ひぐらしのなく頃に 巻込編   作:ポロロン

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黒い手帳

「いる・・・んじゃないかな」

「煮え切らないですね」

「まぁ見たことないし」

「それは見たことないから『いない』と言うべきだと思います」

 

 冬夜は幽霊とか神様という存在を全て信じるかどうかなど、そもそも考えたことが無い。あの記憶の断片から分かるように、どうやら記憶喪失前の自分は祠の掃除をするぐらいには道徳心があるようだが。その祠のご神仏を信じているかというと怪しいものだ。

 

「竜宮さんは見たことはある?」

「あります」

 

 即答だった。なるほど、これはいないと言っていたら危険な目に遭っていたかもしれない。なるほど、雛見沢症候群の傾向かどうか分からないが、見ているというのなら話は早いはずだ。

 

「後ろからペタペタ追いかけてくるんです。ごめんなさい、ごめんなさいって謝りながら」

 

 ホラー満載な登場方法をするらしい。そんな迷惑な登場をされても困るという者だ。うん?ペタペタ追いかけてくる?そこで思い出したのは前回のループの時だ。ガス災害の後、公由家以降から憑いてきた謎の存在である。まさかあれが『オヤシロ様』だと言うのだろうか。できれば幽霊ではなく巫女さんに憑かれたかった。

 

「ところで助けてほしいんだけど・・・」

「先生は最近住み始めた人ですもんね。信じないでしょうけど、『オヤシロ様の代弁者』と言われているなら信じましょうね」

 

 まだ助けてはくれないらしい。もういいや、頑張って抜け出そう。いそいそと抜け出そうとしている間にも、彼女は話し続ける。何か寄生虫がどうたらこうたらと言っているが、俺には今は関係ない。もうこのまま抜け出せないのならいつか漏らしてしまうかもしれない。

 

「先生はここで暮らして間もないですから、寄生虫に侵されていないかもしれませんけどね・・・。私はもう駄目なんです」

「ほぉ、どうして」

「首が痒くて痒くて堪らないんです。身体の中から蛆虫が湧いて、湧いて・・・」

 

 そういうと彼女は首をボリボリと掻き始めた。それ以上掻くと富竹さんの二の舞になるぞ。蛆虫は幻覚なのだろうけれど、雛見沢症候群の症状の一つに違いない。寄生虫については良くわからないが。

 前原君はおはぎの中に針が入っていると信じていた。園崎詩音さんは北条君についての犯人捜しに注力していた。人を監禁するほどに狂ってしまう。

 それでは目の前にいる彼女はどうだろうか。彼女は今も話続けているのだが、内容からして雛見沢は寄生虫に支配されているというものである。なぜか宇宙人がどうたらとも言っている。もしかしてオカルト関係に偏っているということだろうか。あ、そろそろ抜け出せそうだ。

 

「いや、でも先生は園崎家とも仲が良かった・・・。先生ももう寄生虫に支配されて・・・?」

「そもそも寄生虫が人間の中に入って生きていけるのかな。サナダムシとか有名だけど危険だよね」

「先生は信じてくれないんですか?」

「いやいや、竜宮さんが信じてる寄生虫とか宇宙人についてだけど、どこから知った情報なのかなって思ったのさ。大学の資料とか?」

「・・・」

 

 おや?もしかして今危ない綱渡りを成功したのでは?彼女は持っている鉈を一度強く握りしめて、ふっと鉈を肩に担いだ。あ、やめて。振り下ろさないで。

 

「ちょっと待っててください」

 

 そういって彼女は鉈を担いだままゴミ山をひょいひょいと歩いていく。どうやら危険は去っていったらしい。おや?今なら安心して抜け出せそうだ。危険が離れたおかげか、無事に抜け出すことができた。今ここでゴミ山から去ることもできるのだが、それは竜宮さんに悪い気がする。俺の脚力さえあれば竜宮さんに追われても逃げ出せるだろう。さっきみたいにゴミ山に足を踏み外したら間違いなく殺されるだろうけど。

 そんな事を考えていると竜宮さんが戻ってきた。手には黒い手帳だろうか、何か手に持っている。もしかして資料が書かれているノートだろうか。

 

「この本に書かれている内容であれば、まだ学会でも発表されていない新種の寄生虫だそうです」

 

 彼女はじっくりとノートの内容を確認して言った。いやぁ、胡散臭いノートだ。そんな新種の寄生虫がいるのならば、さっさと発表してくれ。そういえば雛見沢症候群は発表されているのだろうか。発表されたら雛見沢住民が全員恐慌状態になりそうな気がするが。

 

「著者は?」

「鷹野さんです」

 

 鷹野三四。まさかの人物が踊り出てきた。もう彼女が怪しすぎて仕方がない。よほどのオカルト信者なのかもしれない。そういえば綿流しの時に祭具殿に侵入しようとしていたが、それも何か関係があるのかもしれない。厄介なネタを竜宮さんに提供したらしい。

 

「分かった、信じよう」

「先生ならそういってくれると信じてました」

「他に信じてくれる人はいるのかな?」

「さっき来た圭一君と大石さんなら」

 

 前原君も同様に彼女のご機嫌伺いに成功したらしい。それにしても大石さんは何を考えているのだろうか。もしや北条鉄平と間宮リナの死体について調べるために竜宮さんを泳がせているのか。どうにかして彼と話をする必要もある。綿流しまで残り数日しかないというのに会わないといけない人物が多すぎる。圧倒的に時間が足りない。

 

「でも俺には大石さんみたいな権力が無いからね。協力者としては期待しないでくれよ」

「うふふ、大丈夫です。『オヤシロ様の代弁者』として発信してくれればそれで」

 

 冬夜は苦笑をする。なるほど、彼女の目的が少しだけ見えてきた。彼女が学校で立て籠もりする意味も何となくだが理解できる。彼女は寄生虫やら宇宙人説を広めたいのだ。雛見沢での冬夜の肩書と警察という権力が欲しいのである。脅して警察の力を使うという線も有りそうだ。

 冬夜は苦笑を、竜宮レナは冷たく笑う。彼女の状況は理解できたし、鷹野三四の存在も見えてきた。それだけでも収穫物といえるだろう。

 冬夜は何とか彼女の話に合わせることで、その場を離れることに成功したのである。もう前回みたいに監禁とかはされたくないので、さっさと逃げることにしよう。

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