ひぐらしのなく頃に 巻込編   作:ポロロン

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墓場まで持っていくということは

 そこまで話をして、ふと魅音ちゃんの顔を見た。少し話し込んでしまったのか、もう既に家の前まで着いていた。どうしたものかと考えたものの、ここで話を終わらせてしまうのは拙い。

 

「ここから簡単に話すと、俺は北条悟史君が失踪したと聞いた。同じく北条君の叔母が撲殺死体となって発見されたことも知ってる」

 

 仕方がないので話を続けることにした。しかし、なるべく話は簡潔にするべきだろう。魅音ちゃんも中学生。夜中に一人で帰らせるわけにもいかない。まだ夕暮れの時間帯なので、今のうちに話をしておこう。

 

「その後俺はまず『監督』と呼ばれる人を探した。これが簡単に見つかってね。北条君の言っている『監督』という人物は入江診療所の入江京介であると思った」

「思った・・・ですか」

 

 そう。診療所の人間で監督と呼ばれる人間は、入江京介という人物だった。医者であり、興宮の少年野球チームの監督。北条悟史君もその野球チームに所属していた。

 

「だからすぐに大石さん。魅音ちゃんも知っているかもしれないけど、興宮署の大石さんに頼んだ。監督は北条君の最後の目撃者の可能性が高い。それであれば警察の人に調べてもらうしかない」

 

 大石さんは俺の意見に素直に応じてくれた。入江診療所の中は捜査令状が降りないということで確認できなかったが、その時監督が乗っていたであろう車の調査をしたのだ。

 

「結果として車からは何も見つからなかった。髪の毛とか熊のぬいぐるみの繊維も見つからなかったらしい。つまり北条君の言っていた『監督』は別の人物である可能性が出た。監督もアリバイが見つかって白だったというわけだ」

 

 疑ってしまったことに謝罪をしにいったこともある。監督は許してくれたが・・・。

 

「その後北条君が名古屋の駅から東京へ行く姿が発見されたらしい。そして口座からはお金を全額下ろしていたこともあって家出扱いされた」

「冬夜さんの言ってる通りです。叔父叔母夫婦の虐待に耐えられなくて家出したんだって」

 

 しかし、ここで矛盾点が出てくる。俺は北条君が熊のぬいぐるみを購入している姿を見ている。その金額も見ている。大石さんに頼んで下ろした金額も確認してもらったが、東京へ行けるような金額を購入後に用意できるはずがなかった。

 その矛盾点も魅音ちゃんは気づいているのだろう、怪訝な顔をする。誰かのお金を盗んだとかも考えられるが、果たして彼にそんなことができるのか分からなかった。

 

「その後俺はお魎さんに聞いて北条君の事を聞いた。大石さんが園崎家を怪しんでいたこともあるけど、俺はお世話になった人の真意を知りたかった。結果として園崎家は関与していないと言われたよ。あの人がハッキリと口に出すならそれが答えだと思った」

「それが墓場まで持っていくこと・・・ですか?」

「そういうこと」

 

 嘘である。実は隠していることがあるのだが、彼女には言えない。それこそ本当に隠している墓場まで持っていくことなのだから。それを彼女に聞かせるわけにはいかない。

 

 

 

「お魎さん。お話があります」

「なんね。改まって」

 

 去年の夏。北条の叔母を殺害した犯人が自首してからのことである。冬夜は平日の昼間、園崎魅音が学校に行っている時間を狙って園崎お魎に会いに行っていた。

 

「今回の雛見沢の皆が噂している『オヤシロ様の祟り』についてです。北条悟史君が失踪してから薬物中毒の人が自首しましたが、それは園崎家が関与していることですか?」

「お前さんが北条のボウズについて調べよるんは知っとるんね」

 

 それは冬夜が警察と手を組んでいるということを暗に示しているのだ。園崎家は極道関係者ということもあり警察とは仲が悪い。

 

「なんでそこまで必死に調べようか分からんわ。北条のボウズは知り合いではないじゃろうに」

 

 お魎さんは冬夜に対してどこか甘いところがあった。それを冬夜自身は知らないが周囲の人は知っている。どこまで園崎お魎に筒抜けなのか分からない以上、本音で話すのが必要だろう。

 

「北条君が失踪してから、園崎さん・・・園崎魅音さんに会いました」

「なんでそこでアホンダラの名前が出るんね」

「彼女は泣いてましたよ。北条君の事が好きだったんでしょうね」

 

 園崎お魎は深く溜息を吐く。園崎魅音が北条悟史に惚れていることを既に知っているようだった。

 

「泣いていようと関係ない・・・。もしや惚れたんか」

 

 その惚れたというのは俺が園崎さんを、ということだろう。いや、別に惚れたわけじゃない。

 

