入学後2ヶ月でAクラスに来ましたけど何か?【1年生編1学期終了】 作:かりん糖さん
ようやく体育祭練習期間が始まります。
ここまでお付き合いくださった読者の皆様、誠にありがとうございます。
1年の終わりに、二学期に入る事が出来て良かったです。
今後とも、是非この作品を応援していただければ幸いです。
28話 未来に投資
未来にはいくつかの名前がある。意志薄弱な者はそれを不可能と呼び、臆病者は未知と呼ぶ。しかし勇敢な者はそれを理想と呼ぶ。
by ヴィクトル・ユーゴー
長いようで短い夏休みが終わり、新たなスタートが切られた。
9月1日、私達のクラス争いには大きな変化は無く、Aクラスが転落したり、Dクラスが這い上がって来たり、CクラスがBクラスを打ち負かしたりなんて事が起きる事は無かった。
「おはよう、百恵!小春。」
「おはよう!」
「おはよう!瑠奈。前髪に寝癖ついてるよ?」
小春が私の前髪を見ながらクスリと笑った。
「え、本当?直さないと。」
小春の言葉に私は慌てて携帯を取りだし、カメラアプリのミラーモードを使って前髪を整える事にした。
私は一学期同様に、百恵や小春共に学校へ登校した。
教室に着くと、多くの生徒が既に登校しており、夏休みの思い出を語り合って楽しそうに笑っていた。
「おい、課題やったか?お前夏休みの後半はずっと遊び呆けていただろう?」
「当たり前だろ。クルーズ前に終わらせてるぜ。」
司城が町田にからかわれつつも、模範解答をしている点からも分かる通り、Aクラスの生徒は皆真面目だ。
これがDクラスやCクラスであれば、今も教室で課題をしている生徒がいるかもしれないが、生憎Aクラスは元々学力が高い生徒が多いのでクラスも勉強をする雰囲気が作られている。
なので、新学期1日目の朝に夏休みの課題を必死にやるような生徒は0人だ。
当たり前だが、非常に素晴らしい雰囲気だ。
この調子で二学期も良いクラス作りをしていきたいものである。
「おはよう、小代。」
突然後ろから声を掛けられ振り返ると、以前会った時より肌が少し黒くなった橋本正義がそこに立っていた。
「おはよう、橋本君。あれ、プールで会った時より日焼けした?」
「まあな。あの後、何回かプールにも行ったし、部活も外だからな。」
健康的に日焼けした姿は彼のチャラさをより高めている。
「あはは、橋本君は元気だね。私はプールはあの1回しか行ってないや。」
インドア派の私は外に出る事があまり好きではない。
買い物に出掛けたり、涼しい店内で食事をするのは好きだが、汗をかく為に進んで外に出る事は一切ない。
どうしても運動が必要なら、スポーツジムに行く。
そのくらい外に出る事が嫌いだった。
だから彼のように外に出たり、太陽の光を浴びながら部活動をする生徒は正直尊敬している。
勿論、私には共感出来ないが。
「全員揃っているな。」
予鈴が鳴る1分前に真嶋が教室にやって来た。
全員が席に着き、ホームルームが始まる。
「まず、夏休み前の模擬試験の成績表を配る。Aクラスの生徒は高成績を残している者が多い。この調子で少しでも良い結果が得られるように努力を続けて欲しい。」
真嶋が出席番号順に生徒の名前を呼び、呼ばれた生徒は真嶋の元へ向かって成績表を受け取っていく。
私の番がやってきたので、真嶋の元へ向かい成績表を受け取った。
結果は全国順位が7位、全国科目の平均偏差値は82.7とかなり良い結果を残す事が出来た。
この調子なら、難関大合格も余裕で出来るかもしれない。
「おっしゃあ!偏差値少し上がってるぜ!」
弥彦が声をあげて喜んでおり、少なからず成績が上がっているようだ。
この調子で努力していけば、退学を退けるのも夢じゃないかもしれないな。
『頑張れ弥彦』と心の中で声援を送った。
他の生徒達も不安そうな顔をしている者は少なく、皆悪くない成績が返ってきているようで一安心だ。
この模試はグノシーコーポレーションのライバル企業が主催しているもので、私としてはレベルが低い模試を受けさせられて良い気はしていない。
しかし、受験者数が多い模試であり、大学進学を目指していない高校生も殆どの者が受けるため、全国での自分の立ち位置がよりはっきりしやすくなるというメリットがある。
