ひぐらしのなく頃に 巻込編   作:ポロロン

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生きる意味とは

 少しばかり呆気に取られてしまったが、今回の事で雛見沢という異質さが目に見えてきたように思える。昔は信心深い人が多いということは理解できたが、雛見沢というものが、特に最近ガス災害が起きて恐れを抱いた人がいるという状況の今、悲しいことに信仰を強くしてしまっているのだろう。

 

「公由のおばあさん。実はお願いがあって来たんです」

「はて、それはいったい・・・」

「家の外でお札とかを貼らないでほしいんです」

 

 それはなぜ?まさかのことに驚いたのか、公由祖母は明らかに困惑した表情を浮かべた。

 

「『オヤシロ様』について否定をしているわけではないです。ただ、今回の事で梨花ちゃんが亡くなった真相を知るまで雛見沢の人にはなるべく静かに過ごしてほしいんです」

「ガス災害で梨花ちゃまがお亡くなりになったということは知っております。お魎さんも災害で亡くなったとか。しかし、これは・・・」

 

 どう説得すれば良いのか。どう話せば納得するかは難しい話である。雛見沢住民の特に信心深い高齢者たちの儀式を止めるということは酷なのだろう。しかし、ここは押し通す必要があるのだ。

 

「残念ながら雛見沢のガス災害の中で、以前謎の死を遂げた方がいらっしゃいます。その人たちの真相を知り、犯人がいるならば亡くなった人たちの無念を晴らせるようにしていきたいです」

「・・・」

「突然の事で難しいとは思います。ただ、今回の事は鬼ヶ淵死守同盟の時に掲げたモノと同じじゃないでしょうか」

「死守同盟の・・・」

「一人に石を投げられたら二人で石を投げ返せ。二人に石を投げられたなら、四人で 石を。 八人に棒で追われたなら、十六人で追い返し。 三十人に中傷されたなら、六十人 で怒鳴り返せ。 千人に襲われたなら、雛見沢全員で立ち向かえ」

「懐かしいですねぇ。でも、それが今回の事と同じというのは・・・」

「皆さんには儀式ではなく、元雛見沢住民として協力をしてほしいんです。もちろん、無理にとは言いません。雛見沢の真相を知るために、ぜひ協力を」

 

 園崎家ではない、普通の一般人に協力をお願いしてもどうせ有力な情報と言うのは見つからないだろう。ただ、元雛見沢住民が儀式に走り、それが原因で雛見沢症候群を発症されるのは一番恐ろしい結果を招くことになるだろう。

 協力と言う形で元雛見沢住民のコミュニティーを作り、安心感を作り出す必要がある。それはどのような形でも問題は無い。時に電話で連絡をしたり、時には立ち話をするくらいでも問題は無い。ただ、今のように誰にも相談をすることができない状況では改善に向かわないと察したからだ。

 

「地田さん。私はもう老いぼれて何も手伝うことが・・・」

「いいえ、そんなことはありません。私は、私は・・・」

 

 少しばかりどう話せば良いのか迷った。冬夜は迷って言葉にしなかったが、周囲の人は真剣な眼差しで何か必死に伝えようとしていることは感じ取ったらしい。

 

「私は雛見沢に住んでいました。皆仲良くしてくれました。もうそんな人たちはガス災害で亡くなっています。知り合いの中には不審死を遂げた人もいます。記憶喪失で拾われてから恩義を感じていた人たちに何も恩返しできませんでした。私は、亡くなった人たちの真実を知りたいんです。そのためには一人で行動をしても意味がありません。情報を知るための足も目も手も足りない。手伝わなくても良いんです。ただ、そこに同じく共感をしてくれる人がいてくれることが大事なんです」

 

 果たしてそれが本心だったかは冬夜も分からなかった。もっと本人としては打算的にまるで詐欺師のように話をして儀式を無くしたかったというのに。まるで支離滅裂で説得の「せ」の字すら言うことができなかった。

 

「分かりました。これでも御三家の一人です。お役に立てるかどうか分かりませんが、『オヤシロ様の代弁者』様のお気持ち、ババアにはよく伝わりました」

 

 なぜ説得できたのか分からない。公由祖母が見せる目が、さきほどまでの古手梨花を見るような目つきではなく、孫に見せるような落ち着いた目をしていたのは確かである。

 これで良かったのか分からない。ただ、公由夏美という人物にとってはこの儀式の中止を喜んでくれるだろう。少しばかり安堵していた時、冬夜は気づいた。誰かが後ろに立っている。

 

「!?」

 

 思わず振り返った。普通後ろに人が立っていても気づかないものである。それも超能力者というか第六感が強い者であれば分かるのだろう。

 後ろには誰もいない。

 なぜ人の気配を感じたのか分からない。気が緩んでしまったからか。それとも超常的な存在がそこにいるのか。それか単純に勘違いだったのか。

 

「どうしました?」

 

 赤坂さんが冬夜の様子に気づいて話しかけてきた。問題ないことを伝える。果たして、背中に漂う気配が止まらない。冷や汗が少し垂れてしまっている気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 公由家の話が終わり、赤坂さんから話をされた。

 

「冬夜さん。やはり貴方と一緒に行動をして良かったと思います」

「どうしてですか?」

「警察という肩書では、やはり捜査は難しいものです。

 

 なるほど。確かに警察が家に来て捜査の協力を願い出ても警戒する人がいるのかもしれない。冬夜はあまり気にしたことはないが、そういった人もいるのだろう。

 

「それと、もう少し自分を許してあげなさい」

 

 それは忠告というよりも年上としての人生論を語っているように思えた。突然の話に冬夜は首を傾げる。

 

「私は冬夜さんの事情を詳しくは存じません。ただ、この事件は貴方が原因ではない。だから罪を償う必要もないですし、背負う必要もない」

 

 おそらくガス災害の事を言っているのだろう。『許す』という意味も分かる。冬夜はガス災害についてだけでなく、梨花ちゃんが殺されたことに対して負い目を感じていた。

 

「それは赤坂さんもでは?」

「そうだね。その通りだ。同じ境遇の人間だからこそ言える言葉だと思う」

 

 冬夜は深く深く息を吐いた。彼の言いたいことなど十分に分かる、背負う必要などないこと。もう自分の人生を楽しくするべきなのだろう。ただ、冬夜は違う。罪は重荷となって次のループへと至ることができるのだ。

 ループ。つまり自身が死ぬことによって当時の雛見沢へ戻ること。それが冬夜と赤坂の大きな違いであった。この人生で全ての情報を集めてループに挑む。それが冬夜の生きる意味なのだ。




連続で同じものを投稿していたようでした。ご報告ありがとうございます。
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