ひぐらしのなく頃に 巻込編   作:ポロロン

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プロローグ

「ぐへへ、やはりエンジェルモートは心のオアシス。良い店だぁ・・・」

 

 ある男が一人。エンジェルモートと呼ばれる喫茶店でコーヒーとショートケーキを貪っていた。男はいつも窓際のテーブル席に座る。そして、必ずシロップとミルク入りのコーヒー(すでにカフェオレのような色合いになってしまっている)とショートケーキを頼む。これが男が必ず頼む商品だった。やはり美味しい。このショートケーキ、イチゴが一つ乗ったシンプルなタイプだ。

 

「あ、店員さん」

「は~い」

 

 男が店員を呼んだ。すぐにスタッフがやってくる。この喫茶店は商品だけでなくスタッフのサービスも充実していた。やはりお店で大事な要素はスタッフのサービスである。料理が美味しくても、その周囲の環境も必要だと思うのだ。

 

「コーヒー追加で。シロップとミルク入れてください」

「かしこまりました~」

 

 スタッフが伝票にコーヒーと丸文字で記入して、厨房へと向かう。男に背を向けて歩き始めた。ふむ。絶景かな絶景かな。男が見ているのは、スタッフのお尻。たゆんたゆんと音がしているかのような気もする。何か運動でもしているのか、いや、ストレッチでもしているのだろう。引き締まったお尻を男は鼻の下を伸ばしながら見ていた。

 男がいつも座る席。注文後厨房へ向かうスタッフのお尻を見れる絶好のポジションであった。もちろんセクハラである。目線がいやらしすぎる。怒られてしまえ。しかし、周りのお客も同様に鼻の下を伸ばすだけでなく、下劣な声を出していた。

 

「「「ぐえっへへへ」」」

 

 おっといけない。よだれが出てしまいそうになるが、ぐっと抑える。そう。このよだれはショートケーキの美味しさによるものであって、スタッフに向けたものではないのだ。

 エンジェルモート。興宮に存在する喫茶店は、地方だけでなく遠方からも来客がある。県外からも来る人が多い。その秘密はスタッフにある。

 肩と胸元が露出し、着用している人のスタイルが丸分かりの衣装。バニーガールに近しい見た目だ。しかし、バニーガールの着目点である網タイツはされていない。黒を基調としている。

 決していかがわしい店ではない。ただ目の保養ができる喫茶店なだけである。

 

 男は週末、仕事の終わりに興宮のエンジェルモートで過ごすのが日課だ。いつも重労働をしていることもあるが、周りはご老人しかいないため、何かしらの刺激を求めて喫茶店に通っていたことを否定しない。

 

「はい、コーヒーですよ」

 

 目の保養をしている間に頼んでいたコーヒーが来た。夕暮れ前には帰宅する必要がある。腕時計を見るとあまり時間の余裕は無いらしい。まぁ、いつでもお店には行けるのだから、今回は大人しく退散するとしよう。

 男はコーヒーを飲み終え、食事の清算をしたのち帰宅をするのであった。

 

 

男は原付に乗り、自宅へと移動する。彼の自宅は雛見沢と呼ばれるド田舎の一角にあった。現在は祖母と二人暮らしをしており、祖母の仕事の手伝いをしている。

 原付を走らせる。興宮と雛見沢は一本道ではあるが、運転に慣れていない間は往復に時間をかけていたのであるが、今では片手間に移動することができるようになっていた。

「ただいま~」

「よう帰ったんね。さっき知恵先生から電話があったんよ」

 

 雛見沢の自宅。遺産登録がされるであろう合掌造りの建物。雛見沢は豪雪地帯と呼ばれる地域で、冬には大量の雪が降る。車が埋もれるぐらいの雪。雛見沢の冬を経験したのは1回しかないが、原付が雪に埋もれた時は大層慌てたものである。

 田舎特有の、鍵をかけないままで生活している祖母の話を聞くに、雛見沢分校で何か問題が発生したのであろう。

 

「知恵先生から?何か言ってた?」

「あんなぁ、学校の物置小屋が雨漏りしてるから、補修してほしいらしいんじゃ」

 

 なるほど。業者を呼ぶ前の緊急処置のようだ。雛見沢分校は残念ながらお金が無いらしい。定期的に業者が来るまでの対応をしていた。

 雛見沢分校。小中学校共同の学校だ。全校生徒は確か30人ぐらいだったか。あまり詳しくはないが、林間関係の建物を間借りしているとのことだ。近くの学校は興宮になるため、少々遠すぎるのだ。小学高学年からは自転車で行けるかもしれないが、低学年には毎日通うには大変なのだろう。そういった事情を抱えた学生のためにも雛見沢分校が存在しているのだ。

 

「もう日も暮れるから、明日学校に連絡しぃや」

 

 その祖母の言葉に頷く。

 

「あぁ、ばあちゃん。今日も興宮のお店で打ち合わせしてきたよ。トマトは通常の値段で販売するってさ」

「うんうん。それは助かるんね。あとは稲の手入れと8月頃の収穫に備えんとなぁ」

「収穫シーズンは繁忙期だもんね。早いうちに打ち合わせしておくよ」

 

 その言葉を聞いて祖母はニッコリと笑った。そう。この男。決してエンジェルモートで遊んでいたわけではない。しっかりと仕事をしていたのである。男の仕事は農家であった。祖母の所有する農地の手伝いをしているのである。

 

「あぁ、あと回覧板。お祭りのことも書いとるよ」

 

 祖母から渡される回覧板を見る。そこには『綿流し』と大きく書かれており、開催予定の日時が書かれていた。そうか、もうそんな時期か。

 ペラペラと回覧板の紙をめくる。農地の収穫についての状況と『綿流し』の打ち合わせについての参加を促す紙もある。『公由喜一郎(きみよしきいちろう)』『園崎お魎(そのざきおりょう)代理園崎魅音(そのざきみおん)』『古手梨花(ふるでりか)』を筆頭に、つらつらと名前が書かれている。その中に『地田冬夜(ちだとうや)』と書かれている。男の名前だ。

 

「いつもは私が出てたけど、もう私も年寄りなんよ。悪いけど出席してほしいんね」

 

 そういえば定期的に村の代表者や関係者を呼んで話し合いをしているらしい。今までは祖母に任せていたのだが、確かに高齢者には夜の会議は辛いのだろう。それなら農家を継ぐ自分が出席するのが筋というものだろう。

 

「分かった。任せといて」

 

 どんな話をするかは分からない。代表者の園崎魅音と古手梨花は雛見沢分校の生徒だったはずだ。雨漏りの補修ついでに、会議について聞いてみるのも手だろう。あまり話をしたことはないが、噂を聞く限り良い子だろうし。最近前原屋敷の子と遊んでいるらしい。うんうん、青春って素晴らしいね。

 中学生の頃は何をしていたかなぁ。残念ながら友達と過ごした記憶というものが無い。少し気を落として夕飯の準備に取り掛かるのであった。

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