「魅力的ですが、私は巫女服の似合う女性でしか愛せないんです」

 

 そういうと園崎お魎は呆れた顔をした。そこで呆れられても俺の意思は変わらない。

 

「もし記憶を取り戻した時、もしかしたら今の私の記憶は無くなるかもしれません。たとえ記憶が無くなっても、私は私として悔いのないように生きたい。だからこそ、園崎家の、お世話になった人の潔白をしたい」

「だからこそ躍起になって調べとるわけかい」

 

 残念なことに雛見沢全体と警察は、今回の事件を園崎家が黒幕であると信じている。そういう言い方を園崎家がしていることも原因なのだろうが・・・。

 

「好きな人をだったのに、疑われるのは可哀そうでしょう」

 

 その一言に尽きる。園崎さんが流した涙は、好きな男性が失踪したことだけでなく、自身も疑われているという二つの理由が重なっての事だと感じたのだ。

 

「それであれば少しは検討がついとるんじゃろ?今回の犯人」

「そうですね。ただ薬物中毒者が自首したということと、北条君の金銭について気になります」

「それでも構んね。言うてみなさい」

 

 冬夜は息を整える。少しばかり緊張しているのか、口元が少し震えていた。息を整えている間も園崎お魎は静かに座って話を聞いている。今の彼女の姿を見れば、誰もが恐怖の象徴として見ている印象を変えるだろう。

 

「今回の撲殺殺人の犯人は北条悟史君でしょう」

 

 ついに口を開いた。それは自然に出てきたことであり自分の中で確信を持っていることである。

 まず北条の叔母が亡くなったのは綿流しの日である(大石さんの鑑識結果だった)。そして死体はダム現場である。つまり冬夜が綿流しで見た北条悟史は、叔母を殺害した後ということ。血が見えなかったのは洗い流していたのか、それとも街灯がない場だったことが原因で返り血を見ることができなかったかだ。あの時の彼は祭りに参加していないことも調べはついている。

 何よりも決めてなのが、北条家とダム現場まで距離が有りすぎるということ。古手神社とは真逆の方向であることだ。

 もちろん、今回自首してきた薬物中毒者が何者かという問題にあたるのだ。それを知らない限り犯人が確定しない。

 一気に言ってしまったせいか、少し息が荒かった。園崎お魎は内容を噛み砕いて内容を把握しようとしている。

 

「園崎家は今回の件、一切関与していない」

「つまり、中毒者の件も関係ないんですね」

「そういうことさね。ただ、その麻薬を使った犯人じゃが・・・」

 

 どこか言い辛そうな園崎お魎に対して、冬夜はなるべく落ち着いて話を聞こうとしていた。園崎家が関与していないということは、犯人は麻薬中毒者ということか・・・?

 

「その犯人はこちらが調べた限りだと雛見沢への来歴は無い。ダム現場は取引現場でもないとは聞いておる」

「つまり謎の人物が捕まったというわけですか」

「前々から思っておったが、警察内部にもきな臭い動きがあるらしいの」

 

 つまり今回の犯人は警察内部で犯人の捏造があったのではないかということであった。園崎家が血眼になって犯人を特定しようとしても途中で調べられなくなるらしい。その時点で警察側が怪しいと園崎家は睨んでいるらしい。

 

「つまり今回の犯人が捏造されたものであれば、犯人は北条悟史・・・」

「子どもが殺めたと思うと気が重くなるさね」

「好きな人が犯人だったとなれば、これは園崎魅音さんには言えませんね」

 

 そうやのぉ。そう園崎お魎は絞り出すように声を出す。まだ名古屋での発見報告は全貌が分からないものの、冬夜と園崎お魎の間で犯人は北条悟史と確定していた。これは園崎さんに言うのは酷だろう。

 

「このこと墓場まで持っていきます」

「助かるけんど、これ以上は調べん方が良いわい。警察も信用ならんでの」

 

 

「あれ、冬夜さん。今日は家に用事があったんですか?」

 

 話も済んだため帰宅しようとしたとき、丁度園崎さんが帰ってきた。どうやら今回の事件も含めて授業は早めに切り上げたらしい。

 

園崎さん(・・・・)お帰りなさい。もう帰る予定ですよ」

「そうでしたか。いつでも家に来てくださいね」

 

 そう園崎さんは笑う。しかし、どこか渇いた笑みであった。彼女を元気にすることはできるのだろうか・・・。

 

 

 

 

 

「冬夜さん?大丈夫ですか?ボーっとしてましたよ」

「え、あぁ。すまん。もう夜も遅いから気を付けて帰ってね」

 

 魅音ちゃんに現実に引き戻された。今の彼女は元気に笑ってくれている。これも前原君や竜宮さんたち部活メンバーのおかげなのだろう。皆が必死に支えてくれているからこそ今の彼女があるのだ。

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