ひぐらしのなく頃に 巻込編   作:ポロロン

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代弁者

 公由夏美は顔を真っ青にし慌てて家の中に入っていった。これは想像以上の事が起きているということなのだろう。こんな目立つ事をしていれば、いずれ家族の誰かが病んでしまうことは明白である。

 冬夜は考えることもなく、貼られていたお札をベリベリと剝がしていく。赤坂さんは止めようとしたが、冬夜は無視した。

 

ドンッドンッ

 

 こんな儀式をしても発症を抑えることができるのは、儀式をしている人だけ。宗教で心を鎮静化しようとも、これでは・・・。

 お札を剥がしていると、外の様子を確認しにきたのか公由夏美が恐る恐る玄関から顔を出した。そして、冬夜のしている行動を見ている。

 

ドンッドンッ

 

「あぁ、ごめんね。勝手に剥がしたよ」

「すみません・・・」

「これをしたのは、ご家族の誰なんだい?」

「おばあちゃんです」

 

 なるほど。『オヤシロ様』信仰をしているのは公由夏美の祖母に当たる人物ということか。うちのばあちゃんはこんな儀式をしなかったし、雛見沢でもこのような儀式を見たことはない。神棚で拝む姿を見たことはあるが、それぐらいのことである。

 公由夏美は今も顔が真っ青のままだった。この様子を見るに、彼女は『オヤシロ様』信仰については消極的なのかもしれない。

 

「おばあちゃんと話をしてもいい?」

「・・・」

「雛見沢の事故で、多分おばあちゃんも不安なんじゃないかな?」

「そう、なんでしょうか」

「公由さんも同じだよ。不安になったら友人や誰かに相談をしていかないとダメなんだ」

 

ドンッドンッ

 

 それで発症を止められるなら安いものなのだが、病気について詳しく知らないため分からない。雛見沢症候群という精神的な病気が、どのような理由で、具体的な症状などは知らない。

 公由さんは少し悩んだ後、後日会って話をすることになった。向こうが譲歩してくれた以上、こちらが無理に押す必要はない。

 そこまでして、やっと違和感を抱いた。誰かが塀を叩いている音がする。チラリと塀全体を確認した。

 

 誰もいない。まさか曰く付きの物件だと言うのか。いや、このお札が貼られている物件は、まさしく曰く付きと言えるのだが・・・。

 

ドンッドンッ

 

「・・・」

「どうしました?」

「いえ、なんでも無いです」

 

 赤坂さんは気にしていない様子で、それは公由夏美もだった。つまり、聞こえているのは冬夜だけになる。これは俺も病気になっちゃったかな?ガハハ!鳥肌立ったぞ。

 あまり二人を怖がらせてはいけないので、音に関しては言わないでおこう。もしかしたら俺は霊能力者に目覚めた可能性もあるが、それは生計に困った時にネタにするとしよう。

 

 

 

 

 

 後日、公由夏美から連絡があり、祖母と面会をさせてもらうことになった。公由の祖母も雛見沢の住民と話ができることに大層喜んでいるとのこと。今回は一つの山場であり、これからの捜査を円滑に進められるかどうかを決めるものになる。

 赤坂さんは多くの山場を経験しているのか、あまり緊張した素振りは見せない。だが、冬夜は気になる事が多すぎて頭がパンクしそうだった。あれ以来謎の音は聞こえない。やはり気のせいだったのだろうか。

 

 公由夏美の家は、あのお札の件以降近所と関係が上手く築けていないらしい。不気味で仕方がないと近所の人に話を聞いて状況は把握している。

 公由家夫婦(公由夏美の両親)は近所の人が言うに祖母の儀式に困っているとのこと。これだけでも、夫婦が『オヤシロ様』信仰に対して消極的か興味が無いことが分かった。今回も同様に記者という名目で話を聞くことにしよう。

 

 実際に公由祖母と面会をする。至って普通のおばあちゃんのように見える印象だが、通された部屋は異様としか言えなかった。祖母の部屋だろうか?神棚には『オヤシロ様』の名が書かれた文字や、何かの儀式に使っているのか、人形を模した紙が吊るされている。

 冬夜は本題に入るべく、自己紹介を始めた。

 

「地田冬夜です」

「赤坂と申します」

 

 公由祖母は二人を見て同様に自己紹介をした。どこか公由祖母は驚いた顔をしている。

 

「地田は、あの地田さんですか?」

「あの、とは分かりませんが。ガス災害が起こる前まで住んでました地田です」

 

 地田という名前は雛見沢の中で冬夜のみである。あの、という言い方に少しばかり興味を持った。

 

「お魎さんからは事情を聞いてます。『鬼隠し』からの帰って来た方だと」

「お魎さんから?」

 

 まさかの人物が名前に出た。園崎家前当主、園崎お魎が話に出た。確かに公由家は御三家であることから、それなりに交流が有るとは思っていたが・・・。

 

「えぇ、鬼ヶ淵沼で発見された方として、元雛見沢住民もほとんどが知っていることでしょう」

「そうなんですか、知らなかった・・・」

 

 よくよく思えば、雛見沢では自然なことだったのかもしれない。特にダム戦争以降の雛見沢は結束力や情報網の強さは段違いと言えた。それかお魎さんが記憶喪失になった冬夜の身元を探すために、元雛見沢住民にもお触れを出した可能性があった。

 すると、公由祖母は冬夜に向かって拝みだす。それはまるで古手梨花に対する雛見沢の人を思い出させた。まさか・・・。

 

「『鬼隠し』から生還した者は『オヤシロ様の代弁者』として奉るべし、そうお魎さんから聞いてます」

 

 まさか、雛見沢住民全員が冬夜を現人神か何かと思っていたのだろうか。そんな浮世離れのような話があっていいのか。冬夜は思わず口元を手で覆った。

 『鬼隠し』。元々雛見沢であった伝承にある内容のことである。昔、鬼が住んでいたとされる雛見沢で人間を生け贄にするという話があったらしい。それで生け贄に選ばれて消えた人間を、雛見沢の人は『鬼隠し』に遭ったというのだったか。

 『オヤシロ様の祟り』でも、実際に『鬼隠し』にあったと考える住民はいた。一人が死に、一人が消える。北条悟史が失踪したことも『鬼隠し』と言われていた。

 公由祖母は再び拝みはじめる。この状況では話ができないのだが、下手に止めて反感を買うならば、いっそのこと最後まできっちり拝んでくれ。少し時間を待ち、公由祖母の反応を待つ。

 

「ありがとうございます」

「いえいえ」

 

 どうやら拝み終わったらしい。よく分からない祝詞を言うので解読不可能だったが、まぁ満足しているようだし問題は無いだろう。

 

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