しかし、受験者の質を考えた場合、特に難関大学を目指す生徒にとってはグノシーコーポレーションや佐々木模試等のより難易度の高い模擬試験を受けた方が大学入試に近い問題が多い為、レベルの高い生徒の中での自分の立ち位置が分かる。
大学入試を目指すのであれば、グノシー模試か佐々木模試のどちらかを受けるのが一般的だ。
ちなみに佐々木模試は佐々木ゼミナールという大手の予備校の模試であり、母体の佐々木グループの本社は関西にある為、西日本側の受験者数が多い。
対して、グノシーコーポレーションは本社が東京にある為、東日本側の受験者数の方が多い傾向にある。
どちらも全国展開している大手予備校を経営している企業だ。
「模試の解答用紙についてはPDFにして受験者全員の携帯にメールで送信するので、各自しっかり復習するように。」
真嶋はそう言い、別の紙束を教卓の上に置いた。
「では次に、二学期に入って早々で悪いが、特別試験の説明をする。今月行われる体育祭、それが今回君達が参加する特別試験だ。」
「た、体育祭が?!」
弥彦の驚いたような声がクラス内に響く。
他のクラスメイトも声を出してはいないが、表情を見るに驚きを隠せてはいない。
流石のAクラスの生徒も、まさか学校行事が特別試験になるとは思ってもいなかったらしい。
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【体育祭におけるルール及び組み分け】
◆全学年を赤組と白組に分け行われる対戦方式
◎赤組→AクラスとDクラス
◎白組→BクラスとCクラス
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〖点数配分について〗
◆全員参加競技の点数配分(個人競技)
→結果に応じて1位15点、2位12点、3位10点、4位8点が組に与えられる。
→5位以下は1点ずつ下がっていく。
※団体戦の場合は勝利した組に500点が与えられる。
◆推薦参加競技の点数配分
→結果に応じて1位50点、2位30点、3位15点、4位10点が組に与えられる。
→5位以下は2点ずつ下がっていく。
※最終競技のリレーは3倍の点数が与えられる。
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〖結果が与える影響について〗
◆赤組対白組の結果が与える影響
→全学年の総合点出負けた組は全学年等しくクラスポイントが100引かれる。
◆学年順位が与える影響
→各学年、総合点で1位を取ったクラスにはクラスポイントが50与えられる。
→総合点で2位を取ったクラスは、クラスポイントが変動しない。
→総合点で3位を取ったクラスは、クラスポイントが50引かれる。
→総合点で4位を取ったクラスは、クラスポイントガード100引かれる。
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〖報酬について〗
◆個人競技報酬(次回中間試験にて使用可能)
→各個人競技で1位を取った生徒には5000プライベートポイントの贈与、もしくは筆記試験で3点に相当する点数を与える。(点数を選んだ場合他人への付与は出来ない)
→ 各個人競技で2位を取った生徒には3000プライベートポイントの贈与、もしくは筆記試験で2
点に相当する点数を与える。(点数を選んだ場合他人への付与は出来ない)
→ 各個人競技で3位を取った生徒には1000プライベートポイントの贈与、もしくは筆記試験で1
点に相当する点数を与える。(点数を選んだ場合他人への付与は出来ない)
→ 各個人競技で最下位を取った生徒にはマイナス1000プライベートポイント。(所持するポイントが1000未満になった場合には筆記試験でマイナス1点を受ける)
◆最優秀生徒報酬
→全競技で最も高得点を得た生徒には10万プライベートポイントを贈与。
◆学年別最優秀生徒報酬
→全競技で最も高得点を得た学年別生徒3名には各1万プライベートポイントを贈与。
