重力少女のヒーローアカデミア   作:縞猫

49 / 49
シューティングスターvsオールフォーワン

 現在の雄英高校の立場から、増援要請は難しい。

 なので、かつてのOBや伝手を辿っての人員を集めた。

 

 それでも何人ものトップヒーローが参戦している。

 流石はヒーローの名門校だけはあった。

 

 

 

 そして全国から密かに集められた多くの超人は、二手に分かれて行動を開始する。

 

 一つ目は調査で明らかになった、ヴィラン連合が利用していると思われる酒場。

 二つ目はワープゲートに撃ち込んだ発信機によって判明した、重要拠点だと予想される工場である。

 

 ちなみに雄英高校の記者会見は敵の油断を誘う作戦だ。

 その隙に、スピード勝負で一斉に突入する。

 ヴィランには何もさせずに、夜が明ける前に速やかに全員を捕らえるのであった。

 

 

 

 私はトップヒーローのベストジーニストたちと共に、謎の施設の方へと向かう。

 外から見る限りは何かの工場だが、総員が配置について開始時刻になると、マウントレディが個性を使って約二十メートルの巨体になる。

 

 そして軽トラックを靴の代わりにして、明かりの一つもついていない静まり返った施設に踵(かかと)落としを叩き込む。

 

「ふんっ!」

 

 厳重にシャッターが閉められていても、壁に大穴が開いてしまえば問題はない。

 私は上空で待機なので、自分以外のメンバーが内部に突入する様子を見守る。

 

 天井に開いた穴から覗き見た限り、多くの脳無に水槽のようなモノに入れられて待機していた。

 

 だが今なら動いてないため、敵に利用される前に無力化できる。

 ベストジーニストが無数の糸を操り出し、迅速に捕縛していく。

 

「脳無格納庫! 制圧完了!」

 

 手の空いている警察隊は、酒場に突入したヒーローと連絡を取る。

 するとヴィラン連合の捕縛が完了したと報告が入った。

 

 自分は何もせずに解決したが、これでいい。

 被害を出さずにヴィランを捕らえられるのが、もっとも良い結果だ。

 

 けれどまだ油断はできないため、私はヒーローコスチュームを着用して、一段階の抑制解除状態で空から見張っていた。

 何かあったときに即対処が可能な自分が、全体の様子を観察する。

 後方支援を行うのは、理に適っていた。

 

 破壊した施設はしばらく経っても、何の動きがない。

 どうやら本当に終わったようだと、空を飛びながら安堵の息を吐いた。

 

「止まれ! 動くな!」

 

 彼らは奥に進んでいるため、空からでは施設内の様子はわからなくなった。

 しかし超感覚で聞き取った限りでは、ギャングオルカが何者かの接近に気づいて警告を発したようだ。

 

 続いてベストジーニストが糸による捕縛を試みて、音の具合から成功したのがわかる。

 

「ベストジーニストさん! もし民間人だったら!」

「状況を考えろ! その一瞬の迷いが現場を左右する!

 ヴィランには! 何もさせるな!」

 

 マウントレディが戸惑いながらもトップヒーローに尋ねるが、彼の意思は揺るぎない。

 だが捕縛の締めつけをさらに強めた瞬間、正体不明の人物を中心にして大爆発が起きた。

 

 

 敵の拠点と思われる施設が突然大爆発を起こし、瓦礫の山へと変わった。

 ある程度の状況は掴めたが、それでも何が起きたのかは全てを把握するのは困難だ。

 

「せっかく弔(とむら)が自身で考え、自身で導き始めたんだ。

 できれば邪魔はよして欲しかったが」

 

 気づけば倒壊して瓦礫となった施設に、のっぺらぼうの男が一人で佇んでいた。

 奴の正体は不明だが、ヒーローたちを爆発で吹き飛ばしたのは間違いなさそうだ。

 

「さて、……やるか」

 

