ひぐらしのなく頃に 巻込編   作:ポロロン

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大人の問題に子どもが巻き込まれてはいけない

 あれから数日が経ち、葛西さんから直接呼び出された。興宮の喫茶店なのだが、窓が透明ではなく黒色に染まっており、中の様子が見えないようになっている。どこか怪しげな喫茶店だった。呼び出された理由は北条鉄平についての情報をつかんだということ。仕事が早くて助かる。

 すでに葛西さんは店にいるということなので、店のたたずまいに戸惑ったが堂々と入る。初めて入るお店って緊張するよね。店に入ってすぐに店員に案内される。このお店は園崎家系列なのだろうか。ずいぶんスムーズに案内された。

 案内されると葛西さんだけでなく、魅音ちゃんもいた。いつもの魅音ちゃんの私服姿ではなく、女性らしい服装だった。

 

「魅音ちゃんもいたのか」

 

 魅音ちゃんは冬夜の顔を見る。どこかしてやったりという顔をしている。いつものツリ目から光る眼差しに昨日のことを思い出す。・・・ツリ目?今の目の前の女性はツリ目ではなく垂れ目だ。

 

「魅音ちゃん・・・じゃないな。誰ですか?」

「ありゃ、何で分かったんですか?」

 

 目以外は間違いなく園崎魅音そのものである。冬夜はいつも人の目を見て話す。それが今回の疑惑を持ってしまうことになるとは思わなかった。

 日本人は目で人の考えを読み取ることができる。地田冬夜は記憶喪失になって以降、話しかけてきた人が疑惑の目を向けていないか心配になり、それ以降目を見る癖がついてしまった。

 一度園崎魅音ではないと感じれば感じるほどに違和感が出てくる。

 

「園崎魅音の妹、園崎詩音です」

「双子かぁ。魅音ちゃんのお家では見たことなかったし、学校でも見てないんだけど」

「興宮の学校に通っているんです。住所も興宮です」

 

 なるほど、園崎家ならば何かしらの因習があったりするのだろうか。双子同士同じ学校に通わないということは、複雑な事情があるのだろう。ここで事情を掘り下げるような野暮な事はしない。

 

「それで葛西さん。関係者以外を呼ぶだなんてどうしたんですか?」

 

 明らかに北条鉄平の関係者ではないことは明らかだ。

 

「すみません。本当は私一人での予定でしたが・・・」

「私がお願いしたんです。お姉(おねえ)が話に出す人と葛西が会うということだったので、つい気になってしまって」

 

 園崎家次期当主の妹に我が儘を言われて仕方なく、という感じだろうか。上下関係が激しいにしても、葛西さんが可哀そうである。

 

「葛西さん、お気持ちお察ししますが、中学生を巻き込んでいい話じゃないはずです。また改めて話をしましょう」

 

 魅音ちゃんの双子であれば中学生なのは間違いない。確かに魅音ちゃんには話ているけど、それは園崎家に対してお話をしにいったのであって、妹さんが参加する必要はないはずだ。

 

「すいやせん」

「んも~。葛西も冬夜さんも固いんだから。良いですよ、私は先にお暇しますから二人で楽しくお話しててください!」

 

 葛西さんは明らかに申し訳なさそうに謝罪したが、すぐ園崎詩音さんが離席する。おぉ、我が儘のように見えて時と場合は弁えているらしい。それなら二人で話をしよう。なんだかんだで雛見沢から興宮へ行くのは大変なのだ。何度も興宮へ通うのであれば用事は全て片付けておきたい。

 そうして園崎詩音さんが店から出るのを見終えてから、葛西さんが話し始める。

 

「北条鉄平と一緒にいる女性、間宮律子について調べました」

「なるほど、女性の名前は間宮律子と言うんですね」

「えぇ。調べるとこの二人、美人局しているようで問題になっているのは間違いないでしょう。今のターゲットは雛見沢に住んでいる竜宮家」

 

 雛見沢に住んでいる竜宮家は、竜宮レナの家しかない。これで確定したということだ。

 

「それに間宮は上納金に手を出そうとしていました。どうやら園崎家に加入した新参者と手を組んで盗みを働こうとしていたようで」

「盗みに関しては園崎家に任せます。問題は竜宮家ですか・・・」

 

 いえ、もう大丈夫でしょう。そう葛西さんは言う。なに?どうやら既に手を打ってあるらしい。仕事が早いのは有難い。

 

「ケジメはつけました」

 

 手を打ったではなく始末した、ということだった。当たり前のように殺人を軽く話すだなんて恐怖を通り越して呆けてしまった。

 

「北条鉄平は主犯格の仲間だったもんで始末しようとしましたが、どうやら逃げられてしまいましてね。もう雛見沢だけでなく興宮にすらいないでしょう」

 

 それなら北条さんも安心して生活ができるだろう。思わぬ所で魅音ちゃんの気にしていたところが解決したのだった。北条と間宮は犠牲になったのだ。

 見ず知らずの人が殺められたことに罪悪感を抱くものの、二人は美人局の詐欺をしていた人間である。天罰が降ったと思っておこう。

 

「それは良かったです。もう安心ですね」

「今回の件、我々も重く見ています。園崎家の中にまだ同じように盗みを働く人間がいるかもしれません。この機に一掃しなくては」

 

 今回は問題解決していたが、この問題を放置していたらどうなっていたのかと不安になった。運よく北条鉄平を見つけて良かった。本来は警察案件だったのだろうが、残念ながら警察は問題が発生してからしか動けない。それは大石さんも億劫に思っているそうだ。

 

 さて、次は前原君のおはぎ事件である。その問題を解決するには・・・どうすれば良いのだろうか。おはぎ事件がきっかけか?それとももっと前に何か起きていたのか。

 これに関しては梨花ちゃんに聞くしかない。タイムスリップをする前に聞いた内容通りなら、まだ間に合うはずだ。

 

「お忙しいなかありがとうございます。これで問題は解決しました。私はこのまま雛見沢に戻りますね」

「えぇ。私もこれから忙しくなりますので、ここでお見送りします」

 

 そうして葛西さんと別れた後、雛見沢へ帰宅する。部活メンバーというよりも魅音ちゃんが悲しまないように、前原君に起こる事を確認しよう。

 

 

 

 そして平日。まだ前原君のおはぎ事件が起こる前に、冬夜は古手梨花に時間をもらった。タイムスリップをした後、古手梨花は冬夜に対して怪訝な目を向けている。そのことを冬夜は知っていた。その理由は分からない。もしかしたら以前の俺は気づかなかっただけで、ずっと怪しまれていた可能性はある。

 どこか話しづらい雰囲気を出している梨花ちゃん。俺はどうすれば理解してくれるか分からなかった。

 

「みぃ、どうしたのですか?」

 

 冬夜は学校終わりに古手神社で話をした。北条さんは今日は実家の自宅の掃除をしに行ったらしい。いまだに北条君が帰ってきても綺麗なままでいてほしいということらしい。

 

「・・・どう話せば良いのかな」

「特に何もないなら、このまま帰らせてほしいのですよ。早くご飯を作らないと夜ご飯が食べられないのですよ」

「ごめん。すぐに伝えるよ」

 

 冬夜は唾を飲んだ。どこか緊張してしまう。ここが大事なターニングポイントなのだ。北条鉄平と間宮律子は大人たちの問題だ。しかし前原君の問題は子ども達の問題。それなら頼るなら、まずは梨花ちゃんからだと強く思った。




ひぐらし業はツリ目と垂れ目すぐに見分けがつくんですよ
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