ひぐらしのなく頃に 巻込編   作:ポロロン

29 / 65
だって、冬夜・・・両手が・・・!安いもんだ両手ぐらい

 あれから何時間経ったのだろうか。それとも実は丸一日経ったということもありえる。残念なことに両腕の杭を取る方法は全く思いつくことができなかった。やはり誰かが助けに来てくれることを信じるしかないのだろうか。

 園崎詩音はまだ来ない。トイレ行きたいんですけど・・・。まき散らしてやろうかと考えていたその時、園崎詩音がやって来た。

 

「おいおい、更に被害者を増やしてどうするつもりだ」

 

 冬夜が言うのも仕方がなかった。園崎詩音が公由村長を引きずりながら来たのである。どうして公由さんが引きずられているのだろうか。

 

「御三家の意見を聞こうと思いまして」

 

 御三家に聞いても意味がないのだが。どうしたものか、人質三人になるとまず殺されるのは無関係の俺だろうか。そして公由さんは首にロープを巻かれ、そのまま宙づりに近い状態になる。足は地面に着いているのだが、拷問道具の一つということはそのまま首つりができる道具なのだろうか。

 少しばかりすると、公由さんが目を覚ます。

 

「これは、いったい・・・」

「おはようございます、おじいちゃん」

「詩音ちゃん、なんでこんなことを・・・」

 

 隣で吊られている公由さんは、園崎詩音に恐れながら言った。確かにその通りである。身の潔白をして助かることしかできない。

 しかし、この世は無情ということなのだろう。今の園崎詩音は雛見沢症候群という病気になっている可能性がある。そんな状態では、どんな言葉を言っても無駄だろう。

 

「もちろん、『オヤシロ様の祟り』についてです。おじいちゃんは何か知ってますか?」

「し、知らないよ。そういったことはお魎さんの管轄だから、公由家は何も知らないんだ」

「じゃあ実行犯も知らないのか~。あ~あ、これじゃ意味がないなぁ」

 

 園崎詩音は徹底して落ち着いた声音だった。この拷問部屋の中で、そんな態度を取れること事態が異常としか言いようがない。

 

「と、冬夜君も公由家について調べていただろう?」

 

 まさかここで飛び火するというのか。おそらく調べていた、というのは去年の北条君についてか。

 

「えぇ、調べましたけど・・・。公由さんの言う通りでした」

 

 それはもちろん、警察と一緒に調べたものである。当時調べた時には、公由家は所謂『裏』と関わりがない。

 

「どういうことです?冬夜さん」

 

 やはり飛び火をした。園崎詩音は冬夜の顔を睨み付ける。

 

「去年、北条家の叔母が撲殺死体として発見されて、北条君が失踪した時、俺は警察と一緒に事件を知ろうとした」

「へぇ、なぜです?」

「・・・」

 

 少し言い澱んでしまった。それは確かに問われて仕方のないことであったし、言わないと危険な目に遭うことは分かっていた。

 

「言わないと・・・」

「待て待て、少し気恥ずかしくて言いにくかっただけさ」

「じゃあ早く言ってください。公由のおじいちゃんの首吊り死体を見たくなければね」

「・・・当時、『オヤシロ様の祟り』を知らなかった俺は、北条君の失踪すら知らなかった。その時俺は新しい仕事の斡旋・・・今してる雛見沢でできた野菜とかの出荷物を興宮の店で売る打ち合わせの仕事をしてもらったお礼に園崎家へ訪問した」

「まどろっこしいですね、さっさと本題に移ってください」

 

 園崎詩音はロープを手に言い放つ。そのロープは公由さんの拷問道具へ繋がっていた。おそらくロープを引っ張ると宙吊りになるのだろう。

 

「その時、お魎さんと魅音ちゃんの様子が変だった。だから魅音ちゃんに聞いたら泣いて事情を話してくれたよ」

「へぇ・・・まさかそれだけで調べ始めたんですか?」

「そうだ」

 

 キッパリと言うと、園崎詩音は高らかに笑った。どこか愉快そうに、だが極めて不快な様子でもある。

 

「結果として、俺は一般人として捜査に協力した。御三家も調べたけど、何の情報も無かった」

「それで納得するとでも?」

 

 納得してほしいなぁ。

 

「確かに御三家、特に園崎家は警察もマークするほどの『闇』がある。ただ、今回の件はそもそも見当違いだと俺は思った」

「・・・」

 

 園崎詩音が黙っている。もしや逆転のチャンスが来たのでは?