 そして彼は、何処からともなく黒い水を呼び出した。

 それは拘束が解かれて自由になった脳無を、次々に飲み込みだした。

 

「あれはっ!?」

 

 死柄木弔(しがらきとむら)や黒霧(くろぎり)が護送車から脱走したときにも、アレと似たような現象が起きた。

 ならば黒い水は転移系の個性だ。

 きっと脳無を何処かに送るつもりなのだと察した私は、速やかに行動を起こす。

 

「変! 身!」

 

 抑制解除をもう一段階進める。

 さらに重力加速の二倍で降下し、光の粒子を放出しながら謎のヴィランに高速の蹴りを放った。

 

「ふむ、良い個性だ」

「片手で防がれた!?」

 

 しかし奴はのっぺら坊のような顔をしているのに、上空からの攻撃に正確に対応した。

 一瞬のうちに片手を肥大化させて、赤熱した飛び蹴りを軽々と受け止めたのだ。

 

 どうやら目の前のヴィランが使えるのは、転移の個性だけではないらしい。

 

 何とも厄介な相手の出現に思わず舌打ちし、まだ他にも隠しているかも知れないと思った私は、奴が何か仕掛ける前に一旦飛び退いて距離を取った。

 

(突入したヒーローや警察隊が無事なのは、不幸中の幸い)

 

 私の周囲には怪我をして動けない彼らが横たわっているが、命に別条はないようだ。

 少しだけ安心し、彼らを庇うように一歩足を踏み出す。

 

 あとは脳無の転送を中断させられたのも大きく、取りあえずは良しとしておく。

 

「流石ナンバーフォー、ベストジーニスト。

 僕は全員消し飛ばしたつもりだったんだ」

 

 謎のヴィランは手を叩いて、自分の背後で倒れているベストジーニストを褒め称えている。

 その何処となく余裕のある態度を見た私は、あることを思い出して冷や汗をかく。

 

「皆の衣服を操り、瞬時に端に寄せた判断力。技術、並の神経じゃない」

 

 今回の作戦を実行する前にヴィラン連合の説明を聞いたとき、悪の象徴であるオールフォーワンが、影から操っている可能性があると言っていた。

 己の安全が確保されない限りは姿を現さないらしいが、私は何故か目の前のヴィランがそれなのだと本能的に理解する。

 

「話が違う。……だから何だ! 一流は! そんなものを失敗の理由に!」

 

 ベストジーニストが自らの衣服を操り、AFOに向けて放つ。

 だがそれよりも先に、ヴィランは指先から空気の塊を射出した。

 

「危ない!」

 

 ベストジーニストを狙った空気の弾を超感覚で察知した私は、その場から動くことなく素早く片手で弾き飛ばした。

 

「なるほど、相当の練習量と実務経験ゆえの強さだ。

 ベストジーニスト、キミのはいらないな。弔(とむら)とは、性の合わない個性だ」

 

 AFOの表情はわからない。

 だが彼は地面に降り立って、今度はのっぺら坊の顔を私に向ける。

 

「斥流陰子(せきりゅういんこ)。キミの個性は有用だ。

 弔(とむら)の役に立──」

「誰がやるか!」

 

 グダグダと長話をしている隙を突き、AFOに重力加速の三倍で蹴りを繰り出した。

 

 しかし、距離が近く加速が足りなかったようだ。

 またもや片手を肥大化させて防がれてしまう。

 

「これも駄目かっ!」

 

 今まで二段階の抑制解除に対処できるのは、本気のオールマイトぐらいだった。

 ならば、やはり目の前の相手はAFOだ。

 それほとの強さを持っているのは、悪の象徴ぐらいだろう。

 

 複数の個性を持っているようなので、近くに留まっていると何をされるかわからない。

 私は飛び退いたあとに、ベストジーニストや周りの人を抱えて急いで離れる。

 

「状況判断能力も素晴らしいね。今からでも僕の──」

 

 だがその時、私とAFOはこの場所に急速接近する何者かを感知した。

 