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〖反則事項とペナルティについて〗
◆反則事項について
→各競技のルールを熟読の上遵守すること。
→違反した者は失格同様の扱いを受ける。
→悪質な者については退場処分にする場合有り。
※それまでの獲得点数の剥奪も検討される。
◆ペナルティについて
→全競技終了後、学年内で点数の集計をし、下位10名にペナルティを科す。
※ペナルティの詳細は学年毎に異なる場合がある為、担任教師に確認すること。
《1年生のペナルティ》
次回筆記試験におけるテストの点数の減点。
→総合成績下位10名の生徒は10点の原点を受ける。
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〖競技一覧〗
◆全員参加種目
・100メートル走
・200メートル走
・ハードル走
・二人三脚
・障害物競走
・棒倒し(男子のみ)
・玉入れ(女子のみ)
・男女別綱引き
・騎馬戦
◇推薦参加種目
・借り物競争
・四方綱引き
・男女混合二人三脚
・3学年合同1200mリレー
※ 推薦参加種目には代役を立てることは可能だが、10万プライベートポイントを消費する。
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「以上が体育祭のルール及び競技説明になる。これから体育祭の競技練習の時間も増えるだろう。各自、自分が参加する種目のルールをしっかり把握しておくように。また、今説明した内容に関しては学校のHPにも記載されているので、必要であれば各自確認しておくように。」
その後、競技の参加表や推薦競技の代役に関する説明が行われ、ホームルームは終了した。
体育祭に関する情報は原作と同じで、変わった点は無さそうだ。
今回の体育祭、AクラスはDクラスと組む事になる。
しかし、この試験のルールでは赤組として勝利したとしても、学年別のクラス順位によっては損をしてしまう。
同じ赤組といっても、互いにクラス争いをするライバルである事には変わりない。
つまり、団体競技はDクラスと相談する必要があるが、個人競技に関してはクラス間の争い、同学年の全クラスが敵だと言える。
「この試験、一筋縄ではいかないね。」
「そうだな。頭脳戦であれば俺達Aクラスに分があるが、身体能力に関しては個人の能力に依存してしまう。一朝一夕で身につくものでも無い。出来る事と言えば、技能ではなくパス渡しの素早さや走行姿勢の見直し、参加表でクラスメイトをどう配置していくか、という身体能力以外の部分の努力だな。」
石田が淡々と今回の体育祭に備えてやるべき事を述べていく。
彼の発言に運動部に所属する生徒や身体能力が高い生徒も頷き、Aクラスは身体能力以外の部分を鍛える事になりそうだ。
「しかし、体育祭が特別試験だとは驚いた。」
葛城が腕を組みながらため息をつく。
「そうですね。夏休みに行われた特別試験は、学校生活には無関係な変わった試験でした。ですから、学校生活とは別に変わった試験が用意されていると思っていたのですが、その考えは外れてしまいましたね。」
坂柳も今回の試験は想定外だったのか、少し驚いたような顔をしている。
私は原作知識を活かしてポイントを獲得してきたが、今回ばかりは何をどう頑張っても勝つ事は不可能だろう。
「今回の試験、Aクラスが1位を取るのはほぼ不可能だと思うけど、一体どうするんだろう?」
百恵が困ったような顔で体育祭の概要が書かれたプリントを見つめる。
「身体能力の高い生徒に頼り切りになってしまう可能性が高いわね。ペナルティに関しては、今のAクラスにはポイントにも学力にも余裕があるから、負担に思う必要は無いわ。」
小春が百恵を慰めるように言葉を掛けるが、私も彼女の意見には同意だ。
「そうだね。学年順位が最下位になったとしても、クラスポイントが100引かれるだけだし、総合成績が下位10名に選ばれたとしても、Aクラスに勉強を怠るような生徒はいない。10点引かれるくらいなら、なんて事無いよ。」
百恵は私達の言葉に頷くが、その表情は曇ったままだった。
