ひぐらしのなく頃に 巻込編   作:ポロロン

3 / 65
梨花ちゃんの巫女服まで、あと何日?

その後、休憩時間が終わったのだろう。古手梨花は教室に戻っていった。あの子もあの子で可哀そうなものだ、そう冬夜は思う。この雛見沢は自然に溢れた美しい村ではあるものの、悲しみを背負った人も多くいることに変わりはない。それが冬夜にとって歯がゆいものであり、過去を変えることはできないという現実を思い至らせていた。

 そう陰鬱に思いながらも修理をした後、職員室に戻る。知恵先生と現在の生徒の勉強状況の確認をするためだった。

 

 その場にいたのは、校長先生、知恵先生、そして緑髪の女生徒だった。園崎魅音。古手梨花と同じく雛見沢の有力御三家の一人であった。

 

「地田さん!こんにちは!」

 

 快活な声で挨拶をされた。園崎家にいる彼女とは違う、中学生らしい元気な声だった。冬夜も同じく挨拶を返した。

 

「園崎さんは委員長ですから。今回のお話に参加をしてもらいました」

 

 なるほど。確かに彼女の立場を考えるに必要なことなのだろう。それに・・・。

 

「魅音ちゃんは中学三年生だったね。もう受験シーズンだから勉強はしてるのかな?」

「うぐっ・・・」

 

 受験と言ったそばから彼女の眉間にしわをのせる。どうやら勉強は進んでいなさそうだ。

 

「地田さん。それも私が悪いんです」

「知恵先生!それは違います!勉強頑張りますから!」

 

 先生側が少ないことが原因なのだろう。だからこそ、俺が講師として呼ばれたのだ。

そして知恵先生が現状の報告をする。中学生は現在三人。園崎魅音と竜宮礼奈(魅音ちゃんからは、礼奈ではなくレナと呼んでほしいとのこと)、そして前原圭一の三人がいるのだが、残念ながら中学生組は自習のみらしい。

 

「圭ちゃんは勉強できるから、たまに見てもらってるんだ」

「その前原君は竜宮さんと同じで中学二年生なんだろう?なんで中学三年生の魅音ちゃんが・・・?」

「たはは・・・」

 

 その言葉に更に困った顔をする彼女。これは受験までに間に合わせられるのだろうか。正直上手くいけるか分からないが、まぁ園崎家なら大丈夫だろう。その気になれば凄腕の家庭教師を雇うのだろう。

 

「じゃあ勉強の進捗状況確認しましょうか」

 

 嫌な雰囲気になる前に話を切り替えてしまった。さっきの梨花ちゃんの方が話の切り替えが上手かったように思える。まだまだだなと感じてしまった。

 その後、先生側と生徒側の勉強の進捗具合を確認し合い、教科書を見て今一度勉強の内容を見ることになったのだ。

 

 

 色々と確認をして気づくと外はすでに暮れ始めていた。ひぐらしの声が夕暮れであると強く訴えている。話に夢中で時間の経過を忘れてしまっていたらしい。

 このまま中学生を拘束するわけにもいかず、詳しい話はまだ煮詰めることができていないが、一朝一夕で出来るものではない。これからは授業に参加しながらになるだろう。

 

 先生方と別れる最後に聞き忘れていたことを思い出した。村内会議のことである。

 

「今度初めて会議に参加するんだけど、魅音ちゃん、俺は何を話せばいいのかな」

「それなら、納品している出荷状況とかのお話で大丈夫ですよ。確か最近興宮で夏頃の野菜について打ち合わせしていたんですよね」

 

 なんで知ってるのか、は敢えて聞かないでおこう。園崎家であれば情報収集ぐらいお手の物だろうし。

 

「あとは・・・」

 

 どこか後ろめたいような顔をする魅音に対して、冬夜も怪訝な顔をする。どこか嫌な予感がする。

 

「犠牲者を出さないように、警察の人も来る予定なんだ」

「・・・」

 

 雛見沢連続殺人事件。雛見沢の人間だけでなく近隣の人も知っている殺人事件の事を言っているのだろう。魅音だけでなく、知恵先生も悲しい顔をしていた。おそらく去年の被害者である彼を思ってのことなのだろう。

 

「分かった。魅音ちゃんも夜に参加だよね。初めての参加だからさ、色々と便宜お願いね」

 

 ここで話を切り替えることができない自身に恥じてしまった。そのまま話をできないまま別れることになった。

 

 

 自宅への帰り道。雛見沢連続殺人事件について考える。雛見沢がダムに沈むかもしれないと言われていた数年前の頃からの悲劇。確か最初の犠牲者はダム建設の現場監督がバラバラ殺人に遭った事件。加害者のリーダーは見つかっていないのだったか。そして、次の年。北条夫婦が転落死。夫は死亡し、妻は行方不明。翌年には古手夫婦の死亡。夫は病死し妻は雛見沢にある鬼ヶ淵沼へ入水自殺をして行方不明。そして去年・・・。北条家の女性が撲殺されて死亡し、北条悟史君が失踪した。

 そんな悲劇が毎年綿流しの夜に起きているのだ。村の人は『オヤシロ様の祟り』として恐れている。それもそうだ。毎年死亡者が出ているのだ。人為的なものであったとしても、祟りとして恐れるのも仕方がないのだ。

 

 村人の誰もが祟りを恐れている。次は自分なのではないかと不安なのだ。冬夜も去年雛見沢に住んで、その恐ろしさを思い知った。去年は北条悟史君の失踪なのである。あの優しそうな子が失踪をするとは考えにくいのだが、世の中どうなるか分からないのが人生なのだろう。

 今年は誰が死んで、誰が行方不明になるのか。そう考える人もいる。その候補者の一人は冬夜なのではないかとも囁かれていた。

 村人と縁遠い人間が被害者に遭うかもしれないと思われるのも仕方がない。今までの事件の関係者はダム戦争の時の穏健派や立ち退き派であった。雛見沢と関係の薄い人間が候補者として囁くのは仕方無いと思える。

 馬鹿馬鹿しい。そう吐き捨てる。冬夜は『オヤシロ様の祟り』を信用していなかった。これは人為的なもので間違いない。祟りという超常的なものであってはならないのだ。

 雛見沢の自然を見ると、時折恐ろしく思うのだ。雛見沢の自然は美しいものだ。春夏秋冬にかけて全て美しいと言えるだろう。都会の喧騒さとは違い、隔絶された場所なのだ。

 しかし、その隔絶さが恐かった。だれもかれもが、事件のことをひた隠しにして、そして思考の全てを祟りとして当てはめているのだ。人間が犯人であると考えていない。いや、そうやって祟りと考えることで恐怖を和らげているのだろうか。

 

 冬夜は大きな溜息を吐く。それを嘲笑うかの如く、ひぐらしの声がかき消していた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。