「やはり、来ているな」

 

 そして突然空から降ってきたオールマイトが、オールフォーワンにタックルを叩き込んだ。

 あまりの衝撃に周りの地面がヒビ割れて、盛大に吹き飛んでいく。

 

「全てを返してもらうぞ! オールフォーワン!」

「また僕を殺すか! オールマイト!」

 

 私は近くに倒れているヒーローたちが巻き込まれないように、まだ退避させていないヒーローや警官を急いで回収する。

 危ないのでさらに距離を取り、避難が完了した私は暴風や土煙やらで視界が悪かったので、その場でじっと待つ。

 

「随分遅かったじゃないか」

 

 土煙の向こうから、AFOの声が聞こえてくる。

 

「バーからここまで五キロあまり。

 僕が脳無を送り、ゆうに三十秒が経過しての到着。

 衰えたね。オールマイト」

 

 確かに私から見ても、彼は全盛期よりも衰えている。

 それでもAFOを倒すために、急いでここに来てくれたのだ。素晴らしいヒーローである。

 

「貴様こそなんだ。その工業地帯のようなマスクは。随分無理してるんじゃぁないか!」

 

 オールマイトは軽く体をほぐしながら、AFOを挑発する。

 

「六年前と同じ過ちは犯さん! オールフォーワン!

 貴様を今度こそ、刑務所にぶち込む!」

 

 オールマイトの肉体が、さらにもう一段階肥大する。

 きっとこれが、彼の全力全開なのだろう。

 

「貴様の操る! ヴィラン連合もろともぉ!」

 

 オールマイトが跳躍してAFOに飛びかかった。

 だが奴は冷静に左手を構え、嬉しそうな声を出す。

 

「それはやることが多くて大変だな! お互いに!」

 

 そしてAFOは、ナンバーワンヒーローさえも軽々と吹き飛ばす突風を発生させる。

 まともに受けたオールマイトは呆気なく吹き飛ばされ、崩れたビルに激突しそうになった。

 

 それを見た私は、彼に向けて慌てて個性を発動する。

 

「オールマイト!」

 

 オールマイトの重力を操作することで、ビルへの衝突の勢いを急激に弱める。

 おかげで彼は地面に着地し、こちらを見つめて礼を言う。

 

「助かった! 斥流少女!」

「どう致しまして」

 

 AFOは自らの個性に関して、何やらブツブツ呟いている。

 しかし、今の私に気にする余裕はなかった。

 

「キミは少し厄介だね」

 

 オールフォーワンがそう言うと、転移を中断してこの場に残っていた脳無が一斉に行動を開始する。

 厄介なことに、狙いは私ではなく無差別のようだ。

 怪物たちは周囲に散らばり、人々を襲いだす。

 

「オールマイトはAFOを! 脳無は私が!」

「悪いな! 任せた!」

 

 オールマイトは態勢を立て直し、AFOに向かっていく。

 そして私は辺りか回す大暴れする脳無の群れを見据えて、孤独な戦いを挑むのだった。

 

 

 

 自分が対処した脳無だが、質はともかく数だけは多かった。

 それが広範囲に拡散されたので、全てを倒しきるまで無駄に時間がかかってしまう。

 倒れたヒーローや一般市民が巻き込まれるの防ぎながらなので、とにかく面倒で手間がかかる。

 

 AFOの言う通りで、守るべきものが多いと大変であった。

 けれどようやくそれも片付いて一息つき、空を飛んで元の場所に戻ってきた私は、上空からオールマイトとAFOの戦いの様子を伺う。

 

(あれ? このままだと、負ける?)

