ひぐらしのなく頃に 巻込編   作:ポロロン

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そこまでしなくても・・・

 目を覚ますと、そこはまるで防空壕のような暗い場所だった。冬夜は何かしらの理由で気絶していたことが分かる。

 虚ろな目で周囲を確認すると、まず自身の現状が分かった。どうやら磔にされているらしい。まるでキリストのように掌は杭で打ち付けられていた。なぜ痛くないのだろうか、もしかしたら本来の痛点がバカになってしまっているのだろうか。血がダラダラと落ちていたのだろう、掌から地面へ一直線に赤黒い色が固まっている。どうやら血も止まっているようだ。

 次に周囲を確認した。まるで拷問部屋かのように、知ったことのある拷問道具らしいものが見られる。頭が混乱して幻覚でも見せているのだろうか。

 掌の事を確認した後、まるでそれを今知覚したかのように強烈な痛みが走る。その痛みに思わずゲロを吐いた。

 

「あら、目が覚めたんですか?」

「・・・」

 

 目の前にいる女性。魅音ちゃんと同じ私服姿の女性がそこにいた。

 

「園崎・・・詩音か」

「当ったり~」

 

 何が面白いのか、目の前の園崎詩音は楽し気に笑う。その笑い声が部屋を反響して気持ちの悪い遠吠えのように思えた。

 

「やめて!冬夜さんだけは!いやぁ!」

 

 少し遠くからもう一人女性の声が聞こえる。この声は魅音ちゃんだとすぐに気づいた。まさか同じように拷問でも受けているのだろうか。その声を煩わしく思ったのか、園崎詩音は声のする方へ歩み寄る。

 

「五月蠅いですね、お姉。これ以上五月蠅くするとお姉の大好きな冬夜さんを殺してしまいますよ?」

「っ・・・」

 

 

 もし拷問されているのなら、どうやってここから脱出するか考える必要がある。冬夜一人なら別に問題はない。梨花ちゃんが大石さんと協力をして助けてくれるはず。ただ、その前に魅音ちゃんが殺されてしまう可能性も有った。

 

「それで、わざわざ俺を監禁した理由は?」

「そんなもんないです。私とお姉を判断できる人が、たまたま園崎家に来た。それだけのことです」

 

 つまり突発的な監禁ということらしい。運が悪いというかなんというか。

 

「でも磔にする必要ないよね」

「そうですね。鉄格子にでも放り込もうかと思ったんですけど、お姉から何か聞き出せるかと思ったんですけどね・・・」

 

 なるべく目の前にいる女性を刺激しないよう、ゆっくりと話かける。話の流れからして、明らかに園崎魅音に対しての凶行だと分かった。

 

「早い所自首をすることをお勧めするけど」

「いいえ、私は真相を知るまで鬼になります」

 

 説得できるかどうか分からないのだが、どうすれば良いだろうか。真相と聞いて考えがつくのは、最近だと富竹さんの死亡についてだ。園崎家であればすぐに情報を手に入れているはずだ。

 

「じゃあそこで大人しくしていてくださいね。といっても磔になってますから無理だと思いますけど」

「この磔外して欲しいんだけど」

「ダメです」

 

 そういって園崎詩音は外へと通じる扉だろうか、外へ出ていった。さて、掌はまるで神経が無くなってしまったかのように力を入れられない。もしかしたら両腕はもう使えない可能性があるのではないか、そう思えてしまう。

 

「冬夜さん、ごめんなさい」

「魅音ちゃん、そっちは大丈夫?」

「私は牢に閉じ込められているだけなので・・・」

 

 俺もそっちが良かったのだが。もう頭が回らないせいか思考が定まらない。血が足りないのかもしれない。

 

「園崎詩音の目的は?」

「・・・冬夜さんは富竹さんについて知ってますか?」

「あぁ、昨日大石さんから連絡が有って、富竹さんが亡くなったことは知ってる」

 

 あとは死因についても知っているのだが、それは言わなくても良いだろう。やはり園崎詩音は『オヤシロ様の祟り』について知りたいというのだろうか。

 

「去年の悟史の『オヤシロ様の祟り』も園崎家が黒幕なんじゃないかって、詩音は思ってるみたいです」

「園崎家は一切関与していないんだろ?まぁ雛見沢の人も警察も園崎家が関わってるとすごい思ってるけど」

 

 園崎詩音と北条悟史の関係は分からないものの、やはり真相を知りたいということか。実は病気が原因です、なんて言っても信用しないだろう。

 

「とりあえず脱出しないと・・・」

 

 梨花ちゃんを守らないといけないというのに、なぜこんなことになってしまったのか。こればかりは起きた事に対して悔やむしかない。

 どうやって脱出するか考えながら、この動くことができない両腕の問題を解決する必要があった。両足は地面に着いた状態。ここからどうにか抜け出す方法を考えていこう。

 

 

 

 

 

 

 

 詩音が凶行に走ったのは、魅音の何の気なしに言った一言。『悟史、どこに行ったんだろうね』という一言にある。

 古手梨花は今までのループ内で起きた事象を思い出していた。今までのループで何度か詩音に拷問をされたことがあるのだが、その時に発した一言が詩音を苦しめていたのだ。その一言が言われて凶行へと繋がるのは圭一の行動しだい。いわゆるプレゼントの件である。

 通常の世界であれば魅音は圭一に恋をしていたし、そういった乙女心を出せず男勝りに対応しているからこそ起こる惨劇だ。

 しかし、どうやら冬夜がいる世界では魅音は冬夜に恋をしている。冬夜自身は知らないのだが、周囲は察している。だからこそ、レナが機転を利かしてプレゼントを渡したことで惨劇を回避できたと思っていたのだが。どうやらそういうことでもないらしい。

 もし、この惨劇が通常通りに進むのであれば、今頃魅音は園崎家地下の牢に閉じ込められているはず。次は公由が行方不明になるはずだ。大石は園崎家に捜査令状を出すように進めているが、あの園崎家に令状を出せるのか分からない。ただ頼りになるのは警察しかいなかった。すぐに冬夜が行方不明になったことは雛見沢中に広がり、青年団や他の人たちも捜索に出てくれている。公由が行方不明になった時も同様に捜索に出てくれる人もいるのだが、それだけでなく興宮の人も多く見受けられた。彼が雛見沢と興宮の架け橋として地道に動いてくれていたのを全員が知っていたし、北条鉄平の件以来、彼の人望が厚くなっていたのも知っている。彼は鈍感な所があるから知らないのだろうが、それぐらい慕われているのだ。

 早く助けて惨劇を止めなければならない。古手梨花は覚悟を決めた。

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