じゃあ私は、響にとって恋人以上の存在なの?」
不満げな顔をしながら、俺が答えにくいような質問をしてくる奏。
「恋人以上か...まぁそれはそうだな」
俺にとって、奏は...家族のような存在なのか?...
正直、それがそうなのかは疑問だが、それに近いようなものだということはわかる。
「ホント!?」
さっきまでの、不満げな表情から、一気に期待に満ち溢れたものに変わる。
「あぁ...もちろん...」
何故ここまで大きな反応をするのかはわからないが、喜んでいるのならばいいか...
「よかった...本当に...」
奏は、さっきまでの興奮具合が嘘だったかのように静かになった。
「響はさ...私がお父さんのことを悩んでいる時、ずっと私のことを抱きしめてくれてたこと、覚えてる?」
「覚えてるよ、あの時の奏は俺がいなくなる度に絶望していたからね...正直、今みたいに普通にいるだけでも、俺にとってはどんなことよりもうれしいんだ」
あの時の奏の様子を思い出すたびに、立ち直るとはいかずとも、今のように普通に話ができるだけでも、俺にとってはうれしい。
「...響...お願いだから、そういうことは私以外には言わないで...」
「えぇ...俺は思ってることを言っただけで...」
「お願い...」
「お、おう...」
奏は、俺の体を自分の体に押し付けるように抱き寄せる。
「ふわぁ...おやすみ...響...」
「え?ちょっと待ってくれよ奏!?」
奏は一瞬にして眠りについた。
俺の胸に顔をうずめながら。
「こんなもん寝れないって...」
俺は朝までの数時間を、悶々としながら過ごした。
皆さん...お気づきかもしれませんが...瑞希を女性として扱うということにしました...僕の勝手な解釈なのですが、瑞希は身体は男、精神は女性のトランスジェンダーということで、今後のこの作品で登場させていきたいと思います。
ということは?...響君の発言からするに、響は瑞希のことを女性として見ているということになります(今回の話で使ったこととは違う意味の、友達感覚の女性ということです)。
しかし、それはあくまでも、前世の記憶があるからこそそう思っているのであって、この世界の瑞希は、まだ響にカミングアウトしていません。
幼少期の頃からカミングアウトされるということも考えたのですが、それではあの屋上が存在しなくなってしまう...
ということなので、瑞希関連の本格的な進行は中学校からということにしたいと思います。
まぁ、つまり僕が読者の皆様に認知してほしいことは、
この世界での瑞希は、響との交流があるものの、カミングアウトはしていない。
さらに、瑞希は響に、自分の性別をわからないように仕向けているし、響は自分の性別がわからないというふうに認識している、
ということだけです。
あ、ちなみに今回の話は奏ご褒美回です。
前回の最後では、かな~り濃い感じのヤンデレ風でしたけど、響と一緒にいるうちに和らいでいって、最終的に自分の体を流れていく水滴を彼にかけて、満足するということで収まりました。
余談ですが、あのシャワーの緊急事態の時に、もしシャンプーをつけていなかった場合は...まぁそのままGOして付き合って...最後は...って感じですねハイ。
幼少期の頃にこのキャラをもう少し深堀してほしいなぁ~という風に思っている人がいると思うので、 アンケートを取りたいと思います!ちなみに、現在公開されている話と書き溜めを合わせると、全キャラが登場済みです。 名前の右は登場回数です、書き溜めも含めています(男性キャラは除外させていただきます。正直男性キャラをメインにすると、私の文章力が一気に低下してしまいますので。すみません)
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