マイナスも積もれば、大きなダメージに変わる。
次の特別試験で勝てる保証も無いため、不安なのかもしれない。
しかし、Aクラスには身体能力の高い生徒もいるので諦めるのはまだ早い。
葛城も一学期の終わりに人肌剥けて成長しており、Aクラスの総力は確実に上がっている。
原作の彼であれば簡単に負けてしまっていたが、もしかしたら今の彼ならば、無様な結果は残さないかもしれない。
そして無人島試験に続き、坂柳の体育祭欠席によりAクラスは大きなハンデを背負う事になる。
無人島試験とは違って代理を立てる事も不可能なので、個人競技は勿論、団体競技で勝利しなければAクラスは最下位までまっしぐらだ。
このままでは非常にまずい。
「…今回の試験は葛城君がリーダーを務める事になるんだよね?」
私が葛城に尋ねると、彼はすぐに首を縦に振った。
彼の表情には不安や困惑の色は現れておらず、前向きに試験に挑もうとしているように見える。
「…葛城君、いくらAクラスが不利だからといって、言い訳をしたりはしませんよね?」
坂柳は不敵な笑みを浮かべて葛城を挑発する。
しかし、彼女持ち欠席する事に負い目を感じているのか、すぐに真剣な表情に変わった。
「…」
葛城は数秒の無言の後、坂柳を真っ直ぐ見つめて口を開いた。
「…当たり前だ。結果に言い訳はしない。だが、1番を目指すのは困難だ。正直に言って、ペナルティの無い2位を目指すのもほぼ不可能だ。だから、俺達はクラス順位で3位を目指す事にしよう。」
「3位を、ですか?」
坂柳が呆気に取られたような表情で葛城に聞き返す。
クラス内がざわめき、弥彦もあんぐりと口を開けて固まっている。
「か、葛城さん?どういう事ですか?」
最下位にならないように努力するのではなく、敢えて3位を狙おうと言うのはどういう事なのだろうか。
彼の真意がまったく理解出来ない。
「その心は?」
私が彼に真意を尋ねると、彼は数秒経ってから話し始めた。
「…2年後の体育祭で勝つ為だ。今回の体育祭では、幾つか試したい事がある。だが、その為にもルールはきっちり理解しておきたい。」
つまり、彼は2年後の体育祭で勝つ為に今回の試験は様子見をしたいと。
そう言っているのだ。
未来に投資する為に、今回はわざと3位になるよう調整をする。
最下位を取らないという目標より、2年後に勝つ為の下準備をすると言う方が印象は良い。
彼が何を考えてこんな事を提案したのかは分からないが、少なくとも原作の葛城には考えつかないようなクレイジーな発想だ。
2年後に体育祭が行われる保証は無いし、特別試験の内容が変わっている可能性もある。
しかし、その可能性を考慮せず3年生の秋に行われる特別試験で勝ちたい、と意志を示すのはAクラスで卒業したいという意志の表れであり、2年後自分がリーダーとして率いているという事が前提になっている。
良い意味で無謀な男だ。
しかし、それくらいでなければこの学校でクラスを率いるという大役は務まらない。
「良いんじゃないかな?そういう考えは嫌いじゃない、むしろ好きだよ。」
私は誰よりも早く彼の意見を肯定し、認めた。
「…そう、ですね。ええ、葛城君。貴方はただの堅物ではなく、大馬鹿者です。しかし、それくらいの自信を持って貰っている方が、倒しがいがあるというものです。」
坂柳も葛城の意見を否定はしなかった。
となれば、誰も彼の意見に反対する者は居ないだろう。
例え、2年後葛城がリーダーになっていなくとも、今回の試験が無駄になるとは思えない。
きっとAクラスにとって良い刺激となってくれるはずだ。
だいぶ先のAクラスの未来に小さな期待を抱きながら、私は葛城に笑いかけた。
「じゃあ、今日から宜しくね。葛城リーダー。」
ペーパーシャッフルでAクラス(坂柳)が希望する対戦相手は?
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Bクラス
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Cクラス
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Dクラス