 

 脳無を処理しながらも状況を観察していたが、現状はどんどんオールマイトに不利になっていく。

 

(AFOは、まだ余力が残ってる)

 

 けれどオールマイトには活動限界があって、長期戦は不利だ。

 時間をかければ他のヒーローが駆けつけるが、きっとその前にマッスルフォームが解除されるだろう。

 

 それにたとえ維持できたとしても、地力で負けているのでAFOは倒せそうにない。

 だが悪の象徴はナンバーワンヒーローが打ち砕いてこそ、誰にとっても納得できる平和な未来を勝ち取れるのだ。

 

 けれど現実はオールマイトだけでなく、駆けつけたプロヒーローたちまで一網打尽にされかねない程、AFOが強すぎた。

 

(まあ、私より弱いけど)

 

 AFOというヴィランは、未だかつてないほどの強敵ではある。

 しかし私は別に、怖くも何ともない。

 なので自分が戦えば勝てるだろうが、オールマイトを差し置いて戦いを挑んで良いものかと悩む。

 

(もう、あまり時間はない。……どうしよう)

 

 今の様子はヘリコプターから撮影されている。

 時間切れでオールマイトの本当の姿を多くの国民に知ってしまったら、今まで彼が必死に築いてきた平和の象徴が崩れてしまう。

 

 私はかなり迷ったが、やがてやむを得ないと判断して地面にゆっくりと降下する。

 

「オールマイト! 選手交代!」

「せっ、斥流少女!?」

 

 個性を発動して、息も絶え絶えのオールマイトを安全圏まで退避させる。

 逆に私はAFOをめがけて、勢い良く飛び出してた。

 

「オールマイトが出るまでもない!

 流星ヒーロー! シューティングスターが! AFOを倒す!」

 

 オールマイトもAFOも、私の突然の行動も発言も意味不明だろう。

 ちなみに自分も考えながら動いているわけではないので、勢い任せである。

 

「AFO! 光栄に思うといい! 私がこの姿で戦うのは、お前が初めてだ!」

 

 何にせよ、ナンバーワンヒーローの限界が近い。

 個性が解除されて正体がバレるのだけは、何としても避けたかった。

 

「変! 身!」

 

 三段階上げた私は中学生ほどの体格に急成長すると、光の粒子を放出しながら高速で駆けて、真正面からAFOに殴りかかる。

 

「むうっ!? 転送! 衝撃反転!」

 

 またもや腕を増強して攻撃を防ごうとする。

 だが私の身体能力は、二段階よりも大幅に強化されていた。

 

 なので援護に駆けつけてくれたヒーローの一人、グラントリノが目の前に転送されても問題はない。

 難なく避けて目で追えない速度で、悪の象徴の背後に回り込む。

 

 駆けつけたヒーローや周りで見ていた人だけでなく、ヴィランの大ボスさえも驚きの表情に変わった。

 私は躊躇うことなく、そのままの勢いで拳を叩き込む。

 

「がはっ!?」

 

 しかも一発だけでなく二発、三発と豪雨のような連打を浴びせていく。

 

「AFO! お前は! 今! ここで! シューティングスターが! 倒す!」

 

 AFOは死角からの猛烈なラッシュを受けて、踏ん張りが効かずに宙に浮き上がる。

 だが私は重力操作で無理やり地面に縫い付け、何処へも逃げることができずに一方的に殴られ続けていた。

 

 もはや悪の象徴は、こっちを振り向ことさえできない。

 あっという間に全身が傷だらけになり、その姿はまるでボロ雑巾であった。

 

 けれど私は、そこで止めるほど優しくない。

 AFOが大ダメージを受けて一時的に行動不能になったのを見計らい、私は大空に跳躍した。

 

 するといつの間に夜が明けていたようで、朝日をバックに蹴りの姿勢を取る。

 

「重力加速! 四倍だあああっ!!!」

 

 それは太陽のように眩しく輝き、暗い闇を照らす流星であった。

 

 重力加速四倍の蹴りは、寸分違わずにAFOの腹部に叩き込まれる。

 周囲一帯は地震が起きたかのように激しく揺れ動き、凄まじい衝撃が発生して砂嵐が舞いあがり、巨大なクレーターができあがった。

 

