ひぐらしのなく頃に 巻込編   作:ポロロン

21 / 65
立ち向かう勇気

 その後北条沙都子は叔父を待たせるといけないということで、帰宅をする。冬夜と監督、そして古手梨花は三人で今後の解決策を考えた。

 

「明日警察の人と行くというのは・・・」

「本来は明日じゃなかったんだけど、大石さんにこれから頼み込むよ」

 

 大石と訪問する予定は組んでいたものの、間宮律子の件があってだいぶ忙しいのか細かい日程を組めた状態ではなかった。どうにかして頼み込む必要があるため、診療所の公衆電話を借りることにした。

 はじめ監督は大石さんの名前を出すと怪訝な顔をした。どうやら一時期北条さんに付きまとっていたらしい。連続殺人事件の重要参考人として色々と情報を得たかったのだろうが、それを監督は良しとしなかった。明らかに精神的に負担を強いられるのだから。

 

『なるほどぉ、それで明日北条家に一緒に訪問してほしいという事ですね』

 

 全ての情報を話して大石さんに頼みこんだ。このままでは時間の問題だということを大石さんも把握してくれたらしいが、それ以外にも理由があるらしい。

 

『んっふっふ、どうやら北条鉄平は薬物使用をしているのではないか、という情報を得ましてね~』

「そうなんですか!?」

『えぇ、私としても北条沙都子さんが虐待の件を認めてくれたら我々警察も薬物に関する情報が芋づる式に出るんじゃないかと警察内でも躍起になってましてねぇ』

 

 冬夜も大石も打算を組んで北条家へ向かうことに決定した。これであとは北条沙都子の強さを信じるのみになった。

 そのことを知った梨花ちゃんも、同行したいと願い出たが、ここからは大人のお仕事である。彼女には申し訳ないが大人しく待ってもらった方が良いと判断した。

 監督にはすぐに虐待の証拠が警察に提出できるようにデータを作ってもらい、明日に備える。

 

 

 翌日、本来は学校の授業があったのだが、今回はお休みをいただくことにした。梨花ちゃんは学校で皆を落ち着かせてくれるらしい。彼女には負担を強いて申し訳なかったが、今回は嬉しい申し出だった。

 朝には大石さんが冬夜の元へ訪れた。運転席には熊谷さんが座っている。もし問題が発生した時に対応できるように警察二人で来てくれたらしい。

 すぐに車に乗り込んだ。大石さんは暑がりなのかエアコンはガンガンにかかっており涼しい。

 

「寒かったら言ってくださいね」

 

 熊谷さんがエアコンに手を伸ばすが、遠慮しておいた。冬夜も暑いのは苦手なのだ。大変ありがたかった。

 北条家まで車を走らせる間、大石さんが語りかけてきた。

 

「今回の薬物の件、情報の出どころはS号絡みからなんですよ」

 

 S号。つまりは園崎家ということである。まさかそこから情報が出るとは思わなかった。

 

「S号絡みの取引現場だと思っていたんですがね。どうやら半グレ連中が力を付けるのを避けるためでしょうが、葛西と名乗る男に情報を貰いましてね」

 

 まさかの名前に驚いた。どうやら葛西さんが根回しをしていたらしい。園崎家は関与しないと思っていたのだが、思わぬ所で援護があったようである。今度葛西さんにお礼をしなければ・・・。

 そしてこれからの流れの確認をしていると、すぐに北条家へ着いた。この小さな雛見沢村である。すぐに目的地へ着いた。

 大石さんがインターホンを押す。出たのは北条鉄平だった。すぐ後ろには北条沙都子が控えている。本当に来たのかと驚いた顔をしていたのが見えた。

 

「興宮署の大石です。今回通報が何件かあったので確認をしに来たんですよぉ」

「なんね、警察の方が来るとは思わなかったんよ。警察の方にご迷惑をおかけするようなことは起きとらんのですわ」

 

 なぁ、沙都子。北条鉄平は後ろに振り返り北条沙都子に声をかけた。その瞬間北条沙都子は怯えたような顔を見せる。あとは彼女を信じることしかできない。冬夜と大石は静かに見守る。

 

「た・・・・」

「あん?」

「た、助けて!!!」

「沙都子ぉ!!」

 

 すぐ後ろにいたのが災いしたのか、北条鉄平は力強く北条沙都子を殴り飛ばした。この展開は少しばかり予感していたためか、冬夜の身体がはすぐに動いていた。

 まさか冬夜が動くとは考えていなかったのか、大石も少し遅れて北条鉄平の元へ走り出す。

 

「ガッ!」

 

 冬夜は後ろを振り向いている北条鉄平を突き飛ばし北条沙都子の元へ行く。頬を殴られたのか、手を頬に当てている。

 

「こんのダラズがぁ!」

「地田さん!避けてください!」

 

 うしろから北条鉄平の声が聞こえたと同時に、頭に強い衝撃が走った。頭が割れるように痛い。何か鈍器で殴られたのだろうか、突然のことに声が全くでなかった。

 

「地田さん、地田さん!救急車急いで!早く!」

 

 遠くから大石さんの声が聞こえる。ちょっと急に動いたのが悪かったのかもしれない、大石さんには迷惑をかけてしまったようだ。

 さらに甲高い声で名前を呼ぶ人もいる。北条さんだろう。彼女にも無理をさせてしまった。

 冬夜は本音を言えば、もしかしたら彼女は耐えることを選ぶのではないかと思っていたのだ。彼女の本当の強さを見間違えてしまったことに、そして彼女を疑ってしまったことに申し訳なさを抱いた。

 

 

 

 

 

 

「で、俺はピンピンしてるわけさ」

「みぃ、その出たとこ勝負は治した方が良いのですよ」

 

 興宮の病院の一室で事の顛末を冬夜は話した。目の前にいる彼女は残念ながら毒舌を吐き続ける。

 

「頭を殴られた時に矯正できたら良かったのです」

「治ったら苦労しないよね」

 

 毒舌に対して笑って受け流す男を古手梨花は溜息を吐いて心情を吐露した。笑い話で済んだのである。それなら笑った方が良い。

 

「結局、暴行と薬物、あとは公務執行妨害だったかな?当分は刑務所暮らしになるかもね」

「バットで殴られて救急搬送されたと知った時には息が止まったのです」

 

 あの後、冬夜は激情した北条鉄平に金属バットでフルスイングを食らったらしい。頭からは血が出て止まらず明らかに気絶してしまった大の大人を救急車に乗せたらしい。まさか救急車に乗れるだなんて良い体験が出来たなぁ。気絶してたから記憶はないけど。

 すぐに北条鉄平は大石さんと熊谷さんに拘束されたらしい。今頃は警察署で尋問でも受けているのだろうか。

 目を覚まして色々と身体検査を受けた後、大石さんと熊谷さんが謝罪をしにきた。警察が目の前にいて暴行現場を止められなかったことについての謝罪だった。

 そもそも冬夜が先走ってしまったのが原因で、どちらかというと警察の仕事の邪魔をしてしまったのだ。大変申し訳なかったので今度の食事を奢ることにした。

 北条さんが助かったのも、これも大石さんや監督、そして園崎家のおかげである。感謝してもしきれなかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。