 

「北条君が失踪した時、目撃情報として東京へ向かう姿を見た人がいるのを知ってるか?」

「えぇ、知ってますとも」

「その情報はデマだ。警察内部で捜査の撹乱をされたらしい」

 

 完全な憶測なのだが、今助かるためには嘘を吐いて説得するしかない。あとは適当に警察が逮捕して終わりだ。

 

「嘘じゃないぞ。ほぼ確信が持てる」

「じゃあ悟史君は何処に行ったんです?」

「さてね。警察内部に不穏な動きがあるなら、そこ辺りが怪しいんじゃないか?」

 

 とにかく、ターゲットを今いる拷問メンバーから誰かに移す必要がある。この際警察だろうと何だろうと使わせてもらおう。

 しかし、どこか腑に落ちない様子の園崎詩音。

 

「警察が悟史君を葬ったとでも言うんですか!そんな陰謀論誰が信じるか!」

「それなら一生君は真相を知らないまま過ごせばいい」

 

 売り言葉に買い言葉。そういえば雛見沢症候群は過度の疑心暗鬼だったはず。前原君は針を信じ込んでいたが、おそらく園崎詩音は事件の黒幕が園崎家によるものだと信じ込んでいるのではないだろうか。どうすれば彼女の疑心暗鬼に付け込むことができるだろうか。

 

「俺と園崎さんは真相を知りたい。どうだ、協力関係を結ばないか?」

「そうやって抜け出して警察へ言いに行くんじゃないでしょうね」

「いやいや、この杭を取ってもらうだけで、俺はここから出ない。それか何か拷問道具で外へ出れないようなものでも探してみなよ」

 

 園崎詩音は考える素振りを見せる。園崎詩音がどう考えているのか分からない。ただ、考える憂慮があるということは、まだ病気は悪化していないのではなかろうか。そもそも雛見沢症候群に軽度や重度があるのか知らないが。

 そして園崎詩音はどこから取り出したのか、鉄の鎖(まるで足かせのようなものも付いてある)を取り出した。おっと、それを足に着けたら絶対抜け出せないぞ。もっと楽に壊せそうな物にしてくれ。

 少し悩んで冬夜の右足に錠を付ける。伸びる鎖の長さを見るに、外へ出れるほどの距離はない。そして園崎詩音は冬夜の両手にある杭を勢いよく引き抜いた。両手を見たくないのだが、綺麗に穴が開いているのではないか。怖くて見たくもなかった。

 

「~~っ!!?」

 

 声にならない苦痛が走る。両手の痛点は既に死んでいると思ったが、どうやら違ったらしい。涙が出てしまった。

 

「誰か助けようとしたら殺します。いや、お姉を殺すことにしましょう。その間あなたはこの拷問部屋の整理や二人に情報を聞き出しておくように。私はそれ以外の情報を探しておくとします」

「わ、分かった」

 

 今は言葉を発するのが難しい。両手の痛みが強く言葉にできないのだ。もしかしたら脱出する前に出血多量で死んでしまうのでは・・・?

 園崎詩音はそんな冬夜の姿を一瞥して拷問部屋から出ていった。外の様子が少しだけ見える。日が暮れているような赤い空が見えた。時間は大きく経過していることから、おそらく捕まって一日は経っている。梨花ちゃんは無理に動かず警察に頼ってくれると良いのだが・・・。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。