 AFOは陥没した地面に上半身がすっぽりと埋まり、犬神家のような情けない姿を晒し、ビクンビクンと痙攣(けいれん)を繰り返している。

 

 

 

 砂嵐が収まってしばらくは、離れた場所に着地して注意深く様子を伺っていた。

 だが敵に動きがなく、戦闘継続不可能なのは明らかだ。

 

 このままだと最悪窒息死しそうなので、呑気に近づいて片手で足を掴む。

 よいしょっと引っこ抜いて、一応の安否確認を行う。

 

「ギリギリ生きてるから、ヨシ!」

 

 超再生の個性があっても、瀕死に留めるのが精一杯のようだ。

 外傷もかなり酷いが、内部はそれ以上のダメージを受けている。

 とてもではないが治癒が追いつかない。

 

 私が片手で掴んでぶら下げてるボロ雑巾が、悪の象徴らしい。

 

「……意外と弱かった」

 

 全力で戦うまでもなかったので、ラスボスを倒したらそういう評価になる。

 けれど表に出ていないだけで彼以上に強いヴィランは星の数ほど居るだろうし、今まで通りに自主トレーニングを続けようと心に決めるのだった。

 

 

 

 神野区で大暴れしていたヴィラン連合とその黒幕であるAFOは、全員捕縛されてタルタロス刑務所に送られることになった。

 

 一方で私は個性を使って邪魔な瓦礫やビルを撤去し、怪我をした人々の救助活動を行っていた。

 ヒーローでもない一般人の私が慈善活動をしても、貰えるのは金一封や表彰状がせいぜいだが、別にそれを目当に頑張っているわけではない。

 

 目の前で見て見ぬ振りをして犠牲者が出たら寝覚めが悪くなるし、自分が動けば多くの人を確実に助けられるのだ。

 なので取りあえず各地から大勢のヒーローを救助隊が到着するまでは、頼りにないが私が代わりになるつもりである。

 

 

 

 やがて私は巨大な瓦礫を持ち上げて邪魔にならない場所に運んでいると、全身傷だらけのオールマイトが取材を終えて、こちらにゆっくり歩いて来た。

 

「オールマイト。貴方の秘密、守りきれなかった。ごめんなさい」

「キミのせいじゃないさ。気にする必要はないよ」

 

 今のオールマイトは、筋骨隆々のマッスルフォームではない。

 本来の姿であるガリガリの状態で、おまけに怪我人なので全身が包帯だらけだ。

 

 彼を慕う多くのヒーローや医者や看護師、さらには取材陣や大勢のファンを引き連れていることから、やはりナンバーワンは凄いと思った。

 

「実は病院に行く前に、キミにどうしても頼みたいことがあるんだ」

 

 私は巨大な瓦礫を土埃が起きないように、足元にゆっくりと置く。

 そしていつもより真面目な表情のオールマイトを、じっと見つめる。

 

「斥流少女も気づいているだろうが。私はもう、これ以上ヒーロー活動はできない。

 事実上の引退さ」

 

 AFOと戦う前から無理を続けてきたし、私もそろそろ限界が近いと思っていた。

 しかし平和の象徴が存在するから、日本の犯罪率は他国を大きく下回っているのだ。

 

 オールマイトが引退したら、ヒーロー社会は不安定になる。

 抑圧されていたヴィランは息を吹き返して治安の悪化を招き、最悪力こそ全ての世界になりかねない。

 

 私がそんなことを考えていると、彼はこちらを真っ直ぐに見つめる。

 

「そこで私の後任。つまり新世代の平和の象徴を、斥流少女に託したい」

「……はっ? はぁっ? はあああぁっ!!?」

 

 彼が何を言っているのか信じられずに、思わず大声を出してしまう。

 そして焦った表情を浮かべた私は、痩せ気味のオールマイトにズンズン近づいていく。

 

