ひぐらしのなく頃に 巻込編   作:ポロロン

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エンジェルモートでお尻を見に行くゾ

 綿流しまで残り3日となった今日。冬夜は眠気を抑えてエンジェルモートにいた。隣には古手梨花、正面には入江京介がいる。

 眠いのには理由があった。竜宮レナがいつ爆弾を仕掛けるか分からない以上、定期的に学校の備品やらを確認しないといけないのだ。仕掛けるならば深夜だろうということで、深夜まで学校近くで待機をしていた。以前のように車中泊をしたかったのだが、残念ながらお金がない。ループの時にお金を持ち込めたら最高だったのだが。

 冬夜は眠気を覚ますために、いつものエンジェルモートの席でショートケーキとコーヒーを頼んだ。店員さんは前回のループの時に泣かせてくれた女性店員である。

 

「「ぐへへ」」

 

 冬夜と入江京介は鼻の下を伸ばした。もうやっぱりすごい衣装である。巫女服に取り入れようとは思わないが、十分目の保養になる。あ、痛い!

 

「梨花ちゃん、足踏まないで」

「だいじな話をするのに鼻の下を伸ばさないで欲しいのです」

 

 ふぅむ、確かにそれは良くなかった。今は急を要する状況なのである。至極まっとうな反応をしてしまったが、彼女には不評であったらしい。今度巫女服着替えてくれた時に再度踏んでもらうように催促してみよう。

 

「それで冬夜さん。今日はどういった要件でしょうか。記憶喪失関係であれば診療所でも良かったでしょうに」

「監督、今回は梨花ちゃんの言うように真面目な話でしてね。周囲に聞かれたくないもので、この場を設けさせてもらいましたよ」

 

 入江監督は冬夜と古手梨花を交互に見る。なるほど、とぼけているようでしっかりと話を理解されているように思えた。

 

「単刀直入に言わせてもらいます。竜宮レナは雛見沢症候群に罹っている。医者としての意見を聞きたい」

 

 入江監督は大きく目を見開いた。まさかその病名を言葉にするとは思えなかったのだろう。

 

「どこでその病気を?」

「隣にいる少女から」

 

 そういうと入江監督は古手梨花を見た。それは咎めているような目ではない。なぜ秘密を曝したのかという疑問のある顔であった。

 

「監督、この場での疑問は無しにしましょう。私はこの病気を根絶したい」

「・・・」

「突然のことで驚いているでしょうが、私も悩みましてね。貴方が竜宮レナの症状を悪化させたのではないかと疑っている」

「そ、そんなことはしません!」

 

 大きな声で否定をした。冬夜が考えているのは、鷹野三四の手帳についてである。彼女も同じく雛見沢症候群について調べている一員なのであれば、それを束ねている入江診療所の所長が実験のために指示をした可能性があったからだ。

 目下として怪しいのは鷹野三四であるが、それと同じくして怪しいのは入江京介という人物。それは古手梨花も理解していた。つまりこれは賭けなのである。

 

「私はあの病気を根絶したい。そのために患者を増やそうとは思いません!」

「それでは、病気に対する特効薬のような物は無いのですか?」

「・・・有ります。もう既に知っているでしょうが、沙都子ちゃんが使っている薬があります。でも、それは完全な特効薬ではなく、あくまでも症状を抑える薬です」

 

 え?沙都子ちゃんも病気だったのか?それは知らなかったんだけど・・・。いや、それについては置いておこう。そうか、薬はあるのか。

 

「レナさんが病気だと言うなら保護をしなくてはいけません。今彼女はどこに?」

「それについては教えられません。保護は今はしてはいけないと思っています」

 

 それはなぜ?という入江監督の言葉に冬夜は答える。それは例の女性の存在だ。

 

「鷹野三四。彼女がいる限り私は竜宮レナの保護を認めない」

「鷹野さんですか?」

 

 そもそもの現況が彼女であるのならば、彼女のいる診療所に保護をするなど論外である。症状が悪化するだけだろう。

 

「入江、鷹野は私を殺そうとしているかもしれないのです」

「えぇ!?そ、そんな事をしてしまえば、女王感染者がいなくなった後の雛見沢がどうなるか、彼女も理解しているはずです!」

 

 入江監督は明らかにうろたえていた。いきなりそのような話をされて鵜呑みにできる人物などいないだろう。冬夜もループするという事実が無ければ信じなかっただろう。

 

「信じるかどうかは置いときます。彼女は今年殺されるかもしれない。それに対して貴方はどう対処できますか?」

「どうもこうも、もしそのようなことが起きるならば山狗に警護させます」

 

 『山狗』という部隊がどのような存在か分からないが、信用できるのだろうか。確か山狗と番犬がいるのだったか。

 

「でも信じられない。彼女がそんなことをするだなんて」

「信じる信じないは良いんです。杞憂であればそれで問題はありません。ただ・・・」

「ただ?」

「貴方にとって一番最悪な事態に陥らないために、協力してほしいだけです」

 

 入江監督だけではない。そもそも大人とは言っても一人の人間なのだ。うろたえてまともな考えがでないのは理解できる。忘れてはいけないのは、協力してくれるかどうか、それだけだ。

 

「わ、分かりました。私は何をすれば・・・?」

「まず、梨花ちゃんが万が一殺されてしまったらどうなりますか?」

「それは・・・」

「入江、教えて欲しいのです」

「もしそのような事態があれば、マニュアル通りであればです。雛見沢住民を全員処理することになっています」

「殺すんですか」

「・・・はい」

 

 住民全員を殺す。それはまるでガス災害のような事態だ。は?ガス災害?つまりガス災害は人災だったということか。

 そこで思い出すのは竜宮さんの遺留品である。まさかあの遺留品は人災ということを伝える内容だったのだろうか。

 

「分かりました。次に山狗部隊に話を通さず、まずは富竹さんと一緒に話をする機会を設けてください。入江先生も同じく同席していただきたい」

「わ、分かりました」

「入江先生、一応他には竜宮さん用の薬を用意しといてください。今回の彼女の症状は鷹野三四によるものです。彼女に悟られないようにしてください」

 

 少々入江監督には申し訳ないが、ここは押し切る必要がある。彼の様子から見て、やはり彼の度胸では梨花ちゃんを殺すようには思えない。人を騙す才能があるのであれば、今二人は藪蛇どころではない状況に陥っているわけだが。

 賭けが成功しているかどうか、それは当日にならないと分からない。しかし、よくよく思えば賭けができるほどに進んでいるのだろう。以前までは何もできず情報も足りない状況だったのだ。ここで全て解決へと導きたい。

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