「ななななっ! 何でそんなことを!?」

「いっ、いや、だから! 私の後を継ぐのは、斥流少女しかいないと!」

「エンデヴァーに任せるべき!」

 

 エンデヴァーはオールマイトとはタイプは違うが、立派なナンバーツーヒーローだ。

 それが何故、一般生徒に平和の象徴を継がせるのか全く意味がわからない。

 

 そもそも受け継げるものなのかさえ不明なのに、本当に何が何だかだ。

 

「何より私は、ヒーローにならない!」

「わかっている! わかっているとも! だが、それでも私は! キミに託したい!」

 

 オールマイトは、とても真剣な表情を浮かべている。

 断って諦めさせるのは骨が折れそうだ。

 

 私は大きな溜息を吐き、どうしたものかと悩みながら晴れ渡る空を眺める。

 

 しばらくして結論が出たので、再び彼に顔を向けた。

 

「私はヒーロー活動はしないけど、名前を貸すぐらいなら構わない」

 

 オールマイトの後継者が居ないのなら、本物の平和の象徴が見つかるまで預かるのはいい。

 ただしヒーロー活動は一切する気はないので、本当に名前だけだ。

 

 これ以上を望むなら諦めてもらうが、彼は本当に嬉しそうに私の手を取って、笑顔で言葉をかける。

 

「ありがとう! 斥流少女! よろしく頼む!」

「ええと、……どう致しまして」

 

 名前だけ貸す約束はしたが、本当に新世代の平和の象徴をやるつもりはないのだ。

 オールマイトも引退したら手が空くし、今後はきっと後任の育成に専念するのだろう。

 そして彼が見定めた立派なヒーローに、後を継いでもらえば万事解決である。

 

「じゃあ、私は救助活動に戻る。

 オールマイトも早く病院に行って、怪我を治療して」

「ああ、わかった! 邪魔をして悪かった!」

 

 オールマイトは全身包帯だらけなのに、良い笑顔を浮かべていた。

 だが無理はできないので、医療チームや他の大勢の人たちと一緒に病院に向かう。

 

 ちなみに彼が連れてきたヒーローやファンは、私と一緒に救助活動を行うようだ。

 自然とチームを組んで崩れたビルや瓦礫を撤去し、被害を受けた人たちを助けていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 その後について少し語ると、後期のビルボードチャートJPはオールマイトの引退やヴィラン連合やAFOの襲撃で、かなり混沌としていた。

 いざ開催されたビルボードチャートJPは、やはり大きな順位変動があった。

 

 何より凄いのは、初登場で過去最低年齢の流星ヒーロー、シューティングスターが堂々の一位だったことだ。

 事件解決数、社会貢献度、国民の支持率の三つをヒーロー公安委員会が独自に数値化して集計しているらしいが、自分はこれといった活動をしていない。

 何がそこまで評価された一位なのが、全くわからなかった。

 

 目の前で人が困っていたら助けるし、凶悪なヴィランが手の届く範囲に現れたら捕まえるが、それでもヒーローをやるつもりはない。

 名義上は日本一位のヒーローの後継者だとしても、私はオールマイトのような平和の象徴には絶対なったりしない。

 

 相変わらずマイペースでのんびりしているが、ヒーローを目指さないことだけは確固たる信念を持っているのだった。




原作はまだ続きますし、各キャラ視点でも色々書きたかったです。
見直して加筆や補足も入れたかったし、やりたいことや書きたいことはいっぱいありました。

ですがモチベが尽きて、筆が折れてしまったのでどうしようもありません。

他のヒロアカ二次創作に比べればちっぽけな駄作ですが、最後の瞬間ぐらいは夏の線香花火程度には輝けたら良いですね。



最初から最後まで未熟で拙いヒロアカ二次創作ではありましたが、ほんの少しでも楽しめたり面白かったと思っていただけたなら、作者としてこれほど嬉しいことはありません。



それでは短い間でしたがこれまでお読みくださり、支えてくださった方々、本当にありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。